ドイツテレコム・アーゲー 有価証券報告書
提出書類 | 有価証券報告書 |
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提出日 | |
提出者 | ドイツテレコム・アーゲー |
カテゴリ | 有価証券報告書 |
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ドイツテレコム・アーゲー(E05830)
有価証券報告書
【表紙】
【提出書類】 有価証券報告書
【根拠条文】 金融商品取引法第24条第1項
【提出先】 関東財務局長
【提出日】 2020 年6月26日
【事業年度】 自 2019年1月1日 至 2019年12月31日
【会社名】 ドイツテレコム・アーゲー
(Deutsche Telekom AG)
【代表者の役職氏名】 ティモテウス・ヘッティゲス(取締役会会長)
Timotheus Höttges(Chairman of the Board of Management)
Dr. クリスチャン・P.・イレック(財務担当取締役)
Dr. Christian P. Illek(Member of the Board of Management;
Finance)
【本店の所在の場所】 ドイツ連邦共和国 53113 ボン フリードリヒ・エーベルト・
アレー 140
(Friedrich-Ebert-Allee 140, 53113 Bonn, The Federal
Republic of Germany)
【代理人の氏名又は名称】 弁護士 錦 織 康 高
【代理人の住所又は所在地】 東京都千代田区大手町一丁目1番2号大手門タワー
西村あさひ法律事務所
【電話番号】 03-6250-6200
【事務連絡者氏名】 弁護士 江 邉 義 行
弁護士 荒 谷 誠
弁護士 髙 木 拓 実
【連絡場所】 東京都千代田区大手町一丁目1番2号大手門タワー
西村あさひ法律事務所
【電話番号】 03-6250-6200
【縦覧に供する場所】 該当なし
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第一部 【企業情報】
注(1) 本書において、文脈により別異に解する必要がある場合を除き、下記の語は下記の意味を有するものとする。
・ 「当社」及び「ドイツテレコム」
文脈上、別異に解する必要がある場合を除き、ドイツテレコム・アーゲー(Deutsche Telekom AG)を意味する。
1995年1月1日以前、ドイツテレコムはドイツの郵便・電話・電信国家機関であるドイツ・ブンデスポスト
(Deutsche Bundespost)の一部署として営業を行っていた。また、本書において「ドイツテレコム」は、ドイツテ
レコム・アーゲーの前身機関をも意味し、「ドイツポスト(Deutsche Post)」及び「ドイツポストバンク
(Deutsche Postbank)」は、それぞれドイツポスト・アーゲー(Deutsche Post AG)及びドイツポストバンク・アー
ゲー(Deutsche Postbank AG)並びにそれぞれの前身機関を意味する。
・ 「当グループ」
ドイツテレコム並びに(適切な場合には)グループとしてのドイツテレコム及びその直接・間接子会社を意味する
(但し、「第6 経理の状況」についてはこの限りではない。)。
・ 「ドイツ」、「連邦共和国」又は「共和国」
ドイツ連邦共和国を意味する。
・ 「当社株式」
当社の無額面普通株式を意味する。
(2) 別段の記載がある場合を除き、本書に記載の「ユーロ」及び「 € 」は一定の欧州連合加盟国の法定通貨であるユーロ
を、「米ドル」及び「ドル」はアメリカ合衆国の法定通貨であるアメリカ合衆国ドルを指すものとする。本書におい
て便宜上記載されている日本円への換算は、別段の記載がある場合を除き、1ユーロ=119.82円、1米ドル=107.74
円の換算率(いずれも2020年6月1日に株式会社三菱UFJ銀行が発表した対顧客電信直物売買相場の仲値)により計
算されている。
(3) 本書中の表で計数が四捨五入されている場合、合計は計数の総和と必ずしも一致しない。
(4) 本書において、インターネットのページを参照する場合、かかるページの内容は本書の一部を構成するものではな
い。
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第1 【本国における法制等の概要】
1 【会社制度等の概要】
(1) 【提出会社の属する国・州等における会社制度】
総 論
ドイツ法は、各種の企業形態について規定している。
- 合名会社(Offene Handelsgesellschaft -「OHG」)
商法典(HGB)第105条-160条の適用を受け、組合員全員が組合の負債につき無限責任を負う。
- 合資会社(Kommanditgesellschaft -「KG」)
商法典(HGB)第161条-177条aの適用を受け、最低1名の社員(無限責任社員)が無限責任を負うのに対し、
他の(有限責任)社員はその出資額を限度とする責任を負う。
- GmbH&Co. KG(合資会社の特殊形態)
有限会社がその唯一の無限責任社員となる。
この種の会社は、合資会社に適用ある規定の適用を受ける。
- 有限会社(Gesellschaft mit beschränkter Haftung -「GmbH」)
有限会社法(GmbHG)の適用を受け、法人格を有する。
会社債権者に対する債務は、会社の資産のみをもって弁済され、社員は責任を負わない。
最低25,000ユーロの最低資本を有し、かかる資本は持分に分割される。但し、持分は公正証書によっての
み譲渡可能である。
- 株式会社(Aktiengesellschaft -「AG」)
株式会社法(AktG)の適用を受け、有限会社と同様法人格を有する。会社債権者に対する債務は会社の資産
のみをもって弁済され、株主は責任を負わない。最低50,000ユーロの最低資本を有し、かかる資本は株式
に分割される。株式は、公証人の認証がなくとも譲渡可能である。一般に、株式会社法上認められた会社
の構造は有限会社法上のそれと比べると柔軟性に乏しい。
- 欧州会社(Societas Europaea -「SE」)他の法律に加えて、欧州会社法に関するEUの規則(理事会規則
(EC) No 2157/2001)の適用を受ける。SEは最低120,000ユーロの最低資本を有し、かかる資本は株式に分
割される。株式は、公証人の認証がなくとも譲渡可能である。ドイツのSEに適用ある規定は、株式会社に
適用ある規定によく似ている。
株式会社の特徴を以下に敷衍する。
設 立
株式会社は、1名以上の者を発起人として設立され、発起人は出資と引換えに全株式を引き受けなければな
らない。株式は額面株式又は無額面株式のいずれも発行することができる。資本及び額面株式はユーロで表示
される額面金額を有するものとし、設立時の資本の額は最低50,000ユーロで、額面株式1株の額面金額は1
ユーロ又はその倍数に相当する額となる。株式は、無記名式又は記名式のいずれでもよい。
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定款は公正証書によって作成され、会社の本店所在地を管轄する区裁判所(Amtsgericht)が保管する商業登
記簿に登記されなければならない。定款の必要的記載事項は以下の通りである。
- 会社の名称及び本店所在地
- 会社の目的
- 資本の額
- 資本における額面株式又は無額面株式の割合。額面株式においては、株式の額面金額及び種類並びに各額
面金額毎の株式数
- 株式の記名式・無記名式の別
- 取締役の員数又は員数決定の根拠となる規則
- 公告の方法
株式会社は、商業登記簿に登記されたときに、その法人格が成立する。
会社と株主との関係
一般に株主は、等しい状況下では平等の取扱いを受けることができる。株主は、応分の純利益を受領する権
利を有するが、準備金に組み入れること等を理由として法律、定款又は株主の決議により分配から除外される
ものについてはこの限りでない。現金配当以外に、現物配当も認められる。
また、株主は、定款に別段の定めがない限り、その所有持株に応じて議決権を有する。利益配当について優
先的権利を付された優先株は、無議決権株式として発行することができる。
株主となったことを会社に対抗するため、記名式株式の買主は新株主として会社の株主名簿に登録されなけ
ればならない。
記名式株式(Namensaktien)の保有者は、その保有に係る株式数や登録番号のほかに、個人情報(氏名、住所
及び生年月日等)を会社に通知する義務を負う。会社は株主名簿に登録された株主がその記名式株式を実質株
主として保有しているのか、あるいは名目上の株主として保有しているのかについて、その者から情報を要求
する権利を有する。後者の場合、その名目上の株主は、当該株式の保有を依頼した者の個人情報を提供する義
務を負う。会社は、今度は名目上の株主によって識別情報が開示された者に対して、個人情報を要求すること
ができる。株主名簿に登録された株主は、会社が要求する情報を提供しない場合は、その提供がなされるまで
法律によって議決権を剥奪される。
会社は、株式会社法第71条に定める一定の場合にのみ自社株を取得することができる。
企業が国内に本店を有する非上場の株式会社の株式を4分の1を超え、又は2分の1を超え所有することと
なった場合、当該企業はこの事実を非上場の株式会社に対し不当に遅滞することなく書面で通知しなければな
らない。さらに、かかる株式数を所有しなくなった場合にも、当該企業はその会社に通知しなければならな
い。上記の通知義務を負う企業が所有する株式の権利は、当該企業がかかる通知義務を怠っている間は行使す
ることができない。
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さらに、法令で定義される「発行者(Issuer)」であって本社所在国がドイツ連邦共和国(以下「連邦共和
国」という。)である者の議決権を有する上場株式会社の株主は、その保有割合が3%、5%、10%、15%、
20%、25%、30%、50%若しくは75%の基準値に到達した場合、これを超えた場合又は到達後にこれを下回っ
た場合には、ドイツ証券取引法(Wertpapierhandelsgesetz)に従い、不当に遅滞することなく(遅くとも、その
保有割合がいずれかの基準値に到達した、これを超えた若しくはこれを下回ったと知った日又は知ることがで
きた日から4取引日以内とする。)、当該発行者及び連邦金融サービス監督局(Bundesanstalt für
Finanzdienstleistungsaufsicht)(以下「BaFin」という。)に対して書面により報告をすることが求められて
いる。強制的に、かかる期間は株主が交替した2取引日後から開始するものとみなされる。株主は当該報告
に、とりわけ自己の保有する議決権数及び自己に帰属する第三者の議決権数を記載しなければならない。この
ような株主は当該開示基準を満たすまで、いかなる権利(当該株式に係る議決権及び配当を受ける権利を含
む。)も行使することができない。また、かかる報告を怠った場合には、法律で定められた罰則の適用を引き
起こすこととなる。その上、本社所在国が連邦共和国である会社を発行者とする発行済議決権付株式を取得
(但し、自己のイニシアチブのみを動機とし、かつ法的拘束力のある契約に基づく場合とする。)する権利を付
与される結果となる法令上定められた一切の金融商品を直接又は間接に保有する者は、上述の基準値(但し、
3%である場合を除く。)に到達した、これを超えた又はこれを下回った場合に、不当に遅滞することなくそ
の旨を当該発行者及びBaFinに報告しなければならない。さらに、10%若しくはそれ以上の開示基準値に到達
した又はこれを超えた株主は、その到達日又は超過日後20取引日以内に、発行者に対して保有目的及び資金調
達源を報告しなければならない。発行者は、不当に遅滞することなく(但し、当該報告を受けた日から3取引
日以内とする。)、株主から受けた報告(あるいは報告義務が果たされていない旨)を公表しなければならな
い。さらに、法的要求により、議決権の(取得資格を与えるのではなく)取得を可能とするに過ぎない全ての金
融商品及びその他の商品を直接的又は間接的に保有する場合にまで通知義務が拡大された。それに加えて、ド
イツ証券取引法には、株式の帰属が、株式に係る議決権の行使に実質的な支配力を有する者に対して、確実に
なされるように設計された様々なルールが含まれている。さらに、ドイツ企業買収法(Wertpapiererwerbs-
und Übernahmegesetz)は、「支配権」の取得(対象企業の議決権の30%以上を直接又は間接に保有することを
いう。)を公表することを求めている。
さらに、市場濫用行為(market abuse)に関する規制 (Regulation (EU) No 596/2014) (市場濫用行為規制)
の下、当社株式又は当社株式にリンクした金融商品に係る取引を、当社取締役若しくは監査役又は定期的に内
部情報に接し、かつ、重要な経営判断を行う権限を有するその他一切の役員、並びにこれらの者に密接に関連
性を有する者が行う場合には、その者は3営業日以内に当該取引を当社及びBaFinに書面により開示しなけれ
ばならない(但し、1暦年中の有価証券取引の総額が5,000ユーロを下らない場合に限る。)。当社は、こうし
た有価証券取引を直ちに公告し、同時にBaFinに対しその公告を通知し、そして直ちに(但し、公告後に)当該
公告を当社の登録簿(Unternehmensregister)に提出しなければならない。
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会社の組織
取締役会(Vorstand)
取締役会は自己の責任において会社の業務を執行しなければならない。取締役の員数は1名でも数名でも
よい。定款に明示的に別段の定めがない限り、株式資本が3,000,000ユーロを超える会社については、最低
2名の取締役が必要とされる。取締役の資格は自然人かつ完全な行為能力を有する者に限られる。さらに、
最近5年間以内に一定の破産犯罪について有罪判決を受けた者又は判決若しくは行政命令によって特定の職
業若しくは営業に従事することを禁じられた者も取締役となる資格を有しない。
取締役会は業務規程を制定することができる。但し、定款が監査役会(Aufsichtsrat)に業務規程の制定権
を与えている場合又は既に監査役会が取締役会のために業務規程を作成している場合はこの限りでない。
取締役会は、裁判上及び裁判外において会社を代表する。取締役会が数名によって構成される場合、全取
締役は共同してのみ代表権限を有する。但し、定款に別段の規定がある場合はこの限りでない(実際は、か
かる規定を設けるのが通常である。)。定款は、取締役が単独又は登記済代理権(以下「プロクラ」とい
う。)を有する者と共同で代表権限を有する旨定めることができる(かかるプロクラは商法典の適用を受ける
代理権であり、商業登記簿に登記される。)。共同代表権を有する取締役は、個々の共同代表権を有する取
締役に一定の事業又は一定の種類の事業を行うことを授権することができる。
取締役会又は代表権限の変更は、その都度商業登記簿に登記されなければならない。
取締役は、任期を最長5年として監査役会により任命される。再任又は任期の延長は、それぞれ最高5年
を任期として許される。
取締役は、重大な理由がある場合に、監査役会の決議によってのみ解任することができる。
取締役会は内部的監視システムを設立し、監査役会に会社の運営及び基礎的計画に関する定期報告書を提
出しなければならない。監査役会はまた、いつでも特別報告書を請求することができる。株式会社法は会社
の取締役及び監査役の兼任を禁止している。取締役及び監査役は双方とも会社に対する忠実義務及び注意義
務を負う。
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監査役会
株式会社法第95条に従い、監査役会は最低3名乃至最高21名の監査役(共同決定法
(Mitbestimmungsgesetz、MitbestG)(以下「共同決定法」という。)の規定の履行のために必要な場合はその
員数は3で割り切れる数でなければならない。)によって構成される。
但し、1976年5月4日付共同決定法は、異なる構成について規定しており、同法は、一般に従業員数が
2,000名を超える全ての会社に適用される(以下の記載は共同決定法に従う会社に関するものである。)。
共同決定法に従い、監査役会は以下に従って構成されなければならない。
( イ)一般に従業員数が10,000名以下の会社の場合は、12名の監査役。その内訳は、株主代表6名及び従業員
代表6名(そのうち4名は会社従業員、2名は労働組合代表)とする。但し、定款で員数を16名又は20名
と規定することができる。
( ロ)一般に従業員数が10,000名超20,000名以下の会社の場合は、16名の監査役。その内訳は、株主代表8名
及び従業員代表8名(そのうち6名は会社従業員、2名は労働組合代表)とする。但し、定款で員数を20
名と規定することができる。
( ハ)一般に従業員数が20,000名を超える会社の場合は、20名の監査役。その内訳は、株主代表10名及び従業
員代表10名(そのうち7名は会社の従業員、3名は労働組合代表)とする。
株主代表に関する監査役会の構成は共同決定法の適用を受けないが、従業員代表に関しては、共同決定法
にさらに詳しく規定されている。
定款により具体的な指名権が定められていない限り、株主代表は株主総会で選任される。従業員代表の選
任については共同決定法第9条乃至第24条が適用され、共同決定法の授権に基づき1977年6月23日に発布さ
れた3つの規則にさらに詳細な規定がある。
2015 年5月以降、上場し、共同決定の適用を受ける企業も新しい法的要求に従う必要があり、監査役会は
少なくとも女性30%及び男性30%から構成されなければならない。原則として、ジョイント・コンプライア
ンス(AktG第96条第2項第1号及び第2号)に基づいて監査役会により、要求される最低定数は達成しなけれ
ばならない。それでもなお、各選任の前に、株主及び従業員は、それぞれが単体で最低定数の要請を満たさ
なければないないという効果により、ジョイント・コンプライアンスに対して異議を申し出ることができる
(AktG第96条第2項第3号)。最低定数の要請に反する株主総会による株主代表の選任及び監査役会への指名
は無効である(AktG第96条第2項第6号)。監査役会への従業員代表の選任について共同決定法は特別な要求
を規定している。
監査役の任期は、当該監査役の就任後4事業年度目に係る同監査役の解任につき決議する株主総会をもっ
て終了する期間、すなわち約5年を超えることはできない。
監査役の代理人は任命することができないが、株主代表であるか、また従業員代表であるかを問わず個々
の監査役については、かかる正規の監査役とともに補欠を選任することができる。かかる補欠は、正規の監
査役が任期満了前に離任した場合に監査役になる。
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監査役会の職務権限
監査役会は、取締役の任命及び業務執行の監査を職務としている。監査役会は、会社の財産のほか会社の
帳簿及び記録を閲覧・監査することができる。各監査役は、取締役会に対して報告書を監査役会に提出する
ように要求する権限を有する。裁判上及び裁判外において取締役会を相手方とする場合には、監査役会が会
社を代表する。また会社の利益のために必要な場合は、株主総会を招集しなければならない。
業務執行の機能を監査役会に委譲することはできないが、定款又は監査役会は、監査役会の同意を得なけ
れば一定の業務執行上の措置を行ってはならない旨定めなければならない。
監査役は、その監査機能を各自遂行しなければならず、第三者への委譲は認められない。
さらに、監査役会は年次財務書類及び経営報告書並びに連結財務書類及びグループ経営報告書の確定過程
に参加する。これらの書類及び報告書は全て、取締役会から監査役会へ提出される。独立監査人との間の契
約は、監査役会により承認される。これらの書類及び報告書は全て、監査役会会長宛で直接監査役会に対し
て提出されなければならない。監査役会は、同書の検討結果について株主総会において書面で報告し、か
つ、取締役会にかかる報告書を提出しなければならない。
上場又は共同決定法の適用を受ける企業の監査役会も、取締役会における女性の数について規則にした
がって目標を定め、かかる目標の達成期限を決定しなければならない。
監査役の報酬は、定款又は株主総会決議により決定することができる。
会長、決議、委員会
監査役会は、監査役の中から監査役会会長1名及び副会長1名以上を選任しなければならない。
法律又は定款に別段の定めがない限り、法律又は定款に規定された決議のための定足数は全監査役の半数
以上である(株式会社法第108条第2項及び(該当する場合は)共同決定法第28条)。他の監査役又は監査役会
に出席する権利を有するその他の者を通じて書面で投票することも当該決議への参加とみなされる。別段の
定めがない限り、決議には投票数の過半数が必要である。可否同数の場合は再度の投票を行うことができる
が、この場合も可否同数であれば監査役会会長が決定権を有する。監査役会副会長には、かかる決定権はな
い(共同決定法第29条)。
監査役会は、監査役によって構成される委員会を設置することができ、かかる委員会に対して、株式会社
法第107条第3項に特定される一定の事項以外の事項につき監査役会に代わって決定することを委任するこ
とができる。1つの例外を除き、ドイツの会社法は監査役会に関する特定の委員会の創設を義務付けてはい
ない。従業員が2,000名を超えるドイツの会社は、取締役の任命又は解任に伴い発生する監査役間の争議に
関して、監査役会を補佐する調停委員会を設置するよう義務付けられているだけである。
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取締役の任命
取締役の任命には、一般的に監査役会の構成員の過半数の賛成が必要とされる。共同決定法が適用される
場合、取締役選任のための監査役会決議には3分の2の多数が必要となる(共同決定法第31条)。かかる多数
が得られない場合、監査役4名によって構成される調停委員会は1か月以内にかかる選任の提案をしなけれ
ばならない。その後は、かかる提案が承認されると否とにかかわらず、監査役会決議を過半数で採択するこ
とができる。可否同数の場合、会長が追加投票による2回目の投票権を有する。
株主総会
株主は、株主総会でその権利を行使し、株式会社法又は定款に定められた事項について当該総会で決議す
る。その主な決議事項は以下の通りである。
( イ)監査役会における株主代表の選任
( ロ)純利益処分案
( ハ)取締役及び監査役の解任
( ニ)独立監査人の選任
( ホ)定款変更
( ヘ)増資及び減資
( ト)特別独立監査人の選任
( チ)会社の解散
株主総会は、取締役会からその旨請求された場合に限り、業務執行上の問題につき決議することができ
る。
定時株主総会は、事業年度終了後8か月以内に開催されなければならない。当該総会は、承認された年次
財務書類及び連結財務書類を受領しなければならない。年次財務書類及び連結財務書類は取締役会によって
作成され、会社の進展状況及び現状に関する正確かつ公正な見解が記載されていなければならない。さらに
また、事業年度終了後に生じた事象で特に重要なものについての記載、並びに(もし可能であれば)会社の将
来における進展及び研究開発分野における活動についても記載することが求められる。年次財務書類の内容
をもとにして、定時株主総会では純利益処分案並びに取締役及び監査役の解任について決議を行う。また当
該総会は独立監査人を選任する。株主総会は、会社の利益のために必要な場合にもまた招集されなければな
らない。株主総会を招集できるのは、取締役会、監査役会又は5%以上の株式資本を有する株主である。招
集通知は連邦官報に公告されなければならない。招集公告には、株主総会の開催日、場所並びに出席のため
の前提条件及び議案を記載するものとし、招集は、株主総会開催日より少なくとも30日前までに公告されな
ければならない(周知期間)。定款により登録が必要とされる場合には、上述の周知期間は申込期間の日数に
応じて延長されるものとする。取締役会及び監査役会は、決議を要する各議案につき提案を行わなければな
らない(監査役及び独立監査人の選任決議案は、監査役会のみが提案を行う。)。
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株主は、株主総会において議案に対して反対提案又は選択提案を提出することができる。株主が、株主総
会開催の少なくとも14日前までに、会社に対し、反対提案をその理由書とともに送付するか又は選択提案を
送付した場合には、会社は、かかる提案を(それに対する会社の意見(もしあれば)とともに)株主に伝達する
ようにしなければならない。選択提案の場合、取締役会はさらに、監査役会によって満たさなければならな
い最低定数の要請に従った要件に関する追加情報を提供しなければならない。
各株主は、当該情報が議題の適切な判断に必要な場合に限り、株主総会において、取締役会に対して会社
の業務に関する質問について回答を求めることができる。株式会社法第131条第3項に定める一定の事由(例
えば回答することが会社に相当の不利益を与える場合)がある場合は、取締役会は回答を拒否することがで
きる。
株式に伴う議決権は、株主が自ら又は株主が選任した代理人を通じて行使することが可能である。株主
は、会社が指名する代理人の任命を選択することもできる。
代理人が金融機関、持株会又は株式会社法第135条の範囲に含まれる「その他の者」に該当する場合、株
式会社法によれば代理権限を付与するために書面が必要とはされておらず、また定款にはかかる場合につい
て定めた特別の規定は置かれていない。それゆえに、上述の金融機関、持株会及びその他の者は代理人選任
の様式を用意し、かかる様式は代理権限の付与に適用される法定の規定(特に株式会社法第135条に含まれる
規定)を遵守していれば足りる。
代理人が金融機関、持株会又は株式会社法第135条の範囲に含まれる「その他の者」のいずれにも該当し
ない場合、当該代理人の代理権は、書面により付与されなければならない。ドイツテレコム・アーゲーの定
款に従い、代理権の授与及びその取消し並びに権限の証拠は、かかる目的のために当社がパスワード制御さ
れたインターネット・ダイアログを提供する場合、又はその場合に限って、当該パスワード制御されたイン
ターネット・ダイアログを利用することにより当社に送付することもできる。
株主総会の決議は、行使された議決権の過半数によって行うことができる。定款は、額面金額いくらに対
し1個の議決権を付与するかを規定する。一定の場合(例えば定款変更、増資、減資、解散、事業会社との
間の契約の承認等の場合)には、法律により総会において決議が議決権の4分の3の多数でなされることが
要求される。但し、いくつかの例外(例えば会社の目的の変更、増資の際の新株引受権の排除、減資等)の場
合を除き、かかる4分の3の多数要件を定款で行使された議決権の過半数までに軽減することができる。
株式が証券取引所に上場されている場合、株主総会については公証人により議事録を作成することが要求
される。かかる議事録には投票の結果が記載されなければならない。議事録は、商業登記所に提出される。
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計算、純利益処分
取締役会は、事業年度終了後3か月以内に、年次貸借対照表及び損益計算書(年次財務書類)、前事業年度に
ついての年次営業報告書並びに連結財務書類及びグループ経営報告書(該当する場合)を作成し、これを独立監
査人に提出しなければならない。年次財務書類及び連結財務書類は、適正会計の原則に従っていなければなら
ず、簡潔かつ記載漏れがなく、また会社の財政状態及び営業成績を偽りなく表示するものでなければならな
い。会社は法定準備金を積み立てなくてはならず、その積立ては下記のもの等から成る。
( イ)前期繰越損失額を減じた当期純利益の5%(当該準備金が定款記載の株式資本の10%以上に達するまで)
( ロ)新株発行の際の額面超過額
( ハ)転換社債又は新株引受権付社債の発行価額のうち当該社債の償還額を上回る部分に相当する金額
( ニ)株式に対する優先権の対価として株主が支払ったプレミアム額
法定準備金の使用は制限されており、基本的には欠損填補の場合に限られる。
会社が自社株を購入する場合、当該株式の簿価と同額の自己株式準備金の設定が可能でなければならない。
法定準備金のほか、他の公示積立金を設定することができ、株式会社法及び定款の規定の範囲内で、会社の
純利益の一部又は全部をかかる他の公示積立金に組み入れることができる。
取締役会の報告書には、営業状況及び会社の状態を記載するとともに事業年度終了後に生じた事象で特に重
要なものも報告することを要し、さらに年次財務書類及び連結財務書類について説明しなければならない。
帳簿及び取締役会の報告書を含む年次財務書類並びに連結財務書類及びグループ経営報告書は、監査役会の
提案に基づき株主総会で選任された独立監査人の監査を受けなければならない。当該監査人は、監査の結果を
書面で報告する。かかる監査の最終結果に基づき異議のない場合、当該監査人は、当該年次財務書類に承認の
付記をすることによりその旨確認する。承認の付記についてはその文言が法律(商法典第322条第3項)により
規定されている。
監査役会は、年次財務書類、取締役会の報告書、連結財務書類及びグループ経営報告書と併せて取締役会の
純利益処分案を監査しなければならない(上記参照のこと。)。監査役会は、監査の結果を書面で株主総会に報
告しなければならない。さらに、監査役会は、独立監査人による年次財務書類及び連結財務書類の監査結果に
ついて意見を述べなければならない。監査役会は上記報告書の末尾に、その監査の最終結果に基づき異議を申
し立てるべきか否か、並びに取締役会の作成した年次財務書類及び連結財務書類を承認するか否かを記載する
ことを要する。監査役会が年次財務書類及び連結財務書類を承認すれば、当該年次財務書類及び連結財務書類
は確定する。但し、取締役会及び監査役会が、かかる確定を株主総会に委ねる旨を決定した場合はこの限りで
ない。通常は、取締役会及び監査役会がかかる確定を株主総会に対して委ねることはない。
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純利益処分案
株主総会は、純利益処分案について決議しなければならないが、この場合、確定された年次財務書類に拘束
される。
配当は、年次財務書類における処分済み純利益(Bilanzgewinn)のみを原資として宣言され、支払われる。年
次財務書類は取締役会及び監査役会の決議により、確定・承認される。年次財務書類の確定に際し、取締役会
及び監査役会は、法定準備金及び繰越損失額へ割り振った金額を控除した後の年次剰余金(Jahresüberschuss)
の特定部分(株式会社法第58条第2項に従い定款で定義することができる。)である利益準備金(andere
Gewinnrücklagen)に配分することができる。
公告及び提出義務
年次財務書類、取締役会の報告書、連結財務書類、グループ経営報告書、監査役会の報告書及び取締役会の
純利益処分案は、株主総会招集日以降、会社の本店内で株主の閲覧に供せられる。要求があればかかる書類の
写しが株主に提供される。これらの義務は、かかる書類が同期間中に当社のインターネットのページにて閲覧
可能な場合には適用されない。会社は、これらの書類を、株主総会議案、株主によって提出された当該提案に
係る議案に対する異議及び監査役に関する代替の指名案(これらは一般に入手可能にする必要がある。)並びに
株主総会に関するその他の書類とともに自社のインターネット・サイトにおいても公表する。通常は、連結財
務書類、グループ経営報告書、及び監査役会の報告書は会社の年次報告書に含まれ、かかる報告書は株主その
他の利害関係者に提供される。
取締役会は、事業年度終了後4か月以内に、特に独立監査人の承認の付記がなされた年次財務書類、連結財
務書類、取締役会の報告書、グループ経営報告書及び監査役会の報告書並びにドイツ企業統治基準を遵守して
いるか否かを説明するものを連邦官報に提出しなければならない。一定の形式上の要件を除き、連邦官報のオ
ペレーターは、当該年次財務書類及び取締役会の報告書が法律及び定款の規定に従っているか否かを審査する
必要はない。
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(2) 【提出会社の定款等に規定する制度】
株 式
2019 年12月31日時点で、当社の資本金は12,189,334,005.76ユーロであり、かかる資本は、無額面株式
4,761,458,596株に分割される。当社の株式は全て記名式であり、また自由に譲渡することが可能である。
株 主
( イ)株主総会
株主総会は、各事業年度の最初の8か月以内に開催されなければならない。
全ての株主に対して定時株主総会に出席する権利が付与されており、同総会は取締役会によって招集さ
れる。当該総会の招集は、株主総会から少なくとも30日前に公告される(周知期間)。定款により登録が必
要とされる場合には、上述の周知期間は申込期間の日数に応じて延長されるものとする。株主による株主
総会への登録最終日は、「登録締切日」として定義される。
株主総会は、定款に別段の規定がない限り、当社の登記上の本店所在地又はドイツの証券取引所の所在
地において開催される。ドイツテレコム・アーゲーの定款に従って、株主総会は人口が250,000人を超え
るドイツの都市においても開催することができる。さらに、取締役会は、株主総会の全て又は一部を、音
声及びビデオによって放送することを許可する権限を有する。
定時株主総会の議長は、特定の人が務めなければならないと規定する法的規制はない。ドイツテレコ
ム・アーゲーの定款に従って、定時株主総会の議長は監査役会の会長が務める。会長が出席できない場合
には、監査役会が決定したその他の監査役が株主を代表して議長を務めるものとする。
( ロ)参加権及び議決権
各無額面株式毎に株主総会における1個の議決権が付与され、行使される。
当社の定款第16条は、株主の参加権及び議決権について以下の通り規定している。
「(1) 株主名簿に登録されており、かつ、当社に対して適時に登録をした全ての株主は、株主総会
に参加する資格及び株主総会で議決権を行使する資格を有する。株主は、また、かかる目的の
ために当社がインターネット・ダイアログを提供する場合、又はその場合に限って、インター
ネット・ダイアログを利用することにより、当社に登録を行うことができる。当社は、株主総
会招集の際にかかる目的のために規定される住所において、遅くとも株主総会の6日前までに
登録を受理しなければならない。取締役会、又は監査役会によって招集される場合は監査役会
は、株主総会招集通知において、日数で示されるより短い登録期間を定めることが可能であ
る。登録期間は、株主総会の日又は登録の受理日を含まない。
(2) 議決権は代理人により行使することができる。代理人の選任が株式会社法第135条に該当しな
い場合は、当社又は当社が選任する代理人への宣言の方法による代理人の選任、当該代理人の
取消し及び当該権限の証拠の当社への送付も、かかる目的のために当社がインターネット・ダ
イアログを提供する場合、又はその場合に限って当該インターネット・ダイアログを利用して
行うことができる。但し、代理権の付与、その取消し及び権限の証拠の当社への送付に関して
既に法律により直接規定されているいかなる形式も制限するものではない。
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(3) 取締役会は、株主が各開催地に出席せずまた代理人なしで、電子通信の方法によっても総会
に参加し、その権利の全て又は一部を完全に又は部分的に行使できることとする権限を有する
(オンライン参加)。
(4) 取締役会は、株主が総会に出席することなくして、書面又は電子通信の方法によっても投票
できることとする権限を有する(不在投票)。」
( ハ)決 議
当社の定款に従って、決議は、強行法規の規定に別段の定めがある場合を除き、投票数の過半数により
可決される。法律により、過半数の投票に加え、過半数の株式所有も要求されている場合には、決議時に
おける株式所有の過半数により可決される。
会社の機関
( イ)取締役会
取締役会は少なくとも2名の構成員により構成されるが、その員数は監査役会によって決定される。監
査役会は、取締役会の会長及び副会長を任命することができる。取締役は、電気通信、経済又は事業経営
についての優れた専門家でなければならない。
取締役会は、監査役会によって承認された手続規則及び職務権限分担に従ってその業務を遂行する。取
締役会は、全会一致によって手続規則を採択するものとし、同規則は監査役会の同意を必要とする。
取締役会は、以下の例を含む一定の行為については、監査役会の同意を得なければならない。
- 当社又は当グループの純資産、財政状態及び業績又はリスク・エクスポージャーを根本的に変える
ような、当社又は株式会社法第16条乃至第18条に定義されるその関連会社の決定又は施策。かかる
施策には、その経営構造に影響を及ぼすもの並びに、新しい業種の開始、既存の業種の停止又は重
要な業種についての実質的な制約に影響を及ぼすものが含まれる。
- 設立、解散、企業、企業の一部及び議決権付株式の買収又は売却、並びに当社が直接所有する株式
の変更(特定の措置の価値が総額125,000,000ユーロを超える場合)。
当社は、2名の取締役によって又は取締役1名とプロクリスト1名(「プロクリスト」とは、商法典第
48条の「プロクラ」と称される一般的な商業上の代理権を有する者をいう。)との共同によって法律上代
表される。
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( ロ)監査役会
監査役会は、20名の監査役によって構成される。10名の監査役は共同決定法の規定に従って当社の従業
員により選任される。現在従業員を代表する監査役は、2018年11月に会社の代表者による集会によって選
任されたか、又は裁判所によって選任された。
他の監査役は株主総会によって選任される。いずれの監査役の任期も、就任後4事業年度目に係る当該
監査役の活動の正式な承認を行う株主総会の終了までとする。就任時期の属する事業年度は、前述した任
期の計算からは除かれる。
監査役会は、共同決定法の規定に従って、監査役会の会長及び副会長を選任する。
共同決定法第27条第3項により要求される調停委員会に加えて、ドイツテレコム・アーゲーの監査役会
は、当社の独立監査人が株主総会において承認を受けた時点で、その正式な雇用を取り扱う監査委員会を
設置している。監査委員会はまた、会計、リスク管理、コンプライアンス並びに監査人の選定及び独立性
に関する諸問題を扱っている。加えて、監査役会は、その業務を促進するために他の委員会を設置してい
る。すなわち、総務委員会、財務委員会、従業員委員会、指名委員会、技術革新委員会、米国事業のため
の特別委員会及びドイツにおける周波数帯取得に係る特別委員会(2019年1月1日以降)である。
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2 【外国為替管理制度】
国際連合、欧州連合(以下「EU」という。)及びドイツ経済エネルギー省により採択された適用のある決議によ
り、特定の地域、企業又は人物に関する限定的な禁輸状況を除けば、現在、ドイツでは国際間の資本移動及び外
国為替取引に関して法的な制限は存在しない。現在のところ、とりわけシリア、エジプト、リビア、ジンバブ
エ、ロシア、ウクライナ、スーダン、ソマリア、イラン及びイラクに関する制限が存在している。ドイツ連邦銀
行 ( ド イ ツ 中 央 銀 行 )(Deutsche Bundesbank) は 、
https://www.bundesbank.de/de/service/finanzsanktionen/sanktionsregimes上で、金融制裁プログラムに関す
る情報を公開している。
但し、統計上の目的から、国境を越えた通貨移動を伴う取引に関しては、限定的な報告義務が課されている。
いくつかの例外を除いて、ドイツ国内に拠点のある法人又はドイツ国内に居住する個人は全て、ドイツ連邦銀行
に対して、(ⅰ)非居住者から12,500ユーロ(又は外貨による相当額)を超える支払いを受領し、又は非居住者に対
して12,500ユーロ(又は外貨による相当額)を超える支払いを行う場合、及び(ⅱ)居住者たるノンバンクは、月末
時点における非居住者に対するその債権合計額又は債務合計額が5百万ユーロ(又はそれに相当する額。)を超え
る場合に、当該債権及び債務について報告する義務を負う。支払いは、口座引き落とし、小切手及び手形を用い
て行われる現金支払、ユーロ建て及びその他の通貨建ての送金、並びにネッティング及び決済協定を含む。さら
に、居住者たるノンバンク(個人を除く。)は、非居住者に対するデリバティブ金融商品から生じる債権又は債務
が500百万ユーロを超える場合、当該非居住者に対する債権及び債務を報告しなくてはならない。
居住者たる法人及び個人は、資本金に対する持分又は議決権保有比率が10%又はそれ以上である場合、かつか
かる投資企業の貸借対照表合計が3百万ユーロ(又はそれに相当する額。)を超える場合には、その外国エクイ
ティ投資について毎年報告する義務を負う。
報告義務に関する詳細は、https://www.bundesbank.de/en/service/reporting-systems上で入手可能である。
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3 【課税上の取扱い】
ドイツテレコム・アーゲーの株式の購入を予定する者は、ドイツ、日本国及び居住する各国の税法に基づく、
当該株式の購入、保有及び処分の税効果(あらゆる国税及び地方税の効果を含む。)について、各自の税務顧問に
助言を求めるべきである。
(1) ドイツの課税上の取扱い
ドイツテレコム・アーゲーによって日本国の株主に支払われる配当金は、通常、25%の源泉課税(資本配当
税(Kapitalertragsteuer))及び支払課税額の5.5%の連帯付加税(総課税割合は26.375%)の対象となる。配当
金がドイツ法人税法(steuerliches Einlagekonto)第27条の意味する範囲内のいわゆるドイツ税金拠出勘定
(German tax contribution account)から支払われる場合、当該支払いからは一切のドイツの源泉課税を徴収
(注)
されない 。所得に対する租税及び他の一定の租税に関する二重課税の回避、並びに脱税の防止のための、
日本国とドイツとの間の協定に従い、配当を行う会社の議決権を10%未満保有する株主の源泉課税率が15%に
引き下げられる。この引下げは、特別課税を含む法定レートと当該条約の適用レートの差額の還付によって行
われる。還付のための届出書はドイツ、ボンD - 53225、アンデルクッペ1の連邦税務庁に提出されなければ
ならない。当該届出書の提出期間は配当金を受領した年から第4暦年目の末日までに限定されている。残りの
15%の源泉徴収分は日本国において外国税額控除の適用を受けられる。
日本国居住者(及び特にドイツの税法上の非居住者)が得るドイツテレコム・アーゲーの株式の売買益は、ド
イツの所得税の対象とならない。
日本国居住者(ドイツ国民ではない。)が所有するドイツテレコム・アーゲーの株式に関するドイツの相続税
(Erbschaftsteuer)は、当該日本国居住者がドイツテレコム・アーゲーの株式の10%以上を所有する場合、又
は相続人がドイツ居住者であるか若しくはドイツ国民である一定の場合に限り課税される。またドイツの資産
税(Vermögensteuer)は、現在ドイツでは課されていない。
(注) 2020 年 6 月 19 日付の株主総会決議に基づいて、ドイツテレコム・アーゲーの株主に支払われる配当金は、一切の
ドイツの税金を源泉徴収されることなく支払われる。
(2) 日本の課税上の取扱い
所得税法、法人税法、相続税法及びその他の日本の関連法令に従いかつその制限の下で、日本国居住者又は
内国法人は、適用ある租税条約に従い、上記で述べたところに従って個人又は法人の各所得について(また個
人については相続についても)支払ったドイツ税額につき日本の税務当局に税額控除を請求することができ
る。
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4 【法律意見】
ドイツにおける当社のヴァイス・プレジデント兼法律顧問であるDr.ウルリヒ・ツヴァッハ及び当社のシニ
ア・リーガル・カウンセルであるディルク・ラングナーより、次の趣旨の法律意見書(ドイツの税法に関する事
項を除く。)が提出されている。
( イ) 当社は、ドイツ法に基づく会社として適法に設立され有効に存続しており、有価証券報告書に記載された
通り事業を営み、財産を所有し管理するための完全な法的権能及び権限を有している。
( ロ) 当職の知りかつ信ずるところによれば、有価証券報告書に記載されたドイツ法(税法を除く。)に関する事
項についての記述は真実かつ正確である。
ドイツにおける当社のグループ税務担当シニア・ヴァイス・プレジデントであるDr.クリスチャン・ドーレン
カンプより、当職の知りかつ信ずるところによれば、有価証券報告書に記載されたドイツの税法に関する事項に
ついての記述は真実かつ正確である、との趣旨の税務意見書が提出されている。
上記意見書は、ドイツの法律に基づいて交付されたものであり、ドイツの法律に従ってのみ解釈及び適用され
なければならない。
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第2 【企業の概況】
1 【主要な経営指標等の推移】
( イ)次の表は、最近5事業年度における当グループの連結ベースの主要な経営指標等の推移を示す。
12月31日に終了した年度
2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
営業収益(十億ユーロ)
69.2 73.1 74.9 75.7 80.5
営業損益(EBIT)(十億ユーロ) 7.0 9.2 9.4 8.0 9.5
当期純利益(損失)(十億ユーロ) 3.3 2.7 3.5 2.2 3.9
資本金(十億ユーロ) 11.8 12.0 12.2 12.2 12.2
年次報告書の提出日時点における普通
4,607 4,677 4,761 4,761 4,761
(注)
株式総数(百万株)
株主持分(十億ユーロ) 38.2 38.8 42.5 43.4 46.2
総資産(十億ユーロ) 143.9 148.5 141.3 145.4 170.7
1株当たり純資産-基本及び希釈化後
8.3 8.3 8.9 9.1 9.7
(ユーロ)
1株当たり利益(基本及び希釈化後)
0.71 0.58 0.74 0.46 0.82
(ユーロ)
平均従業員数
226 221 216 216 213
(訓練生を除くフルタイム当量)(千名)
(注) ドイツテレコム・アーゲーが保有する自己株式を含む。
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( ロ)次の表は、最近5事業年度における当社の単体ベースの主要な経営指標等の推移を示す。
(1)
12月31日に終了した年度
2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
営業収益(十億ユーロ)
3.3 3.9 3.6 3.5 3.4
経常利益(十億ユーロ) 2.2 2.2 5.1 4.3 2.3
当期純利益(十億ユーロ) 1.9 2.0 4.9 4.2 1.8
資本金(百万ユーロ) 11,793 11,973 12,189 12,189 12,189
発行済株式総数(百万株) 4,607 4,677 4,761 4,761 4,761
株主持分(十億ユーロ) 54.9 55.4 58.9 60.0 58.5
総資産(十億ユーロ) 105.8 103.2 121.3 122.2 124.1
(2)
52 54 49 49 47
自己資本比率(%)
1株当たり純資産(ユーロ) 11.92 11.86 12.38 12.61 12.28
ドイツGAAPに基づく1株当たり当期純
0.41 0.44 1.04 0.88 0.37
(3)
利益-基本(ユーロ)
年間平均従業員数
27 23 21 19 18
(訓練生を除く常勤者)(千名)
注(1) ドイツGAAPに基づいている。
(2) 株主持分の合計を総資産で除した比率。
(3) 当期純利益(損失)を発行済普通株式数の加重平均で除したものを基準としている。
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2 【沿革】
歴史的背景
当グループは、総合電気通信事業者であり、世界中の当グループの顧客に対して、電気通信事業及びIT分野
における最先端サービスの包括的なポートフォリオを提供している。
ドイツにおける公共の電気通信サービスの提供は、従前の連邦共和国憲法の規定に従い、長い間国家により
独占されていた。1989年に、連邦共和国は、従前はかかる事業の独占的供給業者に管理されていた郵便、電話
及び電信サービスを市場原理に基づく事業に変換し、従前の独占的事業をその路線に従って3つの独立した企
業に分割した。これらのうちの1つが、当グループの前身であるドイツ・ブンデスポスト・テレコムであっ
た。同時に連邦共和国は、ドイツの電気通信市場の自由化を開始した。当グループは、1995年1月1日に、民
営の株式会社に組織変更された。
ドイツでは、1996年8月1日に、公共の固定回線音声電話を除く全ての電気通信サービスに関するネット
ワークの運営(ケーブル・ネットワークを含む。)が自由化された。これは、ドイツの電気通信分野の規制に関
する新たな法的枠組みである電気通信法が施行された時であった。電気通信法で義務付けられ、欧州委員会か
ら指令を受けたため、ドイツの電気通信分野は、公共の固定回線音声電話サービスが競争にさらされるように
なったことを通じて、1998年1月1日にさらに自由化された。以来、当グループは激しい競争に直面してお
り、特に、当グループの固定回線ネットワークへのアクセスを、規制された相互接続料金で競合会社に提供す
ることを義務付けられている。当グループの固定回線事業における競争に対する規制がもたらす影響に関する
詳細は、「第3 事業の状況-3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の
項を参照のこと。
当グループの事業の発展における2015年1月1日以降の重要な事象は下記の通りである。
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スカウト24・アーゲー( Scout24 AG )( 以下「スカウト24・アーゲー」という。)のIPO - 2015年10月1日のス
カウト24・アーゲーのIPOに関連して、ドイツテレコムは1株30.00ユーロで総額13.3百万株の同社株式を売却
し、約4億ユーロの現金を受け取った。持分法により連結財務書類に組み込まれていた、かかる株式売却によ
る利益は、約3億ユーロに上り、その他の営業利益として開示された。ドイツテレコムは依然としてスカウト
24・アーゲーの株式の、約13.4%を保有し続けた。監査役会及びその中心的な2つの委員会において役員を有
することで、ドイツテレコムはスカウト24・アーゲーの財務及び事業方針に対して重大な影響力を有してい
た。その結果、ドイツテレコムはかかる投資を持分法を用いて関連会社として連結財務書類に計上し続けた。
2015 年5月19日に、当グループは、スロバキアテレコムにおける未所有であった残りの49%の株式を取得す
るために、買取価格9億ユーロの買取契約に合意した。株式は、以前はスロバキア共和国の国有財産基金
(National Property Fund)によって保有されていた。契約の一部として、買取価格のうち1億ユーロは特定の
リスクをヘッジするため、一定の期間、信託口座に支払われた。2015年6月18日に取引は完了した。かかる取
引は監督当局による承認を要しなかった。スロバキアテレコムは、既に当グループのヨーロッパ事業セグメン
トに完全に連結されていた。
2015 年7月1日に、 マケドニア旧ユーゴスラビア共和国における当グループの子会社である、マケドンスキ
テレコム(Makedonski Telekom)(以下「マケドンスキテレコム」という。) 及びTモバイル・マケドニア(T-
Mobile Macedonia)(以下「Tモバイル・マケドニア」という。)は、一つの会社となった。このために当グルー
プはTモバイル・マケドニアを マケドンスキテレコム に併合した。2015年7月に、アルバニアにおける当グ
ループの子会社である、アルバニアン・モバイル・コミュニケーションズ(Albanian Mobile Communications)
はテレコム・アルバニア(Telekom Albania)に名称を変更した。ヨーロッパにおける当社の影響力の及ぶ12か
国目であるアルバニアは「マゲンタ」となり、ドイツテレコムブランドとしてのアイデンティティ並びに革
新、能力及び実直さといった価値を得た。
• オンラインde(t-online.de)及びインタラクティブ・メディア(InteractiveMedia)の売却―2015年11月2日
に、ドイツテレコムは、Tオンラインde&オーディエンス・プロダクツ( T-Online.de & Audience Products ) の
事業分野(子会社であるデジタル・マーケティング会社のインタラクティブ・メディア CCSP GmbH
(InteractiveMedia CCSP GmbH ) を含む。)から構成されるデジタル・メディア・プロダクツ GmbH ( Digital
Media Products GmbH ) への投資の100%をストローアーSE(Ströer SE)(以下「ストローアー」という。)に売却
した。売却は、現金以外による出資と引き換えに、増資の形で行われた。ドイツテレコムは、新たに発行され
た約3億ユーロ相当のストローアーの株式を見返りに受け取った。全ての取引完了条件の効力が発生した後、
かかる持分は、同社が増加した株式資本の約11.6%に相当していた。ドイツテレコムは、ストローアーの監査
役会において1議席有している。2016年2月25日時点で、ドイツテレコムは、ストローアーの監査役会におい
ては全部で3議席中1議席を有しており、2017年6月29日現在、監査役会に株主代表として6議席中2議席を
有している。ドイツテレコムは、ストローアーの監査役会において20%超の議決権を有することから、同社の
財務及び事業方針に対して重大な影響力を有している。その結果、ドイツテレコムはかかる投資を持分法を用
いて関係会社として連結財務書類に計上している。売却による総利益は3億ユーロに上り、かかる利益はその
他の営業収益に計上された。ストローアーは、グループ開発事業セグメントに属している。
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2016 年1月に、EEジョイント・ベンチャー(EE joint venture)(以下「EEジョイント・ベンチャー」とい
う。)の英国企業であるBTへの売却について、英国の競争・市場局(Competition and Markets Authority
(CMA))によって無条件かつ改善措置を課されずに承認されたのち、ドイツテレコム・アーゲー及びフランスの
電気通信事業者のオレンジは、132億英国ポンドの調整された買取価格で2016年1月29日に取引を完了した。
EEジョイント・ベンチャーの株式と引き換えに、ドイツテレコム・アーゲーはBTにおける金融持分12.0%及び
15.7百万英国ポンドの現金支払を受け取った。合計で、かかる売却は約25億ユーロの収益を生み出した。この
うち、約9億ユーロは前年までに株主持分で直接認識された影響により生じた。さらに、2016年1月25日に、
ドイツテレコムが当時50.0%の持分を有していたことから、株主はEEジョイント・ベンチャーから合計3億英
国ポンドを最後の配当金として受領した。かかる取引によって受領したBTの金融持分は、その他金融資産の下
で売却可能な金融資産として計上された。金融持分は、一般的に株主持分において直接に公正価値で計算され
る。2017年12月31日時点で、約15億ユーロ相当のこの持分についての減損が損益に認識された。これは、個々
のケースの状況により、評価価値の下落が市場関係者による恒久的な評価を反映すると考えられたためであ
る。
2016 年12月、当グループは、当グループのホスト・サービス・プロバイダーであるシュトラート(Strato)を
ユナイテッド・インターネット・アーゲー(United Internet AG)に約6億ユーロの売却価格で売却することに
合意した。当グループは、主管当局からの承認を受けて、2017年3月31日深夜零時を効力発生時点として、6
億ユーロの売却価格でその売却を完了した。シュトラート(Strato)の売却は、協力又は処分を通して、当グ
ループ内でもはや適切に開発することのできない事業分野の価値を高めるためのその他の選択肢を発展させる
当グループの戦略に沿っている。
2016 年4月、当グループは、1株30.00ユーロの価格で、スカウト24・アーゲーの約2.6百万株を発行した。
2016年12月、別のブック・ビルディング手続で、1株当たり32.00ユーロの価格で1.8百万株を市場に売り出し
て、合計1億ユーロの総収入を得た。2017年6月23日付のアクセラレイテッド・ブックビルディング手続にお
いて、当グループはスカウト24・アーゲーの残りの9.26%の直接的な持分を1株当たり32.20ユーロで市場で
売り出した。これは、その時点までは、連結財務書類において持分法で計上されていた。かかる売却による収
入は319百万ユーロに上った。
デーテー・メディエン(DeTeMedien)(以下「デーテー・メディエン」という。)の中規模出版社のコンソーシ
アムへの売却は、2017年6月14日に完了した。売却価格は、契約に従って開示されないが、現金部分及び追加
的要素(加入者情報料金の水準に関して数年間にわたって訴訟を起こしていた購入者との係争の和解金を含
む。)によって構成されている。加えて、出版社は加入者名簿を公表する義務を引き受けた。
2017 年11月9日、TモバイルUS(T-Mobile US)は、オンライン・テレビ・プロバイダーのレイヤー3 TV
(Layer3 TV)の100%の持分を取得する契約を締結した。この契約には、約325百万米ドルの現金購入価格が含
まれていた。この取引は、2018年1月22日に完了した。TモバイルUSは、テレビ及びビデオのポートフォリオ
を一層強化するための買収を予想しており、その計画には自社のテレビ・サービスを2018年に展開することが
含まれている。
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2017 年12月15日に、当グループは、電気通信プロバイダーのテレ2ネザーランド(Tele2 Netherlands)のTモ
バイル・ネザーランド(T-Mobile Netherlands)による買収に関して、テレ2グループ(Tele2 Group)との契約を
締結した。2018年11月27日、欧州委員会は、Tモバイル・ネザーランド(T-Mobile Netherlands)によるテレ2ネ
ザーランド(Tele2 Netherlands)の買収を承認し、この取引は2019年1月2日に完了した。買収日以降、テレ2
ネザーランド(Tele2 Netherlands)は、当グループの連結財務書類における連結の範囲に含まれている。この
取引は、オランダ市場における収束固定ネットワーク及びモバイル・サービスのより強力でより持続可能なプ
ロバイダーを確立させることになる。
2017 年12月22日に、Tモバイル・オーストリアは、オーストリアの大手ケーブル事業者であるUPCオーストリ
ア(UPC Austria)をリバティ・グローバル(Liberty Global)から買収することで合意した。この取引は2018年
7月9日に欧州委員会の承認を受け、2018年7月31日に完了した。買収価格である18億ユーロは、現金で支払
われた。買収日以降、UPCオーストリア(UPC Austria)グループは、当グループの連結財務書類における連結の
範囲に含まれている。当グループの戦略に沿い、この買収によって当グループはヨーロッパ市場の顧客に収束
製品(convergent product)バンドルを提供できるようになる。
2018 年3月、当グループは、ギリシャの民営化機関であるギリシャ共和国資産開発基金(Hellenic Republic
Asset Development Fund(HRADF))からの要請を受けて優先先買権を行使し、ギリシャの子会社であるOTEの株
式の5%を取得した。この取引は、3億ユーロ分の追加的な株式取得により、2018年5月に完了した。その結
果、当グループは、同社株式の約45%を保有している。
2018 年4月、TモバイルUSの大株主であるドイツテレコム・アーゲー及びスプリント・コーポレーション
(Sprint Corp.)(以下「スプリント」という。)の大株主であるソフトバンク株式会社(Softbank K. K.)(以下
「ソフトバンク」という。)とともに、TモバイルUS及びスプリントは、企業結合についての拘束力のある契約
を締結した。ニューヨークの連邦地方裁判所は、2020年2月11日にTモバイルUS及びスプリントの合併を承認
し、当該取引は同年4月1日に完了した。TモバイルUS及びスプリントという2つの会社が合併することで、
全く新しく、規模の大きくなったTモバイルUS(以下「新TモバイルUS」という。)が誕生した。新TモバイルUS
は、2020年4月時点で、連結完全子会社としてドイツテレコムの連結財務書類における連結の範囲に含まれ
る。この取引は、約2年間にわたり、裁判所及び当局が関与する多様な承認過程を経て進められてきた。新T
モバイルUSは、合併後、より多くの顧客、より強固な金融資産及び米国市場の全ての競合会社の中で最大のモ
バイル周波数帯のポートフォリオによって、大きく成功しているアンキャリア戦略を引き続き強化する。
OTEは、2019年1月15日に、ブルガリア企業のアルバニア・テレコム・インベストAD(Albania Telecom
Invest AD)に対して、購入価格50百万ユーロでテレコム・アルバニア(Telekom Albania)の持分を売却する契
約を締結した。この取引は当局の承認を受け、2019年5月7日に完了した。
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当グループは、戦略の柱とする「事業生産性におけるリード(Lead in business productivity)」を実行す
る取り組みに合わせて、2020年にドイツの事業セグメントに総合B2B事業部門を新設することにより、法人顧
客向けの電気通信オペレーションを再編する計画である。新設されるこの部門は、テレコム・ドイチュラント
GmbH (Telekom Deutschland GmbH)( 以下「テレコム・ドイチュラントGmbH」という。) の既存の法人顧客部門並
びにTシステムズ ・インターナショナルGmbH(T-Systems International GmbH)(以下「Tシステムズ」という。)
のTCサービス部門及びクラシファイドICT部門で構成される。但し、クラシファイドITプロジェクト事業に割
り当てられた様々な活動は除外される。さらに、会社法に基づき、現在はドイツテレコム・アーゲーに帰属す
るドイツテレコム・グローバル・キャリア部門は、ドイツ事業セグメントのテレコム・ドイチュラントGmbHに
移管される。また、セキュリティ及びモノのインターネット(Internet of Things)の2つのポートフォリオ部
門は法律上独立したグループ事業体となる。この措置の一環として追加的な人員削減は予定していない。
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買収及び売却
次の表は最近3事業年度間において当グループが行った主要な買収(購入価格)及び売却(その他の営業収益
として記載される)をそれぞれ示している。
年 度 セグメント 事 象 金 額
(十億ユーロ)
2020年 米国 TモバイルUS及びスプリントの合併 該当なし
OTEが所有していたテレコム・アルバニア(Telekom
2019年 ヨーロッパ 0.05
Albania)の持分の売却
テレ2ネザーランド(Tele2 Netherlands)の取得
2019年 グループ開発 0.2
2018年 米国 スプリント取得の合意 該当なし
2018年 ヨーロッパ UPCオーストリア(UPC Austria)の取得 1.8
2018年 ヨーロッパ 当社のギリシャの子会社であるOTEの株式5%の取得 0.3
レイヤー3 TV(Layer3 TV)の取得
2018年 米国 0.3
2017年 グループ開発 スカウト24・アーゲーの残余持分9.26%の売却 0.2
グループ本部・グルー
2017年 デーテー・メディエンの売却 -
プ事業
ホスト・サービス・プロバイダーであるシュトラート
2017年 グループ開発 0.5
(Strato)の売却
日本における活動
下記はティー・システムズ・ネットワーク・サービス・ジャパン株式会社に関する情報である。
「ティー・システムズ・ジャパン株式会社」は、2002年1月1日に旧法人「ドイツテレコム株式会社」
(1990年4月12日に設立)をもとに設立された。2002年4月1日以降、「ティー・システムズ・ジャパン株式会
社」は、当社の100%子会社であるTシステムズの100%子会社である。2016年3月15日以降、その会社の名称
は、「ティー・システムズ・ネットワーク・サービス・ジャパン株式会社」である。
設立年月日 : 1990年4月12日
資本金 : 10百万円
代表取締役 : ミヒャエル・ベゼッケ
従業員数 : 5名(2019年12月31日時点)
日本において提供 : ティー・システムズ・ネットワーク・サービス・ジャパン株式会社は、小規模
するサービス及び な日本国内のネットワーク・サービスを中心とする事業体である。それは、
製品 VPNサービス及びインハウス・サービス(TCポートフォリオ - 企業ネットワー
ク)を提供する。
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3 【事業の内容】
(1) 会社の目的
事業目的は、ドイツ国内外において、電気通信、情報技術、マルチメディア、情報及びエンターテインメン
ト(ギャンブル又はくじを事業とするものを含む。)、セキュリティ・サービス、販売及び仲介サービス、電子
バンキング、電子マネー及びその他の支払ソリューション、集金代行、ファクタリング並びにレセプション及
び監視の全分野、並びにこれらの分野に関連するあらゆるサービス、並びにこれらの関連分野に従事すること
である。
当社の事業目的は、特に、前述の分野に関連する企業の事業に従事することであるが、それのみではなく、
ベンチャー・キャピタル持分の取得、保有、管理及び売却を含む、ベンチャー・キャピタルの分野の事業に従
事することも含んでいる。さらに、当社の事業目的は、当社の定款第2条第1項第1文に規定される分野に関
連する再保険の領域に従事することであるが、かかる活動は、当社自身によって直接に行われてはいけない。
さらに当社は、上記の事業目的に資するに適切と考えられるその他一切の取引を締結し、その他一切の施策
を行うことができる。また、当社はドイツ国内外において、同一又は類似するその他の事業を設立し、取得し
かつそれらに参加することができる。また、当社はかかる事業を経営し、又は自らの参加について制限を設け
ることができる。当社は関係企業に自らの事業の全部又は一部を分離することができる。
(2) 事業の内容
当社の主要な事業は電気通信サービスの提供である。詳細は、「第3 事業の状況」の項を参照のこと。
(3) 事業内容の変更等
本書に別途記載のあるものを除き、2019年12月31日以降、当社の事業内容に重要な変更はなかった。
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4 【関係会社の状況】
(1) 親会社の状況
当社に親会社は存在しない。
(2) 子会社の状況
主要子会社は次の表の通りである。
当社持分割合 株主持分 2019年度 2019年度
名称及び本店所在地 2019年12月31日 2019年12月31日 営業収益 従業員数
(%) (百万ユーロ) (百万ユーロ) (年間平均)
テレコム・ドイチュラントGmbH (ボ
100.00 6,723 21,617 3,573
ン、ドイツ)
TモバイルUSインク (べルビュー、
62.85 30,327 40,420 46,544
(1)(2)
ワシントン、米国)
Tシステムズ・インターナショナル
GmbH (フランクフルト/マイン、ド
100.00 935 5,048 12,149
イツ)
ヘレニック・テレコミュニケーショ
ンズ・オーガニゼーションS.A.
45.96 2,902 3,927 18,033
(1)
(OTE) (アテネ、ギリシャ)
マジャールテレコム・テレコミュニ
ケーションズ・パブリック・リミ
59.72 2,316 2,049 8,468
テッド・カンパニー (ブダペスト、
(1)(2)
ハンガリー)
Tモバイル・ネザーランド・ホール
ディングB.V. (ハーグ、オランダ)
75.00 1,872 1,910 1,892
(1)(2)
Tモバイル・ポルスカS.A.(ワルシャ
100.00 1,505 1,486 4,569
(1)(2)
ワ、ポーランド)
Tモバイル・チェコ共和国a.s. (プ
100.00 1,956 1,088 3,369
(1)(2)
ラハ、チェコ共和国)
フルバツキテレコムd.d. (ザグレ
51.42 2,276 1,039 5,511
(1)(2)
ブ、クロアチア)
Tモバイル・オーストリア・ホール
ディングGmbH (ウィーン、オースト
100.00 3,488 1,276 2,120
(1)(2)
リア)
スロバキアテレコム a.s. (ブラ
100.00 1,543 785 3,482
(1)(2)
ティスラバ、スロバキア)
注(1) サブグループ会社の連結財務書類
(2) ドイツテレコム・アーゲーの間接保有
商法典(HGB)第313条に従って、投資持株の完全なリスト(これは連結財務書類に対する注記にも含まれてい
る。)は連結財務書類とともに、電子版連邦官報(Bundesanzeiger)で公表される。当該リストは、ドイツテレコ
ム・アーゲー(ボン)のインベスター・リレーションにおいて請求の上で入手可能である。さらに、当該投資持株
のリストは、商法典(HGB)第264条第3号に従った簡易オプションを実施している全ての子会社又は商法典(HGB)
第264条bに従った簡易開示オプションを実施している全ての子会社の完全なリストを含む。
下記「第3 事業の状況」及び「第6 経理の状況」の連結財務書類に対する注記も参照のこと。
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5 【従業員の状況】
・ 2019事業年度末日におけるドイツ国内外の従業員数:210,533名
・ 2019年のドイツ国内外の従業員の平均年齢:41.4歳(ドイツ国内:46.5歳、ドイツ国外:37.5歳)
・ 2019年12月31日時点のドイツ国内の従業員の平均勤続年数:23.10年(グループ全体の数値は入手不可
能)
・ 2019年のドイツ国内外の従業員の平均年間給与(賞与を含む。):59.5千ユーロ
・ 2019年のドイツ国内外の年間フルタイム当量:73.7千
従 業 員
人々の支援及びパフォーマンスの促進
我がドイツテレコムは、社会のデジタル化の形成を積極的に行っており、同時に当社自身のデジタル・トラ
ンスフォーメーションに取り組んでいる。多くの領域における新たな技術及び事業モデルが、当グループの仕
事環境及び当グループがそのために必要とするスキルの根本的な変更を伴う。当グループの願望は、この変化
のプロセスを促し、その際に焦点を人々へと移すことである。最終的に全ての変化を成し遂げるのは当グルー
プの従業員である。当グループの顧客に、傑出した製品及びサービスだけでなく優れた顧客サービスを提供す
るために、当グループが現在及び将来において必要とするのは、最良の従業員である。このことが、当グルー
プが、才能ある個人にとって魅力的な雇用者である必要もある所以である。当グループは、柔軟かつ参加型の
仕事の方法を推奨する仕事環境を創出する必要がある。その他に、当グループは、学びの文化を定着させ、現
在及び将来の課題に立ち向かうために必要な新たなスキルを構築するために、当グループの既存の研修の選択
肢の拡大に常に努めている。
当グループは、当グループの従業員及び事業の要求事項から、当グループの 戦略的な優先課題 を導き出し
た。当グループがこれらの優先課題を追求する手法は、迅速に行動し、当グループに関連するビジネス・ト
ピックに焦点を当てる、というものである。
2019 年の当グループの優先課題
1. 人材の 採用、配置及び開発
2. 当グループの文化の発展
3. 顧客中心かつ迅速な働き方の実現
このような優先課題を考慮して設計されたプロジェクト及びイニシアチブのサンプルの詳細を、以下に提供
する。
優先課題に基づく当グループのHR活動
1. 人材の採用、配置及び開発
当グループを変革することについては、当グループの従業員が不可欠な役割を果たす。適切な人を適切な仕
事に配置すること、及びその個人のスキルを一層開発することは、当グループにとって極めて重要である。
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採用: 当グループは、デジタル分野で世界的にみて才能ある人材を引きつける存在でありたいと考えてい
る。ドイツだけでも、当グループは、2019年にICT環境分野を含み2,000名を超える新たな従業員を採用した。
ここで成功の鍵となるのは、積極的な候補者を見出すための迅速なデジタル採用プロセスである。当グループ
は、職業検索プラットフォームとして、グローバル・キャリア・ウェブサイトを提供している。当グループ
は、採用プロセスにおいてゲームに基づく評価の活用も行っている。これは、オンライン・ゲームの形態の新
世代の心理テストであり、スタート・アップ!(Start up!)技能実習プログラムのための当グループの採用プ
ロセスの文脈において配備されている。当グループは、また、アルゴリズムに基づいて大学の最終成績を順位
付け、公平な比較を行うことができるデジタル・ツールも利用している。さらに、当グループの採用戦略は、
特定のターゲット層に対して勧誘を行うことにより、より多くの才能ある女性に当社への入社を促すことも目
的としている。2019年は、世界中のSTEM科目(科学、技術、工学、数学)の女子学生が、当グループの女性の
STEM賞(Women's STEM Award)で競うことができるようになってから7回目にあたる。当グループは、STEMの女
子学生向けのキャリア・プログラムであるフェムテック(Femtec)及びグローバル・デジタル・ウィメン・ネッ
トワーク(Global Digital Women network)にも関与している。
雇用者ブランド: 特に競争が一層激しい現在のIT及び技術専門家の労働市場において、強力な雇用者ブラン
ドは、才能ある人材を採用、維持するために重要である。このグループをターゲットとするために、当グルー
プは2019年に新たな雇用者ブランド戦略及び雇用者キャンペーン(#IWILLNOTSTOP)を創出し、世界に展開し
た。当グループは、この潜在的な従業員のグループへの対話方法を個別化及び個人化するためにデジタル・コ
ミュニケーション戦略を検討している。これは、当グループの従業員が仕事において変化を成し遂げることが
できること、社会の進歩を助けていること及びデジタル・トランスフォーメーションを形成していることを改
めて示すよう設計されたデジタル画像広告並びにビデオ形式の従業員のストーリーによって、当グループの存
在感を高めることに関連している。当グループのキャンペーンのメッセージは、「我々の一員となって、一丸
となって達成できることを自身で体験してください(Become one of us and experience for yourself what
we can achieve together)」というものである。
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継承管理: 当グループの従業員は、ドイツテレコムの主導的職位の最も重要な候補者の源である。体系的な
方法による推進のために、当グループは継承計画にグローバルな手法をとる。デジタル・プロセスによって、
当グループはマネジメント職の潜在的な継承者を継続的に計画し、その概観を得ることができる。
80/20 モデル: 80/20 モデルは、従業員の意欲と部門間の協調を改善する革新プログラムである。これは、労
働時間の20%をグループ全体のプロジェクトに充てる自由を、自主的にかつ上席の同意を得て従業員に与える
ものである。従業員は、このモデルによってスキル格差を解消することが可能になり、所属部門に関係なく自
らのスキルを別の分野に応用する機会を与えられる。このレベルの柔軟性を導入することは、当社全体の成功
を促進するだけでなく、従業員のスキルが評価され、マネージャーが目標を絞ったサポートを受けることがで
きる新しい革新的な働き方も生み出す。
レベルアップ!(levelUP!): デジタル化の時代において、マネージャーは、アナログ世界で必要とされるも
のとは大きく異なるスキル及び方法を保有していなければならない。そのため、当グループは、デジタル時代
のリーダーシップで成功するための革新的なデジタル継続研修サービスであるレベルアップ!(levelUP!)を利
用して、当グループの幹部を支援している。レベルアップ!(levelUP!)は、必要に応じて組み合わせることが
できるモジュールを含んでいる。知識は主に双方向のデジタル学習形式とクラスルームの研修とを組み合わせ
て共有される。近年、ドイツテレコムの1,400名を超える幹部が、この初回の、好評であったレベルアップ!
(levelUP!)プログラムに参加した。このプログラムにおいては、とても器用な主導力(Ambidextrous
Leadership)のトピックに焦点が当てられている。2019年に、レベルアップ!(levelUP!)プログラムは、内容
が変更され、「迅速な主導力(Leading Agile)」という新たな名称が与えられた。700名もの幹部が、レベル
アップ!迅速な主導力(levelUP! Leading Agile)プログラムの第一回目に参加した。
レベルアップ!次世代(levelUP!NextGeneration): レベルアップ!(levelUP!)プログラムの大成功に後押し
されて、当グループは2019年に意識が高い潜在能力のある従業員を対象に、レベルアップ!次世代(levelUP!
NextGeneration)という同様のプログラムを立ち上げた。世界中の約600名の従業員がこの4か月の開発プログ
ラムに参加した。このプログラムでは、革新的な主導力のトピック及びスキルを教えるためにデジタル学習法
が用いられた。
スキルズ・アップ!(skillsUP!): 当社の競争力及び雇用を確保するため、スキルズ・アップ!(skillsUP!)
と称される、試験に成功した戦略的なスキル管理プログラムが2019年にさらに創出された。質的なHR計画のた
めに職務記述書及び技能略歴を改訂して、潜在的な再研修措置を特定することに加えて、このプログラムの目
的は、早期の段階でスキル格差を認識すること及び相応しい研修プログラムを作成することである。プログラ
ムの開始は2020年が予定されている。
ユー・ラーン(Youlearn): 当グループの新しいユー・ラーン(Youlearn)の取組みの目的は、日々の労働生活
のなかで自分のペースでの学習を定着させることである。当グループは、明白な学習文化のある会社が市場で
も成功すると確信している。当グループは2019年に、新たな学習方法のためのグループ全体のキャンペーンを
立ち上げ、当グループの従業員のために多岐にわたる革新的なポータル、ツール及びサービスを作成した。こ
れらは配備が容易であるのみならず、従業員の学習プロセスの体験をより楽しい体験とする一助になる。当グ
ループはまた全従業員に対して、ますますいつでもどこでも学ぶことが可能となる学習コンテンツ及び新たな
ビデオに基づくアプリケーションへのモバイルアクセスの提供も行う。
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2. 当グループの文化の進化
当グループは、会社の長期的成功のためには、経済的要因に加えて、会社の文化が決定的要因であると確信
している。当グループの企業文化は強固であり、当グループの正規従業員の調査では、当グループの同僚が当
社及び当社ブランドによって一体感を得ている点が強調されている。当グループは、この感覚を高めることを
望んでいる。同時に、顧客及び従業員両者の需要も、当グループが利用する技術も、当グループの市場及び事
業環境全体も、急速に変化しており、当グループも当グループの企業文化を進化させる必要がある。
生活文化: 将来の事業及び市場動向に適した文化とは?何が人々を動機付けるのか?彼らは働きに行くのを
楽しんでいるか、評価されていると感じているか、また彼らの成果物は認められているか?当グループは、こ
れらを含む質問を2019年に立ち上げた生活文化(Living Culture)プロジェクトで自問した。このプロジェクト
の目標は、当グループの将来の企業文化を、当グループの従業員とともに考えて、作成し、当グループの全員
が個人的に体験できるものにするための具体的な措置を考案することである。当事業年度において、当グルー
プは11か国の3,200名を超える従業員(技術者からCEOまで)に対して調査を行い、当グループの文化について積
極的に問いかけ、40を超えるワークショップを実施した。当グループは、2020年にこのプロジェクトの結果を
伝達して、計画されている措置の実施を開始する意向である。
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多様性の実践: この10年以上の間、当グループは、当グループ全体で多様性を持続的かつ包括的に実践及び
促進してきた。2015年には、当グループは、無意識の偏見に対するキャンペーンを開始し、これは今では海外
の階層の全レベルで実施されている。その目標は、この問題に関する従業員の意識を高めること、及び当社内
で多様性を拡大するための新鮮な刺激をもたらすことである。当事業年度において、当グループは、いくつか
の活動を行ってドイツ・ダイバーシティ・デイ(German Diversity Day)に参加した。当グループは、前身のブ
ンデスポスト(Deutsche Bundespost)の継承会社並びにLGBTのマネージャー及び個人事業主の方々のための協
会であるフォルクリンガー・クライス(Völklinger Kreis)とともに、ドイツテレコム本社で多様な都市
(Diverse City)というイベントを実施した。その目的は、平等及び性的指向といった問題へのマネージャーの
認識を高めることであった。また当グループは約250名の同僚とともに、ケルンのクリストファー・ストリー
ト・デイ(Christopher Street Day)パレードにおいて、認識と尊重を高めるためのデモンストレーションも
行った。
男女の平等は、現在も当グループの特別な関心事である。2010年当時、ドイツテレコムは、当グループ全体
のマネジメント職の30%を女性が占めるようになることを目標に掲げた。世界全体において、中間及び上級の
マネジメント職における女性の割合は、2019年末時点で26%であった。民間企業及び公的部門の指導的地位に
おける男女平等参加のための法律(Gesetz für die gleichberechtigte Teilhabe von Frauen und Männern an
Führungspositionen in der Privatwirtschaft und im öffentlichen Dienst)の導入を受け、取締役会は、取
締役会の下の2つの幹部レベルにおいて女性を30%配置するという目標を立てた。当グループはこれらの目標
を2020年末までに達成することを目指している。2019年12月時点でドイツテレコム・アーゲーの監査役会の職
位に占める女性の割合は、40%であった。当グループは、Chefsacheの取組みへの関与並びにDiversity
Charter及びTechnology-Diversity-Equal Chances Competence Center等のスキームへの参画によって、機会
均等及びダイバーシティの達成への取組みを続けている。
優れたワーク・ライフ・バランスの達成: 託児施設及びファミリー・ケアの選択肢という形式の従来型のサ
ポートを提供することに加え、当グループは、様々な生活段階を指向したHR方針へさらに移行している。これ
は、自己決定の拡大のために柔軟な労働条件を提供するものであり、そうすることで、デジタル化がもたらす
機会を活用する。2017年に統一サービス産業労働組合(ver.di)との間で一般団体協約を締結した後、当グルー
プは、新しい働き方として当グループ全体にモバイル・ワーキングを展開した。これにより、当グループの従
業員は、業務の性質上、適している限りにおいて、在宅勤務又は社外勤務を行うことができる。さらに、フ
レックスタイム制、フルタイム勤務に復帰する選択権が約束されたパートタイム勤務への移行機会、ライフタ
イム・ワーク・アカウント(lifetime work accounts)は全て、従業員が自分の労働日を構成して優れたワー
ク・ライフ・バランスを達成するためのより大きな自由をもたらす。
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従業員満足度: 2019 年に行われた当グループ全体の従業員調査(TモバイルUSを除く。)において収集された
データによると、当グループのコミットメント指数スコア(当グループの従業員満足度の指標)は、1.0から5.0
のスコアの中での4.0という好成績であった。また当グループは、定期的に意識調査を実施し、従業員の
フィードバックを得ている。従業員満足度をさらに改善するためのイニシアチブがいくつか実施されている。
当グループは、次回の従業員調査の結果においても同様に、当グループの従業員の満足度が高水準を示すもの
と予想している。
(1)
従業員満足度 (コミットメント指数)
2019 年 2017年
(2)
4.0 4.1
グループ全体 (TモバイルUSを除く)
うちドイツ 4.1 4.1
うちドイツ国外 3.9 4.1
注(1) コミットメント指数は2019年及び2017年の従業員調査による。
(2) TモバイルUSは、独自の従業員調査を行っている。
従業員の健康: 当グループの健康管理戦略は、従業員の健康及び業務遂行の維持を目的に設計されている。
当グループは、労働安全衛生法を最低必要条件と考えている。当グループの企業文化は、当グループの従業員
に自分自身の健康に責任を持つことを促している。マネージャーは、この点で重要な貢献をしている。
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3. 顧客中心の迅速な働き方の実現
当グループは、高付加価値製品、傑出したパフォーマンス及び素晴らしいサービスを当グループの顧客に提
供することができることを望んでいる。顧客優先の迅速な働き方はこの目標の達成に貢献するだけでなく、当
グループが変化に迅速に呼応することができるようになる。このことが、当グループのHR活動が、こういった
働き方のための枠組みの作成及び当グループの従業員にこれらの適用につき権能を与えることに焦点を当てて
いる所以である。
枠組みの作成。 当グループの迅速なコンパス(Agile Compass)は、従業員、チーム及びマネージャーに、迅
速な変革の方向性を与える。その6つの次元は、社内外の専門家が得た経験に基づく、行動のための特別な推
奨事項を提供している。当グループは、グループワーク審議会(Group Works Council)と共同して、これに対
応する基礎をグループ全体に提供するための、「迅速な働き方についての要綱(Manifesto on Agile
Working)」の策定も行った。将来的には、迅速な働き方は、既存の方法と対当に扱われ、適切と思われる場合
にはいつでも使用される予定である。
従業員への権能の付与。 2019 年に、当グループは、デザイン思考を行う調整者及び実務者のための、社内の
研修コースを引き続き行い、この重要なコミュニティのメンバー数を425名に増員することに成功した。この
ことによって、当グループは顧客中心の方法を広め、その配備を奨励することができた。加えて、広範囲の迅
速性実現(Agile Enabling)プログラムを立ち上げたことによって、当グループの全てのレベルの従業員、チー
ム及びマネージャーが、迅速な働き方を習熟した。当グループは、迅速なデジタルによる協力を支援してお
り、これには迅速性の指導のための方法、ツールの基礎及び研修コースをはじめとして、具体的な変革プロ
ジェクトのための協議までが対象範囲に含まれる。例えばDigitales Seepferdchen(いくつかの研修段階にお
いて獲得することができるバッジ)によって、従業員は仮想協力及び迅速な働き方等のトピックを理解する方
法を教わり、デジタルの動向及び技術の世界に慣れることができる。当グループの迅速性チェック(Agility
Check)は、マネージャーが自身の具体的な責任範囲内の迅速性の成熟度を評価して具体的な行動ポイント及び
サービスを策定する一助となっている。
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従業員数の推移
当グループの従業員数は、前年度末と比較して2.4%減少した。動向はセグメント間で異なっていた。ドイ
ツ事業セグメントの従業員数は、効率性強化措置及び人員削減に関連する社会的責任措置の利用の結果、
3.4%減少した。米国事業セグメントの従業員総数は、当グループの事業の成長が継続したことに主に起因し
て、2019年12月31日時点で対前年比0.9%増加した。ヨーロッパ事業セグメントでは、従業員数が、前年末と
比較して7.4%減少した。これは、部分的にテレコムアルバニアの売却に起因したものであった。従業員数は
特にルーマニア、ハンガリー及びポーランドにおいても減少した。システムズ・ソリューションズ事業セグメ
ントの従業員数は、主にインドを最初に含めたこと及びそのサービス部門の拡大に起因して、2018年末と比較
して1.7%増加した。このセグメントにおける残りの従業員数は、人員削減措置によって3.5%減少した。グ
ループ開発事業セグメントにおける従業員数の31.7%の増加は、オランダのテレ2ネザーランドを含めたこと
に原因を見出すことができる。グループ本部・グループ事業セグメントの従業員数は、2018年末と比較して
6.3%減少したが、これは主にヴィヴェント(Vivento)での継続した人員削減及び技術及びイノベーション部門
の従業員数の減少に起因したものであった。
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人材統計
従業員数の推移
2019 年 2018年 変化率 2017年 2016年 2015年
12 月31日 12月31日 (%) 12月31日 12月31日 12月31日
当グループの正規社員 210,533 215,675 (2.4) 217,349 218,341 225,243
うちドイツテレコム・アーゲー 17,461 19,259 (9.3) 21,428 22,571 26,205
うち公務員(ドイツ国内、在職中) 12,153 13,507 (10.0) 15,482 15,999 18,483
ドイツ事業セグメント 60,501 62,621 (3.4) 64,798 66,410 67,927
米国事業セグメント 47,312 46,871 0.9 45,888 44,820 44,229
ヨーロッパ事業セグメント 44,591 48,133 (7.4) 47,421 46,808 48,920
システムズ・ソリューションズ事業セ
38,096 37,467 1.7 37,924 37,472 37,850
グメント
グループ開発事業セグメント 2,603 1,976 31.7 1,967 2,572 2,768
グループ本部・グループ事業 17,430 18,606 (6.3) 19,351 20,258 23,548
地域別内訳
ド イ ツ
94,111 98,092 (4.1) 101,901 104,662 110,354
ドイツ国外 116,422 117,582 (1.0) 115,448 113,679 114,888
うちその他のEU加盟国 58,743 61,249 (4.1) 59,952 59,456 60,710
うちその他のヨーロッパ 2,055 2,471 (16.8) 2,620 2,581 2,945
うち北アメリカ 47,652 47,245 0.9 46,332 45,364 44,803
うち上記以外の諸外国 7,971 6,618 20.4 6,543 6,278 6,431
自然減 % 5.3 5.1 3.9 4.7 4.0 4.4
うちドイツ % 2.3 1.9 21.1 1.7 1.4 1.3
うちドイツ国外 % 9.5 9.8 (3.1) 9.2 8.1 9.3
(注)
生産性の動向
従業員1人当たり営業収益(千ユーロ) 378 350 8.2 346 331 306
(注) 平均従業員数に基づく。
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人 件 費
変化率
2019 年 2018年 2017年 2016年 2015年
(%)
(十億ユーロ)
当グループ人件費 16.7 16.4 1.7 15.5 16.4 15.8
うちドイツ 8.7 9.2 (5.4) 8.5 9.8 9.4
うちドイツ国外 8.0 7.3 9.9 7.0 6.6 6.4
(注)
1.0 1.2 (13.6) 0.6 1.6 1.2
特別要因
当グループ人件費(特別要因調整後) 15.7 15.2 3.4 14.9 14.8 14.6
営業収益 80.5 75.7 6.4 74.9 73.1 69.2
調整後人件費率(%) 19.5 20.1 (3.0) 19.9 20.3 21.2
ドイツGAAPに基づくドイツ
2.3 2.5 (8.3) 2.7 3.5 2.9
テレコム・アーゲーの人件費
(注) 従業員関連措置費用。
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第3 【事業の状況】
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
経営方針、経営戦略及び経営環境
下記「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の項を参照のこと。
対処すべき課題
「2 事業等のリスク」、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」及
び「第6 経理の状況」に記載されるものの他に当社はその経営又は業務上の対処すべき課題を認識していな
い。
2 【事業等のリスク】
リスク要因
本書に記載されている他の情報に加え、当グループの証券を保有する投資家は、以下のリスクを慎重に検討
する必要がある。当グループの財政状態、経営成績又は当グループの証券の取引価格は、これらのリスクのい
ずれによっても重大な悪影響を受ける可能性がある。
以下の考察には、将来の予測に関する記述が多く含まれている。かかる将来の予測に関する記述は、2019連
結事業年度末時点での判断に基づいている。
2019連結事業年度末の後に生じた事業等のリスクは、下記「3 経営者による財政状態、経営成績及び
キャッシュ・フローの状況の分析-後発事象」の項、「第6 経理の状況-1 財務書類-(6) 連結財務書
類に対する注記46 報告期間後の事象」及び2019年12月31日現在のドイツテレコム・アーゲーの年次財務書類
に対する注記を参照のこと。
リスク及び機会管理
リスク及び機会
以下に、当グループにとって重要であり、現状ではドイツテレコムの経営成績、財務状況及び/又は評判に
影響が及ぶ可能性がある、又は子会社の業績によりドイツテレコム・アーゲーの経営成績、財務状況及び/又
は評判に影響が及ぶ可能性がある、全てのリスク及び機会について記す。多くのリスクについては、リスク抑
制の方策が講じられる前のものを記載する。かかるリスク抑制方策が講じられたにもかかわらず依然としてリ
スクが特定された場合には、その旨が記載されている。リスク又は機会が明確に事業セグメントに当てはまる
場合は以下にその旨が提示されている。
影響について容易に理解し、見ることができるようにするため、個別に評価したリスクを次の通り分類し
た。
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会社のリスク
前年からの
発生可能性 リスクの範囲 リスクの程度
変化
産業、競争及び戦略
経済リスク‐ドイツ 低 小 低 変化なし
経済リスク‐米国 低 中 低 変化なし
経済リスク‐ヨーロッパ 低 中 低 変化なし
市場及び環境に関するリスク‐ドイツ 高 小 中 変化なし
市場及び環境に関するリスク‐米国 中 大 中 変化なし
市場及び環境に関するリスク‐ヨーロッパ 中 中 中 変化なし
技術革新(代替)に関するリスク 中 中 中 変化なし
戦略的転換及び統合に関するリスク 中 極めて大きい 高 変化なし
下記「規制に関するリスク及び機会」の項を参照のこ
規 制
と
事業運営上のリスク
従業員 中 小 低 変化なし
IT/NTネットワーク運営に関するリスク‐ドイツ 中 大 中 変化なし
IT/NTネットワーク運営に関するリスク‐米国 極めて低い 大 低 改善
IT/NTネットワーク運営に関するリスク‐ヨーロッパ 極めて低い 大 低 変化なし
既存のITアーキテクチャに関するリスク‐米国 中 中 中 変化なし
ITアーキテクチャの将来の実現可能性‐米国 中 大 中 変化なし
調達 低 小 低 変化なし
データ保護及びデータのセキュリティ 高 中 中 変化なし
ブランド、コミュニケーション及び評判
ブランド及び評判(メディア報道) 低 小 低 変化なし
持続可能性リスク 低 中 低 変化なし
健康及び環境 低 中 低 変化なし
訴訟及び独占禁止に関する手続き 下記「訴訟」の項を参照のこと
財務リスク
流動性、信用、通貨、金利の各リスク 中 中 中 悪化
税務リスク 下記「税務リスク」の項を参照のこと
その他の財務リスク 下記「その他の財務リスク」の項を参照のこと
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産業 、競争及び戦略によるリスク及び機会
マクロ経済環境に関するリスク及び機会。 当グループは国際企業として、多数の国において広範な通貨を用
いて営業している。実質的な景気の停滞は、当グループの顧客の購買力を低減させ、当グループの資本市場へ
のアクセスに悪影響が出る可能性がある。為替の変動は、当グループの収益に影響を与える可能性がある。
昨年の経済の傾向は抑制的であるがしかし全般的に良好であったものの、世界的に経済の不確実性が増して
いる。主要な機関及び組織は、銘々の経済予測を下方修正して、世界経済の成長の減速を予測している。将来
の経済の動向における主要なリスクは以下の通りである。
・国際貿易紛争による不確実性
・無秩序な英国のEU離脱
・特にヨーロッパにおける政治の不確実性
これらのリスクは、特に米国及び当グループのヨーロッパの事業セグメントのほとんどの国において衰えな
い堅調な成長による機会によって相殺されている。2020年に米国で景気後退が発生する兆候はない。財政上の
推進力が落ちている結果として、成長率の鈍化のみが予測される。経済の勢いはヨーロッパでも衰えることが
予測される。輸出の需要の減少は、ヨーロッパの国内経済の頑健性の持続によって少なくとも部分的に相殺さ
れると思われる。故に、我々は、ここでも景気後退ではなく、成長率の鈍化のみを予測している。これら全て
は、欧州中央銀行(ECB)の拡張的貨幣政策によって国内需要及びユーロ圏の投資活動が刺激される場合に、非
常によく当てはまる。
市場及び環境に関するリスク。 当グループが直面する主要な市場リスクには、固定ネットワーク及びモバイ
ル通信の音声及びデータ・サービスの価格水準の継続的な下落が含まれる。これは、規制当局により課された
価格引下げに加えて、主に、電気通信業界で継続している競争激化に起因している。
特にドイツ及び当グループのヨーロッパ事業セグメントの諸国における固定ネットワークにおいて、競争圧
力は継続すると予想される。ブロードバンド市場においては、特にドイツでは、地域ネットワーク事業者の市
場シェアの突出した拡大の傾向が定着している。各事業者は、自社の専有的インフラストラクチャーを構築
し、これにより、市場カバレッジを拡大させている。これは、ますます光ファイバー・インフラストラク
チャーによって行われるようになっており、それぞれの顧客数が増し、付加価値が拡大している。価格引下げ
及び新規契約時割引の提供による激しい新規顧客獲得競争も依然として起きている。
ドイツにおける市場及び環境に関連するリスク群におけるリスクの程度は、 ボーダフォン・ドイチュラント
( Vodafone Deutschland)がリバティ・グローバル ( Liberty Global)からユニティメディア ( Unitymedia)を買収
したことによって「中」に分類されている。この買収は、ボーダフォンにケーブルテレビ市場の極めて大きな
シェアを与えて、住宅市場における支配的地位を確立させた。欧州委員会は、承認プロセスの一環として ボー
ダフォン・ドイチュラント に義務を課したが、その結果、 ボーダフォン・ドイチュラント は、テレフォニカ・
ドイチュラント(Telefónica Deutschland)に対して、統合体のケーブルネットワークを開設した。このことに
よって、ブロードバンド及びテレビ・サービスにおける競争圧力がさらに増し、 小売及びホールセール分野に
おける収益が減少することになる可能性がある。
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当グループは、また、携帯電話の音声通信及びデータ通信サービスの価格圧力の継続を予測しており、それ
は当グループのモバイル・サービス収益に悪影響を与える可能性がある。価格圧力の主要原因の1つとして
は、データ中心の、積極的な価格の提供がある。自身のインフラストラクチャーを保有しないプロバイダー
(MVNOs)は、例えばインターネットへの市場提供を行っているが、より小規模の競合会社が、予測できない積
極的な価格設定方策をとるリスクも残っている。スマートフォンにおける純粋なeSIMsの利用等の技術革新
は、顧客のプロバイダー切り替えへの意欲を促すことによって、価格にさらなる圧力をかける可能性がある。
ドリリッシュ・ネッツ(Drillisch Netz)は、2019年にドイツで開催された周波数帯の競売において、モバイ
ル周波数帯を取得し、その後、第4のモバイル・ネットワークの開設に今後数年の間に着手する意向がある旨
を、公式声明で述べた。このことは、小売及びホールセール分野における収益におけるリスクとなる可能性が
ある。
もう1つの競争上のリスクは、固定ネットワーク及びモバイル通信の双方において、本業は電気通信セク
ターには属さないが、従来の電気通信市場への進出を拡大させている競合会社との競争に一層直面しているこ
とにある。これは主に、インターネット及び一般消費者向け電気製品業界の主要事業者に関連している。その
結果、当グループは、競合会社により、ますます顧客との直接的接点を失うことによって、付加価値のシェア
をさらに失って利益率が低下するリスクにさらされている。
TモバイルUSには、複数のワイヤレス分野の競合会社が存在しており、そのなかには、より多くのリソース
を有し、主にサービス・機器提供、価格、ネットワーク・カバレッジ、速度及び品質、並びに顧客サービスに
基づいて、顧客獲得を競う会社がある。米国における市場の飽和状態は、ワイヤレス産業の顧客成長率を、従
来の成長率と比較して緩やかにさせ、又はマイナスにさせ、顧客を巡る競争の続行につながることが予想され
る。TモバイルUSは、顧客のデータ・サービスへの欲求によって、ネットワーク容量に対する需要は増加する
と予測している。追加できるワイヤレス周波数帯の不足及びコスト、並びに周波数帯の使用に関する規制は同
社の事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。TモバイルUSは、業界が収斂するにつれ
て、ケーブル、電気通信サービス及びコンテンツ並びに衛星テレビ等の他のサービス・プロバイダーからの激
しい競争に直面することが増えている。ワイヤレス分野のジョイントベンチャー、合併、買収及び戦略的提携
により、限られた数の顧客を巡って競争する競合会社の数が増える結果となっており、かつ将来的にも増える
ことが予想される。
TモバイルUS及びスプリントの企業結合は、政府当局の許可、同意、命令又はその他の承認を受けること、
及び企業結合を阻止する差止め命令又は企業結合の完了を阻止する裁判所若しくはその他の政府の機関が制定
する法的要件がないことを特に含む、いくつもの条件の制約を受けている。当グループには、この企業結合が
シナジー及びさらなる利益をもたらすという確固たる信念はあるものの、期待通りの範囲又は計画された期間
内では実現できない可能性を排除できない。
当グループのシステムズ・ソリューションズ事業セグメントもまた、課題に直面している。激しい競争の継
続及び持続的なコスト圧力は、伝統的なICT事業に悪影響を及ぼしている。加えて、クラウド・ソリューショ
ンへと向かう技術的な変化及びITセクターのデジタル化は、多額の資本を有する新たな競合会社の市場への参
入を促している。IP技術が電気通信事業に導入されることにより、価格が低下し、このことは、Tシステムズ
における収益損失及び利益率の低下という潜在的リスクをもたらす。5G及びソフトウェア定義ネットワーク等
の将来の問題は、新たなプロジェクト事業にとっての開始剤となる。
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市場及び環境に関する機会。 電気通信及びITの市場は極めてダイナミックであり、競争が激しい。経済状況
が当グループの活動に影響を及ぼし、当社の指標に影響を及ぼす。当グループは、概括的には、状況が「3
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析-予測」の項に記載するように展開す
るものと予想する。
技術革新(代替)に関するリスク。 技術革新周期はさらに短期化している。これにより、電気通信セクター
は、新製品及びサービスをますます短い間隔で提供するという課題に直面している。新たな技術が既存の技
術、製品又はサービスに部分的に取って代わり、場合によっては完全に取って代わっている。このことは、音
声及びデータ通信の両方における価格及び収益の低下をもたらす可能性がある。このような代替リスクは、特
にヨーロッパ及び米国事業セグメントの営業収益に影響を及ぼす可能性がある。当グループは、例えば、パッ
ケージ料金を提供することによって、代替リスクの影響に対処しており、当グループは、新規及び既存の顧客
に、当グループの製品ポートフォリオにおける統合ソリューションを提供している。新たな5Gモバイル規格が
技術革新として導入されることは、将来の周波数帯の競売及びその付与条件、規制上の要件、セキュリティ及
び電磁両立性に関する公開討論、並びにシナリオプランニングで示されている電気通信ハードウェア・プロバ
イダーの数が限られていること、という形の不確実性を必然として伴うこととなる。
技術革新に関する機会。 上記のリスクに加え、当グループは、ますます短期化する技術革新周期により、
我々の社会のデジタル・トランスフォーメーションを牽引し、当グループの消費者及び法人顧客に技術革新的
な製品及びソリューションを提供することが可能になり、明日の疑問に今日答えている。そのため、ますます
激化する競争環境で機会を見出して最大限に活用する上で、当グループの技術革新及び製品開発活動は極めて
重要である。このことを保証し、ネットワーク及びITの収束の加速化を公平に評価するために、当グループ
は、新たな取締役会部門である、技術及びイノベーション部門において全ての関連した機能を共同管理の下に
組み合わせることによって、技術革新、ネットワーク及びITの分野のより緊密な統合を可能としてきた。当グ
ループの技術革新活動に関する詳細は、「5 研究開発活動-技術革新及び製品開発」の項を参照のこと。
5Gは、新たな世代のモバイル電気通信ネットワークである。 当グループは、多数の異なる組織及びフォーラ
ムに参加するだけでなく、研究機関及び業界と協力し、電気通信ネットワークが直面している全ての困難に対
応できるこの規格の継続的な開発に集中的に取り組んでいる。これには、純粋な技術要件(容量、帯域幅及び
可用性の大幅な拡大並びに低 レイテンシー の実現など)が含まれている。
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加えて、モノのインターネット( Internet of Things ) における大規模なマシーン・トゥ・マシーン通信、並
びに産業アプリケーションにおける信頼性、安全性及び保証された資源配分への高まるニーズなどといった基
本的な課題も存在している。したがって、5Gは、将来的に既存の事業モデルにおいて急速に高まる要求をコス
ト効率よく管理する上で、すぐに利用できる機会を提供するだけでなく、関連するパートナーに「ネットワー
ク機能」(例えば、ネットワーク・アクセス、ローカライゼーション、セキュリティ、アイデンティティ、格
納先、一時記憶装置、リアルタイム・プロセッシング)を販売することで、追加的な事業モデルの機会も提供
する。当グループは、既にデータを(ネットワークの各エッジにおいて)分散処理するキャンパス・ネットワー
ク及びモバイル・エッジ・コンピューティング等の初回使用に向けて取り組んでいる。狭帯域のモノのイン
ターネット(NarrowBand Internet of Things: NB-IoT)及び人工知能(AI)等の他の技術とともに、5G及びエッ
ジ・コンピューティングは、社会のデジタル・トランスフォーメーションを推し進めるための基礎を提供して
いる。
戦略的転換及び統合に関するリスク 。当グループは、引き続き戦略的調整及び費用削減構想の過程にある。
これらのプロジェクトを計画通りに実行することができない場合、当グループは一定のリスクにさらされる。
言い換えると、かかる措置による利益が当初の見積りよりも少ないか、予想よりも遅れて発生するか又は全く
発生しない可能性がある。これらの各要素は、単独であれ組み合わさった場合であれ、当グループの事業状
況、財務状況及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。
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戦略的転換及び統合に関する機会 。 IP への移行(オールIP)は多くの機会をもたらしている。単一の言語を話
す論理ネットワークが構築されており、技術的には、伝送されるサービスからほとんど独立して機能してい
る。これにより、例えば、メンテナンス及びオペレーションの複雑性を低下させ、サービス固有のレガシー・
プラットフォームのスイッチを切り、エネルギーを節約することにより、効率向上が可能になる。加えて、短
中期的には、既存サービスの顧客体験の改善(例えば、音声品質の向上、顧客セルフ・サービスの増加、構成
の柔軟性の向上等)により、中長期的には、収束製品(convergence products)及びモノのインターネット
(Internet of Things)にとって不可欠な基盤の提供、並びに新製品の発売に要する期間の短縮により、オール
IPが潜在的な成長をもたらす。
しかし、オールIPネットワークでは、さらに多くのことが可能になる。これは、機能及びサービスの仮想化
だけでなく、国境を越えた共同生産(Pan-Net)も支えるネットワーク・インフラ・クラウドである。さらに、
効率性の向上及びさらなる成長の機会も構築することになる。1つのサービスを考案し、それを様々な国で発
売するというアイデアは、かかるサービスをより迅速にコスト効率よく発売することを可能とする。
これ に加えて、当グループは、迅速な開発により当グループのITのトランスフォーメーションを 推し進め て
いる。このアプローチにより、当グループは、コンポーネントをモジュール化して提供すること及び開発の加
速化を通して、効率的なITの生成のための新たな機会を開拓することができている。さらに、迅速な開発に
よって、主要なソフトウェアのリリースの配信の際に、ビッグバンのリスクを低減させることができる。
規制に関するリスク及び機会
以下に、現状では当グループの業績及び財務状況並びに評判に影響を及ぼす可能性がある規制に関する主要
なリスク及び機会を説明する。
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規制上のリスクは、ヨーロッパ及び国レベルの電気通信特有の法的規制から生じ、かつ市場を規制若しくはこ
れに介入する国家当局の権限、又はプロダクト・デザイン及び価格体系に関する当グループの自由度を制限す
る国家当局の権限から生ずる。規制緩和によって規制の機会が生ずる場合もある。規制介入については、当グ
ループは限られた範囲でしか予期することはできないが、かかる介入は既存の価格及び競争圧力をさらに上昇
させる可能性がある。ドイツ及びその他のヨーロッパ諸国における規制が、収益及び収入の中長期の動向に影
響を与える可能性もある。
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規制 政策及び法律の変更
電気通信に関するEUの法的枠組み。 欧州電子通信指令(European Electronic Communications Code)は主に
価格及びアクセス規制、周波数帯政策、分野特有の消費者保護規則、ユニバーサル・サービス制度に関して、
電気通信セクターの中心的な欧州規制を改革するものであり、2018年12月20日付で発効した。加盟国は、その
時点で24か月以内にこれら要件を国内法に置き換える必要があった。この指令は オープン共同投資モデル
(open co-investment models)の場合と同様に、競合会社同士が共同して出資する場合に、「非常に大容量の
ネットワーク」について緩い規制を提供し、より安定的な規制条件を長期的に提供するものである。共同所有
及び共同資金供給を構築することに加えて、共同投資モデルも、競争保護を意図した特定の要件に則ったアク
セスベースのネットワーク利用についての長期的な合意を含んでいる。特に、ファイバー-トゥー-ザ-ビル
ディング/ホーム(Fiber-to-the-building/home : FTTB/FTTH)ネットワークは、新しい規則により恩恵を得るこ
とができるだろう。同時に、新たな法的枠組みによって、1社が大きな市場支配力を有するかにかかわらず、
全てのネットワークに対するアクセス義務を課す新たな権限を規制当局が付与される可能性がある(対称規
制)。 周波数帯政策の観点においては、新たなEUの規制枠組みは、例えば、最短で15年のライセンス期間に、
さらに5年間の延長のオプションを付けることによって、特定の分野の異なる加盟国間の付与規則の調和レベ
ルを上げることにより、モバイル周波数帯を付与する際の法的確実性を高めることを狙いとしている。消費者
保護に関しては、数例の例外を除き、ヨーロッパ・レベルで義務が完全に調和されているために、追加的な国
家の規制の必要性が否認されているが、同時に個々の領域においては、より厳しい義務が生じている。
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透明性に関する義務は、大幅に拡張されており、契約条件及びプロバイダーの変更に対する規制は、さらに
厳しさを増している。ユニバーサル・サービスが完全に改善され、既にほとんど使用されていない多くのサー
ビスが撤廃された。将来的には、ビデオ電話を含むサービスを利用可能とするために、ユニバーサル・サービ
スの要件を満たすべくアクセス回線をブロードバンドとする必要があると思われる。特定の規則は、国内法に
置き換えられる必要はない。例えば、他のEU諸国への音声電話及びテキスト・メッセージの小売料金プランの
規制は、2019年5月15日付で、直接適用される欧州規則の一部として発効した。EU域内の国際音声電話及びテ
キスト・メッセージ送信の料金は、5年間、19セント/分及び6セント/テキスト・メッセージ(純額)に制限さ
れている。この指令に基づいて、欧州委員会は2020年末までに、全加盟国のモバイル着信料金(MTR)及び固定
ネットワーク着信料金(FTR)に対して、委任法令によって均一の価格上限を設けることになる。
電気通信に関するEUの法的枠組みの改正は、電子通信の単一市場に関する一連のEUの新たな立法(a package
of new EU legislation)の一部を形成し、主にインターネット・サービスの重要性が高まっているなかで、以
前に注目されていたテレビ・サービスと競合している(例えば、著作権法、有害なメディアから未成年者を守
るため及び消費者保護のための法律並びに第三者のコンテンツに関するインターネット・サービス・プロバイ
ダー(特に、ホスティング)の責任に基づいて)メディア・サービスを管理する規制を修正するものである。国
内レベルでも、デジタル化及び収束の現象を受けて、具体的な修正(例えば、ドイツの放送に関する州間協定
(German Interstate Treaty on Broadcasting)及びドイツのテレメディア法(German Telemedia Act)及び競争
法)が審議されている。
周波数帯の付与
不適切な競売規則及び周波数使用規定、 過度 な最低競売価額又は不相応に高く設定された周波数帯の年間料
金によって、 当グループが計画している 周波数帯の取得が危険にさらされる 恐れ がある、という事実がリスク
を生じさせ る 可能性がある。これとは対照的に、当グループは、かかる周波数帯の付与手続により、モバイ
ル ・ネットワーク 事業者が将来の事業 に最適な量の周波数帯 を取得することが 可能になる 、という事実に特に
機会を 見出している 。 これにより、 当グループは、さらなる成長及び 技術 革新 に向けて準備を整えることがで
きる 。 次回の付与手続は、主に 0.7GHz 、1.5GHz及び3.4GHz/3.8GHz及び24GHz並びにこれを超える帯域の追加の
周波数帯の競売に関連している。加えて特に、いくつかの国において2019年から2021年の間に2.1GHzの帯域の
周波数帯のライセンスが終了しており又は終了し、更新が必要となる。オーストリア、クロアチア、チェコ共
和国、ギリシャ、ハンガリー、北マケドニア、オランダ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア及び米国にお
いて、現在のところ付与手続が準備中である。2019年に終了した又は現在進行中の周波数帯の競売に関する情
報は、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 - 経済環境」を参照のこ
と。
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国家規制当局が介入することができる分野
ヨーロッパ及び国内の法令においては、国家規制当局に、介入のための広範な権力が認められている。ヨー
ロッパ・レベルでの一例が、2015年に採択された 電子通信の単一市場に関するEU規制 である。これには、 国際
ローミング、ネット中立性及び情報提供義務 の規定が含まれており、当グループの、主に小売製品のプロダク
ト・デザインの選択が制限されている。欧州電子通信規制者団体(BEREC)は、この規制の実施についてのガイ
ドラインを公表した。国家規制当局が規制及びこれらのガイドラインの双方をどのように解釈するかによっ
て、リスクが生ずる。例えばドイツでは、 連邦ネットワーク庁が、法律に基づいて、規定に沿った製品の調整
を義務付けており、違反した場合には罰金を科す広範な権限を有している。
当グループ のドイツ及び外国の会社は、引き続き ホールセール製品の 包括的な 規制 を受け、当グループの
ネットワーク及びサービスを当グループの競合会社に提供することが義務付けられている。国家規制当局は、
これらのホールセールの提供の期間、条件及び価格を定期的にチェックし、決定する。規制対象の主要なホー
ルセール製品は、 アンバンドルされたローカル・ループ回線、ビットストリーム製品、リース回線、着信料金
及び関連するサービスである。加えて、ヨーロッパ及び国内の消費者保護規制も適用される。例えばドイツで
は、 透明性規制 が2017年6月1日から発効している。当該規制の主な目的は、消費者向けの電気通信サービス
に関する透明性及びコスト管理の強化である。このような状況下で、連邦ネットワーク庁は、消費者が各自の
固定ネットワーク及びモバイル回線で利用可能な周波数帯域幅を測定することを可能にするシステムを導入し
た。
電気通信法の要件に加えて、当グループのメディア製品も、 メディア法に基づく 特別な ヨーロッパ及び国内
の規制 を受けている。後者には広義に、著作権法、出版物に対する責任についての規制、メディアにおける未
成年者の保護の徹底に関する要件及びメディア配信プラットフォームのコンテンツ及びユーザー・インター
フェースに関する要件が含まれる。一方では、株主構成(連邦共和国及び ドイツ復興金融公庫 (KfW) が大株主で
ある。 ) の修正が禁止され、他方では、法的状況又はメディア規制当局の支配的な意見の修正が禁止されてお
り、テレコム・ドイチュラントGmbHに、ラジオ及びテレビ番組の放映権が付与される見込みはない。
事業運営上のリスク及び機会
従業員 。 当グループの従業員は、ドイツテレコムの変革に重要な役割を担っている。彼らのスキルは、当グ
ループの事業の成功の主要な要素である。特に、IT等の関連性の高い分野の専門家に対する労働市場における
需要は一般的に高く、新たな従業員の採用は難しい。必要な専門家を勧誘及び/又は雇用することができない
ことによって、将来の当グループの事業にマイナスの影響が及ぼされる可能性がある。
201 9 年、当グループにおいて 、退職金の支払い 、部分退職、 特定目的の 退職 、 社内再教育措置 及びテレコム
のプレースメント・サービス ( Telekom Placement Services ) が斡旋する公務員のための 公共サービスにおける
雇用の機会などを主たる手段として、人員 を 削減 するための 社会的に責任ある施策が再度講じられた。 次 年度
においても、 当グループは、かかる 人員 削減を 引き続き実施 する 。対応する施策を計画通りに実施できない又
は全く実施できないという状況になれば ( 例えば、退職金への関心が限定的である場合 ) 、当グループの財政目
標にマイナスの影響が生じる可能性がある。人員削減手段の結果 、 有望な人材が 当グループを 退職する リスク
を避けるために、当グループは、当該措置が各 個々の ケースにおいて両サイドにおいて 自発的であるように す
る。
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公務員がドイツテレコムに再就職できる権利もまたリスクをはらんでいる。公務員を雇用するグループ 法人
が売却された場合、公務員が将来的に それぞれの部門 で雇用 されることに同意するか、又はそのように 申請す
る 場合に限り 、売却され た グループ法人で 当該公務員の 雇用を継続すること が 一般的に可能である。しかし、
例えば公務員 の 身分から一時的に離れた期間の経過後に、当社が仕事を提供できない状況で公務員が売却され
た法人から当社へ戻るというリスクがある。現在、 1,452 名程度の公務員が、かかる方法によって当グループ
外からドイツテレコムへの再就職の権利を持つ (201 9 年 12 月 31 日 時点 ) 。
IT/NT ネットワーク運営に関するリスク。 当グループ は 、 ますます複雑化する 情報技術及びネットワーク技
術のインフラ を有しており、 最 高 の顧客 経験 を保証し当グループの技術リーダーシップを強化するために 、 か
かるインフラの 拡張及びアップグレードを 常に行っている 。現在及び将来の技術インフラの停止は、完全に防
ぐことはできず 、 個々のケースにおいて、収益損失又はコスト増加 が生じる 可能性がある。結局、当グループ
の IT/NT リソース及び 構造 は、 当グループの 事業 の 鍵となる組織的及び技術的プラットフォームである。IT及
びNTで継続している収束にはリスクがある。これらのリスクに全体的に対抗するために、 取締役会部門であ
る、技術及びイノベーション部門において当グループのネットワーク、技術革新及びIT機能を組み合わせた。
インターネット・アクセスが必要な全てのIT/NTシステム及び製品に関する当該領域には、リスクが発生す
る可能性がある。例えば 、 新開発の IT/NT システム と既存のシステムの 間で障害があれば、事業プロセス 並び
に スマートフォン及び マゲンタTV (MagentaTV) 等の製品及びサービス が中断される 可能性がある。当グループ
は、自然災害又は火災等による停止リスクを避けるため、技術的な早期警告システム及び 冗長性を有する
IT/NT システム を使用している。 T システム ズにおけるコンピューター緊急事態対策チーム (Computer
Emergency Response Team(CERT)) は、当グループの 企業 顧客のサーバー保護を担当している。クラウド・コン
ピューティングでは、全てのデータ及びアプリケーションはデータセンターで保管される。当グループのデー
タセンターにはセキュリティ 認定 があり、 厳しい データ保護 規定 及び EU 規制を満たしている。会社及び個人に
関連する全てのデータは 、 外部アクセスから守られている。 持続的な メンテナンス及び自動更新 により、常に
最新の 安全対策 が維持されている 。 グループ規模で標準化されている事業継続性管理 (BCM) に基づき、当グ
ループは、損害 の発生 を防止する か 、 それが不可能な場合にはその後の影響 を軽減す る ため に、 組織的及び技
術的措置も講じている。さらに、当グループは 、 付保可能な リスク に対して保険を付保している。
リスクカテゴリー「 IT/NTネットワーク運営に関するリスク‐米国 」のリスクの程度は、2019年初旬に
「中」から「低」に修正されている。これは、導入された場所の地理的冗長性だけでなく、試験で機能的であ
ると評価された顧客サービスの課金システムの適切な災害復旧機能にも起因している。したがってリスクは軽
減されており、今後報告されない。
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IT/NT ネットワーク運営に関する 機会 。 当グループのネットワークの大量のデータ(ビッグ・データ)利用に
より、透明性を向上させることにより意思決定プロセスを向上させ、加速化することができる。これは、仮説
から事実へ決定の基礎を移し、例えば相関性を認識させることにより実現される。
当グループのシステムズ・ソリューションズ事業セグメントは、モノのインターネット(Internet of
Things)及びサイバー・セキュリティといった事業プロセスのデジタル・トランスフォーメーションにおける
革新的な事業分野をカバーしている。かかる事業分野は、予想以上の速さで発展する可能性がある。当グルー
プは、デジタル・トランスフォーメーションのパイオニアとして、参加するだけではなく、ヘルスケア及び機
動性ソリューション分野における様々なプロジェクトによって市場のトレンドを積極的に作り出す機会も有し
ている。M2M通信及びビッグ・データに基づくこれらの新たな事業モデルが拡大段階を迎える中、当グループ
のパートナー志向のアプローチは、データ通信、ビッグ・データ、クラウド・コンピューティング及びサイ
バー・セキュリティにおける当グループの中核能力をもって様々なプロジェクトに寄与する上で、極めて有望
な手段である。さらに、予知保全といったモノのインターネット(Internet of Things)の市場分野において
も、当グループは、既に最初の実績を上げている。
当グループは、ヨーロッパの通行料金収受事業の技術及び開発パートナーとして、既に強力な競争上の地位
を有している。当グループは、ベルギー及びオーストリアにおけるヨーロッパの通行料金収受プロジェクトに
おいて、ヨーロッパ全体の料金収受システム(Toll4Europe)の導入計画によって貴重な信頼を獲得しており、
このことが競合会社よりも優位に立つ上で役に立つ。
米国の既存のITアーキテクチャに関するリスク。 T モバイルUSは、サービスの提供及びサポートを行うため
に、自社のシステム及びネットワークに加え、他のプロバイダー及び供給業者のシステム及びネットワークに
依存している。TモバイルUSの事業には、ほとんどの小売業者及びワイヤレス会社同様、顧客の秘密情報(機微
個人情報、支払カード情報を含む。)、従業員及び納入業者の秘密情報並びにTモバイルUSに関する他の機微情
報(事業計画、取引及び知的財産等。)の受領、保管及び送信が関与する。サービス拒否及びその他の悪意のあ
る攻撃等のサイバー攻撃は、TモバイルUS社内のシステム、ネットワーク及びアプリケーションを破壊し、顧
客へのサービス提供能力を損ない、その事業にその他の悪影響が出る可能性がある。
米国の IT アーキテクチャの将来の実現可能性。 T モバイル US は、 新たな技術や進化する技術で業界での競争
力の強化と維持を図るために、将来的な技術の変化への適応、 同社 のネットワークへの継続的な投資、ネット
ワーク容量の増加、既存サービスの拡大、並びに既存及び潜在顧客の変化する要求に応えるための新たなサー
ビスの導入に取り組む必要 が ある。TモバイルUSがタイムリーに技術開発を活かすことができなければ、 同社
は サービスに対する需要の低下に直面したり事業戦略の実行又は進化において困難に直面したりする可能性が
ある。TモバイルUSは、第三者がサポートするプラットフォームが関わっている顧客請求システムの導入を引
き続き進めているが、かかる導入によってシステム又は業務に大きな混乱が生じる可能性があり、あるいは、
TモバイルUSが請求システム全体を導入することができない、又は適時若しくは効果的な方法で導入できない
可能性もある。
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米国の IT アーキテクチャに関連した機会。 T モバイル US は、 成功するために、顧客に信頼性がある確かな
サービス及び情報セキュリティを提供する必要がある。 T モバイル US は、 IT インフラ 及び ワイヤレス・ネット
ワーク に多額の投資を行って いる。 これにより、プロセスが顕著に向上した場合には、 その 節約 効果 は、 前に
想定していたものよりも高くなる可能性がある。
調達。 ドイツテレコム は、多様 な技術(情報及び通信技術)及び非技術的な製品及びサービスの供給業者と提
携している。より高いリスクを伴う可能性のある製品及びサービスには、ソフトウェア及びハードウェア、
ネットワーク技術コンポーネント、並びに最終顧客に直接提供される全ての製品及びサービスが含まれる。
供給リスクを完全に排除することはできない。輸送上の障害、価格上昇、経済及び政治情勢の変化又は供給
業者 の 製品戦略は、当グループの事業プロセス及び業績に悪影響を及ぼす可能性がある。 さらなる リスク が 、
個々の 供給業者への依存又は個々の 供給業者 の不履行等から発生すること も ある。 これは、中国の電気通信供
給業者について特に当てはまる。 こうしたリスクに対応するため、当グループでは、組織的な施策、契約上の
施策及び 調達 戦略 上の 施策を採用している。
データ保護及びデータ の セキュリティ。 2018 年に 一般データ保護規則 (GDPR) の導入に成功した後、2019年の目
標は、GDPRに基づくより厳しいデータ保護要求をさらに確固たるものとして、当グループ内で調和させ、常に
新しい動向に適合させることであった。例えばGDPRによって、データ処理におけるリスクを評価及び文書化す
るためのプライバシー影響評価(Privacy Impact Assessment)など、新たな手続きが導入された。当グループ
は、このプロセスをプライバシー・セキュリティ評価(Privacy Security Assessment (PSA))によって10年前
から実施しており、現在これもその全体がデジタル化されているが、それでも当グループは、このプロセス
を、現代の迅速な働き方に適合させる必要がある。これが、当グループがPSA@AGILプロジェクトによってプロ
セスを更新して、またさらにプライバシー・アンド・セキュリティ・チャンピオンズ(Privacy&Security
Champions)により、新たな役割を導入した理由である。プライバシー・アンド・セキュリティ・チャンピオン
ズ(Privacy&Security Champions)は、迅速な製品開発において明示的にデータを保護する責任を負っている。
新たな働き方に加えて、当グループは、新たな技術(例えば当グループのデジタル音声アシスタントであるハ
ロー・マゲンタ(Hallo Magenta)で使用されているような、人工知能、IoT及び音声認識技術)を集中的に検討
し、データ保護を遵守しながらこれらを使用する際の指針を策定した。GDPRは、一連の統一された規則に基づ
いて、EU域内のデータ処理についてよい基準を策定している。この規則は、 ヨーロッパにおける高いレベルの
データ保護を保証し、同時に、新たなデジタル ・ ビジネス・モデルへの基盤を整え る 。 しかしながら、これま
での経験から、目指していた調和が犠牲にされていることが分かっている。加盟国の規制当局は、整合性メカ
ニズムの一環として統一性を高めることを求められている。これは特に、個人データ保護問題における位置付
けに関するものや、罰金の枠組みの適用の相違に関するものである。 加えて、新たなデータ保護法は、 EU 域外
のサービス・プロバイダーに関し、主要な規制上の隔たりを解消 した 。 GDPR は、 EU の消費者を対象とするヨー
ロッパ 以外 の市場プレーヤー ( 例えば 、 グーグル (Google) 、 フェ イ スブック (Facebook) 及びアップル (Apple))
にも適用されることで、全体的な競争状況を向上させる 。
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しかしながら電気通信プロバイダーが保管するデータは、 e プライバシー指令 が改訂されるまで、別個の、
より厳しい規制の対象にとどまることとなった。これにより、ヨーロッパの電気通信プロバイダーは、いくつ
かの分野において競争上の不利益を被ることとなったが、これは、これまでに公布された新たな提案規制が 、
一部 だけ 軽減される分野においてである。 GDPR の下で可能なものと比較して、電気通信プロバイダーのデータ
処理の選択肢が実質的に制限されるため、電気通信分野にビッグ ・ データを応用することより期待される可能
性の全部は発揮されないことが予想される。計画されている e プライバシー規則(eプライバシー指令を置換え
ることが想定されている。)の現在の草案によると、メタデータは顧客の承認がある場合に限り処理可能にな
る。eプライバシー規則の草案は、仮名を使用した対応する目的の処理の可能性を提供しない。しかし、特に
ビッグ・データの活用においては、信頼性のある結果を導き出すために大量のデータが利用される。純粋に同
意に基づく解決法では限界がある。これによって、駐車スペースの発見、事故の回避、テレビ番組のカスタマ
イズ又はヘルスケア分野における遠隔監視といった、消費者に有用となる可能性があるが匿名のデータでは実
施できない様々なサービス・モデルが排除されることとなる。しかし、欧州理事会に提出された、 e プライバ
シー規則を、GDPRにより近いものとするための 提案書は、正しい方向性への前進である。特に、 eプライバ
シー規則に、仮名を使用した対応する目的の処理を組み込む提案は、技術革新に配慮した規制への重要な第一
歩であり、同時に高いレベルのデータ保護を維持している。したがって、提案される法案が、2020年にもこの
均衡のとれた方法を踏襲し続けることが重要である。
IT セキュリティは、 依然として主要な課題である。事業プロセスにおけるセキュリティ統合及び従業員間の
セキュリティに対する意識向上のための施策といった予防策に加えて、当グループは、脅威及びサイバーリス
クの分析により大きな重点を置いて、これらの課題に取り組んでいる。 当グループは多くの新たな課題に直面
している。近年、焦点は防止から分析に移った。ここで当 グループ の早期 警告 システムが役立つ。これ は 、 サ
イバー攻撃の新たな 発信源 及び 類型を検出し、 厳密 なデータ保護を維持すると同時に攻撃者の行動を分析する
ことで、セキュリティ分野での新たな傾向を 特定する 。 当グループの早期 警告 システム は 、 IT システム に脆弱
性があるかのように装う ハニーポット・システム に加え、 スパム・メール、ウィルス及びトロイの木馬に対す
る 警報 及び分析ツールを含んで いる 。当グループは、これらのシステムの全てから得た情報を、新たな攻撃パ
ターンの検出及び新たな保護システムの開発をするために、公共団体や民間団体と交換 している。
サイバー犯罪及び産業スパイは増加している。 当グループはこれらのリスクに対し、包括的なセキュリ
ティ・コンセプトで対応している。 当グループは、 より 高 い 透明性を 生み出してこれらの脅威に取り組む上で
の立場を強化するために、 公共団体及び民間団体等との パートナーシップをより一層頼りにしている。 セキュ
リティ・バイ・デザイン (Security by Design) の原則により、当グループはセキュリティを新製品及び情報シ
ステムのための開発プロセスの不可欠な一部として確立した。また、当グループは 、 義務付けられている 集中
的 な デジタル・セキュリティ・テストを実施 し ている。
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当グループは、ITセキュリティ・ソリューションを使用して当グループの成長を加速させるための努力を続
けている。そ のために、当グループはTシステムズ内に当グループのセキュリティ部門を統合した。 当グルー
プは、 このエンドツーエンドのセキュリティ・ポートフォリオ を用いて、モノのインターネット(Internet of
Things)及びインダストリー4.0(Industry 4.0)などのメガトレンドを背景にしたセキュリティ構想により、市
場シェア及び評価を確保することを望んでいる。また当グループは、サイバー・セキュリティの分野において
パートナー・エコシステムを継続的かつ段階的に拡大させている。マゲンタ・セキュリティ ・ ポートフォリオ
(Magenta Security portfolio)並びに製品及び今後のイベント(ドイツテレコムのマゲンタ・セキュリティ年
次規定(annual Magenta Security Convention)等)の最新情報の概略は、https://security.telekom.comを参
照のこと(ドイツ語のみ。)。 当グループは、当グループのウェブサイト (www.telekom.com/en/corporate-
responsibility/dat ▶ -protection-data-security) に、データ保護及びデータのセキュリティの最新の動向に
関する情報を定期的に掲載している。
ブランド、コミュニケーション及び評判から生じるリスク及び機会
ネガティブなメディア報道。 当グループの製品及びサービス又は企業活動及び責任に関する予測不能なネガ
ティブなメディア報道は、当グループの評判及びブランド・イメージに極めて大きな影響を及ぼす可能性があ
る。ソーシャル・ネットワークが、そのような情報や意見がより速くかつ広く拡散することを可能にした。最
終的には、ネガティブな報道は当グループの収益及びブランド価値に影響を及ぼし得る。これを回避するた
め、当グループはとりわけ顧客、メディア及び金融界と恒常的、集約的かつ建設的な対話を行っている。当グ
ループにとっては、全ての利害関係者の利益につき最大限に均衡のとれた見解を持ち、それにより信頼のおけ
るパートナーとしての当グループの評判を維持することが最優先である。
持続可能性 の リスク及び機会 。 当グループにとって、リスク及び機会の包括的な管理は、生態学的 若しくは
社会的 な 要因又は 当社の管理から生じる機会及びリスクの検討 も意味する 。 この目的のために、当グループ
は、現在及び潜在的なリスク及び機会を特定するプロセスにおいて、積極的及び体系的に全ての関連する利害
関係者に関与している。生態学的、社会的及びガバナンスに関する問題を 継続的に モニタリングすることと並
行 し て、当グループは、これらの問題に対する当グループの利害関係者の立場を体系的に判断している。 当グ
ループがここで使用する重要なツールは 、 当グループが 全ての利害関係者 を対象にオンライン上で行っている
調査 、 特に法律文書、研究及びメディア発行物を含む文書の分析、国内・国外の事業協会及び社会組織
( GeSI 、 BDI 、 Bitkom 、 Econsense 及び BAGSO 等)の 作業部会及び委員会 への関与 、 当グループが組織する利害関
係者対話フォーマット、当グループの様々な出版物 ( プレス・レビ ュー及びニュースレター等)である。当グ
ループはさらに、当グループの社内コンプライアンス評価に最大の持続可能性リスクを組み入れることで、
様々な事業分野において関連する位置付け及び方策の作成を記録する。
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当グループは、当グループの主な持続可能性管理の問題として、以下を特定した。
- 評判。 当グループ が どのように 持続可能性の問題を 取り扱うかも、 当グループの評判について の 機会及
びリスクの両方に関係す る 。 高い水準のサービス品質が、顧客の認識を高めるための最も重要な要素の
1つである。顧客満足度 が 非財務業績指標として当グループの管理に組み込まれ ていることは、この件
の重要性を明確に示している。 透明性及び報告 は 、 当グループ において 他の外部の利害関係者 か らの 信
頼を 高める上で役立っている 。当グループの年次報告書及び CR 報告書もこの目的 に適うものである 。し
かし、データ保護、サプライ・チェーンの事業 慣行 、 及び人権に関連する行動 等の 業務基準等の問題も
また、評判のリスクを伴っている。当グループのブランド、製品又はサービス が ネガティブなメディア
報道 の話題に関係している 場合、当グループの評判 が 大き く傷つく可能性がある。当グループの持続可
能性管理の活動の一環として、当グループはかかる潜在的なリスクを継続的に検討し、これらを最小限
に抑えるための措置をとる。 これには、これらを体系的に当グループの社内コンプライアンス管理シス
テムに組み入れることで、持続可能性の問題に関するリスク及びこれが部門を超えた評価に与える影響
の間の関連性を決定することが含まれる。 当グループは、当グループの評判を向上させるために当グ
ループの製品及びサービスが持続可能性にどの程度プラスの貢献を行っているかを算定する。
- 環境 保護。 当グループは、統合した気候戦略を追求している。これは、気候変動が当グループ及び利害
関係者に引き起こすリスクだけでなく、気候変動がもたらす機会にも焦点を当てることを意味する。
2030年までに、 ICT の製品及びサービスは、 予測されるリバウンド効果を考慮した場合であっても、ICT
セクター自体が出すCO 排出量の最大7倍を他の産業において削減する可能性を持つ ( GeSI のデジタル・
2
フォー・パーパス(Digital for Purpose) 調査 による。 ) 。 楽観的な見解によると、 これは 2030 年 まで に
世界の CO 排出量 の 9 %を 削減することを意味する。加えて、2030年までに約3兆米ドルの投資が技術革
2
新的な解決方法に対して予定されており、これによって事業の拡大だけでなくSDGの支援も実現される。
当グループは、製品ポートフォリオを評価して持続可能性のメリットを特定することで、この流れを支
えている。加えて、当グループは、当グループ独自の価値連鎖が生成する量に比して、当グループの製
品及びサービスが削減する排出量の割合を継続して改善することを望んでいる。この数値によると、
2019年における当グループのドイツの顧客に対するプラスのCO 効果は、当グループ自身のCO 排出量に比
2 2
して144%高かった(イネーブルメント係数2.44対1)。
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気候変動リスクは、度合いを増す異常気象の形で既に見てとれる。これは、当グルー プの利害関係者
(当グループの顧客、サプライヤー及び従業員等)に直接的な影響を及ぼしている。このリスクは、リス
ク管理の一環として事業の継続に関連して評価され、事業部門の事業レベルにおいて管理される。加え
て、当グループは、気候に関連する財務リスク及び機会に関する報告を、気候関連財務情報開示タスク
フォース(TCFD)の勧告に同調させるための方法を社内評価している。これは、戦略、統制及びリスク管
理のための既存の手法に基づいて構築されるべきものである。
この領域において、当グループはCO 排出量を削減することでさらなる予防的行動をとることができ
2
る。これが、当グループ全体の排出量を2030年までに2017年から90%削減するという新たな野心的な目
標を当グループが設定した理由である。環境保護は、CO 排出への課税の導入あるいはエネルギー・コス
2
トの増加のいずれであれ、財務リスクももたらす。これらのリスクに対して当グループが講じている対
策には、エネルギー効率を測定し、その改善方法を探ることも含まれている。2019年に当グループの3
つの子会社( ハンガリーの マジャールテレコム(Magyar Telekom)、ギリシャのOTE及びTモバイル・ネザー
ランド (T-Mobile Netherlands) は、必要電力量の100%を再生可能エネルギーで賄い、別の3つの子会社
(ドイツのドイツテレコム、TモバイルUS及びクロアチアのフルバツキテレコム(Hrvatski Telekom))はこ
の目標をほぼ達成しており、このように気候リスクの低減に努めている。
- 供給業者。 当グループは、当グループのサプライ・チェーン における 持続可能性 の 向上 を 、 当グループ
の評判を高め、事業を成功させる 機会と捉えている。当グループ は、 世界規模で調達活動 を 行うことに
伴う一般的なリスクの他に、各国及び 供給業者 固有の リスク にさらされる可能性がある。これには、例
えば 児童 労働者の使用、環境破壊の意識的な容認、又は不適切な現地の労働 環境及び 安全環境が含まれ
てい る 。当グループは、体系的に供給業者を調査 することにより、 これらのリスクを低減させている。
当グループは、 これらの監査を、共同監査会社(JAC)の範囲内で行っている。JACの目的は、当グループ
の サプライ・チェーン の持続可能性のリスクを低減させ、人権問題を含む生態学的及び社会的側面を向
上させることにある。したがって、監査は、国際的に認められたガイドライン及び基準(例えばILOの中
核となる労働基準(ILO Core Labor Standards)、国連のビジネスと人権に関する指導原則(UN Guiding
Principles on Business and Human Rights)及びOECD多国籍企業行動指針(OECD Guidelines for
Multinational Enterprises))に準拠している。 当グループの国際的な持続可能性基準を遵守する供給業
者とのパートナーシップにより、高水準の製品品質及び調達の 信頼性 が確保される 。当グループは、特
別な開発プログラムを設け、 戦略的な供給業者が社会的及び生態学的ともに許容することができ、かつ
経済効率もよい事業慣行を導入する手助けを行っ てい る。このプログラムは、当事業年度に再び相当な
成功を収め、以下の3つの主要な利点を有している 。 つまり、当グループの供給業者の労働条件にプラ
スの影響を及ぼし、彼らの 利益性 を上げ、当グループ及び供給業者双方にとっての持続性に対する経済
関連性を明確にした。例えば、 当グループの供給業者 における 労働条件 の 改善は 、 労働関連の事故 数の
減少及び 離職率 の 低下につながる 。 これにより 高 品質な製品が確保され、 生産性が 上がり、 同時に、 人
材の採用 及び 訓練費用が削減される。このように 、 当グループは当グループの供給業者の利益性及び CR
業績を強化するだけではなく、特定 された リスク を大幅に減少させ てい る 。
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健康及び環境。 モバイル通信又はモバイル通信で使用される電磁場は、潜在的な健康リスクに 関する懸念を
公衆の間に定期的に引き起こしている 。 この 問題 は、 依然として国民的 、 政治的及び科学的 議論の的になって
いる 。 公衆の受 任 問題 の ほとんど は 、 モバイル通信 ネットワーク 及び 場合に応じて スマートフォン、タブレッ
ト及びラップトップといった携帯端末機の使用に 関するものである 。 議論によって、 モバイル ・ インフラの 構
築への影響も増している 。 固定ネットワークにおいては、 従来のIP及び DECT( デジタル・コードレス ) 電話及び
Wi-Fi 技術を使用する デバイスの利用 に 影響を与える可能性がある 。 電磁場に関する制限値の引き締め又は モ
バイル通信 における予防措置 ( 例えば 、建築法の改正や携帯電話への表示義務 の リスク ) の 実施といった規制介
入のリスクもある。
この数年間に、世界保健機関 (WHO) や国際非電離放射線防護委員会 (ICNIRP) 等の認知されている専門機関
は、モバイル通信 に関する 現在の 制限値 を 繰り返し 見直しており 、 現在の科学知識に基 づき 、 モバイル技術の
使用 は (当該制限値が遵守されていれば)安全であると 確認している。 様々な専門機関(現在は ICNIRP ) は 、最新
の科学研究結果に基づいて推奨される制限値について、定期的に見直しを行っている。
当グループは、特定の制限値が遵守されればモバイル通信技術は安全であると確信している。当グループの
この確信は、認知されている機関の評価により支えられている。この問題に関する当グループの責任あるアプ
ローチは、当グループ全体の EMF ポリシーに現れている。これに従い、当グループは、法的要件で規定されて
いる以上の透明性、情報、参加及び独立したモバイル通信研究の支援に努めている。当グループは、客観的か
つ科学的に根拠があり、また透明性のある情報ポリシーを追求することにより、公衆の間にある 懸念 の克服を
目指している。したがって、当グループは引き続き、各地方自治体との間で 信頼に基づく 対話を 継続し、成功
裏に進める ことが当グループの義務であると考えている。この点は、 2013 年にモバイル・ネットワークの 拡張
に向けた地方自治体との長期にわたる協力関係が法制化されて以降 特に 当てはまり、以前は、この協力関係
は、ネットワーク事業者による自発的な自主約束に基づいていた。
訴 訟
主な係争中の訴訟 手続 。 ドイツテレコムは政府機関、競合会社及びその他の当事者に対して、裁判所内外
の訴訟における当事者となっている。下記の訴訟は、当グループの観点から特に重要なものである。極端に
稀なケースにおいて 、 個々の訴訟及び独占禁止手続の重要性に関し て 要求された開示が行われ ていない場合
は 、 それは、 かかる 開示が関連する訴訟の結果を著しく損 なう 可能性があると 当グループが判断したためで
ある。
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- 目論見書に係る責任に関する訴訟(第3回公募又はDT3)。 これは当初2000年5月26日 付の目論見書に従っ
て売り出された T 株式の購入者と 称する 約 16,000 人もの人数による約 2,600 件の訴訟 に関連したもので
あった 。 原告は、この目論見書で示され た 個々の 数字が 不正確 又は 不 完全で あると主張している。 現在
の係争額は 総額約 78 百万ユーロ及び利息である。訴訟の一部には、ドイツ復興金融公庫 (KfW) 及び / 又は
ドイツ 連邦共和国並びに株式発行銀行に対する訴訟も含まれ る 。 フランクフルト・アム・マイン地方裁
判所は、ドイツにおける投資者モデル手続法 (Kapitalanleger-Musterverfahrensgesetz(KapMuG)) に基づ
き、 付託命令 を フランクフルト・アム・マイン上級地方裁判所に提出し、第一審を一時的に留保した。
フランクフルト・アム・マイン上級地方裁判所は 、 2012 年 5月 16 日に、ドイツテレコム ・アーゲー の 目
論見書に 重要な誤り はなかったとの 判決 を下していた。連邦司法裁判所は、 2014 年 10 月 21 日の 決定で当
該 判決を 一部 棄却し 、 目論見書に誤りがあったとして、フランクフルト・アム・マイン上級地方裁判所
に本件を差し戻した。 2016 年11月30日、フランクフルト・アム・マイン上級地方裁判所は、連邦司法裁
判所によって特定された目論見書の誤りはドイツテレコム・アーゲー側の責任である可能性があるが、
当該責任の詳細については第一審で立証されるべきであるとの判決を下した。ドイツテレコム・アー
ゲー及びモデル手続における一部の個人の原告は、いずれもこの決定に対して連邦司法裁判所に控訴し
た。 当グループは、ドイツテレコム・アーゲーが損害に対して責任を負う必要がないことには説得 力の
ある 理由がある、という意見を持ち続け てい る 。 既に十分な偶発債務が認識されており、連結財務書類
に対する注記に示されている。ドイツGAAPに従って作成されているドイツテレコム・アーゲーの年次財
務書類では、かかるリスクに対する十分な引当金が認識されている。
- 提携相手である電話帳出版社による請求。 2013 年末、加入者の電話帳を編集し出版するために、当時の
デーテー・メディエン GmbH(DeTeMedien GmbH) ( 以前の ドイツ テレコム・アーゲーの完全子会社であり 、
現在の 名称 は ドイツ・テレ・メディエン GmbH( Deutsche Tele Medien GmbH) ) と共同してジョイントベン
チャーを立ち上げた複数の出版社が、デーテー・メディエン GmbH( DeTeMedien GmbH ) 及び / 又はドイツテ
レコム・アーゲーを提訴した。原告らは、ドイツ・テレ・メディエン GmbH( Deutsche Tele Medien GmbH)
に 対して損害賠償又は 払戻し を 請求し、ドイツ・テレ・メディエン GmbH( Deutsche Tele Medien GmbH)
の 連帯債務者としてのドイツテレコム・アーゲーに対して、一定の限度で損害賠償又は 払戻し を請求し
ている。原告らは、ジョイントベンチャーにおいて加入者情報提供料金が過剰請求されたとする主張を
請求の根拠と し ている 。 81 人の当初の 原告 に よる 請求総額は 、 2014 年末 で 約 470 百万ユーロ及び利息と
なっている。 2015 年10月には、かかる紛争について和解する合意が出版社の大多数との間で成立し、そ
れ以降、複数の請求が確定的に取り下げられ、又は撤回された。現在は7件の訴訟が依然として係属中
であり、残りの紛争 額は 約 50 百万ユーロ及び利息であ る。これらの訴訟のうち1件において、2019年1
月29日に連邦司法裁判所はその判決に対する控訴を却下した。この決定は、他の訴訟にも、関連するリ
スクがごくわずかとして分類される可能性があるなどの、直接的な影響を持つ。その結果、今後当グ
ループはこの一連の訴訟につき報告しない。
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- ケーブル管路の共有の料金に関する損害賠償請求。 2012年、カベル・ドイチュラント・フェアトリー
ブ・ウント・セルビス GmbH( Kabel Deutschland Vertrieb und Service GmbH )( 現在の ボーダフォン・カ
ベル・ドイチュラント GmbH(Vodafone Kabel Deutschland GmbH) であり、 以下「 V KDG 」という。 ) は 、 テ
レコム・ドイチュラントGmbH に対し、 将来ケーブル管路の容量を使用する権利 の 年間手数料を 引き下
げ、 これに関連して 2004 年以降行われた支払いの一部 を 払 い 戻 すよう求める請求を行った。V KDG の 最新
の見積りによると、V KDG の 請求は、約624百万ユーロの他に、追加利息による利益とされる約9百万ユー
ロ及びそれぞれの利息となった。VKDGは、2009年より前の請求を現在止めている。2013年にフランクフ
ルト・アム・マイン地方裁判所がこの要求を退けた後、2014年12月には、フランクフルト・アム・マイ
ン上級地方裁判所も控訴を棄却した。2017年1月24日付の判決では、連邦司法裁判所が控訴判決を無効
とし、フランクフルト・アム・マイン上級地方裁判所に本件を差し戻し、さらなる審議を命じた。2018
年12月20日付の判決において、フランクフルト・アム・マイン上級地方裁判所は、控訴を再度棄却し
て、それ以上の控訴は認めなかった。 類似 の 訴訟 手続 としては、2013年1月に、 ユニティーメディア・
ヘッセン GmbH & Co. KG (Unitymedia Hessen GmbH & Co. KG) 、 ユニティーメディア NRW GmbH
(Unitymedia NRW GmbH) 及び カベル BW GmbH(Kabel BW GmbH) が 、 テレコム・ドイチュラント GmbH に対し、
ケーブル管路の共有について、 個別に 正確に定められた 金 額より も 多い 料金 を 原告に請求することをや
めるよう要求 する旨の提訴を行った 。 これに加え、 原告は現在約570百万ユーロ及び利息の払戻し を 要求
している。この請求は、2016年10月11日にケルン地方裁判所の第一審において棄却された。2018年3月
14日の判決では、デュッセルドルフ上級 地方裁判所 が 、この決定に対する控訴を棄却した。両方の訴訟
において、原告は、連邦司法裁判所に対し、控訴が認められなかったことにつき不服を申立てている。
現時点では、これら両方の 訴訟 による財務への影響を 十分な 確実性 を もって 評価することはできない。
- 過去の法的拘束力のある仲裁決定に相反するにもかかわらずマレーシアで提起された損害賠償請求。 セ
ルコム・マレーシアBerhad(Celcom Malaysia Berhad)(以下「セルコム」という。)及びテクノロジー・
リソーシズ・インダストリーズBerhad(Technology Resources Industries Berhad)は、ドイツテレコ
ム・アーゲーの子会社であるディー・ティー・アジア・ホールディングGmbH(DeTeAsia Holding GmbH)を
含む計11の被告を相手として、マレーシアのクアラルンプールの州立裁判所に訴訟を提起している。原
告は、232百万米ドルの損害賠償及び補償並びに利息を要求している。ディー・ティー・アジア・ホール
ディングGmbH(DeTeAsia Holding GmbH)は、自社に有利であった最終的な仲裁判断に基づき、2005年にセ
ルコムに対してこの金額を強制執行していた。この件に関する主要な第一審の裁判所の手続は、2018年
1月に開始された。かかるリスクに対する十分な引当金が認識されていた。
- Tモバイル・ポルスカS.A.に対する仲裁手続。 ポーランドの電気通信プロバイダーであるP4 Sp.z o.o.は
2019年8月、Tモバイル・ポルスカS.A.に対する仲裁手続を開始した。原告は約400百万ポーランドズロ
チ(約93百万ユーロ)及び利息を、自身が受領する権利のある遡及的なモバイル着信料金の支払いとして
請求している。
- 特許及びライセンス。 他の多くの大手電気通信及びインターネット・プロバイダーと同様に、ド イ ツテ
レコムは多数の知的財産権紛争にさらされている。当グループは、ライセンス料及び / 又は 補償 金を支払
うこととなるリスクがある。また例えば、製品の販売又は技術の使用に関連して差止命令を受けるリス
クもある。
さらに、 ドイツテレコム は これらの手続のそれぞれにおいて、積極的に抗弁及び/又は主張をするつもりで
ある。
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独占禁止に関する手続
全ての企業と同様に、当グループは独占禁止法の 適用を受けている 。 当グループは近年、コンプライアンス
の 取り組み を この分野に おいても特に強化し た。 それ に もかかわらず 、 ドイツテレコム及びその子会社は 、 時
として 競争法による訴訟又はその後の民 法 上の 損害賠償請求 訴訟 を受けている 。 重要 な独占禁止訴訟 及び それ
に起因する損害賠償請求について 以下 に 述べる。
欧州委員会の罰金を 科す 決定を受けたスロバキアテレコムに対する損害賠償請求。 欧州委員会は、スロバキ
アテレコムがスロバキアのブロードバンド市場で市場支配力を乱用していたと2014年10月15日に判断し、その
結果、スロバキアテレコム及びドイツテレコムに対し罰金を科し、この罰金は2015年1月に全て支払われた。
スロバキアテレコム及びドイツテレコムは、2014年12月29日付の欧州委員会の決定に対し、欧州連合一般裁判
所に異議申立てを行った。2018年12月13日に、裁判所は欧州委員会の決定を一部覆し、罰金を総額13百万ユー
ロへと低減させた。この好意的な判決にもかかわらず、スロバキアテレコム及びドイツテレコムは、2019年2
月21日に、一般裁判所の判決に対する控訴を欧州司法裁判所に提起した。この控訴により、スロバキアテレコ
ム及びドイツテレコムは、とりわけ、欧州委員会がスロバキアテレコムの行為を乱用と認定したことを覆すよ
う求めている。欧州委員会の決定を受けて、競合会社は、スロバキアテレコムを相手取り、ブラティスラヴァ
の民事裁判所に損害賠償訴訟を提起した。かかる請求は、現時点で、総額215百万ユーロ及び利息に及ぶ3つ
の請求が目下のところ係属中であり、欧州委員会が判断した、スロバキアテレコムが独占的な市場地位を乱用
したことにより生じたとされる損害の賠償を求めている。現時点では、財務への影響を十分な確実性をもって
評価することはできない。
財務リスク
流動性、信用、通貨、金利リスク
当グループは、その資産、負債及び予定される取引に関して、とりわけ、流動性リスク、信用リスク並びに
為替及び金利 の 変動 リスクにさらされている。 当グループは、 これらのリスクを抑制する ことを望んでいる。
キャッシュ・フローに影響を及ぼすリスク は 、標準的なプロセスで監視され、これに従ってデリバティブ及び
非デリバティブ・ヘッジ手段を用いてヘッジされている。 デリバティブ財務手段は、ヘッジ目的にのみ用い、
投機目的のためには用 いない 。 以下に記載する流動性、信用、通貨及び金利の各リスク分野は 、 全てのヘッジ
を考慮に入れて 評価されたものである。 リスク 評価 の さらなる情報 に ついては、上記「 会社のリスク 」の表を
参照のこと。
流動性リスク。 当グループ 及び ドイツテレコム・アーゲーの支払能力及び財務 柔軟性 を 常時確保 するため、
当グループは、 当グループの流動性管理の一環として、 クレジット・ライン及び現金 の 形で 流動性 準備金 を 維
持している。
ドイツテレコムは、 201 9 年 12 月 31 日時点で 2 1 の 銀行との間で総額 126 億ユーロの標準化された二者間クレ
ジット協定を結んでい た 。 当グループの 流動性準備金は、常に、 満期の債券及び少なくとも次の 24 か月間のた
めの長期ローンをカバー してきている(以下の図を参照のこと。)。 現在の 見解では、国際 債券 市場に対する 当
グループの アクセスは危ぶまれていない。
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信用リスク。 当グループは、 営業 事業 及び一 定 の 金 融 活動に おいて、 信用リスクにさらされている。それ
は、カウンターパーティーが契約上の義務を履行しない リスク である。この信用リスクを最小限に抑えるため
に、当グループは、財務活動に関する取引を BBB+/Baa1 以上 の 信用格付以上のカウンターパーティーとのみ行
う が 、当グループは限度を積極的に管理する。 加えて、当グループは、当グループのデリバティブ取引契約の
担保契約を締結した。当グループは、分散 方式で 事業 の売上債権 を継続的に 監視 し ている 。 当グループ におけ
る 企業 顧客、とりわけ国際 通信事業者 との事業は 、 特別な支払能力モニタリングを受けている。
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通貨リスク。 投資、資金調達措置及び営業により通貨リスクが生じる。外貨の変動によるリスクは、当グ
ループのキャッシュ・フローに影響が及ぶ場合にヘッジされる。しかしながら、当グループのキャッシュ・フ
ローに影響が及ば な い 外貨リスク ( 例えば 、外国事業の資産 ・ 負債を ユーロ に換算することにより生じるリス
ク ) はヘッジされない。 し かしドイツテレコムは、一定の状況下においてこれらの外貨リスクをヘッジするこ
ともできる。
金利リスク。 当グループの金利リスクは 、 財務活動から主に発生する。変動金利負債に関する金利リスクに
加えて、これには新たな負債の問題も含まれる。金利は現在常に低いので、金利上昇についての当グループの
リスク評価が増大している。この結果、リスクカテゴリー「 流動性、信用、通貨、金利の各リスク 」のリスク
の程度は、全体的に「低」から「中」に上がった。金利リスクは、当グループの金利管理活動の一環として管
理されている。最大で、ユーロ建ての債務状況に関して、毎年可変要素が設定されており、米ドル建ての債務
状況は、発行体の解除権を伴う確定利付き証券によって主に決定されている。取締役会及び監査役会には、定
期的に状況報告が行われている。さらなる情報は、「第6 経理の状況-1 財務書類-(6) 連結財務書類
に対する注記41 金融商品及びリスク管理」を参照のこと。
税務リスク
当グループは、 多くの 様々な 国 で 適用 される税法の対象となっている 。 各地域の税法又は判例法の変更及び
既存の規定の異なる解釈によってリスクが生じ得る。これらの リスク は 、 当グループの税務上の損金及び優遇
措置並びに未収税及び納税債務の双方に影響を及ぼす可能性がある 。
その他の財務リスク
本項 に は、現時点では重要性を有しない と見なされる か 、又は 現在 の 認識に基づいて評価することができな
い他の財務リスクについての情報を記載する。
格付リスク。 201 9 年 12 月 31 日時点で、ムーディーズによるドイツテレコム ・ アーゲー の 信用格付は Baa1 「マ
イナスの見通し」 であり、スタンダード&プアーズの格付は BBB+ 「信用格付見直しにおいてマイナスの見通
し」であり、フィッチは現在の格付である BBB+ 「安定的な見通し」を確認した 。 スタンダード&プアーズ も、
TモバイルUS及びスプリント間 の企業結合のクロージングが成功した 場合に、 ドイツテレコム・アーゲー の 格
付をBBBに下げる可能性がある旨を公表した。経時的に、低い格付は、デットファイナンスの費用を増大させ
る可能性がある。
連邦共和国又はドイツ復興金融公庫 (KfW) による株式売却。 201 9 年 12 月 31 日現在 、 連邦共和国及びドイツ復
興金融公庫 (KfW) は 共同で 3 1 . 9 %のドイツテレコム・アーゲー 株式を 保有している。連邦共和国は民営化政策
を今後も継続し、資本市場 に混乱を起こさないように考えられた方法で、 ドイツ復興金融公庫 (KfW) による関
与の下 で 、 株式持分をさらに売却する可能性がある。連邦共和国若しくはドイツ復興金融公庫 (KfW) によ って
株式が大量に 売却されることにより、 又は そのような憶測により 、 T株式の価格 が マイナスの影響を受けるリ
スクが ある 。
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当グループの CR戦略 は、当社の価値を長期的に高め、このことはさらに事業リスクを低減させるプラスの効
果を有する。長期的な視野を持つ投資家はこの方法を認めている。キャピタル・マーケットではこのことは、
例えば投資家が少なくとも一部に持続性基準に基づいて投資判断を下している保有T株式の割合からも明らか
である。2019年9月30日現在、T株式全体の約18%は、SRI(社会的責任投資)投資家により保有されており、
3%は、資金を主にSRIの観点に従って管理する投資家により保有されている。
ドイツテレコム・アーゲー資産の減損。 ドイツテレコム・アーゲー及びその子会社の資産価値は、定期的に
見直され ている。 定期的な 年1回の 測定に加え、個別に減損テストを実施することがあり得る。例えば、経
済、規制、事業又は政治の環境変化 に より 、 のれん、無形資産 、 有形固定資産、持分法で会計処理された投資
又はその他の金融資産 の 価値 が低下した可能性が示唆される場合である。 かかる テストにより、減損損失 ( 但
し、現金支出を伴わない。) が認識されることもあり得 る 。 これは、当グループの業績に多大な影響をもたら
す可能性があり、その結果、ドイツテレコム ・ アーゲー の 株価 に 悪影響を及ぼし得る。
詳細は、「第6 経理の状況-1 財務書類-(6) 連結財務書類に対する注記-会計方針の要約-判断及
び見積り」の項を参照のこと。
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3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
以下の考察には、将来の予測に関する記述が多く含まれている。かかる将来の予測に関する記述は、2019連
結事業年度末時点での判断に基づいている。
2019事業年度のハイライト
取締役会
前人事担当取締役(CHRO)であるDr.クリスチャン・P・イレックは、2019年1月1日付で新たな最高財務責任
者(CFO)に任命された。Dr.イレックの後任の人事担当取締役(CHRO)として、ビルギット・ボーレが2019年1月
1日付で取締役会に加わった。トルステン・ラングハイムは、2019年1月1日付で、新設された米国及びグ
ループ開発取締役会部門のヘッドとして、ドイツテレコム・アーゲーの取締役会に加わった。このため、2019
事業年度にドイツテレコム・アーゲーは取締役会部門が9つとなった。
データ保護、法務及びコンプライアンス(DRC)の取締役会部門は、Dr.トーマス・クレマーの任期が終了する
2020年3月31日付で解散する。DRC取締役会部門の個別部門は2020年1月1日付で他の取締役会部門(財務、人
事、並びに技術及びイノベーション)に配属された。ビルギット・ボーレは2020年1月1日付で人事及び法務
取締役会部門のヘッドに就任し、担当範囲がデータ保護、法務及びコンプライアンス部門まで拡大した。Dr.
クレマーは、この日から任期が終了するまでDRC取締役会のメンバーとしての職務において、担当部門の個々
の部署の各移転先部門への移行を監督する。このため、ドイツテレコム・アーゲーは2020年4月1日現在、取
締役会部門が8つとなる。
企業間取引
2018年11月27日、欧州委員会は、Tモバイル・ネザーランド・ホールディング・B.V.(T Mobile Netherlands
Holding B.V.)による 電気通信プロバイダーのテレ2ネザーランド・ホールディングN.V.(Tele2 Netherlands
Holding N.V.)の買収 を無条件で承認し、この取引は2019年1月2日に完了した。買収日以降、テレ2ネザーラ
ンド(Tele2 Netherlands)はドイツテレコムの連結財務書類に完全連結子会社として含まれている。この取引
は、オランダ市場における収束固定ネットワーク及びモバイル・サービスのより強力でより持続可能なプロバ
イダーを確立することになる。
OTEは、2019年1月15日に、ブルガリア企業のアルバニア・テレコム・インベストAD(Albania Telecom
Invest AD)に対して、購入価格50百万ユーロで テレコム・アルバニア(Telekom Albania)の持分を売却 する契
約を締結した。この取引は当局の承認を受け、2019年5月7日に完了した。
当グループは戦略の柱とする「事業生産性におけるリード(Lead in business productivity)」を実行する
取組みに合わせて、2020年にドイツの事業セグメントに総合B2B事業部門を新設することにより、 法人顧客向
けの電気通信オペレーションを再編 する計画である。新設されるこの部門は、テレコム・ドイチュラントの既
存の法人顧客部門並びにTシステムズのTCサービス部門及びクラシファイドICT部門で構成される。但し、クラ
シファイドITプロジェクト事業に割り当てられた様々な活動は除外される。さらに、会社法に基づき、現在は
ドイツテレコム・アーゲーに帰属するドイツテレコム・グローバル・キャリア部門は、ドイツ事業セグメント
のテレコム・ドイチュラントGmbHに移管される。また、セキュリティ及びモノのインターネット(Internet of
Things)の2つのポートフォリオ部門は法律上独立したグループ事業体となる。この措置の一環として追加的
な人員削減は予定していない。
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ネットワークへの投資
ドイツの競売で5G周波数帯を獲得。 当グループは、2GHz帯域における4つの周波数帯及び3.6GHz帯域におけ
る9つの周波数帯域を総額21.7億ユーロで獲得した。この結果、当グループは計画しているネットワークの展
開に必要な周波数帯を取得できた。当グループの5Gの展開活動は予定通りに進行しており、2019年末までに最
大送信速度1Gbit/sに到達した5Gネットワークはベルリン、ボン、ダルムシュタット、ミュンヘン、ケルン、
フランクフルト/マイン、ハンブルグ及びライプチヒのドイツ国内8都市で既に稼働している。2020年末まで
に、ドイツ国内上位20以上の大都市をネットワークに接続する予定である。
米国で5G周波数帯を確保。 連邦通信委員会(FCC)は、5G向けのミリ波(mm波)周波数帯を使用するライセンス
の競売を行った。28GHz周波数帯及び24GHz周波数帯の2つの競売の過程において、TモバイルUSは合計367MHz
に対し842.5百万米ドルを支払い、5Gに備えて確かなmm波の保有会社となった。TモバイルUSは、2019年12月に
米国で初めて全国規模の5Gネットワークを開始し、200百万を超える人々にネットワーク・サービスを提供し
ている。
Tモバイル・オーストリア(T-Mobile Austria)が5Gネットワークを開始。 オーストリアでの5G周波数帯の競
売で、マゲンタ製品ブランドの下でサービスを提供しているTモバイル・オーストリア(T-Mobile Austria)
は、12地域全てをカバーする110MHz周波数帯(12地域それぞれ10MHzの11パッケージ)を総額57百万ユーロで取
得した。同社は現在、オーストリア全土で次世代通信標準を展開する態勢が整っている。競売は2019年3月上
旬に終了し、競売にかけられた合計468の周波数帯パッケージのうち438(12地域それぞれ10MHzの39パッケー
ジ)が総額約188百万ユーロで落札された。Tモバイル・オーストリア(T Mobile Austria)は、競売で取得した
周波数帯を使って、2019年3月に初の5G基地局を稼働させた。これ以降、モバイル・ネットワークに接続され
た5G基地局数は31に増加した。その他のヨーロッパ各国企業(national companies)でも順調な進展が見られ
る。例えば、クロアチアではドローンが5Gネットワークで動画映像を配信し、初の5Gによるスマート・ベンチ
が設置され、ポーランドでは5Gの試験的導入が開始された。チェコ共和国及び北マケドニアでは、既に様々な
5Gの応用について試験が行われている。
高速インターネットを数百万人に。 当グループの目的は、農村部、都市部を問わずできるだけ多くの人々に
高速インターネット回線を提供することである。ドイツでは多くの新規光ファイバー展開プロジェクトが進行
中である。その中には合同ギガビット・プロジェクトが含まれ、当グループはパートナーと共同で2025年まで
にシュトゥットガルト地域の全企業に超高速インターネットを提供する事業に取り組んでいる。また、2030年
までに、90%の世帯にネットワーク構築の恩恵をもたらす計画である。現在、予想される展開エリアは、シュ
トゥットガルト地域及び近隣地区の175の自治体に及んでいる。ロストック地区では、70を超える地方自治体
で44,000超の世帯、6,100の企業、並びに573の地方政府の建物、学校、消防署、地方当局及び機関が、当グ
ループの光ファイバー回線の1つを引き込むことになる。当グループは、7,200キロメートル超の光ファイ
バー・ケーブル、1,100キロメートルにわたる土木工事、及び約850の新たな光ファイバー配信キャビネットに
よって、この地域だけでも2021年半ばまでに高帯域を実現させる予定である。オーダー・シュプレー郡では、
光ファイバー回線が地域全域に敷設され、約8,000世帯、主にビジネス・パークの約200社の企業、並びに68の
学校及び教育機関が接続される。新しい回線は最大1Gbit/sの通信速度を提供する。対象は、北部の平地から
南部の山間部にまで及んでいる。2019年6月に、ドイツで最も高地にあるタウン・センターとして知られてい
るバルダーシュヴァングの村を当グループの高速ネットワークに接続した。
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詳細については、当グループのメディア情報(https://www.telekom.com/en/media/media-
information/archive/gigabit-project-in-the-stuttgart-region-573240)を参照のこと 。
「不感地域を探す」 「Wir jagen Funklöcher(不感地帯を探す)」と名付けられた新規のイニシアチブは、ド
イツ全土のモバイル通信の不感地域50か所を解消することを目指す。地方自治体は、モバイル・ネットワーク
の拡大を図る当グループのキャンペーンにパートナーとして積極的に参画することができる。このキャンペー
ンは、地方自治体、政策当局、市民及び現地企業にイニシアチブへの参加を呼びかけている。その見返りとし
て、当グループは最先端のLTE設備を構築及び運営する。このイニシアチブは、毎年2,000か所のセル・サイト
を追加する、当グループの標準展開プログラムと並行して実施される。申請期間は2019年8月20日に始まり、
2019年11月30日に終了した。539の地方自治体が応じ、提出された申請件数は624件であった。同プログラムの
下で最初に対処する通信不感地域は2020年初めに解消される。当グループは、今後4年間でドイツ全土に最大
で合計10,000か所のセル・サイトを構築する計画である。2019年末時点で、当グループのLTEネットワークは
98.1%の世帯を網羅している。
企業責任
気候保護目標はパリ協定を支持。 当グループの気候保護目標の1つは、2021年までにグループ全体で再生可
能エネルギー資源による電気のみを使用することである。当グループは、2030年までにCO 排出量を2017年対
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比で90%削減する計画である。また、2030年までに当グループの製品及びカスタマー・ソリューションの製造
及び使用による排出量を25%削減したいと考えている。サイエンス・ベース・ターゲット・イニシアチブ
(SBTi)はDAX指数採用銘柄のうち3社目として、当グループの気候保護目標がパリ気候協定の遵守に寄与して
いることを確認した。低炭素で環境にやさしい社会に責任を負うことは、2008年以降のドイツテレコムの企業
責任戦略における3つの活動分野の1つである。
詳細については、当グループのメディア情報(https://www.telekom.com/en/media/media-
information/archive/sbti-confirms-574540)を参照のこと 。
「ウィー・ケア(we care)」は、顧客のためにサステナビリティを可視化するものである。 当グループは、
より持続可能な将来に対する責任を重大に受け止めている。当グループは透明性のさらなる向上に向けて、特
にサステナビリティを重視する顧客にガイダンスを示し、購入の判断をより容易にできるよう、「ウィー・ケ
ア(we care)」のサステナビリティ・ラベルを導入した。これは、ドイツテレコムの特定の製品、サービス、
対策及びイニシアチブの説明に記載される。ラベルには2種類ある。「デジタル・パーティシペーション
(digitale Teilhabe)」のシンボルは、デジタル世界の社会的課題の解決に積極的に貢献していることを表
す。「ウィー・ケア(we care)」のシンボルは環境に関連して、例えば気候保護及び資源の責任ある利用に貢
献する製品、サービス及びイニシアチブを対象とする。
詳細については、当グループのメディア情報(https://www.telekom.com/en/media/media-
information/archive/we-care-is-making-sustainability-visible-for-customers-580446)を参照のこと 。
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気候中立的なセル・サイト。 当グループは、今年、デッテルバッハの街で世界的規模の独自のプロジェクト
を開始した。セル・サイトが初めてバイオメタノール燃料電池を恒久的な動力源として稼働する。燃料電池は
燃焼機関よりも効率的で、保守が容易であるだけでなく、バイオメタノールを使用するため、炭素中立的でも
ある。燃料電池により、セル・サイトは主電源なしで24時間体制の稼働が可能になる。
気候保護に対する包括的アプローチ:SIMカードのサイズを縮小することで、プラスチック廃棄物を削減す
る。 当グループは長年にわたり、サプライヤーと協力して、可能な限り資源効率的な製品を市場に投入するこ
とに努めてきた。例えば、SIMのパンチ・カードのサイズを半分に縮小した。その結果、当事業年度において
ドイツで発生したプラスチック廃棄物の量は20.8トン減少した。ドイツの電気通信会社の中でこうした対策を
講じているのは当グループが初めてである。
スマートフォンの持続可能なリサイクル。 スマートフォンが排出するCO の75%近くは生産時に発生する。
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さらに、デバイスに使用する貴重な原材料の採掘は環境に影響を与えることが多い。スマートフォンの再利用
及びリサイクルは、貴重な資源の節約に役立つ。当グループは2019年に、持続可能なスマートフォンのリサイ
クル・スキームを開始した。これは環境及び気候に有益であるだけでなく、新しい端末を購入する顧客は煩わ
しい手間をかけずに中古のスマートフォンを下取りに出し、購入価格の金額を節約することを選択できる。当
グループは、必要に応じて新しい電池とスクリーンを取り付けて専門的な修復を行い、中古のスマートフォン
を蘇らせて、再び販売できるよう準備をする。
イノベーション
#DABEIはドイツが#TAKEPARTできることを保証する。 9月にベルリンで開催された今年のIFAにおける当グ
ループのブースは、「ベスト・ネットワーク、ベスト・プロダクト、ベスト・サービス」の3分野のアプロー
チに基づいて構成され、5Gの開始からスマート・スピーカー(Smart Speaker)に至るまで多種多様なイノベー
ションが披露された。#DABEI FESTIVALは、当グループがデジタル化の進行する社会の実態に精通した責任あ
るパートナーであることを示すものとなった。当グループは、5G、光ファイバーの展開、並びにマゲンタの製
品及びサービスを中心とするインタラクティブなパフォーマンスに加え、コーディング、ゲーミング、アップ
サイクリングなどのエキスパート及びプロによるワークショップも実施した。
ドローンの安全性及び効率性を高める。 当グループはDFSドイチェ・フルークジッヒャルンクGmbH(DFS
Deutsche Flugsicherung GmbH)と共同で、モバイル・ネットワークを使用して無人航空機を追跡する新たな技
術に取り組んでいる。ジョイント・ベンチャーのドロニクGmbH(Droniq GmbH)は、ドローン追跡プラット
フォームを提供しており、これにより、将来的にはオペレーターの視界を超えたドローンの飛行が可能にな
る。ドロニク(Droniq)は、当初はドイツ市場に焦点を当て、その後、徐々にヨーロッパの他の国々に進出して
いく予定である。ドロニク(Droniq)の主なターゲット市場は、視界を超えてドローンを飛行させる必要がある
インフラ、測量及び農業分野の商業用ドローンのパイロット、並びに警察、消防及び救助隊、並びに一般航空
分野のユーザーである。
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ハノーバー・メッセ:ドローン、スマート・グラス、スマート・ディスプレイ。 2019年4月上旬に開催され
たハノーバー・メッセにおいて、当グループは、どのように「インダストリアル・インテリジェンス」が企
画、製造及び物流の効率化向上に寄与できるかを示した。当グループのブースでは、大手メーカーに加えて中
小企業もスマート・ファクトリーのための製品やソリューションを見出した。その中には、キャンパス・ネッ
トワーク、5G、ドローン、エッジ・コンピューティング、スマート・グラス、スマート・ディスプレイ及び人
工知能が含まれていた。
詳細については、当グループのメディア情報(https://www.telekom.com/en/media/media-
information/archive/deutsche-telekom-at-hannover-messe-565550)を参照のこと 。
コネクティビティがMWCで間近に。 バルセロナで開催された2019年モバイル・ワールド・コングレスにおけ
る当グループのブースは、#TAKEPARTをテーマに掲げ、5Gの可能性を紹介した。消費者及び業界の代表者は一
様に、1,200平方メートルに及ぶエリアにおいて、多くの様々なアプリケーション分野における実演(全て、当
グループのネットワーク及び技術に基づく)を間近で直接経験した。重要なメッセージは次の通りである。将
来のネットワークにより、多くの魅力的な機会が既に開拓されている。デジタル・トランスフォーメーション
の先駆者、推進者及び実現者として、当グループは、誰もが新たなデジタル世界に参加できる基盤を構築して
いる。当グループは、電気通信業界最大の国際展示会において、記録的な人数の来訪者を当グループのブース
に迎えた。
詳細については、当グループのメディア情報(https://www.telekom.com/en/media/media-
information/archive/mwc-2019-dt-brings-connectivity-to-life-563600)を参照のこと 。
イノベーションに関する詳細については、「5 研究開発活動」の項を参照のこと。
パートナーシップ及び対話
5Germany:5Gに関する実業界との対話。 5Gとともにデジタルな未来を積極的に形成する。これは、2019年9
月下旬にハンデルスブラット(Handelsblatt)及びドイツテレコムが企画した当グループの5Germanyユーザー会
議のモットーである。大企業及び中規模企業の多数の取締役会メンバーが政府の代表者とともにベルリンで開
催されたイベントに参加した。こうした参加者とともに、当グループは5Gに対する業界の具体的な要件につい
て話し合った。目標は、ネットワーク事業者、産業界及び政策当局が協力して5Gの展開に取り組むことであ
る。
詳細については、当グループのメディア情報(https://www.telekom.com/en/media/media-
information/archive/5germany-deutsche-telekom-and-business-community-talking-5g-582064)を参照のこ
と 。
産業界向けキャンパス・ネットワーク。 キャンパス・ネットワークは産業分野で高い需要がある。最先端の
モバイル通信技術を使用して、既存のWiFiネットワークを改良するか、全面的に交換することができる。そう
することで容量は拡大し、待ち時間は少なくなり、データ通信はより安全になる。当グループは、法人顧客の
施設内インフラの変革をサポートし、スマート・インダストリアル・ソリューション市場の拡大に対処する、
エリクソン(Ericsson)との戦略的パートナーシップの締結を発表した。2020年より、当グループは各企業の
ニーズに合わせた新たなキャンパス・ネットワーク・サービスも提供する。法人顧客及び中小企業向け製品
は、OSRAM、ZFフリードリヒスハーフェン(ZF Friedrichshafen)、及びボルグワーナー(BorgWarner)(ハンガ
リー)で成功を収めたパイロット・プロジェクトに基づいて計画されている。また2020年には、チェコ共和国
においてオストラバ工科大学と、オーストリアにおいてグラーツ工科大学と協力して5Gのキャンパス・ネット
ワーク構築も行う予定である。
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詳細については、当グループのメディア情報(https://www.telekom.com/en/media/media-
information/archive/campus-networks-new-offerings-for-industry-584018)を参照のこと 。
EWEとの光ファイバー・ジョイント・ベンチャー。 当グループは、エネルギー及び電気通信企業であるEWEと
契約を締結し、グラスファーザー・ノードウェスト(Glasfaser NordWest)という名称のジョイント・ベン
チャーを設立した。このジョイント・ベンチャーは、ファイバー・トゥ・ザ・ホーム(fiber-to-the-home)
(FTTH)技術を基盤として、ニーダーザクセン州、ノルトライン=ヴェストファーレン州及びブレーメン地域の
1.5百万を上限とする世帯及び事業所に高速インターネットを提供することを目的とする。当グループは、約
10年間にわたり、最大20億ユーロを投資する計画である。連邦カルテル庁(Bundeskartellamt)は、合併規制法
に基づく審査を経て、2019年12月30日に最終承認を付与した。
詳細については、当グループのメディア情報(https://www.telekom.com/en/media/media-
information/archive/glasfaser-nordwest-begins-its-work-591494)を参照のこと 。
Tシステムズ及びシーメンス(Siemens)がドイツ産業界のデジタル・トランスフォーメーションを加速。 Tシ
ステムズ及びシーメンス(Siemens)は2019年10月に、産業用モノのインターネット(Internet of Things)に重
点を置く新たなパートナーシップを発表した。このパートナーシップにより、産業界の顧客を対象として制
御・運用技術、情報技術及び電気通信を網羅する完全なソリューションを提供する。この共同デジタル化ソ
リューションは、エンタープライズ・リソース・プラニングや顧客関係管理からサプライ・チェーン・マネジ
メント、製造エンジニアリング・システムに至る広範囲に及ぶ業務への適用を目指している。
詳細については、当グループのメディア情報 (https://www.telekom.com/en/media/media-
information/archive/t-systems-and-siemens-digitization-of-german-industry-584326) を参照のこと 。
デジタルX:デジタル・イノベーションに関するアイデアのアナログ交換。 デジタル革命が定着し始めてい
ることから、デジタルXシリーズのイベントは、アイデアの交換及びネットワーキングに焦点が置かれてい
る。これは、ヨーロッパ最大の業界の枠を超えたデジタル化イニシアチブである。デジタル時代のリーダー企
業数社がこのイニシアチブに参加している。2019年4月にはドイツ全国ツアーがスタートし、ドイツ6地域の
デジタル・アイデンティティが体験されつつある。10月29、30日にケルンにおいて、ドイツ全土から企業や政
策立案者が参加して、デジタルX 2019の大規模なフィナーレが開催された。
詳細については、当グループのメディア情報(https://www.telekom.com/en/media/media-
information/archive/digital-x-events-2020-592012)を参照のこと 。
デジタル化に関する地方諮問委員会。 2019年5月、当グループは新たな地方諮問委員会の最初の会合を開催
した。同委員会は、地域のコミュニティや協会に所属するメンバーで構成され、ブロードバンドの展開、5G及
びその他のデジタル化のテーマに関する課題について協議する。同委員会の中心となる目標の1つは、ドイツ
全土でデジタル化を加速させることである。地方諮問委員会は、地方自治体とドイツテレコムの間に直接対話
の枠組みを提供している。将来的には、アイデア、関心及び期待について協議し、特定の課題に対する迅速な
解決策を見出すためのプラットフォームになるだろう。
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詳細については、当グループのメディア情報(https://www.telekom.com/en/media/media-
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クロアチアでのモバイル・バンキング・サービス。 2019年8月、フルバツキテレコム(Hrvatski Telekom)及
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