ドイツテレコム・アーゲー 有価証券報告書
提出書類 | 有価証券報告書 |
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提出日 | |
提出者 | ドイツテレコム・アーゲー |
カテゴリ | 有価証券報告書 |
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ドイツテレコム・アーゲー(E05830)
有価証券報告書
【表紙】
【提出書類】 有価証券報告書
【根拠条文】 金融商品取引法第24条第1項
【提出先】 関東財務局長
【提出日】 2019年6月28日
【事業年度】 自 2018年1月1日 至 2018年12月31日
【会社名】 ドイツテレコム・アーゲー
(Deutsche Telekom AG)
【代表者の役職氏名】 ティモテウス・ヘッティゲス(取締役会会長)
Timotheus Höttges(Chairman of the Board of Management)
Dr.クリスチャン・P.・イレック(財務担当取締役)
Dr. Christian P. Illek(Member of the Board of Management;
Finance)
【本店の所在の場所】 ドイツ連邦共和国 53113 ボン フリードリヒ・エーベルト・
アレー 140
(Friedrich-Ebert-Allee 140, 53113 Bonn, The Federal
Republic of Germany)
【代理人の氏名又は名称】 弁護士 錦 織 康 高
【代理人の住所又は所在地】 東京都千代田区大手町一丁目1番2号大手門タワー
西村あさひ法律事務所
【電話番号】 03-6250-6200
【事務連絡者氏名】 弁護士 江 邉 義 行
弁護士 所 悠 人
弁護士 向 井 飛 翔
弁護士 荒 谷 誠
【連絡場所】 東京都千代田区大手町一丁目1番2号大手門タワー
西村あさひ法律事務所
【電話番号】 03-6250-6200
【縦覧に供する場所】 該当なし
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第一部 【企業情報】
注(1) 本書において、文脈により別異に解する必要がある場合を除き、下記の語は下記の意味を有するものとする。
・ 「当社」及び「ドイツテレコム」
文脈上、別異に解する必要がある場合を除き、ドイツテレコム・アーゲー(Deutsche Telekom AG)を意味する。
1995年1月1日以前、ドイツテレコムはドイツの郵便・電話・電信国家機関であるドイツ・ブンデスポスト
(Deutsche Bundespost)の一部署として営業を行っていた。また、本書において「ドイツテレコム」は、ドイツテ
レコム・アーゲーの前身機関をも意味し、「ドイツポスト(Deutsche Post)」及び「ドイツポストバンク
(Deutsche Postbank)」は、それぞれドイツポスト・アーゲー(Deutsche Post AG)及びドイツポストバンク・アー
ゲー(Deutsche Postbank AG)並びにそれぞれの前身機関を意味する。
・ 「当グループ」
ドイツテレコム並びに(適切な場合には)グループとしてのドイツテレコム及びその直接・間接子会社を意味する
(但し、「第6 経理の状況」についてはこの限りではない。)。
・ 「ドイツ」、「連邦共和国」又は「共和国」
ドイツ連邦共和国を意味する。
・ 「当社株式」
当社の無額面普通株式を意味する。
(2) 別段の記載がある場合を除き、本書に記載の「ユーロ」及び「 € 」は一定の欧州連合加盟国の法定通貨であるユーロ
を、「米ドル」及び「ドル」はアメリカ合衆国の法定通貨であるアメリカ合衆国ドルを指すものとする。本書におい
て便宜上記載されている日本円への換算は、別段の記載がある場合を除き、1ユーロ=121.10円、1米ドル=108.34
円の換算率(いずれも2019年6月3日に株式会社三菱UFJ銀行が発表した対顧客電信直物売買相場の仲値)により計
算されている。
(3) 本書中の表で計数が四捨五入されている場合、合計は計数の総和と必ずしも一致しない。
(4) 本書において、インターネットのページを参照する場合、かかるページの内容は本書の一部を構成するものではな
い。
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第1 【本国における法制等の概要】
1 【会社制度等の概要】
(1) 【提出会社の属する国・州等における会社制度】
総 論
ドイツ法は、各種の企業形態について規定している。
- 合名会社(Offene Handelsgesellschaft -「OHG」)
商法典(HGB)第105条-160条の適用を受け、組合員全員が組合の負債につき無限責任を負う。
- 合資会社(Kommanditgesellschaft -「KG」)
商法典(HGB)第161条-177条aの適用を受け、最低1名の社員(無限責任社員)が無限責任を負うのに対し、
他の(有限責任)社員はその出資額を限度とする責任を負う。
- GmbH&Co. KG(合資会社の特殊形態)
有限会社がその唯一の無限責任社員となる。
この種の会社は、合資会社に適用ある規定の適用を受ける。
- 有限会社(Gesellschaft mit beschränkter Haftung -「GmbH」)
有限会社法(GmbHG)の適用を受け、法人格を有する。
会社債権者に対する債務は、会社の資産のみをもって弁済され、社員は責任を負わない。
最低25,000ユーロの最低資本を有し、かかる資本は持分に分割される。但し、持分は公正証書によっての
み譲渡可能である。
- 株式会社(Aktiengesellschaft -「AG」)
株式会社法(AktG)の適用を受け、有限会社と同様法人格を有する。会社債権者に対する債務は会社の資産
のみをもって弁済され、株主は責任を負わない。最低50,000ユーロの最低資本を有し、かかる資本は株式
に分割される。株式は、公証人の認証がなくとも譲渡可能である。一般に、株式会社法上認められた会社
の構造は有限会社法上のそれと比べると柔軟性に乏しい。
- 欧州会社(Societas Europaea -「SE」)他の法律に加えて、欧州会社法に関するEUの規則(理事会規則
(EC) No 2157/2001)の適用を受ける。SEは最低120,000ユーロの最低資本を有し、かかる資本は株式に分
割される。株式は、公証人の認証がなくとも譲渡可能である。ドイツのSEに適用ある規定は、株式会社に
適用ある規定によく似ている。
株式会社の特徴を以下に敷衍する。
設 立
株式会社は、1名以上の者を発起人として設立され、発起人は出資と引換えに全株式を引き受けなければな
らない。株式は額面株式又は無額面株式のいずれも発行することができる。資本及び額面株式はユーロで表示
される額面金額を有するものとし、設立時の資本の額は最低50,000ユーロで、額面株式1株の額面金額は1
ユーロ又はその倍数に相当する額となる。株式は、無記名式又は記名式のいずれでもよい。
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定款は公正証書によって作成され、会社の本店所在地を管轄する区裁判所(Amtsgericht)が保管する商業登
記簿に登記されなければならない。定款の必要的記載事項は以下の通りである。
- 会社の名称及び本店所在地
- 会社の目的
- 資本の額
- 資本における額面株式又は無額面株式の割合。額面株式においては、株式の額面金額及び種類並びに各額
面金額毎の株式数
- 株式の記名式・無記名式の別
- 取締役の員数又は員数決定の根拠となる規則
- 公告の方法
株式会社は、商業登記簿に登記されたときに、その法人格が成立する。
会社と株主との関係
一般に株主は、等しい状況下では平等の取扱いを受けることができる。株主は、応分の純利益を受領する権
利を有するが、準備金に組み入れること等を理由として法律、定款又は株主の決議により分配から除外される
ものについてはこの限りでない。現金配当以外に、現物配当も認められる。
また、株主は、定款に別段の定めがない限り、その所有持株に応じて議決権を有する。利益配当について優
先的権利を付された優先株は、無議決権株式として発行することができる。
株主となったことを会社に対抗するため、記名式株式の買主は新株主として会社の株主名簿に登録されなけ
ればならない。
記名式株式(Namensaktien)の保有者は、その保有に係る株式数や登録番号のほかに、個人情報(氏名、住所
及び生年月日等)を会社に通知する義務を負う。会社は株主名簿に登録された株主がその記名式株式を実質株
主として保有しているのか、あるいは名目上の株主として保有しているのかについて、その者から情報を要求
する権利を有する。後者の場合、その名目上の株主は、当該株式の保有を依頼した者の個人情報を提供する義
務を負う。会社は、今度は名目上の株主によって識別情報が開示された者に対して、個人情報を要求すること
ができる。株主名簿に登録された株主は、会社が要求する情報を提供しない場合は、その提供がなされるまで
法律によって議決権を剥奪される。
会社は、株式会社法第71条に定める一定の場合にのみ自社株を取得することができる。
企業が国内に本店を有する非上場の株式会社の株式を4分の1を超え、又は2分の1を超え所有することと
なった場合、当該企業はこの事実を非上場の株式会社に対し不当に遅滞することなく書面で通知しなければな
らない。さらに、かかる株式数を所有しなくなった場合にも、当該企業はその会社に通知しなければならな
い。上記の通知義務を負う企業が所有する株式の権利は、当該企業がかかる通知義務を怠っている間は行使す
ることができない。
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さらに、法令で定義される「発行者(Issuer)」であって本社所在国がドイツ連邦共和国(以下「連邦共和
国」という。)である者の議決権を有する 上場株式会社の 株主は、その保有割合が3%、5%、10%、15%、
20%、25%、30%、50%若しくは75%の基準値に到達した場合、これを超えた場合又は到達後にこれを下回っ
た場合には、ドイツ証券取引法(Wertpapierhandelsgesetz)に従い、不当に遅滞することなく(遅くとも、その
保有割合がいずれかの基準値に到達した、これを超えた若しくはこれを下回ったと知った日又は知ることがで
きた日から4取引日以内とする。)、当該発行者及び連邦金融サービス監督局(Bundesanstalt für
Finanzdienstleistungsaufsicht)(以下「BaFin」という。)に対して書面により報告をすることが求められて
いる。強制的に、かかる期間は株主が交替した2取引日後から開始するものとみなされる。株主は当該報告
に、とりわけ自己の保有する議決権数及び自己に帰属する第三者の議決権数を記載しなければならない。この
ような株主は当該開示基準を満たすまで、いかなる権利(当該株式に係る議決権及び配当を受ける権利を含
む。)も行使することができない。また、かかる報告を怠った場合には、法律で定められた罰則の適用を引き
起こすこととなる。その上、本社所在国が連邦共和国である会社を発行者とする発行済議決権付株式を取得
(但し、自己のイニシアチブのみを動機とし、かつ法的拘束力のある契約に基づく場合とする。)する権利を付
与される結果となる法令上定められた一切の金融商品を直接又は間接に保有する者は、上述の基準値(但し、
3%である場合を除く。)に到達した、これを超えた又はこれを下回った場合に、不当に遅滞することなくそ
の旨を当該発行者及びBaFinに報告しなければならない。さらに、10%若しくはそれ以上の開示基準値に到達
した又はこれを超えた株主は、その到達日又は超過日後20取引日以内に、発行者に対して保有目的及び資金調
達源を報告しなければならない。発行者は、不当に遅滞することなく(但し、当該報告を受けた日から3取引
日以内とする。)、株主から受けた報告(あるいは報告義務が果たされていない旨)を公表しなければならな
い。さらに、法的要求により、議決権の(取得資格を与えるのではなく)取得を可能とするに過ぎない全ての金
融商品及びその他の商品を直接的又は間接的に保有する場合にまで通知義務が拡大された。それに加えて、ド
イツ証券取引法には、株式の帰属が、株式に係る議決権の行使に実質的な支配力を有する者に対して、確実に
なされるように設計された様々なルールが含まれている。さらに、ドイツ企業買収法(Wertpapiererwerbs-
und Übernahmegesetz)は、「支配権」の取得(対象企業の議決権の30%以上を直接又は間接に保有することを
いう。)を公表することを求めている。
さらに、市場濫用行為(market abuse)に関する規制 (Regulation (EU) No 596/2014) (市場濫用行為規制)
の下、当社株式又は当社株式にリンクした金融商品に係る取引を、当社取締役若しくは監査役又は定期的に内
部情報に接し、かつ、重要な経営判断を行う権限を有するその他一切の役員、並びにこれらの者に密接に関連
性を有する者が行う場合には、その者は3営業日以内に当該取引を当社及びBaFinに書面により開示しなけれ
ばならない(但し、1暦年中の有価証券取引の総額が5,000ユーロを下らない場合に限る。)。当社は、こうし
た有価証券取引を直ちに公告し、同時にBaFinに対しその公告を通知し、そして直ちに(但し、公告後に)当該
公告を当社の登録簿(Unternehmensregister)に提出しなければならない。
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会社の組織
取締役会(Vorstand)
取締役会は自己の責任において会社の業務を執行しなければならない。取締役の員数は1名でも数名でも
よい。定款に明示的に別段の定めがない限り、株式資本が3,000,000ユーロを超える会社については、最低
2名の取締役が必要とされる。取締役の資格は自然人かつ完全な行為能力を有する者に限られる。さらに、
最近5年間以内に一定の破産犯罪について有罪判決を受けた者又は判決若しくは行政命令によって特定の職
業若しくは営業に従事することを禁じられた者も取締役となる資格を有しない。
取締役会は業務規程を制定することができる。但し、定款が監査役会(Aufsichtsrat)に業務規程の制定権
を与えている場合又は既に監査役会が取締役会のために業務規程を作成している場合はこの限りでない。
取締役会は、裁判上及び裁判外において会社を代表する。取締役会が数名によって構成される場合、全取
締役は共同してのみ代表権限を有する。但し、定款に別段の規定がある場合はこの限りでない(実際は、か
かる規定を設けるのが通常である。)。定款は、取締役が単独又は登記済代理権(以下「プロクラ」とい
う。)を有する者と共同で代表権限を有する旨定めることができる(かかるプロクラは商法典の適用を受ける
代理権であり、商業登記簿に登記される。)。共同代表権を有する取締役は、個々の共同代表権を有する取
締役に一定の事業又は一定の種類の事業を行うことを授権することができる。
取締役会又は代表権限の変更は、その都度商業登記簿に登記されなければならない。
取締役は、任期を最長5年として監査役会により任命される。再任又は任期の延長は、それぞれ最高5年
を任期として許される。
取締役は、重大な理由がある場合に、監査役会の決議によってのみ解任することができる。
取締役会は内部的監視システムを設立し、監査役会に会社の運営及び基礎的計画に関する定期報告書を提
出しなければならない。監査役会はまた、いつでも特別報告書を請求することができる。株式会社法は会社
の取締役及び監査役の兼任を禁止している。取締役及び監査役は双方とも会社に対する忠実義務及び注意義
務を負う。
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監査役会
株式会社法第95条に従い、監査役会は最低3名乃至最高21名の監査役(共同決定法の規定の履行のために
必要な場合はその員数は3で割り切れる数でなければならない。)によって構成される。
但し、1976年5月4日付共同決定法(Mitbestimmungsgesetz、MitbestG)(以下「共同決定法」という。)
は、異なる構成について規定しており、同法は、一般に従業員数が2,000名を超える全ての会社に適用され
る(以下の記載は共同決定法に従う会社に関するものである。)。
共同決定法に従い、監査役会は以下に従って構成されなければならない。
(イ)一般に従業員数が10,000名以下の会社の場合は、12名の監査役。その内訳は、株主代表6名及び従業員
代表6名(そのうち4名は会社従業員、2名は労働組合代表)とする。但し、定款で員数を16名又は20名
と規定することができる。
(ロ)一般に従業員数が10,000名超20,000名以下の会社の場合は、16名の監査役。その内訳は、株主代表8名
及び従業員代表8名(そのうち6名は会社従業員、2名は労働組合代表)とする。但し、定款で員数を20
名と規定することができる。
(ハ)一般に従業員数が20,000名を超える会社の場合は、20名の監査役。その内訳は、株主代表10名及び従業
員代表10名(そのうち7名は会社の従業員、3名は労働組合代表)とする。
株主代表に関する監査役会の構成は共同決定法の適用を受けないが、従業員代表に関しては、共同決定法
にさらに詳しく規定されている。
定款により具体的な指名権が定められていない限り、株主代表は株主総会で選任される。従業員代表の選
任については共同決定法第9条乃至第24条が適用され、共同決定法の授権に基づき1977年6月23日に発布さ
れた3つの規則にさらに詳細な規定がある。
2015年5月以降、上場し、共同決定の適用を受ける企業も新しい法的要求に従う必要があり、監査役会は
少なくとも女性30%及び男性30%から構成されなければならない。原則として、ジョイント・コンプライア
ンス(AktG第96条第2項第1号及び第2文)に基づいて監査役会により、要求される最低定数は達成しなけれ
ばならない。それでもなお、各選任の前に、株主及び従業員は、それぞれが単体で最低定数の要請を満たさ
なければないないという効果により、ジョイント・コンプライアンスに対して異議を申し出ることができる
(AktG第96条第2項第3号)。最低定数の要請に反する株主総会による株主代表の選任及び監査役会への指名
は無効である(AktG第96条第2項第6文)。監査役会への従業員代表の選任について共同決定法は特別な要求
を規定している。
監査役の任期は、当該監査役の就任後4事業年度目に係る同監査役の解任につき決議する株主総会をもっ
て終了する期間、すなわち約5年を超えることはできない。
監査役の代理人は任命することができないが、株主代表であるか、また従業員代表であるかを問わず個々
の監査役については、かかる正規の監査役とともに補欠を選任することができる。かかる補欠は、正規の監
査役が任期満了前に離任した場合に監査役になる。
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監査役会の職務権限
監査役会は、取締役の任命及び業務執行の監査を職務としている。監査役会は、会社の財産のほか会社の
帳簿及び記録を閲覧・監査することができる。各監査役は、取締役会に対して報告書を監査役会に提出する
ように要求する権限を有する。裁判上及び裁判外において取締役会を相手方とする場合には、監査役会が会
社を代表する。また会社の利益のために必要な場合は、株主総会を招集しなければならない。
業務執行の機能を監査役会に委譲することはできないが、定款又は監査役会は、監査役会の同意を得なけ
れば一定の業務執行上の措置を行ってはならない旨定めなければならない。
監査役は、その監査機能を各自遂行しなければならず、第三者への委譲は認められない。
さらに、監査役会は年次財務書類及び経営報告書並びに連結財務書類及びグループ経営報告書の確定過程
に参加する。これらの書類及び報告書は全て、取締役会から監査役会へ提出される。独立監査人との間の契
約は、監査役会により承認される。これらの書類及び報告書は全て、監査役会会長宛で直接監査役会に対し
て提出されなければならない。監査役会は、同書の検討結果について株主総会において書面で報告し、か
つ、取締役会にかかる報告書を提出しなければならない。
上場又は共同決定法の適用を受ける企業の監査役会も、取締役会における女性の数について規則にした
がって目標を定め、かかる目標の達成期限を決定しなければならない。
監査役の報酬は、定款又は株主総会決議により決定することができる。
会長、決議、委員会
監査役会は、監査役の中から監査役会会長1名及び副会長1名以上を選任しなければならない。
法律又は定款に別段の定めがない限り、法律又は定款に規定された決議のための定足数は全監査役の半数
以上である(株式会社法第108条第2項及び(該当する場合は)共同決定法第28条)。他の監査役又は監査役会
に出席する権利を有するその他の者を通じて書面で投票することも当該決議への参加とみなされる。別段の
定めがない限り、決議には投票数の過半数が必要である。可否同数の場合は再度の投票を行うことができる
が、この場合も可否同数であれば監査役会会長が決定権を有する。監査役会副会長には、かかる決定権はな
い(共同決定法第29条)。
監査役会は、監査役によって構成される委員会を設置することができ、かかる委員会に対して、株式会社
法第107条第3項に特定される一定の事項以外の事項につき監査役会に代わって決定することを委任するこ
とができる。1つの例外を除き、ドイツの会社法は監査役会に関する特定の委員会の創設を義務付けてはい
ない。従業員が2,000名を超えるドイツの会社は、取締役の任命又は解任に伴い発生する監査役間の争議に
関して、監査役会を補佐する調停委員会を設置するよう義務付けられているだけである。
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取締役の任命
取締役の任命には、一般的に監査役会の構成員の過半数の賛成が必要とされる。共同決定法が適用される
場合、取締役選任のための監査役会決議には3分の2の多数が必要となる(共同決定法第31条)。かかる多数
が得られない場合、監査役4名によって構成される調停委員会は1か月以内にかかる選任の提案をしなけれ
ばならない。その後は、かかる提案が承認されると否とにかかわらず、監査役会決議を過半数で採択するこ
とができる。可否同数の場合、会長が追加投票による2回目の投票権を有する。
株主総会
株主は、株主総会でその権利を行使し、株式会社法又は定款に定められた事項について当該総会で決議す
る。その主な決議事項は以下の通りである。
(イ)監査役会における株主代表の選任
(ロ)純利益処分案
(ハ)取締役及び監査役の解任
(ニ)独立監査人の選任
(ホ)定款変更
(ヘ)増資及び減資
(ト)特別独立監査人の選任
(チ)会社の解散
株主総会は、取締役会からその旨請求された場合に限り、業務執行上の問題につき決議することができ
る。
定時株主総会は、事業年度終了後8か月以内に開催されなければならない。当該総会は、承認された年次
財務書類及び連結財務書類を受領しなければならない。年次財務書類及び連結財務書類は取締役会によって
作成され、会社の進展状況及び現状に関する正確かつ公正な見解が記載されていなければならない。さらに
また、事業年度終了後に生じた事象で特に重要なものについての記載、並びに(もし可能であれば)会社の将
来における進展及び研究開発分野における活動についても記載することが求められる。年次財務書類の内容
をもとにして、定時株主総会では純利益処分案並びに取締役及び監査役の解任について決議を行う。また当
該総会は独立監査人を選任する。株主総会は、会社の利益のために必要な場合にもまた招集されなければな
らない。株主総会を招集できるのは、取締役会、監査役会又は5%以上の株式資本を有する株主である。招
集通知は連邦官報に公告されなければならない。招集公告には、株主総会の開催日、場所並びに出席のため
の前提条件及び議案を記載するものとし、招集は、株主総会開催日より少なくとも30日前までに公告されな
ければならない(周知期間)。定款により登録が必要とされる場合には、上述の周知期間は申込期間の日数に
応じて延長されるものとする。取締役会及び監査役会は、決議を要する各議案につき提案を行わなければな
らない(監査役及び独立監査人の選任決議案は、監査役会のみが提案を行う。)。
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株主は、株主総会において議案に対して反対提案又は選択提案を提出することができる。株主が、株主総
会開催の少なくとも14日前までに、会社に対し、反対提案をその理由書とともに送付するか又は選択提案を
送付した場合には、会社は、かかる提案を(それに対する会社の意見(もしあれば)とともに)株主に伝達する
ようにしなければならない。選択提案の場合、取締役会はさらに、監査役会によって満たさなければならな
い最低定数の要請に従った要件に関する追加情報を提供しなければならない。
各株主は、当該情報が議題の適切な判断に必要な場合に限り、株主総会において、取締役会に対して会社
の業務に関する質問について回答を求めることができる。株式会社法第131条第3項に定める一定の事由(例
えば回答することが会社に相当の不利益を与える場合)がある場合は、取締役会は回答を拒否することがで
きる。
株式に伴う議決権は、株主が自ら又は株主が選任した代理人を通じて行使することが可能である。株主
は、会社が指名する代理人の任命を選択することもできる。
代理人が金融機関、持株会又は株式会社法第135条の範囲に含まれる「その他の者」に該当する場合、株
式会社法によれば代理権限を付与するために書面が必要とはされておらず、また定款にはかかる場合につい
て定めた特別の規定は置かれていない。それゆえに、上述の金融機関、持株会及びその他の者は代理人選任
の様式を用意し、かかる様式は代理権限の付与に適用される法定の規定(特に株式会社法第135条に含まれる
規定)を遵守していれば足りる。
代理人が金融機関、持株会又は株式会社法第135条の範囲に含まれる「その他の者」のいずれにも該当し
ない場合、当該代理人の代理権は、書面により付与されなければならない。ドイツテレコム・アーゲーの定
款に従い、代理権の授与及びその取消し並びに権限の証拠は、かかる目的のために当社がパスワード制御さ
れたインターネット・ダイアログを提供する場合、又はその場合に限って、当該パスワード制御されたイン
ターネット・ダイアログを利用することにより当社に送付することもできる。
株主総会の決議は、行使された議決権の過半数によって行うことができる。定款は、額面金額いくらに対
し1個の議決権を付与するかを規定する。一定の場合(例えば定款変更、増資、減資、解散、事業会社との
間の契約の承認等の場合)には、法律により総会において決議が議決権の4分の3の多数でなされることが
要求される。但し、いくつかの例外(例えば会社の目的の変更、増資の際の新株引受権の排除、減資等)の場
合を除き、かかる4分の3の多数要件を定款で行使された議決権の過半数までに軽減することができる。
株式が証券取引所に上場されている場合、株主総会については公証人により議事録を作成することが要求
される。かかる議事録には投票の結果が記載されなければならない。議事録は、商業登記所に提出される。
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計算、純利益処分
取締役会は、事業年度終了後3か月以内に、年次貸借対照表及び損益計算書(年次財務書類)、前事業年度に
ついての年次営業報告書並びに連結財務書類及びグループ経営報告書(該当する場合)を作成し、これを独立監
査人に提出しなければならない。年次財務書類及び連結財務書類は、適正会計の原則に従っていなければなら
ず、簡潔かつ記載漏れがなく、また会社の財政状態及び営業成績を偽りなく表示するものでなければならな
い。会社は法定準備金を積み立てなくてはならず、その積立ては下記のもの等から成る。
(イ)前期繰越損失額を減じた当期純利益の5%(当該準備金が定款記載の株式資本の10%以上に達するまで)
(ロ)新株発行の際の額面超過額
(ハ)転換社債又は新株引受権付社債の発行価額のうち当該社債の償還額を上回る部分に相当する金額
(ニ)株式に対する優先権の対価として株主が支払ったプレミアム額
法定準備金の使用は制限されており、基本的には欠損填補の場合に限られる。
会社が自社株を購入する場合、当該株式の簿価と同額の自己株式準備金の設定が可能でなければならない。
法定準備金のほか、他の公示積立金を設定することができ、株式会社法及び定款の規定の範囲内で、会社の
純利益の一部又は全部をかかる他の公示積立金に組み入れることができる。
取締役会の報告書には、営業状況及び会社の状態を記載するとともに事業年度終了後に生じた事象で特に重
要なものも報告することを要し、さらに年次財務書類及び連結財務書類について説明しなければならない。
帳簿及び取締役会の報告書を含む年次財務書類並びに連結財務書類及びグループ経営報告書は、監査役会の
提案に基づき株主総会で選任された独立監査人の監査を受けなければならない。当該監査人は、監査の結果を
書面で報告する。かかる監査の最終結果に基づき異議のない場合、当該監査人は、当該年次財務書類に承認の
付記をすることによりその旨確認する。承認の付記についてはその文言が法律(商法典第322条第3項)により
規定されている。
監査役会は、年次財務書類、取締役会の報告書、連結財務書類及びグループ経営報告書と併せて取締役会の
純利益処分案を監査しなければならない(上記参照のこと。)。監査役会は、監査の結果を書面で株主総会に報
告しなければならない。さらに、監査役会は、独立監査人による年次財務書類及び連結財務書類の監査結果に
ついて意見を述べなければならない。監査役会は上記報告書の末尾に、その監査の最終結果に基づき異議を申
し立てるべきか否か、並びに取締役会の作成した年次財務書類及び連結財務書類を承認するか否かを記載する
ことを要する。監査役会が年次財務書類及び連結財務書類を承認すれば、当該年次財務書類及び連結財務書類
は確定する。但し、取締役会及び監査役会が、かかる確定を株主総会に委ねる旨を決定した場合はこの限りで
ない。通常は、取締役会及び監査役会がかかる確定を株主総会に対して委ねることはない。
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純利益処分案
株主総会は、純利益処分案について決議しなければならないが、この場合、確定された年次財務書類に拘束
される。
配当は、年次財務書類における処分済み純利益(Bilanzgewinn)のみを原資として宣言され、支払われる。年
次財務書類は取締役会及び監査役会の決議により、確定・承認される。年次財務書類の確定に際し、取締役会
及び監査役会は、法定準備金及び繰越損失額へ割り振った金額を控除した後の年次剰余金(Jahresüberschuss)
の特定部分(株式会社法第58条第2項に従い定款で定義することができる。)である利益準備金(andere
Gewinnrücklagen)に配分することができる。
公告及び提出義務
年次財務書類、取締役会の報告書、連結財務書類、グループ経営報告書、監査役会の報告書及び取締役会の
純利益処分案は、株主総会招集日以降、会社の本店内で株主の閲覧に供せられる。要求があればかかる書類の
写しが株主に提供される。これらの義務は、かかる書類が同期間中に当社のインターネットのページにて閲覧
可能な場合には適用されない。会社は、これらの書類を、株主総会議案、株主によって提出された当該提案に
係る議案に対する異議及び監査役に関する代替の指名案(これらは一般に入手可能にする必要がある。)並びに
株主総会に関するその他の書類とともに自社のインターネット・サイトにおいても公表する。通常は、連結財
務書類、グループ経営報告書、及び監査役会の報告書は会社の年次報告書に含まれ、かかる報告書は株主その
他の利害関係者に提供される。
取締役会は、事業年度終了後4か月以内に、特に独立監査人の承認の付記がなされた年次財務書類、連結財
務書類、取締役会の報告書、グループ経営報告書及び監査役会の報告書並びにドイツ企業統治基準を遵守して
いるか否かを説明するものを連邦官報に提出しなければならない。一定の形式上の要件を除き、連邦官報のオ
ペレーターは、当該年次財務書類及び取締役会の報告書が法律及び定款の規定に従っているか否かを審査する
必要はない。
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(2) 【提出会社の定款等に規定する制度】
株 式
2018 年12月31日時点で、当社の資本金は12,189,334,005.76ユーロであり、かかる資本は、無額面株式
4,761,458,596株に分割される。当社の株式は全て記名式であり、また自由に譲渡することが可能である。
株 主
(イ)株主総会
株主総会は、各事業年度の最初の8か月以内に開催されなければならない。
全ての株主に対して定時株主総会に出席する権利が付与されており、同総会は取締役会によって招集さ
れる。当該総会の招集は、株主総会から少なくとも30日前に公告される(周知期間)。定款により登録が必
要とされる場合には、上述の周知期間は申込期間の日数に応じて延長されるものとする。株主による株主
総会への登録最終日は、「登録締切日」として定義される。
株主総会は、定款に別段の規定がない限り、当社の登記上の本店所在地又はドイツの証券取引所の所在
地において開催される。ドイツテレコム・アーゲーの定款に従って、株主総会は人口が250,000人を超え
るドイツの都市においても開催することができる。さらに、取締役会は、株主総会の全て又は一部を、音
声及びビデオによって放送することを許可する権限を有する。
定時株主総会の議長は、特定の人が務めなければならないと規定する法的規制はない。ドイツテレコ
ム・アーゲーの定款に従って、定時株主総会の議長は監査役会の会長が務める。会長が出席できない場合
には、監査役会が決定したその他の監査役が株主を代表して議長を務めるものとする。
(ロ)参加権及び議決権
各無額面株式毎に株主総会における1個の議決権が付与され、行使される。
当社の定款第16条は、株主の参加権及び議決権について以下の通り規定している。
「(1) 株主名簿に登録されており、かつ、当社に対して適時に登録をした全ての株主は、株主総会
に参加する資格及び株主総会で議決権を行使する資格を有する。株主は、また、かかる目的の
ために当社がインターネット・ダイアログを提供する場合、又はその場合に限って、インター
ネット・ダイアログを利用することにより、当社に登録を行うことができる。当社は、株主総
会招集の際にかかる目的のために規定される住所において、遅くとも株主総会の6日前までに
登録を受理しなければならない。取締役会、又は監査役会によって招集される場合は監査役会
は、株主総会招集通知において、日数で示されるより短い登録期間を定めることが可能であ
る。登録期間は、株主総会の日又は登録の受理日を含まない。
(2) 議決権は代理人により行使することができる。代理人の選任が株式会社法第135条に該当しな
い場合は、当社又は当社が選任する代理人への宣言の方法による代理人の選任、当該代理人の
取消し及び当該権限の証拠の当社への送付も、かかる目的のために当社がインターネット・ダ
イアログを提供する場合、又はその場合に限って当該インターネット・ダイアログを利用して
行うことができる。但し、代理権の付与、その取消し及び権限の証拠の当社への送付に関して
既に法律により直接規定されているいかなる形式も制限するものではない。
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(3) 取締役会は、株主が各開催地に出席せずまた代理人なしで、電子通信の方法によっても総会
に参加し、その権利の全て又は一部を完全に又は部分的に行使できることとする権限を有する
(オンライン参加)。
(4) 取締役会は、株主が総会に出席することなくして、書面又は電子通信の方法によっても投票
できることとする権限を有する(不在投票)。」
(ハ)決 議
当社の定款に従って、決議は、強行法規の規定に別段の定めがある場合を除き、投票数の過半数により
可決される。法律により、過半数の投票に加え、過半数の株式所有も要求されている場合には、決議時に
おける株式所有の過半数により可決される。
会社の機関
(イ)取締役会
取締役会は少なくとも2名の構成員により構成されるが、その員数は監査役会によって決定される。監
査役会は、取締役会の会長及び副会長を任命することができる。取締役は、電気通信、経済又は事業経営
についての優れた専門家でなければならない。
取締役会は、監査役会によって承認された手続規則及び職務権限分担に従ってその業務を遂行する。取
締役会は、全会一致によって手続規則を採択するものとし、同規則は監査役会の同意を必要とする。
取締役会は、以下の例を含む一定の行為については、監査役会の同意を得なければならない。
- 当社又は当グループの純資産、財政状態及び業績又はリスク・エクスポージャーを根本的に変える
ような、当社又は株式会社法第16条乃至第18条に定義されるその関連会社の決定又は施策。かかる
施策には、その経営構造に影響を及ぼすもの並びに、新しい業種の開始、既存の業種の停止又は重
要な業種についての実質的な制約に影響を及ぼすものが含まれる。
- 設立、解散、企業、企業の一部及び議決権付株式の買収又は売却、並びに当社が直接所有する株式
の変更(特定の措置の価値が総額125,000,000ユーロを超える場合)。
当社は、2名の取締役によって又は取締役1名とプロクリスト1名(「プロクリスト」とは、商法典第
48条の「プロクラ」と称される一般的な商業上の代理権を有する者をいう。)との共同によって法律上代
表される。
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(ロ)監査役会
監査役会は、20名の監査役によって構成される。10名の監査役は共同決定法の規定に従って当社の従業
員により選任される。現在従業員を代表する監査役は、 2018 年11月に会社の代表者による集会によって選
任されたか、又は裁判所によって選任された。
他の監査役は株主総会によって選任される。いずれの監査役の任期も、就任後4事業年度目に係る当該
監査役の活動の正式な承認を行う株主総会の終了までとする。就任時期の属する事業年度は、前述した任
期の計算からは除かれる。
監査役会は、共同決定法の規定に従って、監査役会の会長及び副会長を選任する。
共同決定法第27条第3項により要求される調停委員会に加えて、ドイツテレコム・アーゲーの監査役会
は、当社の独立監査人が株主総会において承認を受けた時点で、その正式な雇用を取り扱う監査委員会を
設置している。監査委員会はまた、会計、リスク管理、コンプライアンス並びに監査人の選定及び独立性
に関する諸問題を扱っている。加えて、監査役会は、その業務を促進するために他の委員会を設置してい
る。すなわち、総務委員会、財務委員会、従業員委員会、指名委員会、技術革新委員会 、 米国事業のため
の特別委員会 及びドイツにおける周波数帯取得に係る特別委員会(2019年1月1日以降) である。
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2 【外国為替管理制度】
国際連合、欧州連合(以下「EU」という。)及びドイツ経済エネルギー省により採択された適用のある決議によ
り、特定の地域、企業又は人物に関する限定的な禁輸状況を除けば、現在、ドイツでは国際間の資本移動及び外
国為替取引に関して法的な制限は存在しない。現在のところ、とりわけシリア、エジプト、リビア、ジンバブ
エ、ロシア、ウクライナ、スーダン、ソマリア、イラン及びイラクに関する制限が存在している。ドイツ連邦銀
行 ( ド イ ツ 中 央 銀 行 )(Deutsche Bundesbank) は 、
https://www.bundesbank.de/de/service/finanzsanktionen/sanktionsregimes 上で、金融制裁プログラムに関す
る情報を公開している。
但し、統計上の目的から、国境を越えた通貨移動を伴う取引に関しては、限定的な報告義務が課されている。
いくつかの例外を除いて、ドイツ国内に拠点のある法人又はドイツ国内に居住する個人は全て、ドイツ連邦銀行
に対して、(ⅰ)非居住者から12,500ユーロ(又は外貨による相当額)を超える支払いを受領し、又は非居住者に対
して12,500ユーロ(又は外貨による相当額)を超える支払いを行う場合、及び(ⅱ)居住者たるノンバンクは、月末
時点における非居住者に対するその債権合計額又は債務合計額が5百万ユーロ(又はそれに相当する額。)を超え
る場合に、当該債権及び債務について報告する義務を負う。支払いは、口座引き落とし、小切手及び手形を用い
て行われる現金支払、ユーロ建て及びその他の通貨建ての送金、並びにネッティング及び決済協定を含む。さら
に、居住者たるノンバンク(個人を除く。)は、非居住者に対するデリバティブ金融商品から生じる債権又は債務
が500百万ユーロを超える場合、当該非居住者に対する債権及び債務を報告しなくてはならない。
居住者たる法人及び個人は、資本金に対する持分又は議決権保有比率が10%又はそれ以上である場合、かつか
かる投資企業の貸借対照表合計が3百万ユーロ(又はそれに相当する額。)を超える場合には、その外国エクイ
ティ投資について毎年報告する義務を負う。
報告義務に関する詳細は、 https://www.bundesbank.de/en/service/reporting-systems 上で入手可能である。
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3 【課税上の取扱い】
ドイツテレコム・アーゲーの株式の購入を予定する者は、ドイツ、日本国及び居住する各国の税法に基づく、
当該株式の購入、保有及び処分の税効果(あらゆる国税及び地方税の効果を含む。)について、各自の税務顧問に
助言を求めるべきである。
(1) ドイツの課税上の取扱い
ドイツテレコム・アーゲーによって日本国の株主に支払われる配当金は、通常、25%の源泉課税(資本配当
税(Kapitalertragsteuer))及び支払課税額の5.5%の連帯付加税(総課税割合は26.375%)の対象となる。配当
金がドイツ法人税法(steuerliches Einlagekonto)第27条の意味する範囲内のいわゆるドイツ税金拠出勘定
(German tax contribution account)から支払われる場合、当該支払いからは一切のドイツの源泉課税を徴収
(注)
されない 。所得に対する租税及び他の一定の租税に関する二重課税の回避、並びに脱税の防止のための、
日本国とドイツとの間の協定に従い、配当を行う会社の議決権を10%未満保有する株主の源泉課税率が15%に
引き下げられる。この引下げは、特別課税を含む法定レートと当該条約の適用レートの差額の還付によって行
われる。還付のための届出書はドイツ、ボンD - 53225、アンデルクッペ1の連邦税務庁に提出されなければ
ならない。当該届出書の提出期間は配当金を受領した年から第4暦年目の末日までに限定されている。残りの
15%の源泉徴収分は日本国において外国税額控除の適用を受けられる。
日本国居住者(及び特にドイツの税法上の非居住者)が得るドイツテレコム・アーゲーの株式の売買益は、ド
イツの所得税の対象とならない。
日本国居住者(ドイツ国民ではない。)が所有するドイツテレコム・アーゲーの株式に関するドイツの相続税
(Erbschaftsteuer)は、当該日本国居住者がドイツテレコム・アーゲーの株式の10%以上を所有する場合、又
は相続人がドイツ居住者であるか若しくはドイツ国民である一定の場合に限り課税される。またドイツの資産
税(Vermögensteuer)は、現在ドイツでは課されていない。
( 注) 2019 年 3 月 28 日付の株主総会決議に基づいて、ドイツテレコム・アーゲーの株主に支払われる配当金は、一切の
ドイツの税金を源泉徴収されることなく支払われる。
(2) 日本の課税上の取扱い
所得税法、法人税法、相続税法及びその他の日本の関連法令に従いかつその制限の下で、日本国居住者又は
内国法人は、適用ある租税条約に従い、上記で述べたところに従って個人又は法人の各所得について(また個
人については相続についても)支払ったドイツ税額につき日本の税務当局に税額控除を請求することができ
る。
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4 【法律意見】
ドイツにおける当社のヴァイス・プレジデント兼法律顧問であるDr.ウルリヒ・ツヴァッハ及び当社のシニ
ア・リーガル・カウンセルであるディルク・ラングナーより、次の趣旨の法律意見書(ドイツの税法に関する事
項を除く。)が提出されている。
(イ) 当社は、ドイツ法に基づく会社として適法に設立され有効に存続しており、有価証券報告書に記載された
通り事業を営み、財産を所有し管理するための完全な法的権能及び権限を有している。
(ロ) 当職の知りかつ信ずるところによれば、有価証券報告書に記載されたドイツ法(税法を除く。)に関する事
項についての記述は真実かつ正確である。
ドイツにおける当社のグループ税務担当シニア・ヴァイス・プレジデントであるDr.クリスチャン・ドーレン
カンプより、当職の知りかつ信ずるところによれば、有価証券報告書に記載されたドイツの税法に関する事項に
ついての記述は真実かつ正確である、との趣旨の税務意見書が提出されている。
上記意見書は、ドイツの法律に基づいて交付されたものであり、ドイツの法律に従ってのみ解釈及び適用され
なければならない。
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第2 【企業の概況】
1 【主要な経営指標等の推移】
(イ)次の表は、最近5事業年度における当グループの連結ベースの主要な経営指標等の推移を示す。
12月31日に終了した年度
2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
営業収益(十億ユーロ)
62.7 69.2 73.1 74.9 75.7
営業損益(EBIT)(十億ユーロ) 7.2 7.0 9.2 9.4 8.0
当期純利益(損失)(十億ユーロ) 2.9 3.3 2.7 3.5 2.2
資本金(十億ユーロ) 11.6 11.8 12.0 12.2 12.2
年次報告書の提出日時点における普通
4,536 4,607 4,677 4,761 4,761
(注)
株式総数(百万株)
株主持分(十億ユーロ) 34.1 38.2 38.8 42.5 43.4
総資産(十億ユーロ) 129.4 143.9 148.5 141.3 145.4
1株当たり純資産-基本及び希釈化後
7.5 8.3 8.3 8.9 9.1
(ユーロ)
1株当たり利益(基本及び希釈化後)
0.65 0.71 0.58 0.74 0.46
(ユーロ)
平均従業員数
228 226 221 216 216
(訓練生を除くフルタイム当量)(千名)
(注) ドイツテレコム・アーゲーが保有する自己株式を含む。
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(ロ)次の表は、最近5事業年度における当社の単体ベースの主要な経営指標等の推移を示す。
(1)
12月31日に終了した年度
2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
営業収益(十億ユーロ)
3.7 3.3 3.9 3.6 3.5
経常利益(十億ユーロ) 4.3 2.2 2.2 5.1 4.3
当期純利益(十億ユーロ) 4.0 1.9 2.0 4.9 4.2
資本金(百万ユーロ) 11,611 11,793 11,973 12,189 12,189
発行済株式総数(百万株) 4,536 4,607 4,677 4,761 4,761
株主持分(十億ユーロ) 54.2 54.9 55.4 58.9 60.0
総資産(十億ユーロ) 104.4 105.8 103.2 121.3 122.2
(2)
52 52 54 49 49
自己資本比率(%)
1株当たり純資産(ユーロ) 11.94 11.92 11.86 12.38 12.61
ドイツGAAPに基づく1株当たり当期純
0.89 0.41 0.44 1.04 0.88
(3)
利益-基本(ユーロ)
年間平均従業員数
29 27 23 21 19
(訓練生を除く常勤者)(千名)
注(1) ドイツGAAPに基づいている。
(2) 株主持分の合計を総資産で除した比率。
(3) 当期純利益(損失)を発行済普通株式数の加重平均で除したものを基準としている。
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2 【沿革】
歴史的背景
当グループは、総合電気通信事業者であり、世界中の当グループの顧客に対して、電気通信事業及びIT分野
における最先端サービスの包括的なポートフォリオを提供している。
ドイツにおける公共の電気通信サービスの提供は、従前の連邦共和国憲法の規定に従い、長い間国家により
独占されていた。1989年に、連邦共和国は、従前はかかる事業の独占的供給業者に管理されていた郵便、電話
及び電信サービスを市場原理に基づく事業に変換し、従前の独占的事業をその路線に従って3つの独立した企
業に分割した。これらのうちの1つが、当グループの前身であるドイツ・ブンデスポスト・テレコムであっ
た。同時に連邦共和国は、ドイツの電気通信市場の自由化を開始した。当グループは、1995年1月1日に、民
営の株式会社に組織変更された。
ドイツでは、1996年8月1日に、公共の固定回線音声電話を除く全ての電気通信サービスに関するネット
ワークの運営(ケーブル・ネットワークを含む。)が自由化された。これは、ドイツの電気通信分野の規制に関
する新たな法的枠組みである電気通信法が施行された時であった。電気通信法で義務付けられ、欧州委員会か
ら指令を受けたため、ドイツの電気通信分野は、公共の固定回線音声電話サービスが競争にさらされるように
なったことを通じて、1998年1月1日にさらに自由化された。以来、当グループは激しい競争に直面してお
り、特に、当グループの固定回線ネットワークへのアクセスを、規制された相互接続料金で競合会社に提供す
ることを義務付けられている。当グループの固定回線事業における競争に対する規制がもたらす影響に関する
詳細は、「第3 事業の状況-3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の
項を参照のこと。
当グループの事業の発展における2014年1月1日以降の重要な事象は下記の通りである。
2014年2月7日に、当グループは、8億ユーロでTモバイル・チェコ共和国(T-Mobile Czech Republic)にお
ける未所有であった残りの39.23%の株式を取得するために買取契約を締結した。当該取引は2014年2月25日
に完了した。当該取引は規制当局の認可を要しなかった。
2014年2月12日に、当グループはスカウト24・ホールディングGmbH(Scout24 Holding GmbH)(以下「スカウ
ト24・ホールディング」という。)の70%の株式のヘルマン&フリードマン・エル・エル・シー(Hellman &
Friedman LLC(H&F))への売却を完了した。規制当局は、2014年1月に当該取引を承認した。
この時点では、当グループは、グループ本部・グループ事業セグメントの一部であったスカウト24・グルー
プ(Scout24 group)の約30%の持分を維持した。スカウト24・インターナショナル・マネジメント・アーゲー
(Scout24 International Management AG)の100%の持分を取得することにより、リンギエー・デジタル・アー
ゲー(Ringier Digital AG)は、2014年1月24日付でスカウト24・ホールディングが間接的に保有していたスカ
ウト24・シュヴァイツ・アーゲー(Scout24 Schweiz AG)の57.6%の持分を取得した。スカウト24・インターナ
ショナル・マネジメント・アーゲー(Scout24 International Management AG)は、現在はクラシファイズ・ビ
ジネス・ベタイリグングス・ウント・フェアヴァルトゥングス・アーゲー(Classifieds Business
Beteiligungs- und Verwaltungs AG)の名称で事業を行っている。これら2つの取引の売却総額は16億ユーロ
に上った。約30%の保有株式の再評価を含む売却による利益は17億ユーロを維持した。
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スカウト24・アーゲー(Scout24 AG)(以下「スカウト24・アーゲー」という。)のIPO - 2015年10月1日のス
カウト24・アーゲーのIPOに関連して、ドイツテレコムは1株30.00ユーロで総額13.3百万株の同社株式を売却
し、約4億ユーロの現金を受け取った。持分法により連結財務書類に組み込まれていた、かかる株式売却によ
る利益は、約3億ユーロに上り、その他の営業利益として開示された。ドイツテレコムは依然としてスカウト
24・アーゲーの株式の、約13.4%を保有し続けた。監査役会及びその中心的な2つの委員会において役員を有
することで、ドイツテレコムはスカウト24・アーゲーの財務及び事業方針に対して重大な影響力を有してい
た。その結果、ドイツテレコムはかかる投資を持分法を用いて関連会社として連結財務書類に計上し続けた。
2015年5月19日に、当グループは、スロバキアテレコムにおける未所有であった残りの49%の株式を取得す
るために、買取価格9億ユーロの買取契約に合意した。株式は、以前はスロバキア共和国の国有財産基金
(National Property Fund)によって保有されていた。契約の一部として、買取価格のうち1億ユーロは特定の
リスクをヘッジするため、一定の期間、信託口座に支払われた。2015年6月18日に取引は完了した。かかる取
引は監督当局による承認を要しなかった。スロバキアテレコムは、既に当グループのヨーロッパ事業セグメン
トに完全に連結されていた。
2015年7月1日に、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国における当グループの子会社である、マケドンスキ
テレコム(Makedonski Telekom)(以下「マケドンスキテレコム」という。)及びTモバイル・マケドニア(T-
Mobile Macedonia)(以下「Tモバイル・マケドニア」という。)は、一つの会社となった。このために当グルー
プはTモバイル・マケドニアをマケドンスキテレコムに併合した。2015年7月に、アルバニアにおける当グ
ループの子会社である、アルバニアン・モバイル・コミュニケーションズ(Albanian Mobile Communications)
はテレコム・アルバニア(Telekom Albania)に名称を変更した。ヨーロッパにおける当社の影響力の及ぶ12か
国目であるアルバニアは「マゲンタ」となり、ドイツテレコムブランドとしてのアイデンティティ並びに革
新、能力及び実直さといった価値を得た。
tオンラインde(t-online.de)及びインタラクティブ・メディア(InteractiveMedia)の売却―2015年11月2日
に、ドイツテレコムは、Tオンラインde&オーディエンス・プロダクツ(T-Online.de & Audience Products)の
事業分野(子会社であるデジタル・マーケティング会社のインタラクティブ・メディアCCSP GmbH
(InteractiveMedia CCSP GmbH)を含む。)から構成されるデジタル・メディア・プロダクツGmbH(Digital
Media Products GmbH)への投資の100%をストローアーSE(Ströer SE)(以下「ストローアー」という。)に売却
した。売却は、現金以外による出資と引き換えに、増資の形で行われた。ドイツテレコムは、新たに発行され
た約3億ユーロ相当のストローアーの株式を見返りに受け取った。全ての取引完了条件の効力が発生した後、
かかる持分は、同社が増加した株式資本の約11.6%に相当していた。ドイツテレコムは、ストローアーの監査
役会において1議席有している。2016年2月25日時点で、ドイツテレコムは、ストローアーの監査役会におい
ては全部で3議席中1議席を有しており、2017年6月29日現在、監査役会に株主代表として6議席中2議席を
有している。ドイツテレコムは、ストローアーの監査役会において20%超の議決権を有することから、同社の
財務及び事業方針に対して重大な影響力を有している。その結果、ドイツテレコムはかかる投資を持分法を用
いて関係会社として連結財務書類に計上している。売却による総利益は3億ユーロに上り、かかる利益はその
他の営業収益に計上された。ストローアーは、グループ開発事業セグメントに属している。
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2016年1月に、EEジョイント・ベンチャー(EE joint venture)(以下「EEジョイント・ベンチャー」とい
う。)の英国企業であるBTへの売却について、英国の競争・市場局(Competition and Markets Authority
(CMA))によって無条件かつ改善措置を課されずに承認されたのち、ドイツテレコム・アーゲー及びフランスの
電気通信事業者のオレンジは、132億英国ポンドの調整された買取価格で2016年1月29日に取引を完了した。
EEジョイント・ベンチャーの株式と引き換えに、ドイツテレコム・アーゲーはBTにおける金融持分12.0%及び
15.7百万英国ポンドの現金支払を受け取った。合計で、かかる売却は約25億ユーロの収益を生み出した。この
うち、約9億ユーロは前年までに株主持分で直接認識された影響により生じた。さらに、2016年1月25日に、
ドイツテレコムが当時50.0%の持分を有していたことから、株主はEEジョイント・ベンチャーから合計3億英
国ポンドを最後の配当金として受領した。かかる取引によって受領したBTの金融持分は、その他金融資産の下
で売却可能な金融資産として計上された。金融持分は、一般的に株主持分において直接に公正価値で計算され
る。2017年12月31日時点で、約15億ユーロ相当のこの持分についての減損が損益に認識された。これは、個々
のケースの状況により、評価価値の下落が市場関係者による恒久的な評価を反映すると考えられたためであ
る。
2016年12月、当グループは、当グループのホスト・サービス・プロバイダーであるシュトラート(Strato)を
ユナイテッド・インターネット・アーゲー(United Internet AG)に約6億ユーロの売却価格で売却することに
合意した。当グループは、主管当局からの承認を受けて、2017年3月31日深夜零時を効力発生時点として、6
億ユーロの売却価格でその売却を完了した。シュトラート(Strato)の売却は、協力又は処分を通して、当グ
ループ内でもはや適切に開発することのできない事業分野の価値を高めるためのその他の選択肢を発展させる
当グループの戦略に沿っている。
2016年4月、当グループは、1株30.00ユーロの価格で、スカウト24・アーゲーの約2.6百万株を発行した。
2016年12月、別のブック・ビルディング手続で、1株当たり32.00ユーロの価格で1.8百万株を市場に売り出し
て、合計1億ユーロの総収入を得た。2017年6月23日付のアクセラレイテッド・ブックビルディング手続にお
いて、当グループはスカウト24・アーゲーの残りの9.26%の直接的な持分を1株当たり32.20ユーロで市場で
売り出した。これは、その時点までは、連結財務書類において持分法で計上されていた。かかる売却による収
入は319百万ユーロに上った。
デーテー・メディエン(DeTeMedien)(以下「デーテー・メディエン」という。)の中規模出版社のコンソーシ
アムへの売却は、2017年6月14日に完了した。売却価格は、契約に従って開示されないが、現金部分及び追加
的要素(加入者情報料金の水準に関して数年間にわたって訴訟を起こしていた購入者との係争の和解金を含
む。)によって構成されている。加えて、出版社は加入者名簿を公表する義務を引き受けた。
2017年11月9日、TモバイルUSは、オンライン・テレビ・プロバイダーのレイヤー3 TV(Layer3 TV)の100%
の持分を取得する契約を締結した。この契約には、約325百万米ドルの現金購入価格が含まれていた。この取
引は、2018年1月22日に完了した。TモバイルUSは、テレビ及びビデオのポートフォリオを一層強化するため
の買収を予想しており、その計画には自社のテレビ・サービスを2018年に展開することが含まれている。
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2017年12月15日に、当グループは、電気通信プロバイダーのテレ2ネザーランド(Tele2 Netherlands)のTモ
バイル・ネザーランドによる買収に関して、テレ2グループ(Tele2 Group)との契約を締結した。2018年11月27
日、欧州委員会は、Tモバイル・ネザーランドによるテレ2ネザーランド(Tele2 Netherlands)の買収を承認
し、この取引は2019年1月2日に完了した。この取引は、当グループの長期戦略の一部であり、オランダ市場
における収束固定ネットワーク及びモバイル・サービスのより強力でより持続可能なプロバイダーを確立する
ことになる。テレ2グループ(Tele2 Group)は、買収価格の遡及的調整を全て考慮し、500百万ユーロという公
正な価値で測定されるTモバイル・ネザーランドの25.0%の持分と234百万ユーロの現金部分の形で代金を受領
した。買収日以降、テレ2ネザーランド(Tele2 Netherlands)は、当グループの連結財務書類における連結の範
囲に含まれている。
2017年12月22日に、Tモバイル・オーストリアは、オーストリアの大手ケーブル事業者であるUPCオーストリ
ア(UPC Austria)をリバティ・グローバル(Liberty Global)から買収することで合意した。この取引は2018年
7月9日に欧州委員会の承認を受け、2018年7月31日に完了した。買収価格である18億ユーロは、現金で支払
われた。買収日以降、UPCオーストリア(UPC Austria)グループは、当グループの連結財務書類における連結の
範囲に含まれている。当グループの戦略に沿い、この買収によって当グループはヨーロッパ市場の顧客に収束
製品(convergent product)バンドルを提供できるようになる。
2018年3月、当グループは、ギリシャの民営化機関であるギリシャ共和国資産開発基金(Hellenic Republic
Asset Development Fund(HRADF))からの要請を受けて優先先買権を行使し、ギリシャの子会社であるOTEの株
式の5%を取得した。この取引は、3億ユーロ分の追加的な株式取得により、2018年5月に完了した。その結
果、当グループは、同社株式の約45%を保有している。
2018年4月、TモバイルUSの大株主であるドイツテレコム・アーゲー及びスプリント・コーポレーション
(Sprint Corp.)(以下「スプリント」という。)の大株主であるソフトバンク株式会社(Softbank K. K.)(以下
「ソフトバンク」という。)とともに、TモバイルUS及びスプリントは、企業結合についての拘束力のある契約
を締結した。規模の大きくなったTモバイルUSは、正味現在価値で430億米ドル(統合費用差引後)程度の費用及
び資本的支出に係るシナジーを創出すると予想されている。統合費用には、150億米ドル程度の予算が見込ま
れている。この企業結合は、当初の3年間が経過した後にドイツテレコム・グループの調整済1株当たり利益
にプラスに寄与すると予想されている。新会社は約127百万人の顧客基盤を有することになる。本契約に基づ
いて、TモバイルUSはスプリントの全ての株式を取得する。取引が完了すると、TモバイルUSの株式をドイツテ
レコムは約42%、ソフトバンクは約27%保有することになり、浮動株式が約31%となる。ソフトバンクとの議
決権に関する契約、及びドイツテレコムが過半数の取締役の任命権を有するという事実に基づき、Tモバイル
USは引き続き、当グループの連結完全子会社として連結財務書類における連結の範囲に含まれる。本契約は、
当局の承認を受け、かつ他の取引完了条件が満たされることを条件としている。
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買収及び売却
次の表は最近3事業年度間において当グループが行った主要な買収(購入価格)及び売却(その他の営業収益
として記載される)をそれぞれ示している。
年 度 セグメント 事 象 金 額
(十億ユーロ)
テレ2ネザーランド(Tele2 Netherlands)の取得
2019年 グループ開発 0.2
2018年 米国 スプリント取得の合意 該当なし
UPCオーストリア(UPC Austria)の取得
2018年 ヨーロッパ 1.8
2018年 ヨーロッパ 当社のギリシャの子会社であるOTEの株式5%の取得 0.3
レイヤー3 TV(Layer3 TV)の取得
2018年 米国 0.3
2017年 グループ開発 スカウト24・アーゲーの残余持分9.26%の売却 0.2
グループ本部・グルー
2017年 デーテー・メディエンの売却 -
プ事業
ホスト・サービス・プロバイダーであるシュトラート
2017年 グループ開発 0.5
(Strato)の売却
グループ本部・グルー
2016年 スカウト24・アーゲーの4.4百万株の売却 0.1
プ事業
グループ本部・グルー
2016年 EEジョイント・ベンチャーの株式の売却 2.5
プ事業
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日本における活動
下記はティー・システムズ・ネットワーク・サービス・ジャパン株式会社に関する情報である。
「ティー・システムズ・ジャパン株式会社」は、2002年1月1日に旧法人「ドイツテレコム株式会社」
(1990年4月12日に設立)をもとに設立された。2002年4月1日以降、「ティー・システムズ・ジャパン株式会
社」は、当社の100%子会社であるTシステムズ・インターナショナルGmbH(T-Systems International GmbH)
(以下「Tシステムズ」という。)の100%子会社である。2016年3月15日以降、その会社の名称は、「ティー・
システムズ・ネットワーク・サービス・ジャパン株式会社」である。
設立年月日 : 1990年4月12日
資本金 : 10百万円
代表取締役 : ペトラ・ステファニー・クルーセル
従業員数 : 5名(2018年12月31日時点)
日本において提供 : ティー・システムズ・ネットワーク・サービス・ジャパン株式会社は、小規模
するサービス及び な日本国内のネットワーク・サービスを中心とする事業体である。それは、
製品 VPNサービス及びインハウス・サービス(TCポートフォリオ - 企業ネットワー
ク)を提供する。
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3 【事業の内容】
(1) 会社の目的
事業目的は、ドイツ国内外において、電気通信、情報技術、マルチメディア、情報及びエンターテインメン
ト(ギャンブル又はくじを事業とするものを含む。)、セキュリティ・サービス、販売及び仲介サービス、電子
バンキング、電子マネー及びその他の支払ソリューション、集金代行、ファクタリング並びにレセプション及
び監視の全分野、並びにこれらの分野に関連するあらゆるサービス、並びにこれらの関連分野に従事すること
である。
当社の事業目的は、特に、前述の分野に関連する企業の事業に従事することであるが、それのみではなく、
ベンチャー・キャピタル持分の取得、保有、管理及び売却を含む、ベンチャー・キャピタルの分野の事業に従
事することも含んでいる。さらに、当社の事業目的は、当社の定款第2条第1項第1文に規定される分野に関
連する再保険の領域に従事することであるが、かかる活動は、当社自身によって直接に行われてはいけない。
さらに当社は、上記の事業目的に資するに適切と考えられるその他一切の取引を締結し、その他一切の施策
を行うことができる。また、当社はドイツ国内外において、同一又は類似するその他の事業を設立し、取得し
かつそれらに参加することができる。また、当社はかかる事業を経営し、又は自らの参加について制限を設け
ることができる。当社は関係企業に自らの事業の全部又は一部を分離することができる。
(2) 事業の内容
当社の主要な事業は電気通信サービスの提供である。詳細は、「第3 事業の状況」の項を参照のこと。
(3) 事業内容の変更等
本書に別途記載のあるものを除き、2018年12月31日以降、当社の事業内容に重要な変更はなかった。
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4 【関係会社の状況】
(1) 親会社の状況
当社に親会社は存在しない。
(2) 子会社の状況
主要子会社は次の表の通りである。
当社持分割合 株主持分 2018年度 2018年度
名称及び本店所在地 2018年12月31日 2018年12月31日 営業収益 従業員数
(%) (百万ユーロ) (百万ユーロ) (年間平均)
テレコム・ドイチュラントGmbH (ボ
100.00 6,423 21,342 4,121
ン、ドイツ)
TモバイルUSインク (べルビュー、ワ
63.34 25,897 36,522 45,729
(1)(2)
シントン、米国)
Tシステムズ・インターナショナル
GmbH (フランクフルト/マイン、ドイ
100.00 1,109 5,086 12,481
ツ)
ヘレニック・テレコミュニケーショ
ンズ・オーガニゼーションS.A.
45.00 3,239 3,861 19,507
(1)
(OTE) (アテネ、ギリシャ)
マジャールテレコム・テレコミュニ
ケーションズ・パブリック・リミ
59.72 2,326 2,060 9,166
テッド・カンパニー (ブダペスト、
(1)(2)
ハンガリー)
Tモバイル・ネザーランド・ホール
(1)
100.00 1,467 1,322 1,211
ディングB.V. (ハーグ、オランダ)
(2)
Tモバイル・ポルスカS.A.(ワルシャ
100.00 1,462 1,525 4,816
(1)(2)
ワ、ポーランド)
Tモバイル・チェコ共和国a.s. (プラ
100.00 1,924 1,047 3,516
(1)(2)
ハ、チェコ共和国)
フルバツキテレコムd.d. (ザグレ
51.14 2,303 1,049 5,424
(1)(2)
ブ、クロアチア)
Tモバイル・オーストリア・ホール
ディングGmbH (ウィーン、オースト
100.00 3,474 1,055 1,548
(1)(2)
リア)
スロバキアテレコム a.s. (ブラティ
100.00 1,532 761 3,568
(1)(2)
スラバ、スロバキア)
注(1) サブグループ会社の連結財務書類
(2) ドイツテレコム・アーゲーの間接保有
商法典(HGB)第313条に従って、投資持株の完全なリスト(これは連結財務書類に対する注記にも含まれてい
る。)は連結財務書類とともに、電子版連邦官報(Bundesanzeiger)で公表される。当該リストは、ドイツテレコ
ム・アーゲー(ボン)のインベスター・リレーションにおいて請求の上で入手可能である。さらに、当該投資持株
のリストは、商法典(HGB)第264条第3号に従った簡易オプションを実施している全ての子会社又は商法典(HGB)
第264条bに従った簡易開示オプションを実施している全ての子会社の完全なリストを含む。
下記「第3 事業の状況」及び「第6 経理の状況」の連結財務書類に対する注記も参照のこと。
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5 【従業員の状況】
・ 2018事業年度末日におけるドイツ国内外の従業員数:215,675名
・ 2018年のドイツ国内外の従業員の平均年齢:41.2歳(ドイツ国内:46.3歳、ドイツ国外:37.1歳)
・ 2018年12月31日時点のドイツ国内の従業員の平均勤続年数:22.96年(グループ全体の数値は入手不可
能)
・ 2018年のドイツ国内外の従業員の平均年間給与(賞与を含む。):57.3千ユーロ
・ 2018年のドイツ国内外の年間フルタイム当量:70.3千
従 業 員
デジタル化の機会及び課題
デジタル化は、私たちの生活と仕事の方法を完全に変革する。現在でも、新たな協調の形、前例のないビジ
ネス・モデル、及び活動の自動化の拡大が既に見られる。そのため、当グループのマネージャー及び従業員に
デジタル・スキルを身に付けさせることは必須である。それは、現在も将来も人材が当グループの成功の鍵だ
からである。そのため、また、当グループは、才能ある個人にとって魅力ある雇用者である必要がある。当グ
ループは、グループ内で結びつくことを可能にする仕事環境を作り出し、技術を使う必要がある。リーダー
シップも変化し、より参加型で仮想的なものになっていく。意思決定はますます迅速化する。デジタル化に
よって、多くの驚くほどの機会への門戸が開かれ、当グループは、それを最大限に活用することを意図してい
る。
ここで言及されているトピックは、当グループのHRにおける戦略的優先課題の指針となる。2018年に、当グ
ループは、以下の主要分野での取組みを継続した。
当グループのHR優先課題
1. 人材戦略及び計画
2. 業績管理及びリーダーシップ
3. デジタル時代における仕事
4. スキル管理及び革新的な研修機会
このような優先課題を考慮して設計されたプロジェクト及びイニシアチブの例の詳細を、以下に記述する。
HR 優先課題に基づく当グループのHR活動
1. 人材戦略及び計画
当グループを変革することについては、当グループの人員が不可欠な役割を果たす。適切な人を適切な仕事
に配置すること、及びその個人のスキルを一層開発することは、当グループにとって極めて重要である。
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採用: 当グループは、デジタル分野で世界的にみて才能ある人材を引きつける存在でありたいと考えてい
る。ドイツだけでも、当グループは、2018年に2,000名の新たな従業員を、特にICT環境分野で採用した。ここ
で成功の鍵となるのは、積極的な候補者を見出すための迅速なデジタル採用プロセスである。当グループは、
職業検索プラットフォームとして、グローバル・キャリア・ウェブサイトを提供している。採用プロセスにお
けるデジタル化のさらなる例としては、ゲームに基づく評価が挙げられる。これは、スタート・アップ!
(Start up!)技能実習プログラムのための当グループの採用プロセスの文脈において、現在試験的に行われて
いるオンライン・ゲームの形態の新世代の心理テストである。当グループは、また、アルゴリズムに基づいて
大学の最終成績を順位付け、公平な比較を行うデジタル・ツールも利用している。さらに、当グループの採用
戦略では、より多くの才能ある女性に当社への入社を促すために、特定のターゲット層に対して勧誘してい
る。このことによって、当グループは、ドイツテレコムの多様性文化を支えることができている。2017年以
降、全ヨーロッパにおけるSTEM対象の女子学生は、当グループの女性のSTEM賞(Women's STEM Award)に応募す
ることができるようになっている。当グループは、STEMの女子学生向けのキャリア・プログラムであるフェム
テック(Femtec)及びグローバル・デジタル・ウィメン・ネットワーク(Global Digital Women network)にも関
与している。
雇用者ブランド: 世界的な雇用者になるという当グループの約束によって、当グループはまた、成長途上の
労働市場において当グループの雇用者ブランドを高め続け、ドイツテレコムがIT業界の才能ある人材に選ばれ
る雇用者になることを望んでいる。当グループは、また、特にIT業界の才能ある人材との交流のために、引き
続き個人的な方法のみならずデジタルな接点も利用することで、ターゲット層に接近し、彼らに向けて個人的
な発信を行う。当グループの最大かつ欧州規模のLinkedIn採用キャンペーンは、これまで、IoT事業における
当グループ最大の採用プロジェクトの1つを支援することに成功している。当グループのグローバル・オンラ
イン・チャレンジ・プラットフォーム(Global Online Challenge Platform)により、当グループは、才能ある
ターゲット層を獲得するため、仮想シミュレーション・ゲームを楽しむ世界中のITを学ぶ学生及び卒業生に連
絡をとることができる。当グループのミュンヘン及びケルンにおける2018年のCMD+Oプロジェクトによって、
学生及び若手専門家のための開かれた作業空間が作成され、これにより当グループがターゲット層との接点を
持つための直接的な方法が提供された。
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継承及び人材管理: 当グループは、優れた従業員を当社の外部からのみ採用するものではないことを知って
いる。鍵となるスキルと大きな潜在力を持つ多くの人が、既に当グループ内で働いている。当グループは、継
承計画を体系的に進めるために、グローバルなアプローチをとることにした。デジタル・プロセスにより、当
グループは、継続的に候補者の計画と育成を行うことができ、当グループは常にマネジメント職の潜在的な継
承者の概観を得ている。さらに、グローバル人材プール(Global Talent Pool)は、当グループの世界的な人材
及びそのそれぞれのプロフィールについて完全な透明性をもたらすプラットフォーム及びデータベースであ
る。人材は、キャリアの次のステップを計画し、戦略的プロジェクト課題を見出し、及び関心のある職の空席
を発見するために、当グループのソーシャル・ネットワークであるYAMにおいてグローバル人材プール(Global
Talent Pool)グループを利用することができる。当グループはまた、新しい職のために世界の人材を準備する
ため、CVコンサルティング、キャリア面談、eトレーニング・モジュール、メンタリングを含むデジタル開発
機会のポートフォリオを独占的に提供する。このシステムは、空席の補充、才能ある従業員の可視性の改善、
及び人材交代の促進を容易にする。当グループは、再度、国際的な交流を支えるために、人材サミット
(Talent Summit)大会を開催した。これにはおよそ350人の人材が招かれ、経験の共有及び幹部たちとの交流が
行われた。
2. 業績管理及びリーダーシップ
リード・トゥ・ウィン(Lead to win): 労働の世界は、ますますダイナミック、機敏、及び革新的になって
いる。このような変化のペースに遅れないため、当グループは、「リード・トゥ・ウィン(Lead to win)」業
績管理モデルを更新した。現在、これは、本質的に報酬とは切り離されており、業績及び開発の問題について
緊密かつ継続的な情報交換を促し、より多くのフィードバックの要素を含んでいる。また、従業員には、オプ
ションの要素を利用した場合、より多くの個人的責任が課され、内省のための支援手段が与えられる。
レベルアップ!(levelUP!): デジタル化の時代において、マネージャーは、アナログ世界で必要とされるも
のとは大きく異なるスキル及び方法を保有していなければならない。そのため、当グループは、デジタル時代
のリーダーシップで成功するための革新的なデジタル継続研修サービスであるレベルアップ!(levelUP!)を利
用して、当グループの幹部を支援している。レベルアップ!(levelUP!)は、柔軟に組み合わせることができる
モジュールを含み、主に双方向の学習形式を使用している。2017年及び2018年には、ドイツテレコムの1,400
名を超える幹部が、この好評のプログラムに参加した。
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多様性の実践: この10年間、当グループは、当グループ全体で多様性を持続的かつ包括的に実践及び促進し
てきた。2015年には、当グループは、無意識の偏見に対するキャンペーンを開始し、これは今では国際的レベ
ルで実施されている。その目標は、この問題に関する従業員の意識を高めること、及び当社内で多様性を拡大
するために新鮮な刺激をもたらすことである。当グループは、いくつかのキャンペーンを掲げてドイツ・ダイ
バーシティ・デイ(German Diversity Day)に参加した。男女の平等は、現在も当グループの特別な関心事であ
る。2010年当時、ドイツテレコムは、当グループ全体のマネジメント職の30%を女性が占めるようになること
を目標に掲げた。当グループは、この目標を2020年までに達成することを目指している。世界全体において、
中間及び上級のマネジメント職における女性の割合は、2018年末時点で25.4%であった。民間企業及び公的部
門の指導的地位における男女平等参加のための法律(Gesetz für die gleichberechtigte Teilhabe von
Frauen und Männern an Führungspositionen in der Privatwirtschaft und im öffentlichen Dienst)の導入
を受け、当グループは対象を拡大し、取締役会、取締役会直下2階層、及びドイツでの社内の監査役会が含ま
れるようにした。2015年以降、監査役会準備プログラム(Supervisory Board Readiness Program)を通じて、
当グループは、約60人の女性に対して国内外の監査役会から権限の委任を受けるための訓練を行った。年次の
キープ・ザ・レディネス(Keep the Readiness)プログラムは、女性の参加者に企業統治に関する新たな問題及
び課題についてのフォローアップ・トレーニングに参加する機会を与えている。ドイツ国内の当グループの事
業体における監査役会における女性メンバーの割合は2018年12月には40%であった。当グループのヨーロッパ
の完全連結子会社において、この数字は26%であった。当グループは、Chefsacheの取組みへの関与並びに
Diversity Charter及びTechnology-Diversity-Equal Chances Competence Center等のスキームへの参画に
よって、機会均等問題への関与を続けている。
優れたワーク・ライフ・バランスの達成: 託児施設及びファミリー・ケアの選択肢という形式の従来型のサ
ポートを提供することに加え、当グループは、様々な生活段階を指向したHR方針へさらに移行している。これ
は、自己決定の拡大のために柔軟な労働条件を提供するものであり、そうすることで、デジタル化がもたらす
機会を活用する。2017年に統一サービス産業労働組合(ver.di)との間で一般団体協約を締結した後、当グルー
プは、新しい働き方として当グループ全体にモバイル・ワーキングを展開した。これにより、当グループの従
業員は、業務の性質上、適している限りにおいて、在宅勤務又は社外勤務を行うことができる。さらに、フ
レックスタイム制、フルタイム勤務に復帰する選択権が約束されたパートタイム勤務への移行機会、ライフタ
イム・ワーク・アカウント(lifetime work accounts)は全て、従業員が自分の一日を柔軟に構成して優れた
ワーク・ライフ・バランスを達成するためのより大きな自由をもたらす。
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従業員満足度: 2017 年の当グループ全体の従業員調査(TモバイルUSを除く。)において収集されたデータに
よると、当グループのコミットメント指数スコア(当グループの従業員満足度の指標)は、1.0から5.0のスコア
の中での4.1という好成績であった。また当グループは、定期的に意識調査を実施し、従業員のフィードバッ
クを得ている。従業員の72%が2018年11月の意識調査に参加し、そのうち70%が当社に満足していると回答し
た。当グループは、企業文化及び従業員満足度をさらに改善するためのイニシアチブをいくつか実施してい
る。当グループは、2019年に予定されている次回の従業員調査の結果においても同様に、当グループの従業員
の満足度が高水準を示すものと予想している。
(1)
従業員満足度 (コミットメント指数)
2017 年 2015年
(2)
4.1 4.1
グループ全体 (TモバイルUSを除く)
うちドイツ 4.1 4.1
うちドイツ国外 4.1 4.0
注(1) コミットメント指数は2017年及び2015年の直近の従業員調査による。
(2) TモバイルUSは、独自の従業員調査を行っている。
従業員の健康: 当グループの健康管理戦略は、従業員の健康及び業務遂行の維持を目的に設計されている。
当グループは、労働安全衛生法を最低必要条件と考えている。さらに、当グループは、従業員が自分の健康に
個人的責任を持つことを促す企業文化を実践している。マネージャーは、この点で重要な貢献をしている。こ
のトピックに対するコミットメントにより、当グループは、数々の賞を獲得してきた。
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3. デジタル時代における仕事
労働の世界の変革は、当グループの従業員にとって何を意味するのだろうか。無数の機会がHR活動に刺激を
与え、「人」「場所」及び「技術」に関する様々な措置へとつながる。
人(People): 会社組織と文化の変革は加速しており、デジタル化のペースにより推進される。変革はそれ自
体が目的ではなく、適合可能で、より柔軟な業務形態及び運営体制を絶え間なく要求することを意味する。取
引活動及び反復活動の自動化は、「人間」の価値創造の新たな選択肢を作り出す。一方、ソーシャル・メディ
ア及びデジタル・プラットフォームは、階層的格差を越えた新しい働き方への扉を開く。当グループは、当事
業年度において、迅速性に枠組みを与えた。All About Agileプロジェクトは、迅速な仕事に関する当グルー
プ全体の活動をまとめ、各部門がより迅速性を増すようになるための支援を行い、情報共有の機会を提供して
いる。このプロジェクトでは、迅速性の6つの領域が定義され、また、行動のためのこれらの推奨に基づい
て、デジタル変革の面で従業員及び管理者を総合的に支援するための手引書が作成された。サクセスストー
リーは続く。4,746名の当グループ内の従業員が、デザイン思考の活用(Tap into Design Thinking)というス
ローガンの下、第3回マゲンタ・マッシブ・オープン・オンライン・コース(Magenta MOOC(Massive Open
Online Course))の一環であるプロジェクトにおいて、それぞれのデザイン思考の能力を広範に発揮すること
ができた。
場所(Places): 変革は未来の職場にも訪れるだろう。当グループのフューチャー・ワーク(Future Work)プ
ログラムは、柔軟な働き方、信頼に基づくリーダーシップ文化、及びモバイル・ワーキングを促進するため
に、現代的でオープンなオフィス環境及び共有作業区画を提供する。新しい働き方(Neues Arbeiten)に関する
一連のイベントは、当グループの従業員間の交流の向上及び当グループの各拠点間の協力関係の強化のため、
2018年も継続して行われた。
技術(Technologies): デジタル化は、当グループの日々の仕事のルーティンにおける多くの事を容易にして
くれる。2018年に完結した、現代的なクラウドベースの解決法の発表後に、豊富なトレーニング・ポートフォ
リオを有するDigital@Workプログラムが開始された。このプログラムによって、当グループは、最短で2018年
末までに、デジタル協力ツールを使うことができるよう7,500人を超える従業員に対してトレーニングを行う
という目標を達成した。また、当グループのMitarbeiter staff appも2018年に開発され、紙媒体の処理量及
び煩雑な書面記入の量を大幅に削減する新たな機能が次々と追加されている。モバイル・ソリューションは、
日常の仕事を容易にするだけでなく、現代的で柔軟な働き方を促進する。当グループは、業績を最大化させる
つもりであるならば、仮想協調を促進させなければならないと認識している。さらに、部門間及び国境を越え
た協調に向けて、世界各地の大半の従業員には現在、安全なデータ・ルームによる知識の共有化だけでなく、
ビデオ及びウェブ会議サービス、生中継並びにチャット・サービスという選択肢が用意されている。
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4. スキル管理及び革新的な研修機会
スキルズ・アップ!(Skills-up!): 当グループの従業員及び彼らのスキルは、当グループの事業の成功に向
けた重要な要素である。4つの事業部門における試験的なプロジェクトの成功に続いて、当グループは、当グ
ループ内において、競争力及び雇用を確保するため、戦略的なスキル管理プログラムを実施することについて
従業員代表と合意した。再研修措置を特定することだけでなく改訂された職務記述書及び技能略歴に基づく質
的なHR計画を策定することに加えて、早期の段階でスキル格差を認識すること及び相応しい研修プログラムを
作成することがその目的である。
80/20 モデル: 80/20 モデルは、従業員の意欲と部門間の協調を改善するさらにもう1つの革新プログラムで
ある。これは、労働時間の20%をグループ全体のプロジェクトに充てる自由を、自主的に、かつ上席の同意を
得て従業員に与えるものである。このモデルによってスキル格差を解消することが可能になり、従業員は、所
属部門に関係なく自らのスキルを別の分野で適用する機会を与えられる。このレベルの柔軟性を導入すること
は、当社の全体的成功を促進するだけでなく、従業員のスキルが評価され、マネージャーが目標を絞ったサ
ポートを受けることができる新しい革新的な働き方も生み出す。
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従業員数の推移
当グループの従業員数は、前年度末と比較して0.8%減少した。動向はセグメント間で異なっていた。ドイ
ツ事業セグメントの従業員数は、効率性強化措置、事業部門での新規雇用の減少及び人員削減に関連する社会
的責任措置の利用の結果、3.4%減少した。米国事業セグメントの従業員総数は、2017年12月31日と比較して
2018年12月31日時点で対前年比2.1%増加した。これは、主に顧客サポート、バックオフィス及びネットワー
クの従業員の増加によるものだが、顧客獲得部門の従業員の減少によって部分的に相殺された。ヨーロッパ事
業セグメントでは、人員数が、前年末と比較して1.5%上昇した。この上昇は、UPCオーストリア(UPC
Austria)の従業員が当グループへ組み入れられたオーストリアの各国企業(national companies)及び当グルー
プのサービス活動の拡大がその一因になっているクロアチアの各国企業(national companies)に主に起因した
ものであった。システムズ・ソリューションズ事業セグメントの従業員数は、主に人員削減措置に起因して、
2017年末と比較して1.2%減少した。グループ開発事業セグメントでは、2017年末と比較して従業員数は僅か
に増加した。グループ本部・グループ事業セグメントの従業員数は、2017年末と比較して3.9%減少した。
ヴィヴェント(Vivento)での継続した人員削減に起因した人員数の減少は、技術及びイノベーション部門の従
業員数の増加によって、部分的に相殺された。
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人材統計
従業員数の推移
2018 年 2017年 変化率 2016年 2015年 2014年
12月31日 12月31日
12 月31日 12月31日 (%) 12月31日
(1) (1)
当グループの正規社員 215,675 217,349 (0.8) 218,341 225,243 227,811
うちドイツテレコム・アーゲー 19,259 21,428 (10.1) 22,571 26,205 28,569
うち公務員(ドイツ国内、在職中) 13,507 15,482 (12.8) 15,999 18,483 19,881
(1)
62,621 64,798 (3.4) 66,410 67,927 68,754
ドイツ事業セグメント
米国事業セグメント 46,871 45,888 2.1 44,820 44,229 39,683
(1)
48,133 47,421 1.5 46,808 48,920 53,499
ヨーロッパ事業セグメント
システムズ・ソリューションズ事業セグ
37,467 37,924 (1.2) 37,472 37,850 46,244
(1)
メント
(1)
1,976 1,967 0.5 2,572 2,768 0
グループ開発事業セグメント
(1)
18,606 19,351 (3.9) 20,258 23,548 19,631
グループ本部・グループ事業
地域別内訳
ド イ ツ
98,092 101,901 (3.7) 104,662 110,354 114,749
ドイツ国外 117,582 115,448 1.8 113,679 114,888 113,061
うちその他のEU加盟国 61,249 59,952 2.2 59,456 60,710 63,032
うちその他のヨーロッパ 2,471 2,620 (5.7) 2,581 2,945 3,127
うち北アメリカ 47,245 46,332 2.0 45,364 44,803 40,346
うち上記以外の諸外国 6,618 6,543 1.1 6,278 6,431 6,556
自然減 % 5.1 4.7 4.0 4.4 4.2
うちドイツ % 1.9 1.7 1.4 1.3 1.4
うちドイツ国外 % 9.8 9.2 8.1 9.3 8.6
(2)
生産性の動向
従業員1人当たり営業収益(千ユーロ) 350 346 1.0 331 306 275
注(1) 2017年1月1日以降、当グループは、グループ開発事業セグメントについて報告し、グループ本部・グループ事
業セグメントは、取締役会の技術及びイノベーション部門について報告してきた。比較数値は遡及的に調整され
ている。詳細については、「第3 事業の状況 - 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー
の状況の分析」の項及び連結財務書類に対する注記35「セグメント報告」を参照のこと。
(2) 平均従業員数に基づく。
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人 件 費
変化率
2018 年 2017年 2016年 2015年 2014年
(%)
(十億ユーロ)
当グループ人件費 16.4 15.5 6.0 16.4 15.8 14.7
うちドイツ 9.2 8.5 8.2 9.8 9.4 9.1
うちドイツ国外 7.3 7.0 4.3 6.6 6.4 5.6
(注)
1.2 0.6 n.a. 1.6 1.2 0.9
特別要因
当グループ人件費(特別要因調
15.2 14.9 2.0 14.8 14.6 13.8
整後)
営業収益 75.7 74.9 0.9 73.1 69.2 62.7
調整後人件費率(%) 20.1 19.9 20.3 21.2 22.0
ドイツGAAPに基づくドイツ
2.5 2.7 (7.1) 3.5 2.9 2.8
テレコム・アーゲーの人件費
(注) 従業員関連措置費用。
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第3 【事業の状況】
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
経営方針、経営戦略及び経営環境
下記「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の項を参照のこと。
対処すべき課題
「2 事業等のリスク」、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」及
び「第6 経理の状況」に記載されるものの他に当社はその経営又は業務上の対処すべき課題を認識していな
い。
2 【事業等のリスク】
リスク要因
本書に記載されている他の情報に加え、当グループの証券を保有する投資家は、以下のリスクを慎重に検討
する必要がある。当グループの財政状態、経営成績又は当グループの証券の取引価格は、これらのリスクのい
ずれによっても重大な悪影響を受ける可能性がある。
以下の考察には、将来の予測に関する記述が多く含まれている。かかる将来の予測に関する記述は、2018連
結事業年度末時点での判断に基づいている。
リスク及び機会管理
リスク及び機会
以下に、当グループにとって重要であり、現状ではドイツテレコムの経営成績、財務状況及び/又は評判に
影響が及ぶ可能性がある、又は子会社の業績によりドイツテレコム・アーゲーの経営成績、財務状況及び/又
は評判に影響が及ぶ可能性がある、全てのリスク及び機会について記す。多くのリスクについては、リスク抑
制の方策が講じられる前のものを記載する。かかるリスク抑制方策が講じられたにもかかわらず依然としてリ
スクが特定された場合には、その旨が記載されている。リスク又は機会が明確に事業セグメントに当てはまる
場合は以下にその旨が提示されている。
影響について容易に理解し、見ることができるようにするため、個別に評価したリスクを次の通り分類し
た。
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会社のリスク
前年からの
発生可能性 リスクの範囲 リスクの程度
変化
産業、競争及び戦略
経済リスク‐ドイツ 低 小 低 変化なし
経済リスク‐米国 低 中 低 変化なし
経済リスク‐ヨーロッパ 低 中 低 変化なし
市場及び環境に関するリスク‐ドイツ 高 小 中 悪化
市場及び環境に関するリスク‐米国 中 大 中 変化なし
市場及び環境に関するリスク‐ヨーロッパ 中 中 中 変化なし
技術革新(代替)に関するリスク 中 中 中 変化なし
戦略的転換及び統合に関するリスク 中 極めて大きい 高 悪化
下記の「規制に関するリスク及び機会」の項を参照の
規 制
こと
事業運営上のリスク
人事‐ドイツ及びシステムズ・ソリューションズ 中 小 低 変化なし
IT/NTネットワーク運営に関するリスク‐ドイツ 低 大 中 変化なし
IT/NTネットワーク運営に関するリスク‐米国 極めて低い 極めて大きい 中 変化なし
IT/NTネットワーク運営に関するリスク‐ヨーロッパ 極めて低い 大 低 変化なし
既存のITアーキテクチャに関するリスク‐米国 中 中 中 変化なし
ITアーキテクチャの将来の実現可能性‐米国 中 大 中 変化なし
調達 低 小 低 変化なし
データ保護及びデータのセキュリティ 高 中 中 変化なし
ブランド、コミュニケーション及び評判
ブランド及び評判(メディア報道) 低 小 低 変化なし
持続可能性リスク 極めて低い 小 低 変化なし
健康及び環境 低 中 低 変化なし
訴訟及び独占禁止に関する手続き 下記の「訴訟」の項を参照のこと
財務リスク
流動性、信用、通貨、金利の各リスク 低 中 低 変化なし
税務リスク 下記の「税務リスク」の項を参照のこと
その他の財務リスク 下記の「その他の財務リスク」の項を参照のこと
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産業 、競争及び戦略によるリスク及び機会
マクロ経済環境に関するリスク及び機会。 当グループは国際企業として、多数の国において広範な通貨を用
いて営業している。実質的な景気の停滞は、当グループの顧客の購買力を低減させ、当グループの資本市場へ
のアクセスに悪影響が出る可能性がある。為替の変動は、当グループの収益に影響を与える可能性がある。
昨年の経済の傾向は全体的に良好であったものの、世界的に経済の不確実性が増している。主要な機関及び組
織は、銘々の経済予測を下方修正して、世界経済の成長の減速を予測している。将来の経済の動向における主
要なリスクは以下の通りである。
・国際貿易紛争による不確実性
・新興経済の、米国の高い金利に対する脆弱性及び資本流出
・無秩序な英国のEU離脱
・特にヨーロッパにおける政治の不確実性
これらのリスクは、特に米国及び当グループのヨーロッパの事業セグメントのほとんどの国において衰えな
い堅調な成長による機会によって相殺されている。2019年に米国で景気後退が発生する兆候はない。財政上の
推進力が落ちている結果として、成長率の鈍化のみが予測される。経済の勢いはヨーロッパでも衰えることが
予測される。輸出の需要の減少は、ヨーロッパの国内経済の安定性の持続によって少なくとも部分的に相殺さ
れると思われる。故に、我々は、ここでも成長率の鈍化のみを予測している。景気上昇は続き、失業率がさら
に減少することが予測される。これら全ては、欧州中央銀行(ECB)の拡張的貨幣政策によって国内需要及び
ユーロ圏の投資活動が刺激される場合に、非常によく当てはまる。
市場及び環境に関するリスク。 当グループが直面する主要な市場リスクには、固定ネットワーク及びモバイ
ル通信の音声及びデータ・サービスの価格水準の継続的な下落が含まれる。これは、規制当局により課された
価格引下げに加えて、主に、電気通信業界で継続している競争激化に起因している。
特にドイツ及びヨーロッパにおける固定ネットワークにおいて、競争圧力は継続すると予想される。ブロー
ドバンド市場においては、特にドイツでは、地域ネットワーク事業者の市場シェアの突出した拡大の傾向が定
着している。各事業者は、自社の専有的インフラストラクチャーを構築し、これにより、市場カバレッジを拡
大させている。これは、ますます光ファイバー・インフラストラクチャーによって行われるようになってお
り、それぞれの顧客数が増し、付加価値が拡大している。価格引下げ及び新規契約時割引の提供による激しい
新規顧客獲得競争も依然として起きている。
ドイツにおける市場及び環境に関連するリスク群におけるリスクの程度は、2018年5月初旬の ボーダフォ
ン・ドイチュラント ( Vodafone Deutschland)の、リバティ・グローバル ( Liberty Global)からのユニティメ
ディア ( Unitymedia)の買収計画の公表を受けて、「低」から「中」へと引き上げられた。この買収計画は、
ボーダフォンに、ケーブルテレビ市場の極めて大きなシェアを与えて、住宅市場における支配的地位を確立さ
せるものと思われる。これは小売及びホールセール分野における当グループの収益にマイナスの影響を与える
可能性がある。
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当グループは、また、携帯電話の音声通信及びデータ通信サービスの価格圧力の継続を予測しており、それ
は当グループのモバイル・サービス収益に悪影響を与える可能性がある。価格圧力の主要原因の1つとして
は、データ中心の、積極的な価格の提供がある。自身のインフラストラクチャーを保有しないプロバイダ
(MVNOs)は、例えばインターネットへの市場提供を行っているが、より小規模の競合会社が、予測できない積
極的な価格設定方策をとるリスクも残っている。スマートフォンにおける純粋なeSIMsの利用等の技術革新
は、顧客のプロバイダ切り替えへの意欲を促すことによって、価格にさらなる圧力をかける可能性がある。
もう1つの競争上のリスクは、固定ネットワーク及びモバイル通信の双方において、本業は電気通信セク
ターには属さないが、従来の電気通信市場への進出を拡大させている競合会社との競争に一層直面しているこ
とにある。これは主に、インターネット及び一般消費者向け電気製品業界の主要事業者に関連している。その
結果、当グループは、競合会社により、ますます顧客との直接的接点を失うことによって、付加価値のシェア
をさらに失って利益率が低下するリスクにさらされている。
TモバイルUSには、複数のワイヤレス分野の競合会社が存在しており、そのなかには、より多くのリソース
を有し、主にサービス・機器提供、価格、ネットワーク・カバレッジ、速度及び品質、並びに顧客サービスに
基づいて、顧客獲得を競う会社がある。米国における市場の飽和状態は、ワイヤレス産業の顧客成長率を、従
来の成長率と比較して緩やかにさせ、又はマイナスにさせ、顧客を巡る競争の続行につながることが予想され
る。TモバイルUSは、顧客のデータ・サービスへの欲求によって、ネットワーク容量に対する需要は増加する
と予測している。追加できるワイヤレス周波数帯の不足及びコスト、並びに周波数帯の使用に関する規制は同
社の事業戦略、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。TモバイルUSは、業界が収斂するにつ
れて、ケーブル、電気通信サービス及びコンテンツ並びに衛星テレビ等の他のサービス・プロバイダからの激
しい競争に直面することが増えている。ワイヤレス分野のジョイントベンチャー、合併、買収及び戦略的提携
により、限られた数の顧客を巡って競争する競合会社の数が増える結果となっており、かつ将来的にも増える
ことが予想される。
TモバイルUS及びスプリントの企業結合は、様々な米国政府当局の承認を受けることを条件としており、こ
れら当局は、さらなる条件、遅延を課すことを選択する可能性もあり、提案されている企業結合を阻止する可
能性すらある。当グループには、この企業結合がシナジー及びさらなる利益をもたらすという確固たる信念は
あるものの、期待通りの範囲又は計画された期間内では実現できない可能性を排除できない。当局らが企業結
合を承認しない場合にドイツテレコムが被るリスク・エクスポージャーの増分は、主に予期されたプラスの効
果(つまり、当グループの米国の事業のシナジー及びさらなる利益)が実現しないことに関連するものと思われ
る。
当グループのシステムズ・ソリューションズ事業セグメントもまた、課題に直面している。激しい競争の継
続及び持続的な価格侵食は、伝統的なICT事業に悪影響を及ぼしている。加えて、クラウド・ソリューション
へと向かう技術的な変化及びITセクターのデジタル化は、多額の資本を有する新たな 競合会社 の市場への参入
を促している。IP技術が電気通信事業に導入されることにより、価格が低下し、このことは、Tシステムズに
おける収益損失及び利益率の低下という潜在的リスクをもたらす。
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市場及び環境に関する機会。 電気通信及びITの市場は極めてダイナミックであり、競争が激しい。経済状況
が当グループの活動に影響を及ぼし、当社の指標に影響を及ぼす。当グループは、概括的には、状況が「3
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析-予測-市場予測」の項に記載するよ
うに展開するものと予想する。(「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分
析-予測」の項も参照のこと。)
以下の項に、リスク及び機会を記す。当グループは、これらのリスク及び機会により市場成長を達成し得る
と考えており、これは当グループの将来の財務状態及び財務成績において当グループに大きな意味を有する可
能性がある。
技術革新(代替)に関するリスク。 技術革新周期はさらに短期化している。これにより、電気通信セクター
は、新製品及びサービスをますます短い間隔で提供するという課題に直面している。新たな技術が既存の技
術、製品又はサービスに部分的に取って代わり、場合によっては完全に取って代わっている。このことは、音
声及びデータ通信の両方における価格及び収益の低下をもたらす可能性がある。このような代替リスクは、特
にヨーロッパ及び米国事業セグメントの営業収益に影響を及ぼす可能性がある。当グループは、例えば、パッ
ケージ料金を提供することによって、代替リスクの影響に対処しており、当グループは、新規及び既存の顧客
に、当グループの製品ポートフォリオにおける統合ソリューションを提供している。
技術革新に関する機会。 上記のリスクに加え、当グループは、ますます短期化する技術革新周期により、
我々の社会のデジタル・トランスフォーメーションを牽引し、当グループの消費者及び法人顧客に高度に技術
革新的な製品及びソリューションを提供することが可能になり、明日の疑問に今日答えている。そのため、ま
すます激化する競争環境で機会を見出して最大限に活用する上で、当グループの技術革新及び製品開発活動は
極めて重要である。このことを保証し、ネットワーク及びITの収束の加速化を公平に評価するために、当グ
ループは、新たな取締役会部門である、技術及びイノベーション部門において全ての関連した機能を共同管理
の下に組み合わせることによって、技術革新、ネットワーク及びITの分野のより緊密な統合を可能としてき
た。当グループの技術革新活動に関する詳細は、「5 研究開発活動-技術革新及び製品開発」の項を参照の
こと。
戦略的転換及び統合に関するリスク 。当グループは、引き続き戦略的調整及び費用削減構想の過程にある。
これらのプロジェクトを計画通りに実行することができない場合、当グループは一定のリスクにさらされる。
言い換えると、かかる措置による利益が当初の見積りよりも少ないか、予想よりも遅れて発生するか又は全く
発生しない可能性がある。これらの各要素は、単独であれ組み合わさった場合であれ、当グループの事業状
況、財務状況及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。
このリスク群のリスクの程度は、新たなモバイル通信規格である5Gの発表、5G周波数帯に計画されている競
売及びそれに関連する付与のための条件の結果、並びに規制要件及び電気通信ハードウェア・プロバイダの数
が限られていることに関連して、「中」から「高」へと引き上げられた。
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戦略的転換及び統合に関する機会 。 IP への移行(オールIP)は多くの機会をもたらしている。単一の言語を話
す論理ネットワークが構築されており、技術的には、伝送されるサービスからほとんど独立して機能してい
る。これにより、例えば、メンテナンス及びオペレーションの複雑性を低下させ、サービス固有のレガシー・
プラットフォームのスイッチを切り、エネルギーを節約することにより、効率向上が可能になる。加えて、短
中期的には、既存サービスの顧客体験の改善(例えば、音声品質の向上、顧客セルフ・サービスの増加、構成
の柔軟性の向上等)により、中長期的には、収束製品(convergence products)及びモノのインターネット(IoT)
にとって不可欠な基盤の提供、並びに新製品の発売に要する期間の短縮により、オールIPが潜在的な成長をも
たらす。
しかし、オールIPネットワークでは、さらに多くのことが可能になる。これは、機能及びサービスの仮想化
だけでなく、国境を越えた共同生産(Pan-Net)も支えるネットワーク・インフラ・クラウドである。さらに、
効率性の向上及び成長の機会も構築することになる。1つのサービスを考案し、それを様々な国で発売すると
いうアイデアは、同時にシナジー以上の効果を約束する。つまり、かかるサービスをより迅速にコスト効率よ
く発売する機会が生まれる。
5G は次世代モバイル電気通信ネットワークである。当グループは、多数の異なる組織及びフォーラムに参加
するだけでなく、研究機関及び業界と協力し、電気通信ネットワークが直面している全ての困難に対応できる
この未来標準の開発に集中的に取り組んでいる。これには、純粋な技術要件(容量、帯域幅及び可用性の大幅
な拡大並びに低 レイテンシー の実現など)が含まれている。
加えて、モノのインターネット(IoT)における大規模なマシーン・トゥ・マシーン通信、並びに産業アプリ
ケーションにおける信頼性、安全性及び保証された資源配分への高まるニーズなどといった基本的な課題も存
在している。したがって、5Gは、将来的に既存の事業モデルにおいて急速に高まる要求をコスト効率よく管理
する上で、すぐに利用できる機会を提供するだけでなく、関連するパートナーに「ネットワーク機能」(例え
ば、ネットワーク・アクセス、ローカライゼーション、セキュリティ、アイデンティティ、格納先、一時記憶
装置、リアルタイム・プロセッシング)を販売することで、追加的な事業モデルの機会も提供する。当グルー
プは、既にデータを(ネットワークの各エッジにおいて)分散処理するキャンパス・ネットワーク及びモバイ
ル・エッジ・コンピューティング等の初回使用に向けて取り組んでいる。狭帯域のモノのインターネット
(Narrowband Internet of Things: NB-IoT)及び人工知能(AI)とともに、5G及びエッジ・コンピューティング
は、社会のデジタル・トランスフォーメーションを推し進めるための基礎を提供している。
これ に加えて、当グループは、迅速な開発により当グループのITのトランスフォーメーションを 推し進め て
いる。このアプローチにより、当グループは、コンポーネントをモジュール化して提供すること及び開発の加
速化を通して、効率的なITの生成のための新たな機会を開拓することができている。さらに、迅速な開発に
よって、主要なソフトウェアのリリースの配信の際に、ビッグバンのリスクを低減させることができる。
規制に関するリスク及び機会
以下に、現状では当グループの業績及び財務状況並びに評判に影響を及ぼす可能性がある規制に関する主要
なリスク及び機会を説明する。
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規制上のリスクは、ヨーロッパ及び国レベルの電気通信特有の法的規制から生じ、かつ市場を規制若しくは
これに介入する国家当局の権限、又はプロダクト・デザイン及び価格体系に関する当グループの自由度を制限
する国家当局の権限から生ずる。規制緩和によって規制の機会が生ずる場合もある。規制介入については、当
グループは限られた範囲でしか予期することはできないが、かかる介入は既存の価格及び競争圧力をさらに上
昇させる可能性がある。ドイツ及びその他のヨーロッパ諸国における規制が、収益及び収入の中長期の動向に
影響を与える可能性もある。
国家規制当局が介入することができる分野
ヨーロッパ及び国内の法令においては、国家規制当局に、介入のための広範な権力が認められている。ヨー
ロッパ・レベルでの一例が、2015年に採択された 電子通信の単一市場に関するEU規制 である。これには、 国際
ローミング、ネット中立性及び情報提供義務 の規定が含まれており、当グループの、主に小売製品のプロダク
ト・デザインの選択が制限されている。欧州電子通信規制者団体(BEREC)は、この規制の実施についてのガイ
ドラインを公表した。国家規制当局が規制及びこれらのガイドラインの双方をどのように解釈するかによっ
て、リスクが生ずる。例えばドイツでは、 連邦ネットワーク庁が、法律に基づいて、規定に沿った製品の調整
を義務付けており、違反した場合には罰金を科す広範な権限を有している。
当グループ のドイツ及び外国の会社は、引き続き ホールセール製品の包括的な規制 を受け、当グループの
ネットワーク及びサービスを当グループの競合会社に提供することが義務付けられている。国家規制当局は、
これらのホールセールの提供の期間、条件及び価格を定期的にチェックし、決定する。規制対象の主要なホー
ルセール製品は、 アンバンドルされたローカル・ループ回線、ビットストリーム製品、リース回線、着信料金
及び関連するサービスである。加えて、ヨーロッパ及び国内の消費者保護規制も適用される。例えばドイツで
は、 透明性規制 が2017年6月1日から発効している。当該規制の主な目的は、消費者向けの電気通信サービス
に関する透明性及びコスト管理の強化である。このような状況下で、連邦ネットワーク庁は、消費者が各自の
固定ネットワーク及びモバイル回線で利用可能な周波数帯域幅を測定することを可能にするシステムを導入し
た。
電気通信法の要件に加えて、当グループのメディア製品も、メディア法に基づく特別なヨーロッパ及び国内
の規制を受けている。後者には広義に、著作権法、出版物に対する責任についての規制、メディアにおける未
成年者の保護の徹底に関する要件及びメディア配信プラットフォームのコンテンツ及びユーザー・インター
フェースに関する要件が含まれる。株主構成(連邦共和国及び ドイツ復興金融公庫 (KfW) が大株主である。 ) 、
法的状況又はメディア規制当局の支配的な意見の修正は禁止されており、テレコム・ドイチュラントGmbH
(Telekom Deutschland GmbH)(以下「テレコム・ドイチュラント」という。)に、ラジオ及びテレビ番組の放映
権が付与される見込みはない。
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規制 政策及び法律の変更
ドイツ の小売製品の規制緩和。 以前、連邦ネットワーク庁は欧州委員会に、小売市場の分析の草案を送付
し、小売顧客の製品バンドルの追加的な規制を撤廃する計画について伝えた。製品バンドルにブロードバンド
コンポーネントがない電話回線は、小売顧客向けに引き続き規制の対象となる予定であった。2018年7月13日
に、連邦ネットワーク庁は、市場の分析の草案を取り下げた。現在、最終的な市場分析の内容に関して特別な
言及は行うことはできない。ホールセール製品の規制に影響はない予定である。
連邦憲法裁判所の決定を受けたドイツ電気通信法の改定。 2018 年12月7日に発効された当該法律の改定の結
果、将来的にドイツテレコムは、連邦ネットワーク庁の料金決定に対する不服申立てが成功した場合、いくつ
かのケースにおいて少なくとも主要な競合会社からの割増料金の支払い(遡及的な請求も含む。)を要求するこ
とが可能となった。以前には、これは非常に限られた状況下のみにおいて可能であった。従前の規制を違憲で
あるとした連邦憲法裁判所の決定が下されたため、当該法律の改訂が必要となった。
電気通信に関するEUの法的枠組み。 2018 年6月初旬、欧州議会及び欧州理事会の間で、欧州電子通信指令
(European Electronic Communications Code)の形態の政治的な合意が形成された。これは主に価格及びアク
セス規制、周波数帯政策、分野特有の消費者保護規則、ユニバーサル・サービス制度に関して、電気通信セク
ターの中心的な欧州規制を改革することを目的としている。新たな規則は2018年12月20日付で発効した。加盟
国は、24ヶ月以内にこれら要件を国内法に置き換える必要がある。個々の規則は、これより早い日付に発効
し、特にEU域内の国際音声電話及びテキスト・メッセージの小売顧客料金計画の規制を統括するものは、2019
年5月15日付で、直接適用される欧州規則の一部として発効する。合意は オープン共同投資モデル(open co-
investment models)の場合と同様に、競合会社同士が共同して出資する場合に、「非常に大容量のネットワー
ク」について緩い規制を提供し、長期的により安定的な規制条件を提供するものである。共同所有及び共同資
金供給を構築することに加えて、共同投資モデルも、競争保護を意図した特定の要件に則ったアクセスベース
のネットワーク利用についての長期的な合意を含んでいる。特に、ファイバー-トゥー-ザ-ビルディング/ホー
ム(Fiber-to-the-building/home : FTTB/FTTH)ネットワークは、新しい規則により恩恵を得ることができるだ
ろう。同時に、新たな法的枠組みによって、1社が大きな市場支配力を有するかにかかわらず、全てのネット
ワークに対するアクセス義務を課す新たな権限を規制当局が付与される可能性がある(対称規制)。 周波数帯政
策の観点においては、新たなEUの規制枠組みは、例えば、最短で15年のライセンス期間に、さらに5年間の延
長のオプションを付けることによって特定の分野の調和レベルを上げることにより、モバイル周波数帯を付与
する際の法的確実性を高めることを狙いとしている。消費者保護に関しては、数例の例外を除き、ヨーロッ
パ・レベルで義務が完全に調和されているために、追加的な国家の規制の必要性が否認されているが、同時に
個々の領域においては、より厳しい義務が生じている。
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透明性に関する義務は、大幅に拡張されており、契約条件及びプロバイダの変更に対する規制は、さらに厳
しさを増している。ユニバーサル・サービスが完全に改善され、既にほとんど使用されていない多くのサービ
スが撤廃された。将来的には、ビデオ電話を含むサービスを利用可能とするために、ユニバーサル・サービス
の要件を満たすべく電気通信接続をブロードバンドとする必要があると思われる。加えて、上述したように、
2019年5月15日からは、EU域内の国際音声電話及びテキスト・メッセージ送信の料金が制限されている(5年
の間、0.19ユーロ/分及び0.09ユーロ/SMS(純額)に。)。
電気通信に関するEUの法的枠組みの改正は、電子通信の単一市場に関する一連のEUの新たな立法(a bouquet
of new EU legislation)の一部を形成し、主にインターネット・サービスの重要性が高まっているなかで、以
前に注目されていたテレビ・サービスと競合している(例えば、著作権法、有害なメディアから未成年者を守
るための法律及び第三者のコンテンツに関するインターネット・サービス・プロバイダ(特に、ホスティング)
の責任に基づいて)メディア・サービスを管理する規制を修正するものである。国内レベルでも、デジタル化
及び収束の現象を受けて、具体的な修正(例えば、ドイツの放送に関する州間協定(German Interstate Treaty
on Broadcasting))が審議されている。
周波数帯の付与
不適切な競売規則及び周波数使用規定、 過度 な最低競売価額又は不相応に高く設定された周波数帯の年間料
金によって、 当グループが計画している 周波数帯の取得が危険にさらされる 恐れ がある、という事実がリスク
を生じさせ る 可能性がある。これとは対照的に、当グループは、かかる周波数帯の付与手続により、モバイ
ル ・ネットワーク 事業者が将来の事業 に最適な量の周波数帯 を取得することが 可能になる 、という事実に特に
機会を 見出している 。 これにより、 当グループは、さらなる成長及び 技術 革新 に向けて準備を整えることがで
きる 。 次回の付与手続は、主に 0.7GHz 、1.5GHz及び3.4GHz/3.8GHz及び24GHz並びにこれを超える帯域の追加の
周波数帯の競売に関連している。加えて特に、いくつかの国において2019年から2021年の間に2.1GHzの帯域の
周波数帯のライセンスが終了し、更新が必要となる。ドイツ、クロアチア、マケドニア、オーストリア及び米
国において、付与手続の準備段階にある。2018年に終了した又は現在進行中の周波数帯の競売に関する情報
は、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 - 経済環境」を参照のこ
と。
事業運営上のリスク及び機会
人事 - ドイツ及びシステムズソリューションズ 。 201 8 年、当グループにおいて 、退職金の支払い 、部分退
職、 特定目的の 退職 、 社内再教育措置 及びテレコムのプレースメント・サービス ( Telekom Placement
Services ) が斡旋する公務員のための 公共サービスにおける 雇用の機会などを主たる手段として、人員 を 削減
するための 社会的に責任ある施策が再度講じられた。 次 年度においても、 当グループは、かかる 人員 削減を 引
き続き実施 する 。対応する施策を計画通りに実施できない又は全く実施できないという状況になれば ( 例え
ば、退職金への関心が限定的である場合 ) 、当グループの財政目標にマイナスの影響が生じる可能性がある。
人員削減手段の結果 、 有望な人材が 当グループを 退職する リスクを避けるために、当グループは、当該措置が
各 個々の ケースにおいて両サイドにおいて 自発的であるように する。
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公務員がドイツテレコムに再就職できる権利もまたリスクをはらんでいる。公務員を雇用するグループ 法人
が売却された場合、公務員が将来的に それぞれの部門 で雇用 されることに同意するか、又はそのように 申請す
る 場合に限り 、売却され た グループ法人で 当該公務員の 雇用を継続すること が 一般的に可能である。しかし、
例えば公務員 の 身分から一時的に離れた期間の経過後に、当社が仕事を提供できない状況で公務員が売却され
た法人から当社へ戻るというリスクがある。現在、 1,497 名程度の公務員が、かかる方法によって当グループ
外からドイツテレコムへの再就職の権利を持つ (201 8 年 12 月 31 日 時点 ) 。
IT/NT ネットワーク運営に関するリスク。 当グループ は 、 ますます複雑化する 情報技術 (IT) 及びネットワー
ク技術 (NT) のインフラ を有しており、 最 高 の顧客 経験 を保証し当グループの技術リーダーシップを強化するた
めに 、 かかるインフラの 拡張及びアップグレードを 常に行っている 。現在及び将来の技術インフラの停止は、
完全に防ぐことはできず 、 個々のケースにおいて、収益損失又はコスト増加 が生じる 可能性がある。結局、当
グループの IT/NT リソース及び 構造 は、 当グループの 事業 の 鍵となる組織的及び技術的プラットフォームであ
る。IT及びNTで継続している収束にはリスクがある。これらのリスクに全体的に対抗するために、 取締役会部
門である、技術及びイノベーション部門において当グループのネットワーク、技術革新及びIT機能を組み合わ
せた。
インターネット・アクセスが必要な全てのIT/NTシステム及び製品に関する当該領域には、リスクが発生す
る可能性がある。例えば 、 新開発の IT/NT システム と既存のシステムの 間で障害があれば、事業プロセス 並び
に スマートフォン及び マゲンタTV (MagentaTV) 等の製品及びサービス が中断される 可能性がある。当グループ
は、自然災害又は火災等による停止リスクを避けるため、技術的な早期警告システム及びミラー化された
IT/NT システム を使用している。 T システム ズにおけるコンピューター緊急事態対策チーム (Computer
Emergency Response Team(CERT)) は、当グループの 企業 顧客のサーバー保護を担当している。クラウド・コン
ピューティングでは、全てのデータ及びアプリケーションはデータセンターで保管される。当グループのデー
タセンターにはセキュリティ 認定 があり、 厳しい データ保護 規定 及び EU 規制を満たしている。会社及び個人に
関連する全てのデータは 、 外部アクセスから守られている。 持続的な メンテナンス及び自動更新 により、常に
最新の 安全対策 が維持されている 。 グループ規模で標準化されている事業継続性管理に基づき、当グループ
は、損害 の発生 を防止する か 、 それが不可能な場合にはその後の影響 を軽減す る ため に、 組織的及び技術的措
置も講じている。さらに、当グループは 、 付保可能な リスク に対して保険を付保している。
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IT/NT ネットワーク運営に関する 機会 。 当グループのネットワークの大量のデータ(ビッグ・データ)利用に
より、透明性を向上させることにより意思決定プロセスを向上させ、加速化することができる。これは、仮説
から事実へ決定の基礎を移し、例えば相関性を認識させることにより実現される。
当グループのシステムズ・ソリューションズ事業セグメントは、モノのインターネット(Internet of
Things)及びサイバー・セキュリティといった事業プロセスのデジタル・トランスフォーメーションにおける
革新的な事業分野をカバーしている。かかる事業分野は、予想以上の速さで発展する可能性がある。当グルー
プは、デジタル・トランスフォーメーションのパイオニアとして、参加するだけではなく、ヘルスケア及び機
動性ソリューション分野における様々なプロジェクトによって市場のトレンドを積極的に作り出す機会も有し
ている。M2M通信及びビッグ・データに基づくこれらの新たな事業モデルが拡大段階を迎える中、当グループ
のパートナー志向のアプローチは、データ通信、ビッグ・データ、クラウド・コンピューティング及びサイ
バー・セキュリティにおける当グループの中核能力をもって様々なプロジェクトに寄与する上で、極めて有望
な手段である。さらに、予知保全といったモノのインターネット(Internet of Things)の市場分野において
も、当グループは、既に最初の実績を上げている。
当グループは、ヨーロッパの通行料金収受事業の従前の技術及び開発パートナーとして、既に強力な競争上
の地位を有している。当グループは、ベルギー及びオーストリアにおけるヨーロッパの通行料金収受プロジェ
クトにおいて、ヨーロッパ全体の料金収受システム(Toll4Europe)の導入計画によって貴重な信頼を獲得して
おり、このことが競合会社よりも優位に立つ上で役に立つ。
米国の既存のITアーキテクチャに関するリスク。 T モバイルUSは、サービスの提供及びサポートを行うため
に、自社のシステム及びネットワークに加え、他のプロバイダー及び供給業者のシステム及びネットワークに
依存している。TモバイルUSの事業には、ほとんどの小売業者及びワイヤレス会社同様、顧客の秘密情報(機微
個人情報、支払カード情報を含む。)、従業員及び納入業者の秘密情報並びにTモバイルUSに関する他の機微情
報(事業計画、取引及び知的財産等。)の受領、保管及び送信が関与する。サービス拒否及びその他の悪意のあ
る攻撃等のサイバー攻撃は、TモバイルUS社内のシステム、ネットワーク及びアプリケーションを破壊し、顧
客へのサービス提供能力を損ない、その事業にその他の悪影響が出る可能性がある。
米国の IT アーキテクチャの将来の実現可能性。 T モバイル US は、 新たな技術や進化する技術で業界での競争
力の強化と維持を図るために、将来的な技術の変化への適応、 同社 のネットワークへの継続的な投資、既存
サービスの拡大、並びに既存及び潜在顧客の変化する要求に応えるための新たなサービスの導入に取り組む必
要 が ある。TモバイルUSがタイムリーに技術開発を活かすことができなければ、 同社 は サービスに対する需要
の低下に直面したり事業戦略の実行又は進化において困難に直面したりする可能性がある。TモバイルUSは、
顧客請求システムの導入を現在進めているが、これは第三者がサポートするプラットフォームが関わってい
る。かかる導入によってシステム又は業務に大きな混乱が生じる可能性があり、あるいは、TモバイルUSが適
時又は効果的な方法で請求システムを導入することができないこともある。
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米国の IT アーキテクチャに関連した機会。 T モバイル US は、 成功するために、顧客に信頼性がある確かな
サービス及び情報セキュリティを提供する必要がある。 T モバイル US は、 IT インフラ 及び ワイヤレス・ネット
ワーク に多額の投資を行って いる。 これにより、プロセスが顕著に向上した場合には、 その 節約 効果 は、 前に
想定していたものよりも高くなる可能性がある。
調達。 ドイツテレコム は、多様 な技術(情報及び通信技術)及び非技術的な製品及びサービスの供給業者と提
携している。より高いリスクを伴う可能性のある製品及びサービスには、ソフトウェア及びハードウェア、
ネットワーク技術コンポーネント、並びに最終顧客に直接提供される全ての製品及びサービスが含まれる。
供給リスクを完全に排除することはできない。輸送上の障害、価格上昇、経済及び政治情勢の変化又は供給
業者 の 製品戦略は、当グループの事業プロセス及び業績に悪影響を及ぼす可能性がある。 さらなる リスク が 、
個々の 供給業者への依存又は個々の 供給業者 の不履行等から発生すること も ある。 これは、中国の電気通信供
給業者について特に当てはまる。 こうしたリスクに対応するため、当グループでは、組織的な施策、契約上の
施策及び 調達 戦略 上の 施策を採用している。
データ保護及びデータ の セキュリティ。 EU 全体にデータ保護法のより厳しい要件を課す 一般データ保護規則
は、 2018年5月25日に効力が発生した。この新たな規制によって当社で根本的な変更が必要となることはな
かった。というのも、当社の組織には、既に、データ処理に伴うリスクを評価及び文書化するためのプライバ
シー影響評価などの新たな手続きがしっかり構築されていたからである。にもかかわらず当グループは、一般
データ保護規則の導入を、三段階プロジェクトにおいてデータのプライバシーを完全に評価し直す機会として
利用した。第一段階において(2016年)、当グループは、法的枠組みを規定して、当グループの拘束力ある解釈
として決定した。第二段階は2017年に完了し、ここで当グループは、当グループのヨーロッパの全てのグルー
プ会社における実施プロジェクトを立ち上げ、一般データ保護規則との関連において当グループのITシステム
及び処理を評価した。2018年に、準備状況のチェック(readiness checks)が第三段階として行われた。この段
階においては、影響を受ける当グループ内の全ての法人に対し、全ての該当する要件を実施したかが確認され
た。これに加えて、 一般データ保護規則 遵守についての抜き打ち検査(spot checks)が、28の法人に対して行
われた。当グループは、このようにして、共通した要件及び処理を用いて当グループ全体における一貫した
データ保護の実施を徹底させる。これにより、当グループ全体のプロジェクトにおける効率を上げ、データ保
護を促進し、国際協調を促すことができる。
一般データ保護規則は、同一の規則が全てのプレーヤーに適用される、真の単一ヨーロッパ市場への道を切
り開く道しるべである。 新たに採択された規則は、ヨーロッパにおける高いレベルのデータ保護を保証し、同
時に、新たなデジタル ・ ビジネス・モデルへの基盤を整え る 。 これにより、 EUにおける全ての市場プレーヤー
に対して条件を公平にする、という 当グループの基本的な 要求は 満たされ た 。 加えて、新たなデータ保護法
は、 EU 域外のサービス・プロバイダーに関し、主要な規制上の隔たりを解消する。 一般データ保護規則 は、 EU
の消費者を対象とするヨーロッパ 以外 の市場プレーヤー ( 例えば 、 グーグル (Google) 、フェ イ スブック
(Facebook) 及びアップル (Apple)) にも適用されることで、全体的な競争状況を向上させる 。 一
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残念なことに、立法府はいくつかの機会も失った。例えばeプライバシー指令が改訂されるまでの間、電気
通信プロバイダーが保管するデータは、より厳しい、専門領域の規制の対象にとどまることとなった。これに
より、ヨーロッパの電気通信プロバイダーは、いくつかの分野において競争上の不利益を被ることとなった
が、これは、これまでに公布された新たな提案規制が 、一部 だけ 軽減される分野においてである。一般データ
保護規則の下で可能なものと比較して、電気通信プロバイダーのデータ処理の選択肢が実質的に制限されるた
め、電気通信分野にビッグデータを応用することより期待される可能性の全部は発揮されないことが予想され
る。計画されている e プライバシー規則(eプライバシー指令を置換えることが想定されている。)の現在の草案
によると、メタデータは顧客の承認がある場合に限り処理可能になる。eプライバシー規則の草案は、仮名を
使用した対応する目的の処理の可能性を提供しない。しかし、特にビッグデータの活用においては、信頼性の
ある結果を導き出すために大量のデータが利用される。純粋に同意に基づく解決法では限界がある。これに
よって、駐車スペースの発見、事故の回避、テレビ番組のカスタマイズ又はヘルスケア分野における遠隔監視
といった、消費者に有用となる可能性があるが匿名のデータでは実施できない様々なサービス・モデルが排除
されることとなる。しかし、2018年後半におけるオーストリア大統領閣僚会議に提出された、 e プライバシー
規則を、一般データ保護規則により近いものとするための 提案書は、正しい方向性への前進である。特に、 e
プライバシー規則に、仮名を使用した対応する目的の処理を組み込む提案は、技術革新に配慮した規制への重
要な第一歩であり、同時に高いレベルのデータ保護を維持している。したがって、提案される法案が、2019年
にもこの均衡のとれた方法を踏襲し続けることが重要である。
IT セキュリティは、 依然として主要な課題である。事業プロセスにおけるセキュリティ統合及び従業員間の
セキュリティに対する意識向上のための施策といった予防策に加えて、当グループは、脅威及びサイバーリス
クの分析により大きな重点を置いて、これらの課題に取り組んでいる。 当グループは多くの新たな課題に直面
している。近年、焦点は防止から分析に移った。ここで当 グループ の早期 警告 システムが役立つ。これ は 、 サ
イバー攻撃の新たな 発信源 及び 類型を検出し、 厳密 なデータ保護を維持すると同時に攻撃者の行動を分析する
ことで、セキュリティ分野での新たな傾向を 特定する 。 当グループの早期 警告 システム は 、 IT システム に脆弱
性があるかのように装う ハニーポット・システム に加え、 スパム・メール、ウィルス及びトロイの木馬に対す
る 警報 及び分析ツールを含んで いる 。当グループは、これらのシステムの全てから得た情報を、新たな攻撃パ
ターンの検出及び新たな保護システムの開発をするために、公共団体や民間団体と交換 している。
サイバー犯罪及び産業スパイは増加している。 当グループはこれらのリスクに対し、包括的なセキュリ
ティ・コンセプトで対応している。 当グループは、 より 高い 透明性を 生み出してこれらの脅威に取り組む上で
の立場を強化するために、 公共団体及び民間団体等との パートナーシップをより一層頼りにしている。 セキュ
リティ・バイ・デザイン (Security by Design) の原則により、当グループはセキュリティを新製品及び情報シ
ステムのための開発プロセスの不可欠な一部として確立した。また、当グループは 、 義務付けられている 集中
的 な デジタル・セキュリティ・テストを実施 し ている。
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当グループは、ITセキュリティ・ソリューションを使用して当グループの成長を加速させるための努力を続
けている。そ のために、当グループはTシステムズ内に当グループのセキュリティ部門を統合した。 当グルー
プは、 このエンドツーエンドのセキュリティ・ポートフォリオ を用いて、モノのインターネット(Internet of
Things)及びインダストリー4.0(Industry 4.0)などのメガトレンドを背景にしたセキュリティ構想により、市
場シェア及び評価を確保することを望んでいる。また当グループは、サイバー・セキュリティの分野において
パートナー・エコシステムを継続的かつ段階的に拡大させている。マゲンタ・セキュリティ ・ ポートフォリオ
(Magenta Security portfolio)並びに製品及び今後のイベント(ドイツテレコムのマゲンタ・セキュリティ年
次規定(annual Magenta Security Convention)等)の最新情報の概略は、https://security.telekom.comを参
照のこと(ドイツ語のみ。)。 当グループは、当グループのウェブサイト (www.telekom.com/en/corporate-
responsibility/dat ▶ -protection-data-security) に、 データ保護及びデータのセキュリティの最新の動向に
関する情報を定期的に掲載している。この戦略的な経営分野をどのように策定していくかについての情報は、
「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 - グループ戦略 」の項を参照の
こと。
ブランド、コミュニケーション及び評判から生じるリスク及び機会
ネガティブなメディア報道。 当グループの製品及びサービス又は企業活動及び責任に関する予測不能なネガ
ティブなメディア報道は、当グループの評判及びブランド・イメージに極めて大きな影響を及ぼす可能性があ
る。ソーシャル・ネットワークが、そのような情報や意見がより速くかつ広く拡散することを可能にした。最
終的には、ネガティブな報道は当グループの収益及びブランド価値に影響を及ぼし得る。これを回避するた
め、当グループはとりわけ顧客、メディア及び金融界と恒常的、集約的かつ建設的な対話を行っている。当グ
ループにとっては、全ての利害関係者の利益につき最大限に均衡のとれた見解を持ち、それにより信頼のおけ
るパートナーとしての当グループの評判を維持することが最優先である。
持続可能性 の リスク及び機会 。 当グループにとって、リスク及び機会の包括的な管理は、生態学的 若しくは
社会的 な 要因又は 当社の管理から生じる機会及びリスクの検討 も意味する 。 この目的のために、当グループ
は、現在及び潜在的なリスク及び機会を特定するプロセスにおいて、積極的及び体系的に全ての関連する利害
関係者に関与している。当グループはさらに、多くの作業部会及び委員会に参加している。生態学的、社会的
及びガバナンスに関する問題を 継続的に モニタリングすることと並行 し て、当グループは、これらの問題に対
する当グループの利害関係者の立場を体系的に判断している。 当グループがここで使用する重要なツールは 、
当グループが 全ての利害関係者 を対象に年間を通じてオンライン上で行っているオープンな 重要性調査 、 当グ
ループに 関連する NGO の報道出版物 を体系的に分析する隔月のNGO報告書 、 作業部会及び委員会 並びに多数の国
内・国外の事業協会及び社会組織( GeSI 、 BDI 、 Bitkom 、 Econsense 及び BAGSO 等)への関与 、 当グループが組織
する利害関係者対話フォーマット、当グループの様々な出版物 ( プレス・レビ ュー及びニュースレター等)であ
る。当グループはさらに、当グループの社内コンプライアンス評価に最大の持続可能性リスクを組み入れるこ
とで、様々な事業分野において関連する位置付け及び方策の作成を記録する。
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当グループは、当グループの主な持続可能性管理の問題として、以下を特定した。
- 評判。 当グループ が どのように 持続可能性の問題を 取り扱うかも、 当グループの評判について の 機会及
びリスクの両方に関係す る 。 高い水準のサービス品質が、顧客の認識を高めるための最も重要な要素の
1つである。顧客満足度 が 非財務業績指標として当グループの管理に組み込まれ ていることは、この件
の重要性を明確に示している。 透明性及び報告 は 、 当グループ において 他の外部の利害関係者 からの 信
頼を 高める上で役立っている 。当グループの年次報告書及び CR 報告書もこの目的 に適うものである 。し
かし、データ保護、サプライ・チェーンの事業 慣行 、 及び人権に関連する行動 等の 業務基準等の問題も
また、評判のリスクを伴っている。当グループのブランド、製品又はサービス が ネガティブなメディア
報道 の話題に関係している 場合、当グループの評判 が 大き く傷つく可能性がある。当グループの持続可
能性管理の活動の一環として、当グループはかかる潜在的なリスクを継続的に検討し、これらを最小限
に抑えるための措置をとる。 これには、これらを体系的に当グループの社内コンプライアンス管理シス
テムに組み入れることで、持続可能性の問題に関するリスク及びこれが部門を超えた評価に与える影響
の間の関連性を決定することが含まれる。 当グループは、当グループの評判を向上させるために当グ
ループの製品及びサービスが持続可能性にどの程度プラスの貢献を行っているかを算定する。
- 環境 保護。 当グループは、統合した気候戦略を追求している。これは、気候変動が当グループ及び利害
関係者に引き起こすリスクだけでなく、気候変動がもたらす機会にも焦点を当てることを意味する。
2030年までに、 ICT の製品及びサービスは、 ICT セクター自体が出すCO 排出量の最大10倍を他の産業にお
2
いて削減する可能性を持つ ( GeSI の SMARTer2030 調査 による。 ) 。これは、 2030 年に は 世界の CO 排出量 の
2
20 %を 削減 し、 世界全体で 2015 年の水準の 排出量 を維持 しながら同時に経済成長も達成する機会をもた
らしている。 ここで 増加する可能性がある 収益 は 6.5 兆米ドルであり、そのうち 2.0 兆米ドル は ICT 産業だ
け で発生する 。 さらに 、 ICT ソリューションにより 、 総額 4.9 兆米ドルの コスト削減 が 可能であ る 。 具体
的 な 例を挙げると、ドイツにおける ブロードバンド の 展開 に より、 2012 年 から 2020 年 の間に合計 19 百万
メートルトン のCO が削減される可能性がある 。 その上、ブロードバンドの展開によってもたらされる経
2
済的な勢いにより、2015年から2020年の間に合計162,000人の新規雇用が創出され、GDPは470億ユーロ増
加する可能性がある。当グループは、製品ポートフォリオを評価して持続可能性のメリットを特定する
ことで、この流れを支えている。加えて、当グループは、当グループ独自の価値連鎖が生成する量に比
して、当グループの製品及びサービスが削減する排出量の割合を継続して改善することを望んでいる。
例えば2018年には、当グループは、ドイツにおける排出量を、当グループが生成した量の85%多く削減
した。
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気候変動リスクは、度合いを増す異常気象の形で既に見てとれる。これは、当グルー プの利害関係者(当グ
ループの顧客、サプライヤー及び従業員等)に直接的な影響を及ぼしている。このリスクは、リスク管理の一
環として事業の継続に関連して評価され、事業部門の事業レベルにおいて管理される。この領域において、当
グループはCO 排出量を削減することでさらなる予防的行動をとることができる。これが、当グループが2020
2
年までにグループ全体(当グループの米国事業セグメントを除く。)の排出量の20%削減(2008年比)を達成する
という目標を設定した理由の1つである。環境保護は、CO 排出への課税の導入あるいはエネルギー・コスト
2
の増加のいずれであれ、財務リスクももたらす。これらのリスクに対して当グループが講じている対策には、
エネルギー効率を測定し、その改善方法を探ることも含まれている。加えて、当グループは、2020年からの期
間のために、科学に基づく目標(Science-Based Targets)に基づく新たな当グループの気候目標を作成してい
るところであり、これは2019年に採用される予定である。さらに、2018年に当グループの4つの子会社( ハン
ガリーの マジャールテレコム(Magyar Telekom)、ギリシャのOTE、Tモバイル・ネザーランド及びテレコム・ア
ルバニア(Telekom Albania))は、必要電力量の100%を再生可能エネルギーで賄い、別の4つの子会社(Tモバ
イル・オーストリア、Tシステムズ・オーストリア、フルバツキテレコム(Hrvatski Telekom)及びTシステム
ズ・ネザーランド(T-Systems Netherlands))はこの目標をほぼ達成しており、このように気候リスクの低減に
努めている。再生可能エネルギー100(Renewable Energy 100)のメンバーとして、TモバイルUSは、2021年から
再生可能エネルギーの電気要件を100%達成することを既に約束している。
- 供給業者。 当グループは、当グループのサプライ・チェーン における 持続可能性 の 向上 を 、 当グループ
の評判を高め、事業を成功させる 機会と捉えている。当グループ は、 世界規模で調達活動 を 行うことに
伴う一般的なリスクの他に、各国及び 供給業者 固有の リスクにさらされる可能性がある。これには、例
えば 児童 労働者の使用、環境破壊の意識的な容認、又は不適切な現地の労働 環境及び 安全環境が含まれ
てい る。当グループは、体系的に供給業者を調査 することにより、 これらのリスクを低減させている。
当グループは、 これらの監査を、共同監査会社(JAC)の範囲内で行っている。JACの目的は、当グループ
の サプライ・チェーン の持続可能性のリスクを低減させ、人権問題を含む生態学的及び社会的側面を向
上させることにある。したがって、監査は、国際的に認められたガイドライン及び基準(例えばILOの中
核となる労働基準(ILO Core Labor Standards)、国連のビジネスと人権に関する指導原則(UN Guiding
Principles on Business and Human Rights)及びOECD多国籍企業行動指針(OECD Guidelines for
Multinational Enterprises))に準拠している。 当グループの国際的な持続可能性基準を遵守する供給業
者とのパートナーシップにより、高水準の製品品質及び調達の 信頼性 が確保される 。当グループは、特
別な開発プログラムを設け、 戦略的な供給業者が社会的及び生態学的ともに許容することができ、かつ
経済効率もよい事業慣行を導入する手助けを行っ てい る。このプログラムは、当事業年度に再び相当な
成功を収め、以下の3つの主要な利点を有している 。 つまり、当グループの供給業者の労働条件にプラ
スの影響を及ぼし、彼らの 利益性 を上げ、当グループ及び供給業者双方にとっての持続性に対する経済
関連性を明確にした。例えば、 当グループの供給業者 における 労働条件 の 改善は 、 労働関連の事故 数の
減少及び 離職率 の 低下につながる 。 これにより 高品質な製品が確保され、 生産性が 上がり、 同時に、 人
材の採用 及び 訓練費用が削減される。このように 、 当グループは当グループの供給業者の利益性及び CR
業績を強化するだけではなく、特定 された リスク を大幅に減少させ てい る 。
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健康及び環境。 モバイル通信又はモバイル通信で使用される電磁場は、潜在的な健康リスクに 関する懸念を
公衆の間に定期的に引き起こしている 。 この 問題 は、 依然として国民的 、 政治的及び科学的 議論の的になって
いる 。 公衆の受忍問題は 、 モバイル通信 ネットワーク 及び スマートフォン、タブレット及びラップトップと
いった携帯端末機の使用の両方に 関するものである 。 モバイル通信インフラの 構築や モバイル機器の使用 の 影
響も議論されている 。 固定ネットワークにおいては、 従来のIP及び DECT( デジタル・コードレス ) 電話及び Wi-
Fi 技術を使用する デバイスの利用 に 影響を与える 。 電磁場に関する制限値の引下げ又は モバイル通信 における
予防措置 ( 例えば 、建築法の改正や携帯電話への表示義務 の リスク ) の 実施といった規制介入のリスクもある。
この数年間に、世界保健機関 (WHO) や国際非電離放射線防護委員会 (ICNIRP) 等の認知されている専門機関
は、モバイル通信 に関する 現在の 制限値 を 繰り返し 見直しており 、 現在の科学知識に基 づき 、 モバイル技術の
使用 は (当該制限値が遵守されていれば)安全であると 確認している。 専門機関(現在は ICNIRP ) は、 最新の科学
研究結果に基づいて推奨される制限値について、定期的に見直しを行っている。
当グループは、特定の制限値が遵守されればモバイル通信技術は安全であると確信している。当グループの
この確信は、認知されている機関の評価により支えられている。この問題に関する当グループの責任あるアプ
ローチは、当グループ全体の EMF ポリシーに現れている。これに従い、当グループは、法的要件で規定されて
いる以上の透明性、情報、参加及び独立したモバイル通信研究の資金支援に努めている。当グループは、客観
的かつ科学的に根拠があり、また透明性のある情報ポリシーを追求することにより、公衆の間にある不安の克
服を目指している。したがって、当グループは引き続き、各地方自治体との間で 信頼に基づく 対話を 強化し、
成功裏に進める ことが当グループの義務であると考えている。この点は、 2013 年 にモバイル・ネットワークの
拡張 に向けた地方自治体との長期にわたる協力関係が法制化されて以降 特に 当てはまり、以前は、この協力関
係は、ネットワーク事業者による自発的な自主約束に基づいていた。
訴 訟
主な係争中の訴訟 手続 。 ドイツテレコムは政府機関、競合会社及びその他の当事者に対して、裁判所内外
の訴訟における当事者となっている。下記の訴訟は、当グループの観点から特に重要なものである。極端に
稀なケースにおいて 、 個々の訴訟及び独占禁止手続の重要性に関し て 要求された開示が行われ ていない場合
は 、 それは、 かかる 開示が関連する訴訟の結果を著しく損 なう 可能性があると 当グループが判断したためで
ある。
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- 目論見書に係る責任に関する訴訟(第3回公募又はDT3)。 これは当初2000年5月26日 付の目論見書に従っ
て売り出されたドイツテレコム・アーゲー株式の購入者と 称する 約 16,000 人もの人数による約 2,600 件の
訴訟 に関連したものであった 。 原告は、この目論見書で示され た 個々の 数字が 不正確 又は 不 完全で ある
と主張している。 係争額は 総額約 80 百万ユーロ及び利息である。訴訟の一部には、ドイツ復興金融公庫
(KfW) 及び / 又は ドイツ 連邦共和国並びに株式発行銀行に対する訴訟も含まれ る 。 フランクフルト・ア
ム・マイン地方裁判所は、ドイツにおける投資者モデル手続法 (Kapitalanleger-
Musterverfahrensgesetz(KapMuG)) に基づき、認証質問書をフランクフルト・アム・マイン上級地方裁判
所に提出し、第一審を一時的に留保した。フランクフルト・アム・マイン上級地方裁判所は 、 2012 年 5
月 16 日に、ドイツテレコム ・アーゲー の 目論見書に 重要な誤り は なかったとの 判決 を下していた。連邦
司法裁判所は、 2014 年 10 月 21 日の 決定で当該 判決を棄却し 、 目論見書に誤りがあったとして、フランク
フルト・アム・マイン上級地方裁判所に本件を差し戻した。 2016 年11月30日、フランクフルト・アム・
マイン上級地方裁判所は、連邦司法裁判所によって特定された目論見書の誤りはドイツテレコム・アー
ゲー側の責任である可能性があるが、当該責任の詳細については第一審で立証されるべきであるとの判
決を下した。ドイツテレコム・アーゲー及びモデル手続における一部の個人の原告は、いずれもこの決
定に対して連邦司法裁判所に控訴した。 当グループは、ドイツテレコム・アーゲーが損害に対して責任
を負う必要がないことには説得 力のある 理由がある、という意見を持ち続け てい る 。 既に十分な偶発債
務が認識されており、連結財務書類に対する注記に示されている。ドイツテレコム・アーゲーの年次財
務書類では、かかるリスクに対する十分な引当金が認識されている。年次財務書類は、ドイツGAAPに
従って作成されている。
- 提携相手である電話帳出版社による請求。 2013 年 末、加入者の電話帳を編集し出版するために、当時の
デーテー・メディエン GmbH(DeTeMedien GmbH) ( 以前の ドイツ テレコム・アーゲーの完全子会社であり 、
現在の 名称 は ドイツ・テレ・メディエン GmbH( Deutsche Tele Medien GmbH) ) と共同してジョイントベン
チャーを立ち上げた複数の出版社が、デーテー・メディエン GmbH( DeTeMedien GmbH ) 及び / 又はドイツテ
レコム・アーゲーを提訴した。原告らは、ドイツ・テレ・メディエン GmbH( Deutsche Tele Medien GmbH)
に 対して損害賠償又は 払戻し を 請求し、ドイツ・テレ・メディエン GmbH( Deutsche Tele Medien GmbH)
の 連帯債務者としてのドイツテレコム・アーゲーに対して、一定の限度で損害賠償又は 払戻し を請求し
ている。原告らは、ジョイントベンチャーにおいて加入者情報提供料金が過剰請求されたとする主張を
請求の根拠と し ている 。 81 人の当初の 原告 に よる 請求総額は 、 2014 年末 で 約 470 百万ユーロ及び利息と
なっている。 2015 年10月には、かかる紛争について和解する合意が出版社の大多数との間で成立し、そ
れ以降、複数の請求が確定的に取り下げられた。現在は12件の訴訟が依然として係属中 であり、残りの
紛争 額は 約 89 百万ユーロ及び利息であ る。10件の訴訟において、上級地方裁判所が請求を棄却した後
に、原告は連邦司法裁判所に控訴した。これらの訴訟のうち1件において、2019年1月29日に連邦司法
裁判所はその判決に対する控訴を却下した。そのうち3件の請求は、第一審にて中断中である。2016年
6月以降、依然として民事訴訟が係属中である出版社5社は、並行して連邦ネットワーク庁 に対する行
政訴訟を通じて請求を続けている。これらの請求のうち3件が、法的拘束力のある効果をもって棄却さ
れている 。
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- ケーブル管路の共有の料金に関する損害賠償請求。 2012年、カベル・ドイチュラント・フェアトリー
ブ・ウント・セルビス GmbH( Kabel Deutschland Vertrieb und Service GmbH )( 現在の ボーダフォン・カ
ベル・ドイチュラント GmbH(Vodafone Kabel Deutschland GmbH) であり、 以下「 V KDG 」という。 ) は 、 テ
レコム・ドイチュラント に対し、 将来ケーブル管路の容量を使用する権利 の 年間手数料を 引き下げ、 こ
れに関連して 2004 年 以降行われた支払いの一部 を 払 い 戻 すよう求める請求を行った。最新の見積りによ
ると、V KDG の 請求は、約624百万ユーロの他に、追加利息による利益とされる約9百万ユーロ及びそれぞ
れの利息となった。VKDGは、2009年より前の請求を現在止めている。2013年にフランクフルト・アム・
マイン地方裁判所がこの要求を退けた後、2014年12月には、フランクフルト・アム・マイン上級地方裁
判所も控訴を棄却した。2017年1月24日付の判決では、連邦司法裁判所が控訴判決を無効とし、フラン
クフルト・アム・マイン上級地方裁判所に本件を差し戻し、さらなる審議を命じた。2018年12月20日付
の判決において、フランクフルト・アム・マイン上級地方裁判所は、控訴を再度棄却して、それ以上の
控訴は認めなかった。 類似 の 訴訟 手続 としては、2013年1月に、 ユニティーメディア・ヘッセン GmbH &
Co. KG (Unitymedia Hessen GmbH & Co. KG) 、 ユニティーメディア NRW GmbH(Unitymedia NRW GmbH) 及び
カベル BW GmbH(Kabel BW GmbH) が 、 テレコム・ドイチュラント に対し、 ケーブル管路の共有について、
個別に 正確に定められた 金 額より も 多い 料金 を 原告に請求することをやめるよう要求 する旨の提訴を
行った 。 これに加え、 原告は約570百万ユーロ及び利息の払戻し を 要求している。この請求は、2016年10
月11日にケルン地方裁判所の第一審において棄却された。2018年3月14日の判決では、デュッセルドル
フ上級 地方裁判所 が 、この決定に対する控訴を棄却した。両方の訴訟において、原告は、連邦司法裁判
所に対し、控訴が認められなかったことにつき不服を申立てている。現時点では、これら両方の 訴訟 に
よる財務への影響を 十分な 確実性 を もって 評価することはできない。
- 過去の法的拘束力のある仲裁決定に相反するにもかかわらずマレーシアで提起された損害賠償請求。 セ
ルコム・マレーシアBerhad(Celcom Malaysia Berhad)(以下「セルコム」という。)及びテクノロジー・
リソーシズ・インダストリーズBerhad(Technology Resources Industries Berhad)は、ドイツテレコ
ム・アーゲーの子会社であるディー・ティー・アジア・ホールディングGmbH(DeTeAsia Holding GmbH)を
含む計11の被告を相手として、マレーシアのクアラルンプールの州立裁判所に訴訟を提起している。原
告は、232百万米ドルの損害賠償及び補償並びに利息を要求している。ディー・ティー・アジア・ホール
ディングGmbH(DeTeAsia Holding GmbH)は、自社に有利であった最終決定に基づき、2005年にセルコムに
対してこの金額を強制執行していた。この件に関する主要な第一審の裁判所の手続は、2018年1月に開
始された。現時点では、これによる財務への影響を十分な確実性をもって評価することはできない。
- 特許及びライセンス。 他の多くの大手電気通信及びインターネット・プロバイダーと同様に、ド イツテ
レコムは多数の知的財産権紛争にさらされている。当グループは、ライセンス料及び / 又は 補償 金を支払
うこととなるリスクがある。また例えば、製品の販売又は技術の使用に関連して差止命令を受けるリス
クもある。
さらに、 ドイツテレコム は これらの手続のそれぞれにおいて、毅然として抗弁及び/又は主張をするつもり
である。
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終結した手続
- トール・コレクト( Toll Collect) 仲裁手続。 2018年5月16日に、ダイムラー・ファイナンシャル・サー
ビシーズ・アーゲー、 ドイツテレコム・アーゲー 及びドイツ連邦共和国が、トール・コレクト仲裁手続
の終結について合意に達した。2018年7月初旬に和解が公証され、仲裁裁判所が仲裁手続の終結を確認
した。合意された和解金額である約32億ユーロには、ドイツ連邦共和国に以前に提供されたサービスが
含まれている。ダイムラー・ファイナンシャル・サービシーズ・アーゲー及びドイツテレコム・アー
ゲーは双方とも、それぞれ550百万ユーロを最終的に支払うことに合意した。支払いは、2020年までに3
回に分けて行われ、1回目が既に支払われた。
独占禁止に関する手続
全ての企業と同様に、当グループは独占禁止法の規制 を受けている 。 このため、当グループは近年、コンプ
ライアンス活動をこの分野にも拡大させた。 それ に もかかわらず 、 ドイツテレコム 及びその子会社、ジョイン
トベンチャー並びに関連会社は 、 時として 競争法による訴訟又はその後の民事上の訴訟 を受けている 。 主な独
占禁止訴訟 及び それに起因する損害賠償請求について 以下 に 述べる。
欧州委員会の罰金を 科す 決定を受けたスロバキアテレコムに対する損害賠償請求。 欧州委員会は、スロバキ
アテレコムがスロバキアのブロードバンド市場で市場支配力を乱用していたと2014年10月15日に判断し、その
結果、スロバキアテレコム及びドイツテレコムに対し罰金を科した。欧州委員会の決定を受けて、競合会社
は、スロバキアテレコムを相手取り、ブラティスラヴァの民事裁判所に損害賠償訴訟を提起した。かかる請求
は、欧州委員会が判断した通り、スロバキアテレコムが独占的な市場地位を乱用したことにより生じたとされ
る損害の賠償を求めたものである。現時点で、総額215百万ユーロ及び利息に及ぶ3つの請求が目下のところ
係属中である。現時点では、財務への影響を十分な確実性をもって評価することはできない。欧州委員会が課
した罰金は2015年1月に支払われた。スロバキアテレコム及びドイツテレコムは、2014年12月29日付の欧州委
員会の決定に対し、欧州連合裁判所に異議申立てを行った。2018年12月13日に、裁判所は欧州委員会の決定を
一部覆し、罰金を総額13百万ユーロへと低減させた。この決定はまだ法的拘束力を有しておらず、欧州委員会
又はスロバキアテレコム及びドイツテレコムが、欧州司法裁判所に異議申し立てを行うことができる。
財務リスク
流動性、信用、通貨、金利リスク
当グループは、その資産、負債及び予定される取引に関して、とりわけ、流動性リスク、信用リスク並びに
為替及び金利 の 変動 リスク にさらされている。これらのリスクを抑制するために、当グループは、リスク査定
に応じて、一定のデリバティブ及び非デリバティブ ・ ヘッジ手段 ( ヘッジ ) を 用いている。キャッシュ・フロー
に影響を及ぼすリスクのみがヘッジされるために、デリバティブ財務手段は、ヘッジ目的にのみ用い、投機目
的のためには用 いない 。 以下に記載する流動性、信用、通貨及び金利の各リスク分野は 、 リスク 抑制措置を講
じた後に評価されたものである。評価については、上記「 2 事業等のリスク」の表を参照のこと。
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流動性リスク。 当グループ 及び ドイツテレコム・アーゲーの支払能力及び財務 柔軟性 を 常時確保 するため、
当グループの流動性管理システムは、満期の債券及び少なくとも次の 24 か月間のための長期ローンをカバーす
るために十分な、クレジット・ライン及び現金 の 形で 流動性準備金を維持している。中長期 の 資金調達のため
に 、 当グループは 、 様々な 通貨及び 法域 で発行される債券を 主に 利用している。これらの商品は 、 通常、ドイ
ツテレコム・インターナショナル・ファイナンスを通 じて 発行され、グループ 内 融資として 当グ ループ内で転
貸される。
次のグラフは、流動性準備金の推移を満期日に関連付けて示している。 201 8 年末 時点及びそれ以前の四半期
において、 当グループは、 流動性準備金の目標を明確に達成し、 少なくとも次の 24 か月以内に迎える満期をカ
バーした。
報告済み の 銀行債務に加えて、ドイツテレコムは、 201 8 年 12 月 31 日時点で 2 2 の 銀行との間で総額 129 億ユー
ロの標準化された二者間クレジット協定を結んでい た 。 201 8 年 12 月 31 日時点で 、 か かる クレジット・ラインの
6 億ユーロ は 使用されていなかった。本クレジット協定に従って、 条件は当グループの格付に従う。二者間ク
レジット協定の当初満期は 36 か月であり、 12 か 月 経つ 毎にさらに 12 か月間延長されて、 36 か月間の満期が更新
される。現在の見解では、国際 債券 市場に対するアクセスは危ぶまれていない。
信用リスク。 当グループは、 営業 事業 及び一 定 の 財務活動に おいて、 信用リスクにさらされている。それ
は、カウンターパーティーが契約上の義務を履行しない リスク である。この信用リスクを最小限に抑えるため
に、当グループは、財務活動に関する取引を BBB+/Baa1 以上 の 信用格付以上のカウンターパーティーとのみ行
う が 、 これは 事業運営上の 信用管理システムに関係している。加えて、当グループは、当グループのデリバ
ティブ取引契約の担保契約を締結した。 これら 担保契約によって、一日単位で、当グループが契約銀行から期
限の到来した債権の金額の補償支払を受領し、期限の到来した債務の場合は当グループが補償支払を行うこと
ができる。支払不能に陥った場合については、担保契約にて、全ての効力を有している契約間で 相殺を行い 、
正味の債権又は債務のみを残す旨が定められている。当グループは、分散 方式で(すなわち、 個々の部門に お
いて)、 事業の売上債権 を 継続的に 監視 し ている 。 当グループ における 企業 顧客、とりわけ国際 通信事業者 と
の事業は 、 特別な支払能力モニタリングを受けている。
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通貨リスク。 投資、資金調達措置及び営業により通貨リスクが生じる。外貨の変動によるリスクは、当グ
ループのキャッシュ・フローに影響が及ぶ場合にヘッジされる。しかしながら、当グループのキャッシュ・フ
ローに影響が及ば な い 外貨リスク ( 例えば 、外国事業の資産 ・ 負債を当グループの報告通貨に換算することに
より生じるリスク ) は ヘッジされない。
金利リスク。 当グループの金利リスクは 、 特に ユーロ圏及び米国に おける 有利子負債 か ら主に発生する。金
利リスクは、当グループの金利管理活動の一環として管理され、変動金利における総負債の最大割合に上限額
が設定される。リスク・バジェットの遵守を徹底するために、当グループは、一次(非デリバティブ)金融商品
の発行、及び必要な場合はデリバティブ金融商品の導入により、債務ポートフォリオの構成(変動債に対する
固定債の割合及び平均固定金利期間)を管理している。取締役会及び監査役会には、定期的に状況報告が行わ
れている。詳細は、連結財務書類に対する注記40「金融商品及びリスク管理」を参照のこと。
税務リスク
当グループは、 多くの 様々な 国 で 適用 される税法の対象となっている 。 各地域の税法又は判例法の変更及び
既存の規定の異なる解釈によってリスクが生じ得る。これらの リスク は 、 当グループの税務上の損金及び優遇
措置並びに未収税及び納税債務の双方に影響を及ぼす可能性がある 。
その他の財務リスク
本項 に は、現時点では重要性を有しない と見なされる か、又は 現在 の 認識に基づいて評価することができな
い他の財務リスクについての情報を記載する。
格付リスク。 201 8 年 12 月 31 日時点で 、ムーディーズによるドイツテレコム ・ アーゲー の 信用格付は Baa1 「マ
イナスの見通し」 であり、スタンダード&プアーズの格付は BBB+ 「信用格付見直しにおいてマイナスの見通
し」であり、フィッチは現在の格付である BBB+ 「安定的な見通し」を確認した 。格付が下がっ た 場合には、 当
グループが 発行する一部の債券 の 金利が 上昇すると 予想され る。ムーディーズ に よる見通しの安定的からマイ
ナスへの調整及び スタンダード&プアーズ の 「信用格付見直しにおいてマイナスの見通し」への調整は、Tモ
バイルUS及びスプリント間で合意された企業結合の公表の後に行われた。
連邦共和国又はドイツ復興金融公庫 (KfW) による株式売却。 201 8 年 12 月 31 日現在 、 連邦共和国及びドイツ復
興金融公庫 (KfW) は 共同で約 3 1 . 9 %のドイツテレコム・アーゲー 株式を 保有している。連邦共和国は民営化政
策を今後も継続し、資本市場 に混乱を起こさないように考えられた方法で、 ドイツ復興金融公庫 (KfW) による
関与の下 で 、 株式持分をさらに売却する可能性がある。連邦共和国若しくはドイツ復興金融公庫 (KfW) によ っ
て 株式が大量に 売却されることにより、 又は そのような憶測により 、 T株式の価格 が マイナスの影響を受ける
リスクが ある 。
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当グループの CR戦略 は、当社の価値を長期的に高め、このことはさらに事業リスクを低減させるプラスの効
果を有する。長期的な視野を持つ投資家はこの方法を認めている。キャピタル・マーケットではこのことは、
例えば投資家が少なくとも一部に持続性基準に基づいて投資判断を下している保有T株式の割合からも明らか
である。2018年9月30日現在、T株式全体の約18%は、SRI(社会的責任投資)投資家により保有されており、
3%は、資金を主にSRIの観点に従って管理する投資家により保有されている。
ドイツテレコム・アーゲー資産の減損。 ドイツテレコム・アーゲー及びその子会社の資産価値は、定期的に
見直され ている。 定期的な 年 1回の 測定に加え、個別に減損テストを実施することがあり得る。例えば、経
済、規制、事業又は政治の環境変化 に より 、 のれん、無形資産 、 有形固定資産、持分法で会計処理された投資
又はその他の金融資産 の 価値 が低下した可能性が示唆される場合である。 詳細は、「第 6 経理の状況- 1
財務書類-連結財務書類に対する注記-会計方針の要約-判断及び見積り」の項を参照のこと。 か かる テスト
により、減損損失 ( 但し、現金支出を伴わない。) が認識されることもあり得 る 。 これは、当グループの業績に
多大な影響をもたらす可能性があり、その結果、ドイツテレコム ・ アーゲー の 株価 に 悪影響を及ぼし得る。
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3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
以下の考察には、将来の予測に関する記述が多く含まれている。かかる将来の予測に関する記述は、2018連
結事業年度末時点での判断に基づいている。
2018 事業年度のハイライト
( 詳細は、当グループのウェブサイト(www.telekom.com/en/media/media-information.)のメディアセクショ
ンを参照のこと。)
取締役会
Dr. ディルク・ヴェスナーが、2018年1月1日付で新たなドイツ担当取締役に任命された。さらに、アデ
ル・アルサレハが、2018年1月1日付で新たなTシステムズ担当取締役に任命された。
前人事担当取締役(CHRO)のDr.クリスチャン・P・イレックは、2019年1月1日付で新たな最高財務責任者
(CFO)に任命された。彼は、2018年末の契約満了時に一身上の都合により退職したトーマス・ダーネンフェル
トの後任である。Dr.イレックの後任として、ビルギット・ボーレが2019年1月1日付で人事担当取締役に就
任した。
トルステン・ラングハイムは、2019年1月1日付でドイツテレコム・アーゲーの取締役会のメンバーに就任
し、新設された米国及びグループ開発部門を担当する。監査役会は、新設された同部門が当グループにおける
米国事業の重要性をより反映できるようにするつもりであり、加えて、ポートフォリオの改善により重点を置
く意向である。このため、ドイツテレコム・アーゲーは2019年の初めより取締役会部門が9つとなった。
2018 年キャピタル・マーケッツ・デイ
当グループは、2018年5月にボンで開催されたキャピタル・マーケッツ・デイにおいて、当グループの新た
な中期戦略及び財務見通しを発表した。当グループは、2015年のキャピタル・マーケッツ・デイにおいて予想
したのと同程度の高水準の成長が2021年末まで維持されると予想しており、収益は年間1%から2%、調整さ
れたEBITDAは2%から4%、フリー・キャッシュ・フローは約10%の割合での成長を見込んでいる。2019年以
降は、全ての事業部門が当グループの収益成長に寄与すると予想している。消費者及び法人顧客向けの収束製
品(convergent product)及びサービスは、当グループの戦略の中核にある。当グループの資本的支出は高水準
を維持する見通しであり、現在進行中のブロードバンド・ネットワークの構築並びにLTE及び5G標準のアップ
グレードに重点を置く予定である。2019事業年度以降の配当金は、調整済1株当たり利益に応じて変動する。
当グループは、2021年までにこの数字が1株当たり1.20ユーロ前後に上昇すると予想している。
企業間取引
2018 年3月、当グループは、ギリシャの民営化機関であるギリシャ共和国資産開発基金(Hellenic Republic
Asset Development Fund(HRADF))からの要請を受けて優先先買権を行使し、ギリシャの子会社である OTE の株
式の5%を取得した。この取引は、3億ユーロ分の追加的な株式取得により、2018年5月に完了した。その結
果、当グループは同社株式の約45%を保有している。
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2017 年12月、Tモバイル・オーストリアは、オーストリアの大手ケーブル事業者である UPCオーストリア(UPC
Austria) の買収に同意した。この取引は2018年7月9日に欧州委員会の承認を受け、2018年7月31日に完了し
た。買収価格である18億ユーロは、現金で支払われた。買収日以降、UPCオーストリア(UPC Austria)グループ
は、当グループの連結財務書類における連結の範囲に含まれている。当グループの戦略に沿い、この買収に
よって当グループはヨーロッパ市場の顧客に収束製品(convergent product)バンドルを提供できるようにな
る。
2018 年4月、TモバイルUSの大株主であるドイツテレコム・アーゲー及び スプリント の大株主であるソフト
バンクとともに、TモバイルUS及びスプリントは、企業結合についての拘束力のある契約を締結した。規模の
大きくなったTモバイルUSは、正味現在価値で430億米ドル(統合費用差引後)程度の費用及び資本的支出に係る
シナジーを創出すると予想されている。統合費用には、150億米ドル程度の予算が見込まれている。この企業
結合は、当初の3年間が経過した後にドイツテレコム・グループの調整済1株当たり利益にプラスに寄与する
と予想されている。新会社は約127百万人の顧客基盤を有することになる。本契約に基づいて、TモバイルUSは
スプリントの全ての株式を取得する。取引が完了すると、TモバイルUSの株式をドイツテレコムは約42%、ソ
フトバンクは約27%保有することになり、浮動株式が約31%となる。ソフトバンクとの議決権に関する契約、
及びドイツテレコムが過半数の取締役の任命権を有するという事実に基づき、TモバイルUSは引き続き、当グ
ループの連結完全子会社として連結財務書類における連結の範囲に含まれる。本契約は、当局の承認を受け、
かつ他の取引完了条件が満たされることを条件としている。
2018 年11月27日、欧州委員会は、Tモバイル・ネザーランドによる テレ2ネザーランド(Tele2 Netherlands)
の買収を承認し、この取引は2019年1月2日に完了した。この取引は、当グループの長期戦略の一部であり、
オランダ市場における収束固定ネットワーク及びモバイル・サービスのより強力でより持続可能なプロバイ
ダーを確立することになる。テレ2グループ(Tele2 Group)は、 買収価格 の遡及的調整を全て考慮し、購入価額
をTモバイル・ネザーランドの25%の持分及び234百万ユーロの現金部分の形で代金を受領した。買収日以降、
テレ2ネザーランド(Tele2 Netherlands)は、当グループの連結財務書類における連結の範囲に含まれている。
トール・コレクト(Toll Collect)仲裁手続における和解
2018 年5月、当グループは、ダイムラー・ファイナンシャル・サービシズ・アーゲー(Daimler Financial
Services AG)とともに、通行料金収受に関する仲裁手続を終了させることでドイツ連邦共和国との間で合意に
達した。この合意により、ドイツにおける大型トラックの通行料金導入に関する長期にわたる訴訟は終了し
た。合意した和解金額の約32億ユーロには、これまでにドイツ連邦共和国に提供されたサービスも含まれてい
る。ダイムラー・ファイナンシャル・サービシズ・アーゲー(Daimler Financial Services AG)及びドイツテ
レコムの両社は、それぞれ550百万ユーロの最終支払いを行うことに同意している。支払いは2020年までに3
回に分けて行われる。1回目は既に支払済みである。
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T モバイルUSの株式買戻プログラム
2018 年4月、TモバイルUSの取締役会は、株式買戻プログラムの総額を最大90億米ドル(これには、既に買戻
しが実行されている15億米ドル、及び2020年末までに追加されるTモバイルUSの普通株式の買戻しに係る最大
75億米ドルが含まれる。)に引き上げることを承認した。この取締役会の決議は、スプリントとTモバイルUSの
企業結合が実現しない場合に適用される。さらに当グループは、2018事業年度に、TモバイルUSの株式を資本
市場にて総額2億米ドル取得し、持分は約63%となった。
企業年金のための外部からの資金調達の増加
当グループは、企業年金計画を極めて重要視している。今後、年金給付は当グループの資産によって支えら
れる割合が増えるとみられる。そのため、2018年3月にBTグループ(BT Group)に対する金融持分の12%が当グ
ループ保有の信託であるドイツテレコム・トラスト・イー・ヴィ(Deutsche Telekom Trust e.V.)に譲渡さ
れ、外部からの資金調達はほぼ2倍となった。この資金は、使途が年金給付に限定される。BTは引き続き、当
グループの戦略志向に不可欠な部門である。
ネットワークへの投資
ドイツの5Gネットワーク。 当グループは、10月にベルリンで開催されたネットワーク・デイ(Network Day)
で、5Gの迅速な展開を成功させるための8項目からなる計画を発表した。2025年までに全国の人口の99%、国
土の90%を5Gでカバーする計画である。当グループは、2021年までの4年間にドイツで200億ユーロの追加投
資を行う予定である。企業、産業及び一般市民に最も強力な5Gネットワークを確実に提供するため、パート
ナーとも協力する。現時点でケーブル敷設距離が500,000キロメートル超である当グループの光ファイバー・
ネットワークは、高性能の固定及びモバイル・インフラの基盤となる。現在、固定ネットワークを経由して、
26百万世帯に閲覧速度最大100Mbit/s超のサービスを提供している。2018年8月にスーパーベクタリングが市
場に投入され、6百万世帯に最大閲覧速度250Mbit/sのサービスが提供されている。2018年末現在、約14百万
世帯がこのような伝達速度の恩恵を受けている。当グループの目標は、2019年に28百万世帯に最大250Mbit/s
の伝達速度を提供することである。
光ファイバーの展開が急速に進行。 2018 年には、ドイツのフォアポンメルン=リューゲン及びブルゲンラン
ト郡といった農村地域、バウツェン市、リューネブルク市、ハンブルク港などで、都市部及び地方に光速をも
たらす多数の大型光ファイバー・プロジェクトが実施された。シュトゥットガルト及び5つの近隣農村地域に
おける大規模なデジタル化プロジェクトも承認され、これにより、対象地域における1.38百万世帯の約90%並
びに約140,000の企業現場及び事業所の全てにギガビット接続がもたらされることになる。FTTHの全国展開は
加速している。ビジネス・パークに光ファイバーを全国的に展開する活動は、第4フェーズに入った。70を超
える地方自治体の106か所のビジネス・パークに所在する45,000社近い企業は既に最大100Gbit/sの周波数帯域
幅の恩恵を受けている。目標は、2022年末までにドイツ全土の合計3,000か所のビジネス・パークを光ファイ
バー・ネットワークに接続することである。さらに、ギリシャにおける最大1百万の世帯及び企業へのFTTHの
展開やチェコ共和国での包括的なFTTHプロジェクトなど、欧州の各国企業(national companies)における大規
模な光ファイバー・プロジェクト実施についても既に計画又は準備を進めている。
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1,300 の新たなセル・サイト設置による容量及びカバレッジの拡大。 2018 年、当グループは、1,300のセル・
サイトを新設し、ドイツ国内のサイト総数は約29,000になった。今後数年間に2,000超の新たなサイトが追加
される予定である。当グループの高速LTEネットワークは人口の97.8%をカバーしている。このカバー率は
2019年末までに98%に拡大することになっている。コネクト、Chip及びComputer Bildが行った3つの大規模
なネットワーク・テストにより、当社のモバイル通信ネットワークがドイツで最も優れていることが確認され
ている。セル・サイトの80%超は既に光ファイバーで接続されている。これらのセル・サイトには単一無線ア
クセス・ネットワーク(Single RAN)技術も搭載されているため、第5世代モバイル通信標準である5Gの準備も
整っている。
ヨーロッパ航空ネットワーク(EAN)の準備。 2018 年初め、当グループは、インマルサット(Inmarsat)及び当
グループの技術パートナーであるノキア(Nokia)とともに、300か所の基地局を備えた初のヨーロッパ統合LTE
ネットワークを構築した。このネットワークは、地上及び海上におけるシームレスな接続性を提供する。飛行
機の乗客は、ソーシャル・メディアの閲覧、写真の共有、さらには広帯域のコンテンツの再生を可能にする高
通信速度による大きな周波数帯域幅を享受することができる。このサービスを利用する航空会社は、地上の
LTE利用者とネットワーク容量を共有する必要はない。
ドイツのクラウド・データセンターの成長が継続。 2018 年9月、マクデブルク近郊ビアーレの高性能データ
センターでの拡張活動は次の段階に入った。現在、ビアーレが有するクラウド・データの処理能力及び保存容
量は150ペタバイトである。2014年にハイテクなフォート・ノックス(Fort Knox)を立ち上げて以降、クラウ
ド・サービスに対する世界的な需要は大きく増大し続けている。これに対応して、Tシステムズは、国際的な
クラウド・ソリューション・プロバイダー大手と協働するマルチクラウド・プロバイダーへと組織的に発展し
てきた。当グループのパブリック・クラウド・サービスであるオープン・テレコム・クラウドは、経済エネル
ギー省(Federal Ministry for Economic Affairs and Energy)が推進するTCDP 1.0の認証をドイツで初めて取
得したクラウドである。
T モバイル・ポルスカは、オレンジ(Orange)とホールセールFTTH契約を締結した。 2018 年7月に締結した契
約に基づき、Tモバイル・ポルスカはオレンジ(Orange)の光ファイバー・インフラにアクセスし、これを利用
して、非規制地域でデータ送信をベースとするサービスを提供できるようになる。この契約により、Tモバイ
ル・ポルスカは1.7百万世帯へのアクセスが保証される。2020年末までに非規制地域に対して、また規制地域
における光ファイバー・ネットワークに対して投資を行うパートナーの計画と合わせ、この契約によって、T
モバイル・ポルスカは4百万超の世帯へアクセスできることになる可能性がある。Tモバイル・ポルスカは、
光ファイバー・インフラを基盤とする包括的な固定ネットワーク・サービスを最初の個人顧客及び中小企業に
提供することを目指している。契約の有効期間は最大20年間である。オレンジ(Orange)との契約とは別に、T
モバイル・ポルスカはネットワーク事業者のネクセラ(Nexera)との間でもホールセールFTTH契約を締結し、
2020年末までに450,000を超える世帯をカバーする。
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モノのインターネット(Internet of Things)は軌道に乗る。 当グループは、ドイツ、ヨーロッパ及び北アメ
リカにおけるモノのインターネット(Internet of Things)(IoT)の大規模な技術展開における大手プロバイ
ダーの1つである。新しいナローバンドIoT(NB-IoT)のネットワーク技術は、今やドイツ中の2,000か所を超え
る場所で利用可能であり、300社を超える様々な産業における企業が既にその可能性を活用している。当グ
ループはまた、8つのヨーロッパ市場及び米国においてNB-IoTインフラを運営し、オランダ、オーストリア、
スロバキア及び米国での全国的な展開が完了した。当グループのNB-IoT ネットワークは、既にポーランド、
チェコ共和国、ハンガリー、クロアチア及びギリシャの数都市で稼働している。
ヨーロッパ初のNB-IoTローミング・テストが終了。 2018 年6月、当グループは、ボーダフォン・グループ
(Vodafone Group)と共同で、NB-IoT技術を使用したヨーロッパ初の国際ローミング・テストを成功裏に終えた
と発表した。このサービスは、省電力広域ネットワークへの数百万の接続に向けて、範囲及び連続性の点で
シームレスなサービスを提供する。このテストの成功は、モバイルIoTネットワークの安定的なローミング環
境の開発において重要な節目となる。
技術革新
本番環境での5G。 第5世代の通信標準を完全にサポートするヨーロッパ初の5Gアンテナは、ベルリンでは
2018年5月から、ワルシャワでは2018年12月から、実際の状況下において、当グループのネットワークを通じ
てデータを送信している。インスブルックのTモバイル・オーストリアのネットワークでは、最終的な5G標準
の暫定版がわずか3ミリ秒という待ち時間で、2Gbit/sという記録的速度に到達している。ギリシャ及びマケ
ドニアでも、5Gの初の実演が行われた。ハンブルク港湾局(Hamburg Port Authority)、ドイツテレコム、及び
ノキア(Nokia)は、ドイツのハンブルク港の実際の産業状況下において、様々なアプリケーションを使って5G
標準の新たな側面について世界初のテストを実施している。2018年1月より、約8,000ヘクタールの試験場を
使って、産業環境での展開に備えてこの革新的技術及びその適性の審査が行われている。
ナウ・ニュー・ネクスト(NOW. NEW. NEXT)。 当グループは、これを2018年2月にバルセロナで開催されたモ
バイル・ワールド・コングレスにおける当グループのブースのモットーに掲げ、未来のネットワークを基盤と
する現在及び将来のスマート社会のための革新的なソリューション及びビジョンを披露した。その際に焦点を
当てたのは、数十億個の装置の相互接続を容易にする新しい5G通信標準及びモノのインターネット(Internet
of Things)であった。来場者は、都市を背景としたセットの中で、セキュリティに関するトピック並びにド
ローン、スマート・テキスタイル及び拡張現実(AR)を活用したスポーツといった将来の技術だけでなく、ス
マート・シティ及びインダストリー4.0(Industry 4.0)といったものを含むテーマ・ゾーンにおいて、デジタ
ル・イノベーションを体験し、これに触れる機会を享受した。
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デジタル化がヘルスケアのあらゆる分野に到来。 所在を自動的に送信する病院のベッドから、保守作業を自
ら要求する超音波スキャナー、遠隔医療による患者の治療及びモバイル・アプリに至るまで、デジタル革命は
ヘルスケアの様相を劇的に変え、あらゆる関係当事者に複雑な課題をもたらしている。テレコム・ヘルスケ
ア・ソリューションズ(Telekom Healthcare Solutions)は、こうした課題の克服に役立てることを目的とした
ITソリューションを提供する。2018年4月、ベルリンでヘルスケアITのための世界有数の見本市であるconhIT
が開催された。「デジタルな未来に向けて(Set for ▶ digital future)」というモットーの下、Tシステムズ
は最新の技術革新を披露した。これには、医療機器を地方に分散させる追跡システムやデジタル・コラボレー
ションのための安全なプラットフォームが含まれる。
「今こそデジタルを形成しよう(Shape the digital now)」。 2018 年4月、当グループは、ハノーバー・
メッセで産業向けのデジタル・ソリューション・モジュールを発表した。その際に焦点を当てたのは、生産計
画、製造及び物流のために実用的かつ具体的に実行できるオプションであった。来場者は、クラウド・コン
ピューティング、モノのインターネット(Internet of Things)、接続性及びセキュリティに関する製品及び
サービスを見ることができ、デジタル・ツインズ、ブロックチェーン及び人工知能といった新たなトレンドを
体験することができた。また、当グループは、年初に発売した、クラウドベースで製品のライフサイクルを管
理するソリューションである新たなPLM(Product Lifecycle Management)クラウド・サービスも展示した。企
業は、PLMクラウドを使用して、当初の設計から試験的なシミュレーションに至る新製品開発の流れというお
そらく最も重要な社内プロセスに変革をもたらし、こうしたプロセスをデジタル時代のものにすることができ
るため、技術革新へのアプローチを加速させることが可能になる。
「マゲンタ・コネクト(Magenta connects)」。 ベルリンで開催されたIFA 2018における当グループのブース
で、当グループは見本市の来場者にマゲンタ(Magenta)製品の全ラインナップを披露した。その際に主に焦点
を当てたのは、マゲンタ・エンターテインメント(Magenta Entertainment)、「イン・ザ・ベスト・ネット
ワーク(In the best network)」、マゲンタ・コネクテッド・ライフ(Magenta Connected Life)、マゲンタ・
アインツ(MagentaEINS)及びマゲンタ・サービス(MagentaSERVICE)であった。特に注目を集めたのは、5GのLED
大型スクリーン上において双方向かつ多人数で行われるドローン・レースにより、将来のネットワークの能力
が実証されたことである。ブースではeスポーツ・アリーナも設置され、そこで来場者はSKゲーミング(SK
Gaming)の専門家に促されて、モバイル・ゲームのみならず、リーグ・オブ・レジェンズ(League of Legends)
及びFIFAを含むeスポーツ・ゲームに挑戦した。マゲンタ・サービス(MagentaSERVICE)のゾーンでは、新しい
SprachIDサービスに注目が集まった。将来、顧客はアカウント番号やパスワードを記憶する必要がなくなる。
つまり電話をかければ、音声のみで認識されるようになる。当グループの技術革新に関する詳細は、「5 研
究開発活動- 技術革新及び製品開発 」の項を参照のこと。
パートナーシップ
パートナーシップは、当グループの成功の鍵である。当事業年度も多くのパートナーシップの締結及び拡大
を進めた。そのうちの一部を詳しく紹介する。
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インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)への加入。 当グループは現在、IoT接続性の分
野、特にNB-IoT及び5Gにおける強みを活かしてIICに貢献することができており、グローバル・コンソーシア
ム内でのヨーロッパの立場を強化している。米国の組織は、IoT及びインダストリー4.0(Industry 4.0)ソ
リューションの開発、展開及び拡大を促進することによって、国際的な規模での経済及び社会のデジタル変革
の先頭に立っている。当グループの目標は、IICメンバー及びそのパートナーとともに、対話システムの相互
運用に関する普遍的なアプローチを開発することである。さらに、IoTサービス及びハードウェアに関するセ
キュリティの要請及び標準化の文脈で、それらの必要性及び枠組みに関する条件の概略を示すことも目指して
いる。
オープン・テレコム・クラウドはヨーロッパのテンダーを獲得する。 ヨーロッパの原子力調査センターであ
る CERN は、ヘリックス・ネビュラ・ヨーロピアン・リサーチ・クラウド(Helix Nebula European research
cloud)のための試験的なシステムとして、2017年に開発された実績のあるソリューションを運用するために、
Tシステムズと協力した。かかる目的のため、Tシステムズは、いずれもオープン・テレコム・クラウドに基づ
く高性能ソリューション及びマルチ・クラウド・ソリューションを提供する予定である。ヨーロッパ中の調査
機関は、これらのソリューションを利用することができ、オープン・テレコム・クラウドと自身のITリソース
及びソリューションとを統合してハイブリッド・モデルを生成することが可能である。Tシステムズはまた、
欧州宇宙機関( ESA )のためのクラウド・プラットフォームを設計した。2018年第1四半期にはコペルニクス・
データ・アンド・インフォメーション・アクセス・サービス(DIAS)・プラットフォームが始動し、直接処理の
ための費用なしに、ESAの衛星によって収集された地球観測データをクラウド経由で公共利用することが可能
になってる。
パブリック・クラウド-戦略的パートナーシップ。 T システムズ及びマイクロソフト(Microsoft)は、4つの
重要分野(SAPアプリケーション、Microsoft Azure及びMicrosoft Office 365のマネージド・サービス、人工
知能及び複合現実を利用したデジタル・ソリューション並びにIoT)におけるパブリック・クラウド・サービス
の促進に焦点を当てる戦略的パートナーシップを締結している。オープン・テレコム・クラウドは、ハノー
バー・メッセ2018に間に合うようにSAP認定を取得していたため、パブリック・クラウドにおけるSAP HANAの
パフォーマンスは保証されており、ソリューションをSAPサポート・プロセスにシームレスに統合することが
できる。パブリック・クラウドの追加的なサービスにより、企業はセルフサービスによりSAPアプリケーショ
ンの柔軟性及び手軽さをもって自社のIT環境を補完することができ、また、必要なときには適切なサポートを
受けることができる。
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サステナブル・シティのためのグローバル・イニシアチブ。 2018 年9月、当グループは、都市のスマート化
及び持続性の向上を支援するため、ユナイテッド・スマート・シティーズ(United Smart Cities (USC))と広
範囲で協力することを発表した。ユナイテッド・スマート・シティーズ・プログラム(United Smart Cities
program)は、国際連合欧州経済委員会(UNECE)が国際経済関係機構(OiER)と協力して設立し、調整を行うグ
ローバル・イニシアチブである。パートナーシップの一環として、当グループは、USCのグローバル・インダ
ストリー・アドバイザリー・ボード(Global Industry Advisory Board (GIAB))の理事にも就任した。GIAB
は、全ての国連機関に対し、世界中のスマート・シティに関する問題点について戦略的な助言を提供する12人
のメンバーで構成される。さらに、2018年11月にバルセロナで開催されたスマート・シティ・エキスポ・ワー
ルド・コングレス(Smart City Expo World Congress)において、当グループは、スマート・シティ・エコシス
テムに向けた最新のソリューションを紹介した。また、当グループは、既に様々なスマート・シティ・ソ
リューションの展開を成功させている5つのパートナー都市の代表者を当グループのブースに招待した。この
5都市は、スロバキアのトレンチーン、ギリシャのアテネ、ポーランドのカジミエシュ、スペインのヒホン及
びクロアチアのクルクである。
コネクテッド・モビリティのための5G。 数年以内には自動車、信号機及び街灯は全て、5Gの通信標準を介し
て情報を共有するようになる。この3つは将来の交通を示す例に過ぎない。関係するシステムは、万全のセ
キュリティ機能を搭載しなければならない。当グループは、DEKRAと共同で、ラウジッツリンク(Lausitzring)
のテスト・トラック及びレース・トラックに5G技術を備え、インテリジェントな移動式試験場の構築に取り組
んでいる。この試験場では様々なシナリオが実施される。コネクテッド・カーと自動運転車が相互に、また、
道路インフラ、サイクリスト及び歩行者とリアルタイムで通信する。これは、自動車メーカー、サプライヤー
及び通信機器メーカーが実際の環境でインテリジェント・モビリティのテストを行うための完璧な環境となっ
ている。
デジタル・シティーズ・アンド・リージョンズ(Digital Cities and Regions)イニシアチブ。 2018 年7月、
当グループは、ドイツ地方自治体連盟(DStGB)に参加し、エグゼクティブ・プログラム・デジタル・シティー
ズ・アンド・リージョンズ(Executive Program Digital Cities and Regions)という新たなイニシアチブを開
始した。このパートナーは、都市及びコミュニティのデジタル化を促進し、地域がデジタル化された将来に備
えるための、インテリジェントかつカスタマイズされたソリューションを開発する。明確な成功要因は、共通
のプラットフォーム、良質のデジタル・インフラ及び文化を変革する勇気である。当グループは、デジタル・
パートナーとして、自治体による最初のプロジェクト開始を支援するために必要な専門知識を提供する。現
在、ドイツ全土からプログラムに対して非常に様々な期待を持つ23都市がイニシアチブに参加している。この
プログラムは立上げの成功と大きな需要を背景に2019年を通じて継続される予定である。
道路の安全性向上のための戦略的パートナーシップ。 2018 年8月、当グループは、自動車協会であるドイツ
自動車連盟(ADAC)と戦略的パートナーシップを構築し、当グループの顧客及びADAC会員に製品及び魅力的な利
点を提供することになった。そのために、当グループは、交通をデジタル化する機会を活用する予定である。
例えば、ADACと協力してカーコネクト(CarConnect)ソリューションの強化に取り組み、現在ではドライバーが
カーコネクト(CarConnect)アプリを数回クリックするだけでADACに故障を報告することが可能になった。
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銀行のサイバーセキュリティ。 全世界で銀行を狙ったサイバー攻撃件数が増加している。業界の規制当局
は、銀行のITセキュリティ要件を絶えず厳格化している。このため、ドイツのフォルクスバンク(Volksbank)
及びライフアイゼン銀行(Raiffeisenbank)の全900支店に対するITサービス・プロバイダーであるフィデュー
シア&GAD ITアーゲー(Fiducia & GAD IT AG)並びにドイツのDZ銀行(DZ Bank)グループは、信用組合の長期的
なサイバーセキュリティ強化のためにテレコム・セキュリティ(Telekom Security)に加入した。第1段階とし
て、パートナーは、DZ銀行(DZ Bank)の特定のITセキュリティ事故に対処するためのセキュリティ・オペレー
ション・センター(Security Operation Center (SOC))を設置した。
企業顧客取引
T システムズがシュパルダ(Sparda)グループとの主要契約を獲得。 シュパルダ銀行(Sparda-Banks)グループ
は、Tシステムズとの間で、3百万ユーロ半ばの金額で期間7年間の業務委託契約を締結した。当グループ
は、シュパルダ(Sparda)グループの主要なITサービス・プロバイダーであるシュパルダ・ダーテンフェアアル
バイトゥング(Sparda-Datenverarbeitung eG)のITインフラ全般を引き受け、全てのメインフレーム・コン
ピューター及びサーバー環境をTシステムズが運用する安全性が高いデータセンターに移行させることにな
る。
ブランデンブルク州政府が高速ネットワークを取得。 ブランデンブルク州は、2百万ユーロ後半の金額で主
要な電気通信事業をTシステムズに発注した。当グループは、州政府の電話及び広域ネットワークに関するイ
ンフラ及びコンポーネントを提供することになる。将来的には、現場では最大でこれまでの10倍に拡大される
周波数帯域幅を使用して最大10Gbit/sの接続速度を取得する。ブランデンブルク州は、ドイツ連邦情報セキュ
リティ庁(BSI)の認証を受けたネットワークを保有する意向である。
OSRAM の構内ネットワーク。 当グループは、エリクソン(Ericsson)と共同で、ハイテク企業のOSRAM向けにカ
スタマイズされた構内ソリューションを構築している。業界がプロセスのデジタル化をますます重視しつつあ
る中、この変革の鍵となるのはそれぞれ独自の使用事例に適合した生産拠点全体にわたる無線接続である。当
グループの構内ソリューションは、パブリック・ネットワークに接続された専用ネットワークを企業に提供す
る。この構内ネットワークのテクノロジーは、当グループのパートナーであるエリクソン(Ericsson)が提供す
る。また、当グループは、OSRAMと共同で、モバイル・ロボットの試作機の開発も行っている。将来的には、
運転手のいない輸送車両が構内ネットワークを使って作業現場を自律走行することになる。
新製品及び料金プラン
当然ながら当グループは、当事業年度も市場において新たな製品、サービス及び料金プランを開始した。そ
のうちの一部を以下に紹介する。
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マゲンタ・モビルXL(MagentaMobil XL):無制限のデータ量。 2018 年3月、当グループは、ドイツ市場向け
の新しい携帯料金プランを発表した。マゲンタ・モビルXL(MagentaMobil XL)には、2019年1月にコンピュー
ター・マガジンであるChipがドイツで最良と評価したモバイル・ネットワークにおける定額料金及び無制限の
高速データが含まれている。多くのデータ量を必要としない質重視の顧客は、新しい導入レベルの料金プラン
であるマゲンタ・モビルXSを選択することができる。さらに当グループは、定額料金及び無制限の高速データ
を特徴とする新しいビジネス・モビルXLプラス(Business Mobil XL Plus)の料金プランにより、企業顧客の
ポートフォリオを刷新した。
フルサービスのモノのインターネット(Internet of Things)バンドル。 モノのインターネット(Internet of
Things)は世界に革命をもたらし、企業のプロセスを向上させ、新たなビジネス・モデルを登場させている。
こうした変革により、迅速、簡単かつ安全に使用できるだけでなく、透明性を向上させる製品が求められてい
る。当グループは、ほぼ全ての業種における様々な用途に向けてこうした種類の製品を提供している。当グ
ループの主な信条の1つは、コネクティビティ、コネクティビティ及びハードウェアの管理、ソリューション
並びにサービスを全て単一のソースから提供するエンドツーエンドのアプローチである。当グループの製品バ
ンドルは、トラッキング、モニタリング及びメンテナンス、アイデンティティ及びアクセス制御、コネクテッ
ド・モビリティ並びにアナリティクスのソリューションを提供する。2018年5月、フルバツキテレコム
(Hrvatski Telekom)は、NB-IoTサービスの商業利用を可能にしたクロアチア初のプロバイダーになった。消費
者向けの新しいIoTソリューションであるコンビ・プロテクト(Combi Protect)により、ユーザーはGPS追跡機
能及びアプリを使用してスマートフォン上でペット、財布及び荷物などを追跡することができる。顧客は、移
動をリアルタイムで追跡し、デジタル境界線を設定して、それを越えるとスマートフォンのアラームが警告す
ることを選択することができる。
専門家チーム。 2018 年8月、TモバイルUSは、 アンキャリア・ネクスト(Un-carrier Next) を導入した。これ
は、顧客サービス部門の構成を変え、顧客のいくつかの重大な悩みを解消する新たなイニシアチブである。後
払型顧客は、カスタマー・サポートに電話をすると担当者に直接つながる。その担当者は当該顧客及び同一地
域内の他の顧客に専門に対応する専門家チームのメンバーである。
2018 年9月、TモバイルUSは、 メトロPCSがメトロ ™ ・バイ・Tモバイル(メトロ)(Metro ™ by T-Mobile
(Metro)) に改称 して、メトロが新たに、追加特典を含む段階的な無制限料金プランを導入すると発表した。メ
トロは、最新のスマートフォンに加え、アマゾン・プライム、拡大されたクラウド・ストレージ及びGoogle
Oneを通じたモバイル・バックアップを提供する。
受 賞
当グループは、当事業年度において再び多くの賞を受賞した。そのうち最大のものを以下の図に示す。当グ
ループのHR活動に対するさらなる受賞の詳細は、「第2 企業の概況-5 従業員の状況-従業員」の項を参照
のこと。
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グループ組織
事業活動及び組織
事業活動。 178 百万人のモバイル顧客、28百万の固定ネットワーク回線及び20百万のブロードバンド顧客を
有する当グループは、世界における主導的な総合電気通信事業者の1つである。当グループは当グループの一
般消費者に固定ネットワーク/ブロードバンド、モバイル、インターネット並びにインターネットTVの製品及
びサービスを、当グループの法人顧客及び企業顧客向けにICTソリューションを提供している。当グループは
国際的に活動し、50か国を超える国々に進出している。世界中の約215,675名の従業員(2018年12月31日現在)
とともに、2018事業年度では、757億ユーロの収益が生まれ、約68%がドイツ国外であった。
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固定ネットワーク事業は、固定ネットワーク及びブロードバンド技術をベースとした全ての音声及びデータ
通信活動を含む。これは端末機器及びその他のハードウェアの販売並びに再販業者へのサービスの販売も含ま
れる。当グループのモバイル通信事業は、音声及びデータのモバイル・サービスを一般消費者及び法人顧客に
提供しており、これに加え、当グループは携帯機器及びその他のハードウェアを販売している。当グループで
は、ネットワーク・サービスを購入し第三者に販売している再販売業者及び企業 ( 仮想移動体通信業者 (MVNO))
に対しても、モバイル・サービスを販売している。当グループの企業顧客部門であるTシステムズは、データ
センター及びネットワークの全世界的なインフラストラクチャーを利用して、多国籍企業及び公共機関のため
の情報通信技術(ICT)システムを運営している。
当グループは、経済、社会及び環境の各側面は調和され得ると考え、持続性が、当グループの全ての行動の
基本理念である。分野特有及び一般的な条件が、事業活動の成功には不可欠である。これらには、データ保護
及びセキュリティ、顧客サービス、ネットワーク展開及び資材調達に関して、合理的なコストにおける一流の
品質が含まれており、さらに当グループ内のみならず当グループの供給業者における適格な人員及び良好な労
働条件も含まれる。当グループの事業活動においては気候変動の潜在的な影響を考慮することも重要である。
例えば、過酷な気象条件、温度変化及び風速の上昇から保護できるように当グループのネットワーク・インフ
ラを構築することが必要である。当グループは、革新的な製品及びサービスにより、当グループの顧客の二酸
化炭素排出量を低減させる手助けも行っている。さらに、当グループは、これに伴いデータ通信量及びネット
ワーク構築を急速に増やすことが必要にはなるが、当グループの二酸化炭素排出量を削減することを望んでい
る。当グループは、自身の中核事業の範囲をも超えて、自身の活動が社会的に認められるために出来得る全て
のことを行っている。当グループにとって、このことは、倫理的かつ法律を遵守した方法で事業を行うこと及
び当グループの利害関係者に対し透明性のある方法で情報提供し、関与することを意味している。
当グループの信頼できるコーポレート・ガバナンス及び事業の成功は、当グループ共通の企業価値及び基本
理念(Guiding Principles)に基づいている。それは以下の通りである。
- 顧客の喜び及びシンプルさが当社の活動を推進する
- 当グループの行動は尊敬及び誠実さから導かれる
- 同じチーム-別々のチーム (Team together - Team apart)
- 活躍しかつ成長するための最高の場所
- アイ・アム「T」-私に期待してください
当グループは、顧客を喜ばせ、投資家のために価値を創造し、また、従業員が仕事を楽しめるような持続的
に成長を続ける会社になりたいと考えている。
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組織。 当社の財務報告は当社のグループ戦略に従い、次のような組織構造に基づいている。
当グループは、グループ本部・グループ事業セグメントに加え、5つの事業セグメントに分かれている。以
下にその各詳細を説明する。
当グループの ドイツ 事業セグメントは、ドイツにおける一般消費者及び法人顧客向けの全ての固定ネット
ワークとモバイル活動を包括している。さらに、当セグメントでは、通信事業者及び当グループの他事業セグ
メントに対して、電気通信サービスを提供するホールセール事業に焦点を当てている。一般消費者及び法人顧
客のための別個の販売事業体により、事業セグメントは、顧客中心の販売方法を採用することが可能となる。
顧客サービス活動の構築は、より一層、顧客満足度及び品質保証に焦点を当てている。モバイル及び固定ネッ
トワークの構築はドイツ事業セグメントの技術事業部門により管理されている。デジタル化のパイオニアとし
て、ドイツ事業セグメントは、その顧客に対して革新的でありつつ同時に安全かつシンプルな個別のサービス
及び製品ポートフォリオを提供している。
当グループの 米国 事業セグメントは、米国市場における当社の全てのモバイル事業を包括するものである。
TモバイルUSは、米国で三番目に大きなプロバイダーであり、そのモバイル・ネットワークは、最速の伝送速
度及び高速ネットワーク・カバレッジを提供している。Tモバイルの米国のモバイル市場における成功は、過
去数年間に開始された様々なアンキャリア(Un-carrier)・イニシアチブを背景に達成された。TモバイルUS
は、2018年1月22日に完了したオンライン・テレビ・プロバイダーのレイヤー3 TV(Layer3 TV)の買収がテレ
ビ及びビデオのポートフォリオを一層強化するものと予想している。レイヤー3 TV(Layer3 TV)は、取得日以
来、完全連結子会社として、ドイツテレコムの連結財務書類における連結の範囲に含まれている。2018年4月
29日、Tモバイルは、スプリントと企業結合契約を締結したことを発表した。合併の結果、Tモバイルは、全国
的規模の5Gネットワークへと迅速に参入し、イノベーションを加速させ、米国の無線、ビデオ及びブロードバ
ンド産業における競争激化をもたらすことが予想される。
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当グループの ヨーロッパ 事業セグメントでは、ギリシャ、ルーマニア、ハンガリー、ポーランド、チェコ共
和国、クロアチア、スロバキア、オーストリア、アルバニア、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国、モンテネ
グロの各国企業(national companies)の全ての固定ネットワーク及びモバイル事業を対象としている。2018年
7月31日のケーブル・ネットワーク事業者であるUPCオーストリア(UPC Austria)の買収は、当グループのオー
ストリアの子会社を、統合されたプロバイダーとする一助となった。UPCオーストリア(UPC Austria)は、取得
日以来、完全連結子会社として、ドイツテレコムの連結財務書類の連結の範囲に含まれている。一般消費者向
け事業に加えて、個々の各国企業(national companies)のほとんどは、法人顧客向けICTソリューションを提
供している。当グループの国際ホールセール事業の一環として、ドイツテレコム・グローバル・キャリア
(Deutsche Telekom Global Carrier (TGC))は、電気通信サービスのホールセールを当グループの事業セグメ
ント及び第三者に対して行っている。
先進的なICTサービス・プロバイダーとして、当グループの システムズ・ソリューションズ 事業セグメント
は、総合的な製品及びソリューションのポートフォリオを法人顧客に提供する。グローバルなパートナーシッ
プに加えて、固定通信及びモバイル通信、ITインフラ、デジタル化並びにセキュリティを提供するとともに、
当グループは、デジタルビジネス・モデルを実施するための支援及び指導を当グループの顧客に提供する。当
グループのシステムズ・ソリューションズ事業セグメントは、2018年初めに始まった変革プログラムに基づ
き、ポートフォリオをベースにしたストラクチャーを目指して再編成が行われている。事業は、統合された顧
客中心の販売部門に沿って、新興事業部門であるヘルスに加え、完全に損益の説明責任を果たす10を超える
ポートフォリオの部門(TCサービス、SAP、デジタル・ソリューション、パブリック・クラウド、セキュリ
ティ、モノのインターネット(Internet of Things)、クラシファイド・ICT、ロード・チャージング、運用イ
ンフラサービス及びプライベート・クラウド並びに専用SIソリューション)に分割された。新たな組織構造
は、これらの事業分野に基づいて2019年1月1日に施行された。さらに、包括的なコスト節約プログラムが始
まっている。
当グループの グループ開発 事業セグメントは、事業体であるTモバイル・ネザーランド及びドイツ・フンク
トゥルム(Deutsche Funkturm (DFMG))並びにストローアーSE & Co. KGaA(Ströer SE & Co. KGaA)における当
グループの出資持分で構成される。当グループは、これらの事業体及び出資の対象に対して必要な起業家レベ
ルの自由を与え、ひいては戦略的なさらなる発展を促進することを目的として、これらを積極的に管理し、こ
れらの価値を高める予定である。経営チームは、セグメント管理者並びに当該監査役会及び諮問委員会との徹
底した話し合いを維持している。ドイツテレコム・キャピタル・パートナーズ(Deutsche Telekom Capital
Partners (DTCP))並びに合併及び買収(Mergers & Acquisitions)並びに戦略的ポートフォリオ管理
(Strategic Portfolio Management)についての当グループの機能も、グループ開発事業セグメントに振り分け
られている。当グループのBTに対する金融持分は、ドイツテレコムの将来の年金債務を負担するための資金積
立として、2018年3月に、当グループ保有のトラスト・カンパニーであるドイツテレコム・トラスト・イー・
ヴィ(Deutsche Telekom Trust e.V.)に譲渡された。
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グループ本部・グループ事業 には、1事業セグメントに直接的には振り分けられない全てのグループ内部門
が含まれている。本セグメントは、当グループの新たな取締役会部門である、技術及びイノベーション部門に
ついても報告している。組織が方向を定め、勢いを提供する際に、当グループの戦略的目標を明確にし、かつ
これが確実に達成されるようにし、また、特定のグループ・プロジェクトに直接関与する。グループ事業は、
当グループ全体にサービスを提供する。グループ事業には、財務会計、人事サービス及び調達などの典型的な
サービスに加え、当グループの人材サービス・プロバイダーであるヴィヴェント(Vivento)が提供する代理業
務も含まれる。ヴィヴェント(Vivento)は、一方では、主に公共部門の従業員(主に公務員)のために外部雇用
機会の確保を担当し、他方では、当グループ内の専門家の雇用維持を目指して、彼らの内部への戦略的配置を
試み、それによって、外部スタッフの登用を減らすことを目的としている。当グループは、2018年1月1日付
で、コール・センター・サービスのプロバイダーであるヴィヴェント・カスタマー・サービシズGmbH(Vivento
Customer Services GmbH)を、当グループのドイツ事業セグメントに統合した。ヴィヴェント・カスタマー・
サービシズGmbH(Vivento Customer Services GmbH)は、以前は、当グループのグループ本部・グループ事業セ
グメントの一部であった。その他の部門としては、当グループの不動産管理及び当グループの戦略的調達のた
めのグループ・サプライ・サービシズ(GSUS)並びに車両の管理及び運行サービスの総合サービス事業者である
モビリティ・ソリューションズがある。
当グループの取締役会部門である、技術及びイノベーション部門は、当グループのドイツ、ヨーロッパ及び
システムズ・ソリューションズ事業セグメントの、セグメントの枠を超えたネットワーク、技術革新及びIT活
動を統合する。これらには、当グループ内部の国家ITプロジェクトに焦点を当てるドイツテレコムIT並びに製
品及び顧客経験に焦点を当てることによって新たな事業分野を開拓し、製品を製造するために当グループの事
業セグメントと緊密に協力する当グループの中核的革新部門であるプロジェクト・イノベーション・アンド・
カスタマー・エクスペリエンス(PIC)が含まれている。補助的な部門は、ネットワーク・インフラ(NWI)、スト
ラテジー・アンド・テクノロジー・イノベーション(S&TI)及びPan-Netである。NWIは、ホールセール顧客に音
声及びデータ通信サービスを提供するため世界規模のネットワークを管理し運営する。S&TIは、モバイル及び
固定ネットワーク通信に関し、効率的かつ顧客志向の技術、プラットフォーム及びサービスを確実に追究し提
供する。Pan-Netは、当グループのヨーロッパの各国企業(national companies)に対する、全ヨーロッパ・
ネットワークの共有並びに開発及びサービスの提供を任されている。2018年10月1日に設立された新しいイノ
ベーション・ハブ(IHUB)は、イノベーションの柔軟な発展を確かなものとするために、取締役会部門である技
術及びイノベーション部門における将来の革新的プロジェクトにおいて要求される専門的技術を蓄えている。
経営及び監査
2018 年12月31日時点で、取締役会の責任範囲は、8つの部門に分かれている。そのうちの以下の5つの部門
は、中央管理の領域に属するものである。
- 取締役会会長
及び以下の各部門
- 財務
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- 人事
- データ保護、法務及びコンプライアンス
- 技術及びイノベーション
さらに、以下の3つのセグメントをベースとした取締役会の各部門がある。
- ドイツ
- ヨーロッパ
- Tシステムズ
取締役会の構成の変化。 ドイツテレコム・アーゲーの監査役会は、2018年1月1日を効力発生日として、
Dr.ディルク・ヴェスナーを、ドイツ担当の新たな取締役として任命し、アデル・アルサレハを、Tシステムズ
担当の新たな取締役として任命した。2018年2月21日の会議において、ドイツテレコム・アーゲーの監査役会
は、当社の取締役会会長であるティモテウス・ヘッティゲスの契約を5年間延長することを決議した。ティモ
テウス・ヘッティゲスは、2019年1月1日を効力発生日として取締役会会長に再任された。また、2018年2月
21日の会議において、ドイツテレコム・アーゲーの監査役会は、2019年1月1日を効力発生日として、Dr.ク
リスチャン・P.・イレックを最高財務責任者(CFO)として任命することを決議した。前任の最高財務責任者
(CFO)であるトーマス・ダーネンフェルトは、2018年末の契約満了時に一身上の理由によりドイツテレコム・
アーゲーを退職した。
2018 年7月13日の会議において、ドイツテレコム・アーゲーの監査役会は、2019年1月1日を効力発生日と
して、ビルギット・ボーレを人事担当及び労働担当の新たな取締役として任命することを決議した。ビルギッ
ト・ボーレはDr.クリスチャン・P.・イレックの後任となった。
2018 年9月4日の会議において、ドイツテレコム・アーゲーの監査役会は、2019年1月1日を効力発生日と
して、トルステン・ラングハイムを、新たに取締役会部門として創設された米国及びグループ開発担当の取締
役として任命することを決議した。この結果、ドイツテレコム・アーゲーは、2019年初めより、9つの取締役
会部門を有することとなった。
株主代表者。 Dr. ウルリヒ・シュレーダーは、2018年2月6日を効力発生日として、ドイツテレコム・アー
ゲーの監査役会構成員としての役職を辞任した。Dr.ギュンター・ブラウニグは、2018年3月21日を効力発生
日として、裁判所によりドイツテレコム・アーゲーの監査役会の構成員に任命され、2018年5月17日の株主総
会の決議により選任された。マルグレット・サッケーレは、2017年9月28日を効力発生日として、 裁判所によ
り ドイツテレコム・アーゲーの 監査役会 の構成員 に任命され、 2018 年5月17日の株主総会の決議により選任さ
れ た。
サリ・バルダウフの任期は2018年5月17日の株主総会の終了時に満了した。ハラルド・クルーガーは、2018
年5月17日の株主総会によりドイツテレコム・アーゲーの監査役会の構成員に選任された。
Prof. Dr. ウルリヒ・レーナーは、2018年5月17日の株主総会により、任期延長を理由に、ドイツテレコム・
アーゲーの監査役会の構成員に選任された。監査役会のメンバーは、レーナー教授を会長に再選出した。
ヨアネス・ガイスマンは、2018年5月17日の株主総会終了時に、ドイツテレコム・アーゲーの監査役会の構
成員としての役職を辞任した。Dr.ロルフ・ベッシンガーは、2018年6月1日を効力発生日として、裁判所に
よりドイツテレコム・アーゲーの監査役会の構成員に任命された。
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従業員代表者。 ハンズ-ユルゲン・カールマイヤーは、 2017 年12月31日深夜12時を効力発生日時として、ド
イツテレコム・アーゲーの監査役会における自身の職から退任した。オデュッセウス ・ D. ・ シャトジディス
が、2018年1月3日を効力発生日として、 裁判所により ドイツテレコム・アーゲーの 監査役会 に任命された。
モニカ・ブランドルは、2018年6月30日深夜12時を効力発生日時として、ドイツテレコム・アーゲーの監査
役会の構成員としての役職を辞任した。ニコル・ゼーレマン-ヴァンドケは、2018年7月5日を効力発生日と
して、裁判所によりドイツテレコム・アーゲーの監査役会の構成員に任命された。
2018 年11月20日の 代表者会議は、従業員代表者であるヨーゼフ・ベドナースキ、オデュッセウス・D.・シャ
トジディス、ニコル・コッホ、ぺトラ・ステフィ・クローゼル、ローター・シュレーダー、ニコル・ゼーレマ
ン-ヴァンドケ、シビール・スプー及びカーリン・トーペルを2023年の株主総会終了時までドイツテレコム・
アーゲーの監査役会の構成員に再任し、同期間、監査役会の構成員としてコンスタンチン・グレーヴェ及びフ
ランク・ザウアーラントを初めて任命した。クラウス・ディーター・ハナス及びミヒャエル・ゾンマーは再任
に立候補せず、2018年11月20日、ドイツテレコム・アーゲーの監査役会の構成員を辞任した。
ドイツテレコム・アーゲーの監査役会は、取締役会に対して助言及び忠告を行い、事業運営を監督する。監
査役会は、20名の監査役によって構成され、10名が株主を代表し、10名が従業員を代表する。
取締役は、ドイツ株式会社法(Aktiengesetz-AktG)第84条及び第85条、そしてドイツ共同決定法第31条に基
づいて任命及び解任される。
定款の改正は株式会社法第179条及び第133条、そして定款第18条及び第21条に基づいて行われる。定款第21
条により、監査役会には、会社にとって拘束力のある形で、定款を株主総会の決議なく、新しい法律上の規定
にあわせて修正する権限が与えられている他、表現上の修正にあたる定款の修正を行う権限がある。
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取締役会の構成
取 締 役
責任部門
ティモテウス・ヘッティゲス 取締役会会長(CEO)
アデル・アルサレハ Tシステムズ
Dr.ディルク・ヴェスナー ドイツ
トーマス・ダーネンフェルト
(2018年12月31日まで)
財務(CFO)
Dr.クリスチャン・P.・イレック
(2019年1月1月から)
スリニ・ゴパラン ヨーロッパ
Dr.クリスチャン・P.・イレック
(2018年12月31日まで)
人事
ビルギット・ボーレ
(2019年1月1日から)
Dr.トーマス・クレマー データ保護、法務及びコンプライアンス
クラウディア・ネマート 技術及びイノベーション
米国及びグループ開発
トルステン・ラングハイム
(2019年1月1日から)
当グループの取締役会の報酬システムは、当グループの長期的なパフォーマンスを目的とする。2013年以
降、当グループの監査役会の報酬には、長期的な報酬の要素が含まれなくなった。ドイツ・コーポレートガバ
ナンス・コードにおける勧告は遵守されている。
グループ戦略
- ドイツテレコムはヨーロッパにおける主導的な電気通信プロバイダーのポジションを拡大する
- 2018年においてもグループ戦略は好調に実施された
当グループの企業戦略: リーディング・ヨーロピアン・テルコ( LEADING EUROPEAN TELCO )
2014 年以降、当グループは、ヨーロッパにおける主導的な電気通信プロバイダーになることをその目的とす
るリーディング・ヨーロピアン・テルコ(Leading European Telco)戦略に沿って、当グループの全ての企業活
動をまとめてきた。
この戦略は高い成功を収めてきた。時価総額の点では、当グループはヨーロッパで最高額の電気通信企業で
ある(2018年12月31日時点)。当事業年度において、当グループは、収益、調整されたEBITDA及びフリー・
キャッシュ・フローを再び増加させた。同時に、当グループは、新たな課題に直面していることを認識してい
る。
- ブロードバンド及びモバイルインフラ(光ファイバー及び5G)を同時並行で構築するには、高額の投資と
革新的なアプローチが必要となる。この状況は、特にドイツにおいて、当グループの構築戦略に対する
継続的な国民及び政治からの圧力により強まっている。
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- 人工知能のような革新的な技術は、ますます我々の日常の一部になりつつある。ほんの一例だが、音声
認知式のアシスタントやチャットボットは、顧客体験、当グループの職場環境及びデジタル社会におけ
る当グループの責任の様相を恒久的に変化させている。
- 企業は、自らの生産活動を接続させ、増加の一途をたどるデータストリームを管理するためのシンプル
なエンドツーエンドのソリューションを必要としている。グーグル(Google)及びマイクロソフト
(Microsoft)のようなプロバイダーもまた、グローバルなコネクティビティ・フィールドに参入してい
る。
- それに加えて、当グループの電気通信業界における直接的な競合会社は、かかる中核事業の要素をます
ますデジタル化し、効率性を高め、そして、顧客体験を強化している。
当グループは、このような課題に正面から取り組んでいる。当グループは、 リーディング・ヨーロピアン・
テルコ(Leading European Telco)戦略 を引き続き組織的に実施する。下図が示しているように、当グループの
リーダーシップの確保は、顧客経験、技術及び法人顧客生産性という3つの次元にわたっている。ここから、
当グループは、将来の実質的成長のための基盤を作り上げる3つの個別の活動エリアを導出している。これ
は、当グループは、成長することによってのみ、持続可能な形で利益業績を確保して当グループへの投資家の
要求に継続的に対応することができるからである。この成長目標は、当グループの内部的活動の枠組みを提供
する2つの事業運営分野によって支えられている。
戦略的な事業運営の分野
ワン・コネクティビティ及び完璧なサービス
当グループは、シームレスで技術中立的な電気通信経験を顧客に提供したいと考えている。そのため、当グ
ループは、固定ネットワーク及びモバイル通信を1つの 収束製品(convergent product) (フィックスド・モバ
イル・コンバージェンス(FMC))として販売する。当事業年度の終わりまでに、ドイツの約4.3百万人の顧客が
マゲンタ・アインツ(MagentaEINS)を選択した。これは前年度を0.6百万人超上回っている。当グループのヨー
ロッパ事業セグメントにおける統合された各国企業(national companies)は、マゲンタ・ワン(MagentaOne)及
び類似したFMCサービスについて、2018年に新たに約1.1百万人の顧客を獲得した。当グループは、この成長の
道筋を継続したいため、当グループの収束サービス(convergent offer)の改善及び拡大に継続的に努めてい
る。
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当グループのサービスには、全スクリーン及びあらゆるデバイスにわたる魅力的な テレビ・コンテンツ を提
供することも含まれている。2018年、当グループは、マゲンタTV(MagentaTV)というブランド名の下、ユー
ザー・インターフェースを見直し、さらにコンテンツを追加することで、ドイツのテレビサービスを再編成し
た。当グループは、幅広い機能を持つリニア・テレビ、最大規模のビデオ・オンデマンド・プロバイダー(ス
カイ(Sky)、ネットフリックス(Netflix)、マックスドーム(Maxdome)及びアマゾン・プライム・ビデオ(Amazon
Prime Video))が提供するコンテンツへのアクセス、独占的なテレビシリーズ及び幅広いスポーツコンテンツ
を1つのプラットフォームに統合している。史上初めて、顧客は、自身のインターネットプロバイダーにかか
わらず、当グループのテレビコンテンツにアクセスできるようになる。この製品は、当事業年度において当グ
ループがドイツで0.2百万人の新規のテレビ顧客を獲得したことから、当グループの戦略の成功を裏付けてい
るといえる。同じ期間中に、欧州の各国企業(national companies)のテレビ顧客数は、既存事業に関して0.1
百万人増加した。当グループの技術プラットフォームを標準化すること及び当グループのサービスを厳選され
た市場に拡大することにより、当グループは、自らの指導的地位を強化した。
高品質なサービス提供者として、当グループは、完璧な 顧客サービス で競合会社と差別化している。当事業
年度において、当グループは、ドイツにおいて、改善したセルフサービスのオプション、コールバックサービ
ス、自宅のWi-Fiを最適化するためのサービス及びホーム・ネットワークのための導入パッケージを含む、い
くつかの顧客サービス改善のためのイニシアチブを導入した。コネクト(connect)のホットライン・テストに
おける、2018年のドイツのブロードバンド・プロバイダーの中で第1位という最高の評価は、当グループが正
しい方向に進んでいることを示している。当グループは、顧客に最高のサービスを提供するために、例えば、
顧客の問合せに対する初回通話解決率を顕著な形でさらに改善することにより、2019年も努力を続ける予定で
ある。米国では、TモバイルUSが数多くの品質調査において競合会社をリードする位置にある。今年、当グ
ループは、顧客に対し、より一層個別のサービスを提供し、顧客サービスにおける不満の要因を体系的に取り
除くために、米国で専門家チーム・イニシアチブ(Team of Experts initiative)を導入した。これが、2018年
に米国で4.9百万人の新たなモバイル顧客を当グループが獲得した理由の1つである。欧州の各国企業
(national companies)において、当グループは現在、例えば、特別に開発された当グループのサービス・アプ
リを使用しながら、顧客交流のデジタル化のレベルを引き上げることに焦点を当てている。このアプリは、国
際的な展開が成功裏になされた後、契約の自己管理といった顧客体験及び例えば、顧客固有のアプローチと
いった当グループのサービス収益化のいずれをも改善することに目標を設定している。
当グループは、 顧客満足度 を世界的に認められたTRI*M手法により評価しており、この業績評価指標に基づ
き、当グループの顧客対応プロセス並びに製品及びサービスを改善している。同時に、当グループは、顧客に
支持されているかを判断する。その結果は、業績評価指標であるTRI*M指標として、-66から+134の間の数値で
示される。当事業年度末時点で、この指標は67.7(年初時点では67.2の調整値。比較可能ベースで測定。)で
あった。次の数年間の当グループの目標は、顧客満足度で着実な全面的改善を達成することである。
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統合されたギガビット・ネットワーク
収束製品(convergent product)は 統合されたネットワーク を必要とする。そのため当グループは、固定及び
モバイル・ネットワークの構築及び相互接続を体系的に行っている。これは、当グループの顧客に、常にどこ
にいても可能な限り高速な接続を最高品質で提供できるようにするためである。この一環として、当グループ
はまた、新しいパートナーシップ及びジョイントベンチャーの検討を進めるだけでなく、例えば、1Gbit/sを
超えるスピードを提供するモバイル技術を用いた固定ネットワーク置換といった革新的技術又はインフラが需
要に合わせて構築されるようにするため人工知能を使用するといった、新たな方向に突き進んでいる。また、
統合管理は、当グループのインフラの容量利用率を改善し、運営及び保守における効率を高めている。
光ファイバー・ベースの 固定ネットワーク は、統合されたネットワーク経験の基礎である。当グループは既
に、ドイツで最大の光ファイバー・ネットワークを運営し、約50万キロメートルの光ファイバー・ケーブルを
有している。2018年に、当グループは、約6万キロメートルを追加した。当グループは、ドイツ全体で現在年
間約50億ユーロ超をネットワークの構築及び運営に投資しており、このうち40億ユーロはドイツ事業セグメン
トに起因するものである。これは、全ての競合会社の投資を上回っている。当グループは、当事業年度、ベク
タリングを展開することにより当グループのネットワークの構築を続けた。現在、当グループは、この技術を
用いて約28百万世帯に高速インターネットを提供することができる。このうち約14百万世帯は、既に最大
250Mbit/sの速度の恩恵を受けている。同時に、当グループは、光ファイバー技術への移行を断固として推し
進めていく。例えば、2022年までに、当グループは、約3,000のビジネス・パークにオフィス向けのファイ
バーを供給し、そうすることでドイツ全体でビジネス・パークの企業の約80%にギガビット接続を提供するこ
とを計画している。また、既存顧客は、徐々にIPベースのソリューションに移行しており、また、移行を検討
中である。ドイツのマス・マーケットの移行は、計画通り2019年に完了する予定である。当グループは既に、
各国企業(national companies)5社(ハンガリー、クロアチア、スロバキア、マケドニア及びモンテネグロ)で
IPラインへの移行を完了しており、引き続きギリシャにおける移行を段階的に進める予定である。
モバイル通信 において、当グループは、ネットワークの卓越した品質で競合会社から差別化している。当グ
ループは、独立したネットワーク・テストにおいて、定期的にトップに立ってきた。2018年、当グループは、
コネクト(connect)、チップ(Chip)及びコンピューター・ビルド(Computer Bild)によってドイツで実施された
3つの大規模ネットワーク・テストで勝利を収めた。独立認証機関であるテュフ(TÜV)は、当グループのモバ
イル・ネットワークについて、最良の「品質を顧客に」提供していると評価した。ヨーロッパ事業セグメント
では、P3コミュニケーションズ(P3 Communications)のネットワーク専門家によって各国企業(national
companies)6社が「全体のベスト・イン・テスト(best in test overall)」と評価され、Tモバイル・ネザー
ランドも同様の評価を受けた。さらに、TモバイルUSは、2018年8月のオープンシグナル(OpenSignal)のテス
トで再び文句なしでトップに立った。当グループは、品質におけるリーダーであり続けることを意図してお
り、そのため、当グループのLTEネットワークをさらに構築している。当グループは、2020年末までにLTEのカ
バー率をドイツでは人口の約99%に、ヨーロッパの各国企業(national companies)では人口の平均約98%にす
る計画である。
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当グループは、 第5世代のモバイル通信基準(5G) によって、極めて低遅延かつ高いデータ処理能力を持つ高
い信頼性のあるモバイルネットワークを構築する。そのために、ネットワーク機能はアクセス媒体(例えば、
光ファイバー、銅、空気)から切り離される。ネットワーク内にコンピューティング・パワーを分散させ(モバ
イル・エッジ・コンピューティング)、個別アプリケーションのために専用のネットワーク・レイヤーを作り
上げることで(ネットワーク・スライシング)、5Gはバーチャルリアリティ、自動運転及びモノのインターネッ
ト(Internet of Things)などの将来の技術の基礎を作り上げる。当グループの目標は、政策立案者及び産業界
と協働して、都市部及び地方を含め、ドイツに最も強力なデジタル・インフラを構築することである。当グ
ループは、インフラへの巨額の投資を継続する予定だが、同時に、環境が整うような公正かつ信頼性の高い条
件が必要である。
ICT ソリューション及びビッグIoTの確保
当グループの国際 ネットワーク・ソリューション は、2018年のドイツの法人顧客の中で高い人気を維持し
た。安全で信頼できるグローバルな接続は、企業及び産業組合にとって重要なプロセスであるデジタル化を推
進するためには必要不可欠である。当グループは、当グループの全国的なネットワーク・インフラの強度と国
際ネットワーク資産を組み合わせた国際コミュニケーション・ソリューションのポートフォリオのおかげで、
ドイツ産業の信頼できるパートナーとしての地位を維持している。
当グループの国際企業顧客のための「従来型」ITアウトソーシング・サービスの事業は、主に持続的な厳し
い競争を原因として、今まで何年か縮小してきた。このため、当グループのシステムズ・ソリューションズ事
業セグメントは、現在、ポートフォリオ・ベースの事業運営への移行、当グループの営業組織の統合、スト
リーミング・プロセス及び階層レベルによる多分野にまたがる費用の削減並びにオフショア/ニアショア・
サービスのうちより高い占有率のサービスを提供する自動化レベルの大幅な向上という4つの鍵となる推進策
から構成される抜本的な改革に取り組んでいる。当グループは、当事業年度における転換によって著しい前進
を遂げ、2019年に計画通りの新しいポートフォリオ・ベースの組織を実施することができるであろう。当グ
ループの IT及びクラウドサービス は、将来的に、中小企業顧客のニーズにさらに密接に合わせて調整される。
2018年、当グループは、ドイツ事業セグメントのこの領域で約700百万ユーロの収益を創出した。これは、
2017年と比べて再び約20%の増加である。次の数年間にこの事業が大きく成長すると予想しているため、当グ
ループは、市場をリードする技術パートナーと共同で、当グループの中小企業向けIT及びクラウド・エコシス
テムを拡大している。
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当グループにとって、法人顧客環境の成長の最大の原動力は、 モノのインターネット(Internet of Things)
である。次の数年間にわたって、当グループは、何十億もの新しいデバイス(機械又は工具のような生産手段
及び自動車又は冷蔵庫のような日用品だけでなく、街灯又は公園ベンチのような公共インフラ)がインター
ネットに接続されることを予想している。当グループのナローバンドIoT(NB-IoT)ネットワークは、M2M接続と
ともに、コスト効率が高くエネルギー効率の高いネットワーキングのための基礎を作り上げる。さらに、当グ
ループは、このようなデバイスを管理して収集されたデータを事業のために使用するためのプラットフォーム
を顧客(例えば、自動車、ヘルスケア、公共セクター)に提供する。NB-IoT環境の主要なネットワーク事業者と
して、当グループはまた、10か国でネットワークを運営し、オランダ、オーストリア、スロバキア及び米国で
は全国的なカバレッジを提供している。現在、当グループは、ヨーロッパで500を超える顧客と連携し、NB-
IoT基盤のハードウェア及びアプリケーションの作成及び展開を手助けしている。当該顧客には、例えば、イ
スタ(Ista)(スマート・サブメーター)、BMW(ペーパーレス・ディスプレイ)、ハンブルク市(スマート・パーキ
ング)、ポーランドのヴェオリア(Veolia)及びゲオテルミア・ザコパネ(Geotermia Zakopane)(スマート・メー
ター)並びにデュアル・インベンティブ(Dual Inventive)(線路モニタリング)がある。
当グループは、このようなサービスを当グループの包括的な サイバーセキュリティ・ポートフォリオ によっ
て補完する。2017年初めに設立されたテレコム・セキュリティ(Telekom Security)は今日のドイツにおけるサ
イバーセキュリティ・ソリューションの主導的プロバイダーになっている。中期的な観点では、当グループ
は、ヨーロッパの主導的な役割を担いたいとも考えている。サイバー攻撃が企業に与える脅威は拡大してお
り、当グループの顧客のデータ保護及びセキュリティに対する必要性は高まっているため、この事業領域にお
ける成長率は次の数年間にわたって引き続き高率を維持すると予想している。
支援的な事業運営の分野
成長投資のための節約
将来の成長には十分な投資が必要である。この目的のために、当グループは、当社の外から最新の開発をう
まく統合するだけでなく、当グループ独自の革新性にも投資する。当グループの厳格な費用規律により、当グ
ループは、このような投資及び当グループの競争力の保護に必要な資金を調達している。したがって、当グ
ループは、費用変革のこの道筋を体系的に継続する。長期的に、当グループは、効率の点でヨーロッパの主導
的な電気通信プロバイダーになりたいとも考えている。
当グループは、 投資ポートフォリオ の管理に対し、価値重視のアプローチを取る。当グループ内で十分に発
展させることができない事業分野は処分され、当グループの成長意欲は株式投資及び買収という手段によって
支えられている。2018年より、当グループは、オーストリア及びオランダの単一供給元から収束製品
(convergent product)を提供することもできている。Tモバイル・オーストリア(T-Mobile Austria)による
ケーブル・プロバイダーであるUPCオーストリア(UPC Austria)の買収が完了した。欧州委員会もまた、Tモバ
イル・ネザーランドによるテレ2ネザーランド(Tele2 Netherlands)の買収を無条件で承認した。
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当グループは、2018年4月に合意したTモバイルUS及びスプリントの企業結合を通して、米国モバイル市場
における当グループの地位を強固にすることを目標としている。全く新しい大規模なTモバイルUSの下で計画
された事業活動の結合が当グループの米国事業を成功裏に発展させるという当グループの戦略と一致している
だけではなく、これは、顧客本位のアンキャリア戦略(Un-carrier strategy)をも強化し、米国全体の5G技術
の展開を以前よりも速くかつより良く進めることも可能にする。計画されていた企業結合の実施後、新企業
は、約1500億米ドルの価値を有することになり、予想されるシナジーは、現在価値かつ統合費用控除後で約
430億米ドルになる。
単純化、デジタル化、加速
当グループのサービス及び当グループの組織のシンプルさは、当グループの中核事業のデジタル変革を容易
にしている。このようにして、当グループは、(顧客とのインターアクションでも新たな戦略的イニシアチブ
の実行においても)当グループの 実行速度 を速める。これが、当グループがシンプルとなること、デジタル化
されること、及び最終的に機敏さを増すことを望んでいることの理由である。
当グループの シンプルさ の追求には、2つの主要な推進点がある。第1に、当グループは、顧客に直観的な
製品と分かりやすい料金を提供したいと考えている。マゲンタ・アインツ(MagentaEINS)のような当グループ
の収束製品(convergent product)は、この方向での最初の段階である。今後、当グループは、製品の複雑さを
さらに大きく低下させたいと考えている。第2に、当グループは、内部運営を可能な限り(つまり、時間及び
費用の点で)効率的にしたいと考えている。そのため、当グループは、当グループの組織、過程及び意思決定
手続を精査し、可能な場合は常にそれらをさらに最適化する。
当グループの中核事業の デジタル化 は、顧客経験の改善及び当グループの効率性向上に役立っている。当グ
ループの革新的サービス・アプリにより、ドイツ及びヨーロッパにおける顧客は、自らのデータ及び契約をい
つでも表示させることができ、当グループの幅広いサービスを最も効果的に活用することができる。例えば、
当グループの顧客は、iOS版マインマゲンタ(MeinMagenta)アプリを5点満点中4.4点と評価しており、このアプ
リは際だった成功を収めている。長期的には、当グループの計画は、価値創造段階の全てを完全にデジタル化
することである。このために、当グループは、より迅速なITソリューションを実施し、人工知能のような革新
的な技術における当グループの専門技術を組織的に拡大している。データに基づく分析は、既に、当グループ
のハードウェアの先を見越した整備、顧客ニーズのよりよい理解及びネットワークのより効率的な管理に役
立っている。機能するイノベーションの一例として、ベルリン技術経済大学(Berlin University of Applied
Sciences)及びセビット(CEBIT)の調査では、当事業年度における当グループのTモバイル・オーストリア(T-
Mobile Austria)のチャットボットであるティンカ(Tinka)について、DAX30及びMDAXの全企業の中で最高の
チャットボットであると評価した。
しかしながら、単純さとデジタル化には新たな組織形態、新たなスキル及び文化的改革が必要である。こう
した背景から、当事業年度に、当グループは特に市場に近い領域においてエンドツーエンド顧客責任の原則を
導入し、迅速な組織構造を実現した。当グループは、デジタル時代に直面する課題に従って従業員の能力を組
織的に開発することを目標とし、当社全体にわたる変化、革新及び創造性の源として多様性を促進している。
フューチャー・ワーク(Future Work)は、当グループの従業員に、柔軟性及び共同して働く新たな方法を促す
ための完璧な環境を提供する現代的でオープンなオフィス環境を提供する。
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要約すると、当グループのリーディング・ヨーロピアン・テルコ(Leading European Telco)戦略は以下の当
グループの目標に反映されている。
ヨーロッパにおける主導的な電気通信プロバイダーとなるために
- 当グループは、顧客経験、技術及び法人顧客のための生産性向上の実施の点で リーダー になりたい。な
ぜなら、当グループは、リーダーである場合にのみ長期的に 成長 して投資家の要求を満たすことができ
るからである。
- この成長は、当社の 財務リソース を慎重に管理し、当社を全ての意味でシンプルで、デジタルで、機敏
なものに 体系的に変革する ことによって可能になる。
- 当グループは、 社会 において責任ある積極的な役割を果たす。当グループは、単に社会的レベルではな
く政治的レベルにおいてもパートナーであり、当グループは、活動する全ての国のオープンかつ先見的
な開発を確保するために活動する。
グループのマネジメント
当グループは、価値重視のコーポレート・ガバナンスのコンセプトに取り組み続けている。当グループは、
魅力的な配当、負債の返済、責任ある人員削減及びポジティブな顧客経験のための新しい投資のために十分な
資金が利用可能となるように、当グループの利害関係者の異なった期待の均衡を取りたいと考えている。
- 株主 は、投下資本に対して適切かつ確実な利益を期待している。
- 借入資本の提供者 は、適切な利益及びドイツテレコムの負債の返済能力を期待している。
- 従業員 は、安全な職場、将来的な展望及び必要とされる人員削減が責任ある方法で行われることを期待
している。
- 「 企業内の起業家 」は、ドイツテレコムの将来的な事業形成並びに顧客のための製品開発、技術革新及
びサービスの開発を可能にする、十分な投資資金の拠出を期待している。
財務戦略
当グループは、2018年5月下旬のキャピタル・マーケッツ・デイにおいて、2018年から2021年の間の当グ
ループの最新の財務戦略を提示した。当グループの2021年までの成長予測は、引き続き、当グループが2015年
のキャピタル・マーケッツ・デイにおいて予想したのと同じく高いレベルにある。
当グループの財務戦略の一部は、当グループが目標とする財務比率(負債比率(純負債の調整されたEBITDAに
対する比率)及び自己資本比率)の達成及び少なくとも今後24か月における当グループの満期償還をカバーする
流動性準備金の確保である。このような明確な発表により、当グループはA-/BBBの格付を維持し、キャピタ
ル・マーケットへの圧倒的なアクセスを守りたいと考えている。
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信頼性のある株主への配当方針は、関連機関の承認及びその他の法定要件を充足することが必要となってい
る。2018事業年度については、当グループは、有配当株式1株当たり0.70ユーロの配当金を支払い、それは、
今後の配当金の基準にもなった。2019事業年度以降、有配当株式1株当たり0.50ユーロで下限を固定した1株
当たり利益の相対的な増加が配当金に反映される予定である。調整された1株当たり利益に関して、当グルー
プは、2018年については、2015年にキャピタル・マーケッツ・デイで発表した通り1株当たり約1ユーロとい
う価格を引き続き予想し、2021年までに1株当たり約1.20ユーロに上昇すると予想する。当グループは、この
ようにして、魅力的な利益還元及び計画的な信頼性の両方を当グループの株主に提供する。
当グループは、ドイツテレコム・アーゲーの株式及びTモバイルUSにおける株式の買戻しも考慮する。しか
し、TモバイルUS及びスプリントの事業結合が無事にクロージングした後最初の3年は、株式買戻しは行われ
ない。
今後数年は、資本支出の合計額は高額を維持する予定である。投資の範囲は、ブロードバンド・インフラの
さらなる展開及び当社のIPベースの製品モデルへの変革を加速させるために用いられる。インフラの構築は、
モバイル通信ではLTE及び5G標準に、固定ネットワークでは光ファイバー及びベクタリングに焦点を当てる予
定である。当該財務戦略は、リーディング・ヨーロピアン・テルコ(Leading European Telco)に通じる当グ
ループの変革をサポートする。持続的な価値の増加を図るため、当グループは、中期的に資本コストを稼得す
ることを意図している。非流動資産の利用最適化などによりこの目標の一部の達成を目指している。当グルー
プはまた、厳格なコスト管理を通じて資本コストの稼得という目標を達成することを意図しており、部門間協
力を改善した。さらに、当グループは、調整前EBITに関する業績管理に注力している。資本支出を勘案するこ
とにより、当グループは、EBITを使用総資本利益率(ROCE)のコンセプトにより近づけて調整を行い、ドイツテ
レコム・グループにおける効率的な資本配分についての厳密な目標を支えることができる。
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業績管理システム
当グループの戦略目標をより効率的に設定し、達成するため、当グループは、グループ全体の価値重視の業
績管理アプローチを推進する。当グループは、信頼性及び透明性を確保して成功を評価するため一連の特別な
業績評価指標を使用する。
下記の表及び情報は、当グループの主要な財務及び非財務の業績評価指標の概要を示している。
財務業績評価指標
2018年 2017年 2016年 2015年 2014年
ROCE (%) 4.7 5.8 5.7 4.8 5.5
営業収益 (十億ユーロ)
75.7 74.9 73.1 69.2 62.7
営業利益(損失)(EBIT) (十億ユーロ)
8.0 9.4 9.2 7.0 7.2
EBITDA (特別要因調整後)(十億ユーロ)
23.3 22.2 21.4 19.9 17.6
フリー・キャッシュ・フロー (配当金支払及び
6.2 5.5 4.9 4.5 4.1
周波数帯への投資前) (十億ユーロ)
現金設備投資 (周波数帯への投資前) (十億
(12.2) (12.1) (11.0) (10.8) (9.5)
ユーロ)
格付 (スタンダード・アンド・プアーズ、
BBB+ BBB+ BBB+ BBB+ BBB+
フィッチ)
格付 (ムーディーズ)
Baa1 Baa1 Baa1 Baa1 Baa1
収 益 性
当グループの良好な長期的発展の重要性を明確にするため、当グループは、当グループの持続的な企業価値
の成長を当グループの中期目標に組み込み、それをグループ全体の独立したKPI(主要業績評価指標)として活
用することにした。 使用総資本利益率(ROCE) は重要な業績指標である。ROCEは減価償却費、償却費及び減損損
失、そして計算上の税額を差し引いた営業損益(税引後営業純利益(NOPAT))と、1年間にかかる目的のために
投下した資産の平均的価値(営業純資産(NOA))の比率である。
ROCE は、営業活動の全域で当グループの価値を持続的に高めるという目標を固定化するのに役立つ業績評価
指標である。ROCEが資本コストを上回る場合に、追加の価値が生じる。それゆえ、当グループの目標は、キャ
ピタル・マーケットの要件とする基準に基づいて借入資本及び株主資本の提供者によって当グループに課せら
れた収益目標を達成又は上回ることである。当グループは、収益目標の尺度として加重平均資本コスト(WACC)
を使用している。
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ROCE 財務業績指標の算出
(百万ユーロ)
2018 年 2017年 2016年
ROCE (%) 4.7 5.8 5.7
営業利益(損失)(EBIT) 8,001 9,383 9,164
持分法で会計処理された関連会社及び共同支配企業に対する投資利益(損失) (529) 76 (53)
未認識賃貸料及びリース債務の金利部分 630 525 573
その他のNOP調整 1 0 0
純営業純利益(NOP) 8,103 9,984 9,684
税(帰属税率 2018年:27.8%、2017年:31.5%、2016年:30.3%)
(2,253) (3,145) (2,934)
税引後営業純利益(NOPAT) 5,850 6,839 6,750
現金及び現金等価物 3,679 3,312 7,747
経営運転資本 (511) (3,555) (5,056)
無形資産 64,950 62,865 60,599
有形固定資産 50,631 46,878 46,758
(注)
145 161 372
売却目的で保有される非流動資産及び処分グループ
持分法で会計処理された投資 576 651 725
その他資産 331 410 279
未認識賃貸料及びリース債務の現在価値 15,760 13,127 14,320
その他の引当金 (6,435) (6,527) (6,388)
その他のNOA調整 0 0 0
営業純資産(NOA) 129,126 117,322 119,356
平均営業純資産(Ø NOA)
124,024 118,927 119,101
(注) 持分法で会計処理された関連会社の帳簿価額は除く。
NOPAT は、損益計算書から導き出される利益指標である。NOPATは資本支出を勘案していないため、未認識賃
貸料及びリース債務の金利部分を含む。
NOA は、収益を生み出すことに直接寄与する全ての資産を含む。これらは、サービスの提供に必要不可欠で
ある、連結財政状態計算書の資産欄の全ての項目を含む。経営運転資本は、内部的な運営論理に従って選択さ
れた、売掛金及びその他の未収金、棚卸資産、買掛金及びその他の未払金並びに追加流動資産(負債)及び非流
動資産(負債)から計算される。NOAはまた、運営のために必要とされる賃貸人によって認識された賃貸料及び
リース債務を含む。これに関するリターン目標が存在しないため、その他の引当金の数値は控除される。
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当グループは、ROCEこそ上述の4者の利害関係者の期待を最もよく反映していると考えている。この指標
は、当グループが使用総資本に対して収益を如何に効率的に創出したかを評価する。ROCEは長期的視点で見た
場合に特に有益である。なぜなら資本集約的なインフラ活用による使用総資本の大きな価値及びそれらの活用
の両方を考慮するからである。これにより、KPIの重要な利点が明らかとなる。それは、生み出された利益の
絶対額に注目するのではなく、むしろ使用総資本がどのくらいの利益を生み出したかに注目する。
収 益
営業収益 は、当グループの事業活動の価値に対応している。絶対的な営業収益は、当グループが、どれだけ
当グループの製品及びサービスを市場にて販売することができるかに依存する。営業収益の動向は、当社の成
功を測定するための非常に大きな指標である。新製品及びサービス並びに追加の販売活動は、営業収益が増加
しなくては成功したとは言えない。
EBITDA は減価償却費、償却費及び減損損失前の EBIT (営業利益/損失)に相当する。EBIT及びEBITDAは各事業
分野の短期的な業績及び成功を評価する。当グループでは、EBIT及びEBITDAのマージンを使い、これらの指標
値が営業収益とどのように関連するのかを示している。これによって、規模の異なる利益生成単位の収益能力
の比較が可能となる。調整前EBIT/EBITDAを業績評価指標として用いるということは、特別要因も考慮に入れ
ることを意味する。これにより、費用について総合的な視野がもたらされる。しかしながら、特別要因は、事
業情報の表示に影響を及ぼし、業績評価指標の従前の年度の対応する値との比較をさらに難しくする。このた
め、当グループでは、透明性を確保するため、業績評価指標を追加的に調整する。この調整を行わない場合に
は、将来の収益展開について、限られた範囲でしか述べることができない。調整後の指標は、調整前の業務評
価指標に基づいて計算される。特別要因による調整後の各値のEBITDA、EBIT及び純利益/損失についての当該
調整については、下記「連結損益計算書及び特別要因の影響」の表を参照のこと。
財務の柔軟性
当グループでは、 フリー・キャッシュ・フロー を、事業活動によるキャッシュ・フローから無形資産(のれ
んを除く。)及び有形固定資産に対する投資純額を差し引いたものとして定義している。この指標は、借入資
本及び株主資本の提供者にとっての主たる尺度である。フリー・キャッシュ・フローは、当グループの今後の
成長ポテンシャル(有機的成長を生み出す力、配当金支払能力及び債務返済能力)を示している。
フリー・キャッシュ・フローの集中管理は、透明性、ステアリング、予測及びフリー・キャッシュ・フロー
並びに特に運転資本に関するパフォーマンス測定を担う。運転資本を長期的にかつ能率的に活用するための手
段の一部として当グループが焦点を当てているのは、当事業年度において、ドイツ及びヨーロッパにおいてさ
らに当グループの買掛金の支払期間を延長すること、ドイツ及びヨーロッパにおける在庫管理を拡大すること
並びに全ての事業セグメントにおける債権管理をさらに最適化することである。当グループは、次の分野を重
視することにより、今後数年間、かかる道を歩むことを計画している。すなわち、米国、ドイツ及びヨーロッ
パにおける、当グループの買掛金の支払期間の延長並びに債権及び棚卸資産の管理改善である。
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現金設備投資 ( 周波数帯への投資前)とは、無形資産(のれんを除く。)及び有形固定資産に対する投資額であ
り、フリー・キャッシュ・フローの支出額に相関する。
格付 は、統一基準による、債務証券及びその発行者の信用性についての分析又は分類である。格付機関によ
る信用性の評価は債務証券の金利及び借入コストに影響を及ぼす。当グループの財務方針として、格付の目標
幅が定められている。当グループは、A-からBBB(スタンダード・アンド・プアーズ、フィッチ)又はA3から
Baa2(ムーディーズ)の間の格付であれば、必要な資金調達のためのキャピタル・マーケットへの参加条件を本
質的に備えるものであると確信している。
新しいIFRS第16号「リース」会計基準の適用による当グループの財務業績指標への影響
新しいIFRS第16号「リース」会計基準が2019年1月1日時点で初めて強制適用されたことにより、ドイツテ
レコムの連結財務諸表は重大な影響を受けた。その新基準により、既存のオペレーティング・リースによる支
払債務について、金融負債として債務純額を増加させるリース負債として割引及び認識を行うことが求められ
る。同時に、 賃借人 は、使用権を資産計上する。オペレーティング・リースに関連して以前認識された営業費
用は、今後、必要に応じて、資産計上された使用権資産の減価償却費又はオペレーティング・リースによる割
引後の義務に対する支払利息において認識される。これにより、経済状況に関連する変化に関わらず、EBITDA
が著しく改善する。キャッシュ・フロー計算書において、既存のオペレーティング・リースによるリース料支
払いの返済部分により、財務活動より生じた又は財務活動で使用された純現金は減少し、営業活動より生じた
純現金にもはや影響を与えることはない。利息支払額は、引き続き営業活動より生じた純現金に計上され、そ
れゆえ、フリー・キャッシュ・フローにも計上される。会計基準の初めての適用に関する詳細については、連
結財務書類に対する注記「会計方針の要約」の項を参照のこと。
リースのための費用及び資金の支出は、当グループの業績及び支払能力の実質的要素であるため、2019事業
年度から、当グループは、財務業績指標を決定するときに、IFRS第16号会計基準の初めての強制適用による影
響を考慮に入れる。当グループはまた、以前の業績指標と最大限比較できるようにしたいと考えている。今
後、当グループの業績は、以前のEBITDAに相当する「リース後のEBITDA」( EBITDA AL )に基づいて計算され
る。EBITDA ALは、資産計上された使用権資産の減価償却及び認識されたリース負債の支払利息のために
EBITDAを調整することにより計算される。「フリー・キャッシュ・フロー」財務業績指標は、「リース後のフ
リー・キャッシュ・フロー」( フリー・キャッシュ・フロー AL )に置き換えられる。フリー・キャッシュ・フ
ロー ALは、リース債務返済のためにフリー・キャッシュ・フローを調整することにより決定される。当グ
ループのEBITDAを伴う業績指標及び今後もオペレーティング・リースとファイナンス・リースを区別する米国
GAAPに従って作成されたTモバイルUSの財務諸表により報告される「フリー・キャッシュ・フロー」の指標を
よりよく比較できるように、TモバイルUSにおけるファイナンス・リースの費用及び返済は、EBITDA AL及びフ
リー・キャッシュ・フロー ALを決定するときには考慮されない。
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ROCE の計算方法は、IFRS第16号会計基準が初めて強制適用されたことにより、2019事業年度初めから調整さ
れる必要がある。NOAは、資産計上されたリースによる使用権資産を考慮して決定される。一方で、未認識賃
料債務及びリース債務の現在価値並びにそれぞれの金利部分の調整は、NOPATを決定するときには、もはや考
慮されない。これらの変更の一部として、ROCEの定義は、改良され単純化されたが、これは、経営運転資本が
今後、売掛金及びその他の未収金、棚卸資産並びに買掛金及びその他の未収金から生じたものに限り計算され
るためである。NOPAT、NOA又はNOAに基づくその他の資産について、さらなる調整は必要とされない。新しい
計算方法は、全体的にROCEにわずかな影響を及ぼすであろう。
2019 事業年度初めから、当グループは、財務業績指標の実値を計算するときにIFRS第16号会計基準を初めて
強制適用することによる影響を考慮する。従って、当グループの2年予測について作成された計算書では、既
に「リース後」という新指標が言及されている。詳細については、下記「予測」の項を参照のこと。
非財務 業績評価指標
2018年 2017年 2016年 2015年 2014年
*
67.7 68.6 70.2 67.4 65.9
顧客満足度 (TRI M指数)
(1)
4.1 4.1 4.1 4.1 4.0
従業員満足度 (コミットメント指数)
固定ネットワーク及びモバイル顧客
モバイル顧客 (百万)
178.4 168.4 165.0 156.4 150.5
固定ネットワーク回線 (百万)
27.9 27.9 28.5 29.0 29.8
(2)(3)
20.2 18.9 18.4 17.8 17.4
ブロードバンド顧客 (百万)
システムズ・ソリューションズ
(4)
6,776 5,241 6,851 5,608 7,107
オーダー・エントリー (百万ユーロ)
注(1) コミットメント指数は2017年及び2015年の直近の従業員調査による。
(2) ホールセールを除く。
(3) 2018年第2四半期以降、当グループは、技術的な観点によりブロードバンド回線数の報告を行っていない。その代わ
り、ブロードバンド顧客数を報告している。2016年及び2017年の数値は、これに従って調整されている。
(4) 2016年の数値は、2017年1月1日に実施された当グループの組織変更により遡及的に調整されている。
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当グループは、顧客に満足してもらいたい、さらに喜んでもらいたいと考えている。なぜなら、満足した顧
客は当社の成功のための乗数の役割を果たすからである。責任あるサービス指向の会社として、当社にとって
顧客のニーズ及び意見は非常に重要であり、当グループは長期間彼らに当グループの顧客であり続けて欲しい
*
と考えている。このため、当社では、世界的に認められた TRI M 手法を用いて 顧客定着度/満足度 を測ってい
*
る。体系的な調査の結果は、TRI M指数として知られる指標によって表される。当社事業における顧客定着度/
満足度の主要な意義を強調するため、当社は、2010年より、この重要な指標を、取締役の長期変動報酬(変動
報酬Ⅱ)の4つの条件のうちの1つにしている。これは、2015年に発表され当社のマネージャー(取締役を除
く。)に提供された長期的なインセンティブ・プランの条件としても利用される。それぞれの事業法人につい
* *
て算定されたTRI M指数を、グループ全体のTRI M価値合計を構成する総収益に占めるそれぞれの法人の割合の
概数とみなす。権利を有するマネージャーは4年間、グループ全体において、顧客定着度/満足度の発展から
利益を享受することができる。顧客満足度のさらなる情報については、上記「グループ戦略」の項を参照のこ
と。
当社の従業員は、当社のさらなる発展に寄与し、当社との一体感を得たいと考えている。当社は、従業員と
の開かれた対話及び生産的な交流を確立したいと考えている。通常の調査と同様に、新しい働き方及び新しい
コミュニケーション手段がその実現を支援する。当グループ全体(TモバイルUSを除く。)における従業員満足
度を調査するための最も重要なフィードバックの手法には、通常の従業員調査及び1年に2回実施される意識
調査が含まれる。当社では、 コミットメント指数 を用いて 従業員満足度 に関する業績評価指標を測る。この指
数は、直近の従業員調査の結果を最新の意識調査の結果により最新のものにすることによって算出する。従業
員満足度のさらなる情報については、「第2 企業の概況-5 従業員の状況」の項を参照のこと。
当社の成功における従業員満足度の主要な意義に照らして、取締役は現在、長期業績比例変動報酬(変動報
酬Ⅱ)により管理され、動機づけられている。従業員のフィードバックは4条件のうちの1つとして、2010年
以降変動報酬Ⅱ及び2015年に発表された当社のマネージャー(取締役を除く。)のための長期的インセンティ
ブ・プランに関係するようになっている。これにより、取締役及び権利を有するマネージャーは、グループ全
体において、従業員満足度の発展から利益を享受することが可能になる。
世界中で電気通信及び情報技術を提供する主導的なプロバイダーの1つとして、当グループの発展及びそれ
に伴う財務業績評価指標もまた、 顧客数 の展開と密接に結びついている。したがって、顧客の獲得及び維持が
当社の成功にとって不可欠である。事業セグメントの事業活動毎の顧客数の展開を数える方法は複数あるが、
当グループは、各セグメントの活動により、モバイル顧客数及び/又はブロードバンド顧客数並びに固定ネッ
トワーク回線数を数える。
当グループのシステムズ・ソリューションズ事業セグメントにおいては、 オーダー・エントリー を非財務業
績評価指標として用いる。オーダー・エントリーを本事業年度に受けた顧客注文から生じる金額の合計と定義
して算出する。長期契約のオーダー・エントリーは、当グループにとって、潜在的収益力を予測するために非
常に重要である。言い換えれば、オーダー・エントリーは、計画に高い信頼性を与える指標である。
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経済環境
- 当グループの中核市場の経済動向は良好
- 規制介入は引き続き電気通信市場にマイナスの影響を与える
マクロ経済の動向
世界経済は当事業年度に3.7%成長し、単年の成長率としては2012年から2016年までの間で最も高く、2017
年と同水準となった。当グループの中核市場において、経済成長率は2018年に全般的にプラスの傾向を記録し
た。米国経済は対前年比で大幅な成長となったが、ユーロ圏の成長率はこの数か月低下傾向にある。
GDPは、ドイツで対前年比で1.5%増加したが、これは個人消費、公共支出及び公共投資に牽引されたもので
あった。2018年の失業率は平均5.2%と、ドイツの雇用水準は過去最高となった。米国経済は、当事業年度に
2.9%成長し、失業率は3.9%で、過去最低の水準となった。当グループのヨーロッパ事業セグメントの国々
は、2018年に一貫して力強く成長した。各国経済は引き続き、国内消費の上昇及び安定した需要の恩恵を受け
た。当グループのヨーロッパ事業セグメントにおいて、国内労働市場の状況は、プラスの経済成長のおかげで
引き続き向上した。
当グループにとって最も重要な市場のGDP成長率の傾向及び失業率は、以下の表の通りである。
2016年から2018年までの当グループの中核市場のGDPの動向及び失業率
2018年の
2016年のGDP 2017年のGDP GDP予測 2016年の 2017年の 2018年の
(対2015年) (対2016年) (対2017年) 失業率 失業率 失業率予測
(%) (%) (%) (%) (%) (%)
ド イ ツ
2.2 2.2 1.5 6.1 5.7 5.2
米 国 1.6 2.2 2.9 4.9 4.4 3.9
ギリシャ (0.2) 1.5 2.1 23.6 21.5 19.6
ルーマニア 4.8 7.0 4.2 5.9 4.9 4.3
ハンガリー 2.3 4.1 4.7 5.1 4.2 3.6
ポーランド 3.1 4.8 5.1 6.2 4.9 3.3
チェコ共和国 2.5 4.4 2.9 4.0 2.9 2.4
クロアチア 3.5 2.9 2.8 13.4 11.1 9.1
オランダ 2.2 2.9 2.5 6.0 4.9 3.9
スロバキア 3.1 3.2 4.2 9.7 8.1 6.9
オーストリア 2.0 2.6 2.7 6.0 5.5 4.8
(出典) 各国当局及び欧州委員会のユーロスタット(Eurostat)のコンセンサス予想 2019年1月
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電気通信市場
固定及びモバイル・ネットワークにおける高速ブロードバンドの需要は依然として高い。アナリシス・メイ
ソン(Analysys Mason)の推定によると、世界の固定ネットワークにおけるデータ通信量は、2018年に38%増加
した。ダイアログ・コンサルト(Dialog Consult)は、同期間中のドイツにおける固定回線接続による月間平均
データ量を90ギガバイトと推定している。これは5年前の4倍を超えている。アナリシス・メイソン
(Analysys Mason)の推定によると、世界のモバイル・データ通信量は2018年に67%増加し、5年間で15倍に増
加した。電気通信産業にとって、こうした動向は課題であると同時に、通信量の力強い増加を収益化する機会
でもある。
世界的には、当事業年度において、情報通信技術(ICT)市場の収益は4.1%増加し、3.26兆ユーロとなった。
ハイテク連合であるドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(Federal Association for Information
Technology, Telecommunications and New Media (Bitkom))及び欧州情報技術研究所(European Information
Technology Observatory (EITO))は、2018年の電気通信市場セグメント(サービス及び機器)が、世界的に
3.3%という増加を記録して、1.82兆ユーロとなり、情報技術(IT)市場セグメントが、5.1%という増加を記録
すると予測している。
EUでは、2018年に電気通信市場セグメントの収益が1.3%増加した。電気通信機器の収益は3.2%増加した一
方で、電気通信サービスの収益は0.6%と小幅な増加にとどまった。中央ヨーロッパ及び東ヨーロッパ諸国(ロ
シアを除く。)では、当事業年度に電気通信機器及びサービスの収益が3.7%増加した。ヨーロッパでは、2018
年も引き続き、電気通信の収益が全般的に他の主要工業国に比べて緩やかな伸びとなった。米国は2.6%の増
加、中国は3.1%の増加を記録した。EUの電気通信政策は、規制介入による徹底した価格競争の促進を目的と
しているが、EU以外では、投資の促進にはるかに大きな重点が置かれている。
電気通信業界は激しい競争によって特徴付けられる。消費者にとっては、多岐にわたる商品から選択できる
という恩恵がある。当グループの各市場は、それぞれ各自のネットワーク・インフラを有する3~4社のモバ
イル事業者で占められている。それに加えて、モバイル・プロバイダーがモバイル・ネットワーク事業者の
ネットワーク・インフラを利用して、多くの市場で地位を確立しつつある。固定ネットワークでも競争は激し
い。既存の電気通信会社は、ケーブル・ネットワーク事業者、市内ネットワーク事業者及び主に規制対象の
ホールセール製品を利用する再販業者と競合している。これに加えてオーバー・ザ・トップ(OTT)通信サービ
スを提供するインターネット会社が、さらに競争圧力を強めている。
電気通信セクターにおける急速な技術変革に伴い、次世代ネットワーク・インフラ構築のための多額の投資
が必要とされている。5Gネットワークの展開は急速に近づいており、電気通信ネットワークは光ファイバーに
よって絶え間なくアップグレードされている。ドイツテレコムのような既存の電気通信会社は、ネットワー
ク・インフラの構築及び周波数帯の獲得に収益の相当部分を投じている。こうした取り組みの継続を確実にす
るには、特にヨーロッパ市場をはじめとする市場環境の改善が不可欠である。電気通信のような資本集約的か
つ革新的な産業では、電気通信ネットワーク事業者による大型投資の恩恵を消費者が真っ先に享受する。その
ため、規模の経済及び民間投資の公平な条件並びにパートナーシップ構築が重要な役割を果たす。
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基本的なブロードバンド・インフラの供給とともに、今後、焦点になると思われることは、数十億のあらゆ
る種類のモノ、電化製品、マシーン及びセンサーを接続して、モノのインターネット(Internet of Things)
(IoT)を創出することである。今後数年のうちに、接続は数百万台のスマートフォンやコンピューターのみに
とどまらず、全世界の数十億に上る電化製品も相互に通信するようになる。ギガビット社会のネットワーク・
インフラは、増大するデータ量の転送を可能にし、並行して、コネクテッド自動運転、IoT、インダストリー
4.0(Industry 4.0)、eヘルス及びスマート・グリッドといった将来の適用に伴って生じる、多様化する課題を
最も効果的にサポートするインテリジェントな機能及びサービスを提供できるものでなければならない。こう
した用途においては、リアルタイムの要件、レイテンシー、可用性、帯域幅、モビリティ、セキュリティ及び
エネルギー効率などに関して要求されることが大きく異なる可能性がある。そのため、現在及び将来にわたっ
て、品質の保証されたサービスを確保するための措置が講じられなければならない。ギガビット社会のインフ
ラは、ネットワークと機能の両レベルにおいて、インテリジェントで、用途に特化された技術の組み合わせで
構成される。
ド イ ツ
EITOによると、当事業年度におけるドイツのIT製品及びサービス、電気通信並びに家電製品からの収益は、
2.1%増加して、約1,382億ユーロとなった。主に情報技術が2.5%増加したことがプラスに寄与した。電気通
信収益(電気通信サービス、ハードウェア及びインフラストラクチャー・システム)は1.4%増加して、約584億
ユーロとなった。
EITOによると、ドイツのブロードバンド回線数は、2018年に3.0%増加して、当年度末時点で約34.1百万と
なった。2019年には、ブロードバンド回線数がさらに2.3%増加して、34.9百万になると予想される。自身の
インフラストラクチャーを有する企業が、再販業者及び地域のプロバイダーとともに、この市場成長から最大
の恩恵を受けた。高帯域の回線が、ケーブル・ネットワーク及びVDSL/ベクタリング・ネットワークにおい
て、ますます販売されるようになっている。この分野において提供されるものは、技術革新的なハイブリッド
接続技術に支えられている。ドイツにおける高帯域の可用性並びに選択の豊富なHDコンテンツ及びビデオ・オ
ンデマンド・サービスが、IPTV事業における顧客の増加を促している。固定ネットワーク及びモバイル通信か
ら成る収束サービス(フィックスド・モバイル・コンバージェンス(FMC))は、顧客に多くの利点を提供し、顧
客保持率の増加を助ける。FMCサービスの趨勢は、当事業年度において続き、より多くのプロバイダーたちが
彼らのポートフォリオを拡大させた。当グループは、当グループ初の収束サービス(convergent offer)である
マゲンタ・アインツ(MagentaEINS)を2014年秋に市場で発売した。それ以降、当グループは、従来の通信分野
並びにスマート・ホーム、クラウド・コンピューティング及びセキュリティ・アプリケーションなどの追加的
サービス分野の両方におけるサービスを徐々に向上させてきた。ボーダフォン(Vodafone)及びオーツー(O2)が
収束サービス(convergent offer)において基盤を固めた。
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ドイツのモバイル市場では、サービスの収益が、対2017年比で1.4%増加して、約200億ユーロとなった。こ
の緩やかな収益増加を牽引した主な要因は、データ利用の継続的な増加で、これによって上述した規制の効果
と持続的な価格圧力及び競争圧力が相殺された。モバイル・データの利用は、指数関数的に増加しており、音
声及びデータ料金プランの割合が安定的に上昇している。従来の音声及びテキスト・メッセージング・サービ
スは、ますます、ワッツアップ(WhatsApp)のような無料のIPメッセージング・サービス及びフェイスブック
(Facebook)のようなソーシャル・ネットワークによって置き換えられている。スマートフォン及びタブレット
に加え、腕時計、靴、自転車などをほんの一例とするコネクテッド製品の人気がこれまで以上に高まってお
り、モバイル・ブロードバンド速度の需要及び料金プラン・ポートフォリオにおける大容量のデータへの需要
を増加させている。
デジタル化は急速に進展しており、その結果、マシーン及び製造施設をネットワーク化して、バリュー・
チェーンをより効率の良いものとするために、さらに多くの接続への産業の需要も高まっている。これらの需
要を充足するためには、広範なIT及びクラウド・ソリューション並びにM2M(マシーン・トゥ・マシーン)通信
に対するインテリジェントなアプローチが必要である。
米 国
米国のモバイル通信市場は依然として4つの全国的な主要プロバイダー(AT&T、ベライゾン・ワイヤレス
(Verizon Wireless)、TモバイルUS及びスプリント)並びに複数の地域ネットワーク事業者に分割されている。
加えて、モバイル・バーチャル・ネットワーク事業者も多数存在し、彼らの音声及びデータ通信を伝送するた
め全国通信事業者4社が持つネットワークの1つ以上に依存している。全国的なネットワーク事業者のうち最
大手の2社は、AT&T及びベライゾン・ワイヤレス(Verizon Wireless)であり、TモバイルUS及びスプリントが
後に続く。
市場は引き続き非常にダイナミックである。コムキャスト(Comcast)、チャーター(Charter)、ディッシュ
(DISH)、トラックフォン(TracFone)及びグーグル(Google)は、ワイヤレス市場に首尾よく参入したか、参入し
ようとしており、同セクターの現在の競争の激しさを示している。例えば、ケーブル会社のコムキャスト
(Comcast)及びチャーター(Charter)の両社は、自社の顧客に対しモバイル・サービスの提供を開始した。コム
キャスト(Comcast)とチャーター(Charter)の両社のモバイル・サービスは、それぞれの既存のWi-Fiネット
ワークを活用し、それぞれのWi-Fiネットワークの範囲外である場合は、ベライゾン(Verizon)のネットワーク
に頼っている。両社のサービスは、従来のワイヤレス・プロバイダーから徐々に加入者を奪っており、新たに
特有の競争圧力となり、市場の境界線をあいまいにしている。アルティス(Altice)は、昨年スプリントとの
MVNOパートナーシップを発表した後、2019年のいずれかの時点での発売に向けた準備として、モバイル部門を
漸進的に拡充している。広範な帯域の放送波についてライセンスを有するディッシュ(DISH)は、ナローバンド
IoTネットワーク及び5Gネットワークの両方の短期計画を発表した(ディッシュ(DISH)は、自社の周波数帯の大
半を2020年までに構築するライセンス上の義務を負う。)。
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AT&Tによるタイム・ワーナー・インコーポレイテッド(Time Warner, Inc.)の854億米ドルでの買収は完了し
たが、依然として法廷で係争中である。AT&Tは、米司法省による反トラスト法違反の申立てを法廷で退けた。
固定及び無線の統合並びに無線企業によるコンテンツ・プロバイダーの買収が進むにつれて、米国の電気通信
市場では整理統合及び集中化が続くことが予想される。2018年4月29日に、TモバイルUS及びスプリントは、
合併することを公表した。この取引は、規制、反トラスト、国家安全保障上の承認を含む、通常の完了条件が
満たされることを条件とする。
FCCは、業界及びアナリストにモバイル無線サービス市場の競争状況に関する情報提供を求める通知を公表
した。ワイヤレス接続の総数、データ利用の傾向、周波数帯の保有、技術革新及び5G、ネットワークの質並び
に市場の定義などに関する評価指標が求められている。特定の評価指標は近々公表予定であるが、データ消費
及びスマートフォンの普及率は着実に上昇しており、2019年にモバイル5Gサービスの到来が見込まれることか
ら、データ消費量が急激に増加することが予想される。例えば、スマートフォンのデータ使用量は、2018年に
おける固定ブロードバンドの使用量を超えると予想される。モバイル機器の台数は4億台を超えており、米国
ではワイヤレス機器の台数が人口を上回っている。実際に米国における1人当たりの機器保有台数は約1.2台
である。こうした機器の68%超は、データ集約型のスマートフォンである。
米国では、5Gの商用化が急速なペースで進んでいる。4社の国内サービス・プロバイダーのうち1社は、
2018年10月初めに5Gの固定無線インターネット・サービスの展開を開始した。別の1社は、主導的なモバイル
標準化団体である、第3世代パートナーシップ(3GPP)の5G標準に基づく5Gを年末までに展開する計画を発表し
た。残る2社のプロバイダーは、2019年にモバイル5Gサービスを投入する計画である。
FCCについては、無線分野への投資を促す様々な対策を講じている。例えば、プロバイダーの次世代ネット
ワーク展開に向けた準備を支援するため、FCCは規制上の障害を取り除き、国及び地方のいくつかの障害を撤
廃することによって、真の5Gモバイル・ネットワークの実現に必要とされる、今後の構築作業の効率化に努め
ている。また、FCCは2018年11月14日に、高帯域5Gの周波数帯で初となる、28GHz帯の周波数帯の競売(オーク
ション101)を開始し、かかる競売は2019年5月28日に終了した。この競売に続き、2019年に24GHz帯の周波数
帯の2回目の競売(オークション102)を実施する予定で、周波数帯は合計1.55ギガヘルツとなる。2019年には
37GHz、39GHz及び47GHz帯の周波数帯について追加的な競売が予定されている。しかし、FCCからその周波数帯
の付与に関する詳細はまだ公表されていない。
ヨーロッパ
当グループのヨーロッパ事業セグメントにおける従来の電気通信市場は、2018事業年度に競争が激しい市場
環境において、昨年の成長傾向を維持した。ブロードバンド及びテレビ・サービスにおける着実な成長は、固
定ネットワーク事業の音声電話の収益減少を相殺した。モバイル・データ利用の成長率は、特に幅広い動画
サービスが利用可能であることから高水準が続いた。全体としては、モバイル事業は堅調に発展し、従来の電
気通信市場の成長を牽引した。一部の国における電気通信サービスに対する特別税が2018年も引き続き課税さ
れたことは、例えばギリシャやハンガリーにおいて、マイナスの影響を及ぼした。
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2018年における周波数帯の取得及び既存のモバイル・ライセンスの延長に要した費用は、過年度と比べる
と、適度な水準にとどまった。周波数帯付与の手続は、主にハンガリーで行われた。当事業年度において、当
グループのヨーロッパ事業セグメントが存在する国々では、数件の企業の合併及び買収取引が完了した(例え
ば、Tモバイル・オーストリア及びUPCオーストリア(UPC Austria)、ハンガリーのデジ/インビテル
(Digi/Invitel)及びテレノール(Telenor)のPPFへの売却、並びにギリシャのボーダフォン/Cyta
(Vodafone/Cyta))。
例えば、オーストリアのコンビニーレン・ウント・シュパーレン(Kombinieren & Sparen)(combine &
save)、ポーランドのラブ(Love)並びに統合型の電気通信インフラストラクチャーを有する当グループの子会
社のマゲンタ・ワン(MagentaOne)及びコスモテ・ワン(CosmoteOne)など、固定ネットワーク及びモバイル通信
を結合してバンドリングする収束製品(convergent product)(FMC)への傾向は続いている。これらのサービス
は力強い成長を享受しており、いくつかのプロバイダーでは、既に大多数の消費者に対処している。ネットフ
リックス(Netflix)やアマゾン・プライム・ビデオ(Amazon Prime Video)といった動画配信サービスの重要性
は、南ヨーロッパ及び東ヨーロッパでは依然として限定的である。アンペア・アナリシス(Ampere Analysis)
によると、当事業年度における同地域の世帯普及率は6%であるのに対し、西ヨーロッパでは30%である。法
人顧客部門では、デジタル化の進行がM2M/IoTアプリケーションの急成長を促進した。当グループでは、例え
ばハンガリー、ルーマニア及びギリシャのスマート・シティ・プロジェクト(smart city projects)において
も、この成長に取り組んでいる。
システムズ・ソリューションズ
当グループのシステムズ・ソリューション事業セグメントのポートフォリオが取り組んだ、当グループの中
核市場である西ヨーロッパでの情報通信技術(ICT)産業における取引高は、当事業年度において1,850億ユーロ
を超え、5.3%増加した。しかしながら、この傾向は、当該市場の事業分野においては、それぞれ非常に異な
る影響を持った。
電気通信セグメントでは、市場は電気通信サービスの継続的な価格の下落及び激しい競争によって特徴付け
られた。本セグメントでの焦点は、依然としてポートフォリオの各要素の代替であり、ますます大きくなる周
波数帯域幅の、安定した、インテリジェントかつ安全なネットワーク・ソリューションの需要にも焦点が当て
られた。ICTセキュリティ(サイバー・セキュリティ)、モノのインターネット(Internet of Things)、クラウ
ド・コンピューティング及びユニファイドコミュニケーション(Unified Communications)の成長が、当グルー
プの事業セグメントが携わっている市場の長期的な安定化に寄与している。固定ネットワーク及びモバイル・
オペレーションの間の代替効果も激しさを増している。オールIP(all-IP)ソリューション(例えば、インター
ネット・アクセス、ボイス・オーバー・IP(Voice over IP)及びIP VPNの組み合わせ)並びにユニファイドコ
ミュニケーション(Unified Communications)への移行が引き続き増加している。
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ITサービスに関しては、クラウド・サービス及びサイバーセキュリティ・サービスの需要がさらに伸び、か
つデジタル化、インテリジェント・ネットワーク、モノのインターネット(Internet of Things)(インダスト
リー4.0(Industry 4.0)を含む。)及びマシーン間通信(M2M)の重要性も高まっている。デジタル化の進歩及び
クラウド・ソリューションへの移行もシステム・インテグレーション事業における需要を変えた。従来のプロ
ジェクト事業(アプリケーション開発及び関連するインテグレーション)は、低迷した。これとは対照的に、ク
ラウド・ソリューションへのコンサルテーション及びインテグレーション・サービスの市場はほぼ25%成長し
た。
コンピューティング及びデスクトップサービス(CDS)の外注市場は、当事業年度において0.1%とわずかに拡
大し、540億ユーロとなった。この文脈においては、2つの正反対の傾向が寄与した。一方では、長期の、ど
ちらかというと従来型の外注契約の4%の減少があり、他方では、クラウド・コンピューティングの市場の
13%の成長があった。
システムズ・ソリューションズ事業セグメントの全てのサブ市場において、競争及び価格圧力が継続した。
これは一部、電気通信市場におけるBTグローバル・サービス(BT Global Services)及びオレンジ・ビジネス・
サービス(Orange Business Services)並びにITセグメントにおけるIBM、アトス(Atos)及びキャップジェミニ
(Capgemini)などの競合会社により引き起こされたことに加えて、ITセグメントは特にアマゾン・ウェブ・
サービス(Amazon Web Services)、グーグル(Google)及びマイクロソフト(Microsoft)などのクラウド・プロバ
イダーからの価格圧力を受けている。この影響は、主にオフショアとされるサービスのプロバイダーによって
特に激化している。この環境においては、当グループは、自身をデジタル提供者(digital enabler)、クラウ
ドを転換させる企業(cloud transformer)及びICT運営者として位置付け、品質、データ・セキュリティ並びに
ICTサービスの変化、統合及び運営についてのエンドツーエンドの責任に焦点を当てている。さらに、当グ
ループは、当グループの顧客に対して革新的なソリューションを提供することを目的とした、当グループの競
合会社との間での戦略的なパートナーシップの締結を増加させている。
グループ開発
当グループのグループ開発事業セグメントの環境の大部分は、当グループの企業であるTモバイル・ネザー
ランド及びドイチェ・フンクトゥルム(Deutsche Funkturm (DFMG))が提供する市場によって独占されている。
オランダにおけるモバイル通信市場は、かなり長い期間、価格の上昇及び競争圧力に特徴付けられていた
が、2018年に再びこの状況が激化した。この状況をもたらす傾向の1つに、固定ネットワークとモバイル製品
をバンドリングして収束するサービス(FMC)の拡大があり、この分野はKPN及びボーダフォンジゴー
(VodafoneZiggo)の2社が支配している。以前と同様に、バンドル・オファーへの傾向は、モバイル製品に価
格圧力をもたらしている。モバイル・プロバイダーの二次ブランド及びMVNOで構成される強力な割引セグメン
トによって、さらに競争が激化している。2018年11月27日、欧州委員会は、Tモバイル・ネザーランドによる
電気通信プロバイダーであるテレ2ネザーランド(Tele2 Netherlands)の買収を無条件で承認し、本取引は2019
年1月2日に完了した。
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DFMGは、ドイツにおけるモバイル通信及び放送向けのパッシブ無線インフラの最大規模のプロバイダーであ
る。市場においても、2018会計年度にセル・サイトへの需要が拡大した。これは、一方では、ネットワーク事
業者がカバレッジの差を埋めるための計画をしている事実があり、他方では、モバイル・ネットワーク密度を
さらに高めることを要求するモバイル・データ・サービスへの需要が高まっている事実があるからである。
主要な規制上の決定
当グループの事業活動は、その大部分が、各国及びヨーロッパの規制の対象となっており、この規制は、当
グループのプロダクト・デザイン及び価格設定に介入する広範な権力と関連している。2018年において、当グ
ループは、当グループのモバイル及び固定ネットワーク事業において再び広範な規制の対象となった。焦点は
主に、ホールセール顧客向けのサービスに対する規制及びモバイル周波数帯の付与並びに対応する料金に当て
られた。
規 制
最高行政裁判所が下した当グループに有利な判決により、市内交換器に直接隣接したVDSLの展開に法的確実
性が与えられた。 競合会社が、連邦ネットワーク庁が2016年9月に下したベクタリング展開の承認決定を不服
として、上訴していた。2018年9月に、最高行政裁判所は、連邦ネットワーク庁の決定を支持し、同時にVDSL
の展開に関する法的確実性を認めた。
ストリームオン(StreamOn)に関する連邦ネットワーク庁の決定。 2017年12月15日に、連邦ネットワーク庁
は、マゲンタ・モビル(MagentaMobil)のストリームオン・アドオン・オプション(StreamOn add-on option)の
要素を禁止した。連邦ネットワーク庁によれば、このオプションの2つの側面がネット中立性及びローミング
に関するEU規制を侵害している。この決定は、当グループがストリームオン・データ・トラフィックの全てを
最大の使用可能帯域で伝送しなければならないと規定し、また、EU内でローミングする場合、これを既に含ま
れている条件付きのデータ容量から差し引くことができないと規定した。しかしながら、当グループは、当グ
ループのサービスがEU規制を遵守していると考えている。当グループは引き続き、連邦ネットワーク庁の決定
に対する、仮差止めの命令をミュンスター上級行政裁判所に申請する。
ビットストリーム料金に関する連邦ネットワーク庁の決定。 2018年3月8日に、当グループは当グループの
2017年9月21日付料金適用についての連邦ネットワーク庁の最終決定を受理した。この適用は、「レイヤー2
ビットストリーム・アクセス(layer 2 bitstream access)」について、当グループのブロードバンド回線にア
クセスするために当グループがホールセール顧客に請求できる料金に関係している。この最終決定において、
連邦ネットワーク庁は2017年12月からの暫定的な決定を承認し、大部分の料金を現在のレベルとすることを概
ね認めた。当グループは、コンティンジェント・モデル(contingent model)の一環として月額料金の値上げを
要求した。この適用については、暫定的な決定の通り、最終決定において承認されなかった。2018年9月18日
に、同庁は、最大250Mbit/sの周波数帯域幅のダウンロードを可能にするために使用されるスーパーベクトリ
ングのビットストリーム料金に関する協議草案を公表した。承認された料金は、より低速の料金を上回り、
2018年12月18日の最終決定において変更されることなく採用された。このように同庁は、より高い周波数帯域
幅への投資を一貫して承認している。
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連邦ネットワーク庁は、新規相互接続料金に仮承認を与えている。 2018年12月17日、同庁は、固定ネット
ワーク相互接続料金を暫定的に承認した。固定ネットワーク着信料金は、0.10ユーロ/分から0.08ユーロ/分に
20%引き下げられ、発信料金は、0.23ユーロ/分から0.13ユーロ/分に約43%引き下げられた。決定案では2020
年12月30日までこの料金が承認された。確定料金の承認案は、国内の協議プロセス及びそれに続くヨーロッ
パ・レベルでの協議における承認を必要とする。最終的な料金承認は2019年半ばになる見込みである。
周波数帯付与
ドイツでは、競売が予定されている2.1GHz及び3.4~3.7GHz帯の周波数帯付与の条件が、2018年後半におけ
る政治論争の中心的議題となった。注目は主に、(「ホワイト・スポット(white spots)」として知られる)モ
バイル・データのカバレッジ及びインターネット・アクセスのギャップの解消並びに新しい5Gモバイル標準の
可能な限り早急かつ包括的な展開の要請に集まった。目標は、特に農村地域及び全ての主要輸送経路(道路、
鉄道、水上輸送)へのカバレッジ拡大である。これを踏まえ、最終的な付与条件には、広範なカバレッジの義
務及びモバイル・ネットワーク事業者間のアクセス付与に関する、法律上論議を呼んでいる条件が含まれた。
当グループは、少なくとも8社の市場プレイヤーとともに、最終的な付与条件を不服として訴訟を提起した。
以下の「主要な周波数帯付与」は、ドイツ及び当グループのドイツ国外子会社における、競売及びライセン
ス延長などの主要な周波数帯付与の概要を提供しており、各国において2019年に付与される周波数帯も示して
いる。周波数帯付与に関するさらなる情報については、「2 事業等のリスク-リスク及び機会管理」の項を
参照のこと。
主要な周波数帯付与
取得された周
付与手続開 付与手続終 周波数帯範囲 波数帯
始予定 了予定 (MHz) 付与プロセス (MHz) 周波数帯への投資
競売(SMRA