YKK株式会社 有価証券報告書 第85期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
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YKK株式会社(E02368)
有価証券報告書
【表紙】
【提出書類】 有価証券報告書
【根拠条文】 金融商品取引法第24条第1項
【提出先】 関東財務局長
【提出日】 2020年6月26日
【事業年度】 第85期(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
【会社名】 YKK株式会社
【英訳名】 YKK Corporation
【代表者の役職氏名】 代表取締役社長 大谷 裕明
東京都千代田区神田和泉町1番地
【本店の所在の場所】
(同所は登記上の本店所在地であり、実際の業務は「最寄りの連絡場所」で
行っております。)
【電話番号】 該当事項はありません。
【事務連絡者氏名】 該当事項はありません。
【最寄りの連絡場所】 富山県黒部市吉田200
【電話番号】 0765(54)8075番
【事務連絡者氏名】 財務・経理部長 太刀川 博
【縦覧に供する場所】 該当事項はありません。
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第一部【企業情報】
第1【企業の概況】
1【主要な経営指標等の推移】
(1) 連結経営指標等
回次 第81期 第82期 第83期 第84期 第85期
2016年3月 2017年3月 2018年3月 2019年3月 2020年3月
決算年月
(百万円) 741,935 712,783 747,762 765,781 732,854
売上高
(百万円) 70,988 61,545 59,924 64,466 42,661
経常利益
親会社株主に帰属する
(百万円) 44,646 45,180 38,728 45,824 23,629
当期純利益
(百万円) △ 20,695 51,998 30,123 38,420 △ 5,032
包括利益
(百万円) 561,547 609,848 636,361 671,195 662,564
純資産額
(百万円) 954,060 963,231 978,563 1,011,934 983,645
総資産額
(円) 456,991 496,267 518,187 546,662 539,329
1株当たり純資産額
(円) 37,237 37,683 32,302 38,220 19,708
1株当たり当期純利益
潜在株式調整後
(円) - - - -
-
1株当たり当期純利益
(%) 57.4 61.8 63.5 64.8 65.7
自己資本比率
(%) 8.0 7.9 6.4 7.2 3.6
自己資本利益率
(倍) - - - -
株価収益率 -
営業活動による
(百万円) 101,727 81,619 57,525 68,607 77,731
キャッシュ・フロー
投資活動による
(百万円) △ 95,252 △ 59,345 △ 67,661 △ 53,888 △ 68,123
キャッシュ・フロー
財務活動による
(百万円) △ 4,359 △ 14,569 △ 4,470 △ 3,255 △ 5,446
キャッシュ・フロー
現金及び現金同等物の
(百万円) 167,229 171,259 155,076 166,241 164,708
期末残高
44,250 44,674 45,618 46,167 46,261
従業員数
(人)
〔外、平均臨時雇用者数〕 〔 5,390 〕 〔 4,801 〕 〔 4,538 〕 〔 4,430 〕 〔 3,701 〕
(注) 1. 売上高には、消費税等は含まれておりません。
2. 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。
3. 株価収益率については、非上場につき記載しておりません。
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(2) 提出会社の経営指標等
回次 第81期 第82期 第83期 第84期 第85期
2016年3月 2017年3月 2018年3月 2019年3月 2020年3月
決算年月
(百万円) 87,819 82,700 85,510 98,843 90,820
売上高
経常利益
(百万円) 15,435 17,192 10,485 4,437 △ 4,547
又は経常損失(△)
当期純利益
(百万円) 15,254 17,529 9,333 9,874 △ 5,352
又は当期純損失(△)
(百万円) 11,992 11,992 11,992 11,992 11,992
資本金
(株) 1,199,240.05 1,199,240.05 1,199,240.05 1,199,240.05 1,199,240.05
発行済株式総数
(百万円) 349,407 364,938 371,467 378,277 369,086
純資産額
(百万円) 508,510 508,254 497,861 498,113 484,947
総資産額
(円) 291,422 304,380 309,830 315,514 307,853
1株当たり純資産額
(円) 2,400 2,400 2,400 2,400 2,400
1株当たり配当額
(うち1株当たり
(円) ( -) ( -) ( -) ( -) ( -)
中間配当額)
1株当たり当期純利益
(円) 12,723 14,620 7,784 8,235 △ 4,464
又は当期純損失(△)
潜在株式調整後
(円) - - - -
-
1株当たり当期純利益
(%) 68.7 71.8 74.6 75.9 76.1
自己資本比率
(%) 4.4 4.9 2.5 2.6 △ 1.4
自己資本利益率
(倍) - - - -
株価収益率 -
(%) 18.9 16.4 30.8 29.1
配当性向 -
(人) 3,914 4,048 4,149 4,733 4,823
従業員数
(%) - - - - -
株主総利回り
(比較指標:-) (%) ( -) ( -) ( -) ( -) ( -)
(円) - - - - -
最高株価
(円) - - - - -
最低株価
(注) 1. 売上高には、消費税等は含まれておりません。
2. 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。
3. 株価収益率、株主総利回り、比較指標、最高株価及び最低株価については、当社株式は非上場であります
ので記載しておりません。
4. 第85期の配当性向については、当期純損失であるため記載しておりません。
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2【沿革】
年月 事項
1934年1月 吉田忠雄が東京日本橋に「サンエス商会」を創設、ファスナーの製造・販売を開始
1945年8月 「吉田工業株式会社」に社名変更
1946年4月 「YKK」の商標を制定
1954年10月 黒部工場(現黒部牧野工場)着工 (1955年5月稼動)
1957年7月 吉田商事㈱(現YKK AP㈱、現連結子会社)を設立し、当社製造のファスナー及び伸銅品の国
内・輸出販売を開始
10月 生地工場(現黒部工場)着工
1959年12月 ニュージーランドにスライド・ファースト社(現YKKオセアニア社、現連結子会社)を設立、以後
世界各地にファスナー製造・販売活動のための現地法人を設立
1961年11月 生地工場において建材の製造を開始すると同時に、吉田商事㈱より販売を開始
1963年6月 東京都千代田区に本社を移転
1971年6月 建材製造専用の四国工場(現YKK AP㈱四国製造所)着工
1973年6月 建材製造専用の東北工場(現YKK AP㈱東北製造所)着工
10月 建材製造専用の九州工場(現YKK AP㈱九州製造所)着工
1976年5月 YKKインダストリーズ・シンガポール社(現YKK APシンガポール社、現連結子会社)設立
1979年8月 オーストラリアにおけるアルミ製錬事業ボインスメルターズプロジェクト参画のため現地法人YKK
アルミニウム・オーストラリア社(現連結子会社)を設立
1987年9月 米国子会社の地域統括を目的としてアメリカにYKKコーポレーション社(現YKKコーポレーション・
オブ・アメリカ、現連結子会社)を設立
1988年12月 欧州子会社の地域統括を目的としてオランダにYKKヨーロッパ社(現YKKホールディング・ヨーロッ
パ社、現連結子会社)を設立
1991年12月 アジア子会社の地域統括を目的としてシンガポールにYKKホールディング・アジア社(現連結子会
社)を設立
1994年8月 「YKK株式会社」に社名変更
2001年10月 吉田不動産㈱(現YKK不動産㈱、現連結子会社)を完全子会社化
2002年10月 株式交換により、YKK AP㈱を完全子会社化
12月 東アジア子会社の地域統括を目的として中国にYKK中国投資社(現連結子会社)を設立
12月 蘇州YKK工機会社(現連結子会社)を設立
2003年2月 新設分割により、YKKファスニングプロダクツ販売㈱を設立
4月 新設分割により、YKKビジネスサポート㈱(現連結子会社)を設立
10月 建材事業をYKK AP㈱に吸収分割
2013年3月
YKK㈱とYKK AP㈱の新本社ビル「YKK80ビル」着工(2015年6月竣工)
2014年12月
工機工場(ファスナー専用機械部品工場)着工(2015年11月竣工)
2018年7月
YKKファスニングプロダクツ販売㈱を吸収合併
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3【事業の内容】
当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、子会社113社及び関連会社3社で構成され、ファスニング、建材の
製造・販売を主な事業内容とし、更に各事業に関連するアルミ地金販売及びその他のサービス等の事業活動を展開し
ております。なお、一部の関係会社では複数の事業活動を展開しております。
当社グループ内の各主要事業に係わる位置付け及びセグメントとの関連は次のとおりであり、各主要事業とセグメ
ントは同一であります。
ファスニング: ファスニング製品等を当社、YKK U.S.A.社ほか子会社63社が製造及び販売しており、一部は当
社グループ内で仕入れて再販売しております。
A P: 建材製品をYKK AP㈱ほか子会社25社及び関連会社2社が製造及び販売しております。
そ の 他 : ファスニング加工用機械、建材加工用機械、金型及び機械部品を当社ほか子会社2社が製造
し、主に、当社グループ内の各会社に販売しております。YKKアルミニウム・オーストラリア社
ほか子会社1社がアルミ地金の販売に携わっており、主に当社グループで輸入しております。
YKKコーポレーション・オブ・アメリカほか地域統括会社5社が在外子会社を統括しておりま
す。YKK不動産㈱ほか子会社17社及び関連会社1社でその他のサービス等の事業活動を行って
おります。
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事業系統図
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4【関係会社の状況】
(1) 連結子会社
議決権の所有又は
名称 住所 主要な事業の内容
資本金又は出資金 被所有割合(%) 関係内容
国/地域・都市
(注)3 (注)1
(注)2
当社グループの建材製品の
百万円
東京都
YKK AP㈱ ※ (注)4
AP 100.0 製造・販売
千代田区 10,000
役員の兼任・・・有
当社が不動産を賃借
百万円
東京都
YKK不動産㈱ その他 100.0 資金貸付 ・・・有
千代田区
180
役員の兼任・・・有
百万円
富山県 当社が業務サービスを委託
YKKビジネスサポート㈱ その他 100.0
黒部市 役員の兼任・・・有
100
YKKコーポレーション・ アメリカ 千米ドル 北中米地域の統括
その他 100.0
役員の兼任・・・有
オブ・アメリカ ※ アトランタ(G.A.) 66,000
欧州・中東・アフリカ地域
YKKホールディング・ オランダ 千ユーロ
その他 100.0 の統括
スネーク
ヨーロッパ社 ※ 47,832
役員の兼任・・・有
中国 千米ドル 中国地域の統括
YKK中国投資社 ※
その他 100.0
上海 401,200 役員の兼任・・・有
中国・日本以外のアジア地
YKKホールディング・ 千シンガポールドル
シンガポール その他 100.0 域の統括
アジア社 ※ 383,859
役員の兼任・・・有
当社が製造するファスナー
アメリカ 千米ドル 100.0
YKK U.S.A.社 ※ ファスニング 材料等を供給
アトランタ(G.A.) 15,000 (100.0)
役員の兼任・・・無
当社グループの建材製品の
アメリカ 千米ドル
100.0
YKK APアメリカ社 ※ AP 製造・販売
アトランタ(G.A.) 68,000
(100.0)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
トルコ 千トルコリラ 100.0
YKKトルコ社 ※
ファスニング 材料等を供給
イスタンブール
27,245 (100.0)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
千米ドル
中国 100.0
上海YKKジッパー社 ※
ファスニング 材料等を供給
上海 77,000 (100.0)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
中国 千米ドル 100.0
YKK深セン社 ※
ファスニング 材料等を供給
深セン
98,000 (100.0)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
中国 千香港ドル
YKK香港社 ファスニング 100.0 材料等を供給
香港 11,000
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
ベトナム 千米ドル 100.0
YKKベトナム社 ※
ファスニング 材料等を供給
ホーチミン
15,171 (100.0)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
インドネシア 千米ドル 69.7
YKKインドネシア社 ファスニング 材料等を供給
ジャカルタ 6,320 (69.7)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
YKKジプコ・ インドネシア 千米ドル 100.0
ファスニング 材料等を供給
インドネシア社 ※ ジャカルタ 127,300
(99.5)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
バングラデシュ 千米ドル 100.0
YKKバングラデシュ社 ※
ファスニング 材料等を供給
ダッカ 16,000 (100.0)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
百万韓国ウォン
韓国
YKK韓国社 ファスニング 100.0 材料等を供給
ソウル 5,825
役員の兼任・・・有
当社が製造するファスナー
台湾 千台湾ドル
YKK台湾社 ※
ファスニング 材料等を供給
73.8
台北
450,000
役員の兼任・・・有
当社グループへアルミ地金
YKKアルミニウム・ 千豪ドル
オーストラリア
その他 100.0 の供給
オーストラリア社 ※ シドニー 36,925
役員の兼任・・・有
その他88社 ※
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(注) 1. 「主要な事業の内容」欄には、セグメントの名称を記載しております。
2. 「議決権の所有又は被所有割合」欄の( )内は、間接所有割合を内数で表示しております。
3. ※印は、特定子会社であります。なお、その他に含まれる会社のうち特定子会社に該当する会社は次のと
おりです。
テープ・クラフト社、エリーAP社、LBKリアルエステートコーポレーション、YKKメキシコ社、YKKブラジ
ル社、YKK農牧社、YKKフランス社、YKKルーマニア社、YKKメディテラネオ社、YKK AP中国投資社、大連YKK
ジッパー社、YKKスナップファスナー無錫社、YKK AP大連社、YKK AP中国社、YKK AP蘇州社、YKKディベロッ
プメント・シンガポール社、YKKパキスタン社、YKKインド社、ボルーカ社、ゴールデン・ヒル・タワー社、
YKKスリランカ社、YKK APインドネシア社
4. YKK AP㈱については売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く)の連結売上高に占める割合が
10%を超えております。
主要な損益情報等 (1) 売上高 364,735百万円
(2) 経常利益 15,896百万円
(3) 当期純利益 12,447百万円
(4) 純資産額 173,341百万円
(5) 総資産額 308,082百万円
(2) 持分法適用関連会社
該当はありません。
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5【従業員の状況】
(1) 連結会社の状況
2020年3月31日現在
従業員数(人)
セグメントの名称
26,713
ファスニング 〔2,366〕
AP 16,609
〔1,102〕
1,906
その他 〔187〕
全社(共通) 1,033
〔46〕
46,261
合計 〔3,701〕
(注) 1. 従業員数は就業人員数であり、臨時従業員数は〔 〕内に当連結会計年度の平均人員を外数で記載してお
ります。
2. 臨時従業員には、パートタイマー、契約社員等を含んでおります。
3. 全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門等に所属しているものであります。
(2) 提出会社の状況
2020年3月31日現在
従業員数(人) 平均年齢(歳) 平均勤続年数(年) 平均年間給与(円)
4,823 41.7 18.3 5,555,148
従業員数(人)
セグメントの名称
2,971
ファスニング
819
その他
全社(共通) 1,033
4,823
合計
(注) 1. 従業員数は就業人員数であります。
2. 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
3. 全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門等に所属しているものであります。
(3) 労働組合の状況
当社は、黒部事業所の従業員3,065人が加入してYKK労働組合を組織しており、会社との関係は極めて協調的
であります。なお、上部団体との関係はありません。
国内の連結子会社では、黒部エムテック㈱、黒部モビリティサービス㈱、黒部クリーンアンドグリーンサービス
㈱、㈱エッセン、㈱YKKツーリスト、YKKビジネスサポート㈱、YKK不動産㈱の従業員311人が、当社と同
じYKK労働組合に加入しております。
また、YKK AP㈱の従業員がYKK AP労働組合に、海外の連結子会社では、一部の会社の従業員が業種別
労働組合に加入しておりますが、会社との関係は良好であります。
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第2【事業の状況】
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ (当社及び当社の関係会社) が判断した
ものであります。
当社グループは、2017年度から2020年度までの4年間を対象とする第5次中期経営計画を策定しています。当該中
期経営計画の最終年度となる2020年度の事業を取り巻く外部環境として、ファスニング事業においては、米中貿易摩
擦や欧州の通商リスク、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大による不確実性の高まり、暖冬の継続による衣料品
の在庫過多とブルーデニムの需要減退、ファッション業界におけるサステナビリティの浸透、そしてIT技術の進展
による顧客バリューチェーンの変化を見込んでいます。AP事業においては、日本国内では、新型コロナウイルス感
染症拡大の影響による住宅購入に対する消費マインドの低下や建築現場の遅延・中止により、新設住宅着工戸数は通
年で前年割れを予測しております。海外では、同感染症拡大の影響により、早期に事態が収束した中国を除き、イン
ド・シンガポールなどで政府による外出禁止令が出るなど、先行きは不透明と予測しております。
このような激しく変化する事業環境ではありますが、メーカーとしてのものづくりと市場や顧客が求める多様な価
値を追究し実現するための最重要ポイントを、「商品力と提案力」、それを支える「技術力と製造力」の4つの力、
それらを実現する社員の力を高めるための「人材育成」と位置づけ、当社とYKK AP㈱それぞれで掲げた中期事
業方針に基づき、中期経営目標である「売上高営業利益率 8.0%以上」、「ROA 5.0%以上」の達成を引き続き目
指してまいります。
①ファスニング事業
ファスニング事業では、第5次中期事業方針として「更なる量的成長を目指して~Standard向けの商品&ものづく
りへの挑戦~」を掲げています。カジュアル衣料顧客や欧米量販店向けといったボリュームゾーンである「Standard
での競争力強化」を最重要事業課題とし、「より良いものを、より安く、より速く」顧客に提供することを目指して
います。また、Standardを最重要カテゴリと位置付ける一方で、「二兎を追わねば一兎をも得ず」という考えのも
と、「Value Conscious」、「Standard」、「BOP」の各カテゴリにおいて、「更なる開発体制の強化」、「バリ
エーション拡充」、「納期対応」、「コスト競争力強化」を軸に、顧客ニーズに応じた商品とものづくりの取組を進
めています。
第5次中期経営計画の最終年度となる2020年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大により依然として先行き不透
明な状況の中、引き続き顧客毎の「更なるOne to One対応」、「Standard向け商品・ものづくりの強化継続」、「継
続的な新商品投入」に取り組むとともに、「アパレル顧客とのバリューチェーン連携」、「省人化設備/連続稼働へ
の挑戦」、「更なるコストダウン」を重点課題として取り組んでまいります。
具体的には、「更なるOne to One対応」では、高級ブランド・高機能スポーツブランド等のお客様に対する「商品
開発力」の強化を通じた価値提案へ取り組み、アパレル分野では、ビスロン®ファスナーの「軽さ・耐腐食性」に金
属ファスナーの「強さ・高級感」を併せ持つ「METALUXE® Tough」の展開や、開具に取り付けたマグネットの磁力に
より簡単に閉じられるマグネットファスナー等、魅力ある付加価値商品を継続的に開発・展開します。また、アジア
地域の伸び行く市場での開発基盤強化のため、パキスタンに商品開発室を開設し、ファスニング事業全体で拠点数及
び人員を更に増強してまいります。
「Standard向け商品・ものづくりの強化継続」では、最大ボリュームゾーンでより多くの顧客要望に応えるべく、
アルミ材を使用した金属ファスナーの表面処理バリエーション拡充や、検針対応のステンレス材のスナップ「ステン
レスSNAPET®」等を投入し、商品バリエーションとコスト競争力向上を追究してまいります。
「継続的な新商品投入」では、ESG(環境 Environment、社会 Social、ガバナンス Governance)に関する社
会・顧客の意識の高まりへの対応として、海洋プラスチックごみを主材料としたファスナーである「NATULON® Ocean
Sourced 」をはじめ、環境配慮型商品の企画・展開や2019年度に開発した「AiryString®」等、縫製合理化を通じた
TM
新たなガーメントデザインの提案を進めてまいります。
「アパレル顧客とのバリューチェーン連携」では、アパレル業界で進むデザイン企画のデジタル化に対応すべく、
ファスナーの3Dデータを顧客へ提供し、サンプル開発スキームの効率化に取り組みます。これにより、デザイン企
画のスピードアップや、実物サンプルの介在の省略によるコスト削減が期待でき、プロセス全体を効率化することで
サステナビリティへと繋げ、お客様への貢献を図ってまいります。
また、「省人化設備/連続稼働への挑戦」、「更なるコストダウン」に向けて、新規・増産目的の投資を行いつつ
も、FA(Factory Automation)設備等による合理化目的の投資を中心に進め、市場変化に対応した合理化効果を追
求してまいります。
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②AP事業
AP事業では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国内・海外ともに先行きが不透明な事業環境が予測
される中、今後の感染症拡大状況を見据えた新たなビジネスモデルの構築を行うとともに、第5次中期事業方針とし
て掲げた「高付加価値化と需要創造によるAP事業の持続的成長」のもと、各事業領域で重点施策に取り組んでまい
ります。
新たなビジネスモデルの構築として、顧客との直接接点からオンライン(Web)営業ツールによる機会創出に取
り組みます。具体的には、有識者の講演を配信する「LIVEフォーラム」や「オンライン新商品展示会」などを活
用した集合型イベントへの置き換えや、Webを活用した会議や商品プレゼン等による営業活動に取り組んでまいり
ます。
住宅事業においては、窓の高断熱化に向けた商品力強化では、カラートレンドに対応した「APW 330」内外
観ブラック色の追加や「APW 430」防火窓をはじめとする商品アイテムの充実に取り組むとともに、埼玉窓工
場の「APW 330」のライン増設による増産対応や、神奈川工場の「防火窓Gシリーズ アルミ樹脂複合NEO」
引違窓の完成品供給力強化による、首都圏強化を図ってまいります。また、近年大型化・広域化する台風に備え、充
実した耐風シリーズ商品の提案による需要創造と差別化を行い、樹脂窓の更なる強化とトリプルガラス化、及び防災
商品による高付加価値化を提案してまいります。
エクステリア事業においては、安心・安全提案では目隠しフェンスの拡充を進めます。2018年に発生した大阪北部
地震以降、軽いアルミ製フェンスの需要が拡大しており、防犯効果や、視線を遮り風を通す効果の提案を行います。
また、新築時提案では、漏水リスクを低減し、揺れが少なく豊富なデザインを持ち、省施工による建築コスト低減を
図ることができる「ルシアスバルコニー」を提案してまいります。
リノベーション事業においては、省エネ・換気・耐震・防災・減災をキーワードに提案を進めます。防災・減災提
案による需要創造では、「かんたんマドリモ」耐風シャッターを発売し、防災・減災ニーズに対する後付需要を喚起
してまいります。ビル改装では、マンション専有部への対応強化として、省施工、意匠性の向上を図った専用内窓の
発売を予定しており、更なる需要を喚起してまいります。
海外においては、北米では、ビル建材の中西部等のエリア営業強化と住宅建材の付加価値商品の提案及び新規顧客
への営業強化に取り組むとともに、カーテンウォール事業拡大に向けてエリーAP社とのシナジーの早期創出を行い
ます。中国では、新規販売エリアでのチャネル整備に取り組むとともに、YKK AP中国社の設立に伴う製販一体
化による効率化とスピードアップを図ります。台湾では中・南部地域への営業強化と新規分野へのプロモーション強
化、インドネシアでは商品力強化による新規顧客開拓、そしてインドでは販売チャネル開拓による受注強化に取り組
んでまいります。
③両事業を支える技術力 -工機技術本部-
工機技術本部は、YKKグループの両事業を支える技術開発機能の中核として、2020年度は引き続き中期方針であ
る「基盤となる要素技術の強化と進化」を軸に、『スタンダードへの挑戦~「高機能」「低価格」の追求』を進める
と同時に、次期中期を見据えた準備を進めてまいります。
重点取組テーマとして、ファスニング事業におけるStandard向けライン・設備開発、AP事業における樹脂窓・ア
ルミ樹脂複合窓製造ラインの更なる効率化・省人化、技術進化がめざましいロボット活用技術、デジタル化技術、材
料開発の推進、さらに、差別化が必要な着色技術を深耕・強化します。また、機械製造における生産管理機能と受注
変動対応力を強化することで「リードタイム短縮」と「コストダウン」を進めます。いま、両事業から最も求められ
ているのは「スピード対応」であると認識し、これらの課題に対してスピードを重視して取り組んでまいります。
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2【事業等のリスク】
当社グループ(当社及び当社の関係会社)の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性のあると認識している主
要なリスクには以下のとおりであります。なお、本項においては将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は
当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク
当社グループは北中米、南米、欧州・中東・アフリカ、アジア、大洋州地域の世界72カ国・地域に進出し事業を
営んでいます。これらの国・地域においては、政治的不安、テロ・戦争その他の要因による社会的混乱などによる
影響を受けます。事業推進・展開において不利な事象が発生した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能
性があります。
当社グループにおいては、海外現地法人を設立し、海外生産拠点の分散化や生産管理体制の強化等を行うことに
より、リスクの最小化に努めております。また、海外各社を統括する地域統括会社を各極に設けることで、海外各
社の管理・サポート体制の強化を図っております。
② 経済状況
当社グループの事業は、競合他社が製造あるいは販売を行う様々な国・地域における市場の縮小あるいは価格競
争などの経済状況により影響を受ける可能性があります。また、市場の需給関係により価格が決定される原材料関
係の価格高騰により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 為替レートの変動
当社グループの現地通貨建の売上、費用、資産等の項目は、連結財務諸表作成のために円換算されており、現地
通貨における価値に変動がない場合でも、為替レートの変動によって、円換算後の財政状態及び損益状況に影響を
与える可能性があります。
④ 保有株式の株価下落
当社グループが保有している上場株式に関して、その株価が大幅に下落した場合には、保有株式の減損又は評価
損が発生し、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループにおいては、投機目的による株式の運用は規程にて禁止しており、関係会社株式および政策持ち合
い株式のみを保有対象としております。そのため、これらのリスクは限定的と考えております。
⑤ 退職給付債務
当社グループの退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上の前提条件と実際の結果が異なった場合や前提条
件が変更された場合、認識される費用及び債務に影響を与えます。特に割引率の低下や運用利回りの悪化は、当社
グループの業績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループにおいては、確定拠出年金制度を導入し、さらに、退職一時金債務のオフバランス化を実施するこ
とで、リスクの低減を図っております。
⑥ 事業再編損失
当社グループは、その企業価値の増大を図るため不採算事業からの撤退や国際水平分業体制の推進、コスト削減
策の実行等、事業構造改革を実施することにより、収益力の向上に努めておりますが、その推進に伴い特別損失が
発生する可能性があります。
⑦ 製品の欠陥
当社グループは、世界中の工場で当社の品質管理基準に従って各種の製品を製造しておりますが、製品に欠陥が
発生し重大な製造物責任賠償が発生した場合、当社グループの業績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性がありま
す。
当社グループにおいては、独自の品質管理基準を設け、商品の品質向上に取り組むとともに、関連法規の遵守に
努めております。また、商品の不良等による、万が一の重大なトラブル発生に備え、賠償責任保険へ加入しリスク
の低減を図っております。
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⑧ 公的規制
当社グループは、事業展開する国・地域において、事業・投資の許可を得ており、当該国・地域の政府規制を受
けております。また、通商、独占禁止、知的財産、消費者、租税、環境関連の法規制などの適用も受けておりま
す。これらの規制により当社グループの活動が制限される可能性があり、また、規制を遵守できなかった場合は、
当社グループの業績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループにおいては、現地での法律・規制・租税制度等に関する動向は、日本や地域統括会社、海外拠点ス
タッフの情報網に加え、外部コンサルタント等を積極的に活用する事で適時適切に対応するように努めておりま
す。
⑨ 自然災害および感染症
当社グループは、地震等の自然災害が発生した場合や、感染症が流行した場合、従業員が被災・感染する恐れ
や、当社グループの製造拠点及び設備等が被害を受け、操業が中断し、生産及び出荷が遅延することにより売上高
が低下し、さらに、製造拠点等の修復又は代替のために費用を要することとなる可能性があります。
新型コロナウイルス感染症への対応として、2020年1月28日にYKKグループ新型コロナウイルス対策本部を設
置し、各地域・各事業と連携を図りながら、社員への感染予防の徹底とあわせ、新型コロナウイルス感染症に関す
る情報集約に努めております。
⑩ ITリスク
当社グループは、数々の情報システムを開発し、運用しています。
ITリスクに関しては不正アクセス、コンピュータウィルスの侵入による取引先情報の漏洩、データの消失・改
ざんの可能性がありますが、リスク分析を行い、権限責任の適切な配分、チェック体制の確立、また外部からの侵
入に対する方策を講じております。
また重要な情報の流出・消失・改ざんが起こった場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります
が、セキュリティ対策やデータバックアップ等を行うことで、それらのリスク低減を図っております。
⑪ その他
当社及び複数の子会社は、米国において、AU New Haven, LLCとTrelleborg Coated Systems US, Inc.から、
ファスニング事業分野における特許侵害等を理由として、2015年5月1日付けで訴訟を提起されました。本件訴訟
は依然係属中であり、当社らは、米国の法律事務所を代理人に起用し、適切に対応しています。
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3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー
(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期における日本経済は、雇用・所得環境は改善傾向にあったものの、製造業を中心とした低調な輸出や、消費税
率引き上げ後の消費者マインドの低下、年明け以降の新型コロナウイルス感染症の急速な拡大による個人消費や企業
活動の停滞により、景気減速が顕著となりました。世界経済は、米中貿易摩擦や英国・欧州連合間の貿易交渉等に加
えて、感染症の世界的流行により各国経済や金融資本市場におけるリスクや緊張感の高まりから、先行きの不透明が
深刻化しました。
このような経済環境のもと 当社グループは2017年度を初年度とする第5次中期経営計画を実行に移しています。こ
の第5次中期経営計画では、当社グループの中期経営ビジョン「Technology Oriented Value Creation『技術に裏付
けられた価値創造』」のもと、当社では第5次中期事業方針である「『ものづくりの進化と革新』~Standard向けの
YKKものづくりへの挑戦~」の実現を、YKK AP㈱では第5次中期事業方針である「高付加価値化と需要創造
によるAP事業の持続的成長」の実現を目指し、それぞれの事業を推進しています。2019年度も引き続きファスニン
グ事業、AP事業それぞれの課題に取り組み、当社グループの根幹にある技術に基づいた市場要望実現のための施策
を実行してまいりましたが、世界経済の減速や新型コロナウイルス感染症の影響を受ける形となりました。特に、新
型コロナウイルス感染症の流行については、中国地域をはじめとする国内外の一部地域において経済活動の停滞を余
儀なくされました。これによる、2019年度の当社グループの財政状態及び経営成績等に与える影響は限定的ではあり
ましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴い、当社グループへの影響も大きくなってきております。
この影響については、一過性のものではなく、長期にわたる可能性があると考えておりますが、現時点で財政状態及
び経営成績等に与える影響を見通すことは困難であると考えております。
その結果、当期の連結業績は、売上高 732,854百万円 (前期比 4.3%減 )、営業利益 41,341百万円 (前期比 33.1%
減 )、経常利益 42,661百万円 (前期比 33.8%減 )、親会社株主に帰属する当期純利益 23,629百万円 (前期比 48.4%
減 )となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(a)ファスニング事業
当期のファスニング事業を取り巻く事業環境は、米国では雇用環境の安定を受け個人消費等が堅調に推移し、緩や
かな経済成長が継続しましたが、米中貿易摩擦による世界的な景気減速や、英国・欧州連合間の貿易交渉等、不安定
な要素が増加しました。このような事業環境のもと、ファスニング事業は、中国・アジア(中国・日本を除く。以
下、同じ。)地域における供給体制の増強や、米国・欧州での高付加価値品の増販に取り組みました。また、グロー
バルマーケティング活動による顧客指定獲得、量販店への取組の強化や、各国内需市場に対する積極的なアプローチ
を行ってまいりました。しかし、景況感の悪化に伴う世界経済の成長鈍化や継続的な暖冬に伴う在庫増加の影響等に
より、各国においてアパレル小売市場の成長に減速感が見られました。
地域別では、北中米においてはブルーデニムの需要減に伴う顧客の在庫調整によりジーンズ分野向けの販売が、E
MEA(欧州・中東・アフリカ)においては、イタリアでの高付加価値品や高級鞄向け顧客への販売が落ち込み、減
収となりました。中国においては、内需顧客の深耕で着実に販売を伸ばしましたが、加工輸出顧客のアジア地域への
縫製移行に伴う販売減少により減収となりました。アジア地域においては、顧客の増産や縫製移行に伴う需要増をベ
トナム・パキスタン等での供給体制強化により着実に捕捉することで販売を伸ばしたものの、暖冬や市況悪化を受け
て減収となりました。そして、日本においては、ファスニング事業全体の販売低調により、グループ会社向けの材料
供給が減少しました。更に第4四半期に入り、新型コロナウイルス感染症の急速な拡大による世界的な経済活動の停
止により、操業停止等各地域で事業に影響が生じました。
その結果、売上高(セグメント間の内部売上高を含む。)は前期比 9.2%減 の 302,120百万円となりました。 営業利
益は、継続的なコスト削減の取り組みや原材料単価下落による増益要因があったものの、販売ボリュームの減少及び
操業度の低下に加え、中国・アジア地域の増販・増産に向けた投資に伴う償却費や労務費等の製造固定費の増加、開
発基盤強化費用増加等の減益要因が大きく、前期比 32.5%減 の 36,213百万円 となりました。
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(b)AP事業
当期のAP事業を取り巻く事業環境は、日本国内においては、消費増税後の駆け込み需要の反動や、2月以降の新
型コロナウイルス感染症拡大の影響により、新設住宅着工戸数全体は前年割れとなりました。海外においては、米国
では建築市場が米中貿易摩擦等の影響により伸び悩み、中国では地方都市において大手不動産開発市場の改善により
ターゲット市場が伸長しましたが、同感染症の影響により、1月以降は市場が停滞しました。台湾では低金利と規制
緩和により建築市場は堅調に推移し、インドネシアでは政府による住宅供給強化政策により普及・中級市場が拡大し
ました。このような事業環境のもと、第5次中期事業方針である「高付加価値化と需要創造によるAP事業の持続的
成長」に向け、事業を推進してまいりました。
日本国内においては、住宅建材分野では、樹脂窓を軸とした開口部の高断熱化推進や建物と外構のトータルコー
ディネートによる価値提案、引き続き需要が見込まれるリフォーム専用品の増販等、販売強化策を実施してまいりま
した。また、近年の自然災害への対策として、防災・減災商品の開発および販売においても一層の取り組み強化を
図ってまいりました。ビル建材分野では、個別防火認定品への移行を機会とした提案強化に向けて、商品・情報充実
による物件対応力強化を実施してまいりました。
海外においては、北米では西海岸支店開設による営業戦略を遂行するとともに、2019年12月にカナダのErie
Architectural Products Group(以下、エリーAP社)の全株式を取得し、カーテンウォール事業の更なる拡大に向
けた基盤を構築してまいりました。中国では大手不動産開発市場での提案力強化による受注拡大、台湾・インドネシ
アでは高級市場での受注強化や商品力強化による販売拡大に取り組んでまいりました 。
しかし、消費増税後の反動や新型コロナウイルス感染症拡大の影響による販売減もあり 、AP事業の売上高(セグ
メント間の内部売上高を含む。)は、前期比 0.5%減 の 425,812百万円 となりました。営業利益は、国内では製造コス
トダウンや販売価格の改定等の増益要因があったものの、販売減や市場競争の激化、販管費増により減益、海外では
中国・台湾地域の販売減により減益となり、全体では前期比 2.8%減 の 22,871百万円 となりました。
(c)その他
その他の事業につきましては、ファスニング加工機械・建材加工機械・金型及び機械部品等の製造・販売、不動産
事業、アルミ製錬事業などを行っております。
その他の事業の売上高(セグメント間の内部売上を含む。)は、前期比0.3%減の58,673百万円、営業損失につい
ては、115百万円(前期は営業利益440百万円)となりました。
当社グループの財政状態については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分
析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認
識及び分析・検討内容」に記載しております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、 売上債権の減少、有形固定資産の支出等の要因により一部相殺
されたものの、税金等調整前当期純利益が45,936百万円(前期比28.1%減)と減少したことや、子会社株式を取得し
たこと等により、 前連結会計年度末に比べ1,533百万円減少し、164,708百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得られたキャッシュ・フローは77,731百万円と、前期に比べ9,123百万円増加しました。これは
主に、売上債権の増減額が前期は7,761百万円の増加であったのに対し、当期は16,201百万円の減少となったこと等
によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用されたキャッシュ・フローは68,123百万円と、前期に比べ14,235百万円増加しました。これは主
に、子会社株式の取得が10,418百万円となったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用されたキャッシュ・フローは5,446百万円と、前期に比べ2,191百万円増加しました。これは主に、
短期借入金の純増減額が前期 は 768百万円であったのに対し、当期は39百万円となったこと等によるものです。
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③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度末における実績は、次のとおりであります。
(a)生産実績
生産高(百万円) 前年同期比(%)
セグメントの名称
263,979 94.4
ファスニング
AP 371,826 99.0
(注) 1. 上記の金額は、販売価格で表示しております。
2. その他については、そのほとんどがグループ内への販売のため記載を省略しております。
(b)受注実績
受注高(百万円) 前年同期比(%) 受注残高(百万円) 前年同期比(%)
セグメントの名称
297,770 92.2 14,353 93.2
ファスニング
AP 422,902 99.0 164,682 98.7
(注) 1. 上記の金額は、販売価格で表示しております。
2. その他については、そのほとんどがグループ内への販売のため記載を省略しております。
(c)販売実績
販売高(百万円) 前年同期比(%)
セグメントの名称
301,803 90.8
ファスニング
AP 425,594 99.5
5,456 99.0
その他
732,854 95.7
合計
(注) 1. 上記の金額は、消費税等抜きで表示しております。
2. セグメント間の取引については相殺消去しております。
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(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの財政状態は、当連結会計年度末(以下「当期末」という)の総資産は、前連結会計年度末(以下「前
期末」という)比 28,289百万円減少(△2.8%)して983,645百万円となりました。流動資産は前期末比28,592百万円減
少(△5.3%)の506,588百万円、固定資産は前期末比303百万円増加(+0.1%)の477,056百万円となりました。
流動資産減少の主な要因は、売上債権の減少等です。固定資産増加の主な要因は、有形固定資産の増加等です。
当期末の負債合計は、前期末比19,657百万円減少(△5.8%)して321,080百万円となりました。流動負債は前期末比
10,870百万円減少(△5.6%)の182,904百万円、固定負債は前期末比8,787百万円減少(△6.0%)の138,176百万円とな
りました。
流動負債減少の主な要因は、仕入債務の減少等です。固定負債減少の主な要因は、退職給付に係る負債の減少等で
す。
当期末の純資産は、前期末比8,631百万円減少(△1.3%)して662,564百万円となりました。純資産減少の主な要因
は、為替換算調整勘定の減少等です。
これらの結果、自己資本比率は前期末の64.8%から65.7%となりました。また1株当たり純資産額は、前期末の
546千円から539千円となりました。
当社グループの経営成績は、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 」に記載のとおりであります。
当社グループは、事業の収益性と資産効率を高めるとともに得た利益を更なる事業成長に積極的に投資するため
に、第5次中期経営目標を「売上高営業利益率8.0%以上」と「ROA5.0%以上」と定めております。3年目である
当期は当社グループの営業利益が減益となった結果、売上高営業利益率は5.6%、ROAは2.4%と目標に届きません
でしたが、引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響がある中でも、当該目標達成に向け事業収益ならびに資産効
率の向上に取組んでまいります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの連結会計年度のキャッシュ・フローは、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・
フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況 」に記載のとおりでありま
す。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主にファスニング、建材の製造・販売事業を行うため
に、短期的な運転資金は自己資金および銀行借入により調達し、長期的に必要な資金は自己資金および社債発行や銀
行借入により調達しております。一時的な余資は安全性の高い金融資産で運用し、投機的な取引は一切行わないとい
う基本方針に従い取り組んでおります。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は58,660百万円となっておりま
す。また、当連結会計年度末における現金および現金同等物の残高は164,708百万円となっております。
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③重要な会計方針及び見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されておりま
す。この連結財務諸表作成にあたって採用している「重要な会計方針」については、「第5[注記事項](連結財務諸
表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積も
りを行う必要があり、特に以下の事項は、財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大による経済活動への影響については不確定要素が多いため、期末時点で入手
可能な情報を基に検証等を行っております。
(完成工事高及び完成工事原価の計上基準)
当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事契約については工事進行基準を適用し、
その他の工事契約については、工事完成基準を適用しております。工事進行基準の工事収益計上における工事進捗度
の見積りは、原価比例法を採用しております。
工事進行基準を適用する業務プロセスにおいて、工事進捗の見積りの適正性を十分に担保するために物件判定会議
を整備、開催しております。また、契約時に総原価を見積った後、追加増減があった場合は適時かつ適切に工事台帳
の契約金額および工事原価総額のメンテナンスを行うことで、売上計上時において相応の見積精度があると判断して
いますが、引き続き実質及び形式の両面から統制の有効性を向上させる方針です。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可
能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。新型コロナウイルス感染症の影
響については、長期化する不確実性を考慮しつつも、少なくとも2020年6月末までは深刻な状況が継続するものと仮
定しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積もりの前提とした
条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
4【経営上の重要な契約等】
該当事項はありません。
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5【研究開発活動】
当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発に対する取り組みは、事業展開と同様に日本を中心とした、北中
米、南米、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、中国、アジアの世界6極体制で行っております。当連結会計年度の
当社グループ全体の研究開発費は 22,709百万円 となっております。
当連結会計年度における主な研究開発成果は、次のとおりであります。
(1) ファスニング事業
ファスニング事業本部では、第5次中期事業方針を「更なる量的成長を目指して」と掲げ、最重要カテゴリと位置
付けるStandard市場、そして高付加価値市場や各国内需市場において、それぞれの顧客要望を実現すべく新商品開発
および開発体制の強化に取り組んでおります。
主な成果として、アルミ材商品の着色バリエーション拡充による競争力強化、磁力や係合形状の工夫により閉める
操作を簡単にしたファスナーの開発、サステナビリティへの取組みの一環として植物由来材料を用いたファスナーの
開発を行ないました。スナップボタン分野では、Standard市場向け検針対応ステンレス製品の開発とバリエーション
展開を図りました。また共同開発を通じてテープの無いファスナーを実用化、専用ミシンと併せて縫製工程の簡略化
も可能となりました。
今後は、各地域の顧客および市場に適した新たな商品と価値の提供に向け、スピード・コスト・サステナビリティ
対応力を向上すべく、国内外開発拠点の人材育成と体制整備を継続的に進めるとともに、顧客とのデジタル連携の仕
組みを活用するなど、One to One開発力の更なる強化を目指してまいります。当事業に係る研究開発費は9,225百万
円であります。
(2) AP事業
AP事業では、第5次中期事業方針である「高付加価値化と需要創造によるAP事業の持続的成長」を達成するた
め、フロントローディング開発プロセスの展開と、PLM構築へ取り組み、商品・現場・使用・情報の4つの品質を高
め、ユーザー視点の高付加価値商品の開発、導入による需要創造を継続しています。
主な成果として、アルミ樹脂複合窓「エピソードNEO」を住宅からビル、新築から改装まで様々な要求に対応で
きるシリーズとして開発・展開しました。リフォームではすそ野を広げる「ドアリモ」「マドリモ」シリーズを、エ
クステリア分野では施工性やデザイン性をより向上させた商品群を開発し、商品力強化を図りました。
また、 2019年3月に開設したパートナーズサポートスタジオとYKK AP R&Dセンター、価値検証センターの技術3施
設の連携強化による開発、評価検証、技術提案・情報発信も同時に力を入れています。
今後、経済活動の縮小も予想される厳しい事業環境の中、変化に対応しながら、顧客ニーズに直結・即応した商品
開発と市場投入、バリエーション充実とコスト競争力の強化、また次世代を見据えた人材育成により技術力・商品
力・収益力を一層向上させ、顧客満足度No1を目指してまいります。当事業に係る研究開発費は8,889百万円であり
ます。
(3) その他
工機技術本部では、第5次中期においてファスニング・AP両事業の更なる事業競争力強化に向けて、「基盤とな
る要素技術の強化と進化」を軸に「高機能」と「低価格」を通して「スタンダード市場への挑戦」に取り組んでおり
ます。
2019年度の主な開発テーマは、ファスニング事業向け設備開発では、生産量の季節変動が大きいピーク時対応設備
の開発、製造リードタイム短縮・コスト低減を意識した目的別生産ラインの開発に取り組みました。AP事業向け設
備開発では、樹脂窓、アルミ樹脂複合窓ラインにおけるロボットを活用した省人化領域の拡大に取り組みました。ロ
ボットにおいては、ファスナーや部品をハンドリングする要素技術を活用したプロト機の開発を行いました。
2020年度はこれらの展開に加えて、「ファスニング仕上機におけるロボット技術のデジタル化・知能化及び内製
化」、「アルミ加飾法開発」、「真鍮めっき液の内製化」に取り組み、事業競争力の更なる強化を目指してまいりま
す。
これらに向けての必要な要素技術については、自社内開発による深耕を図る一方で、企業・大学との連携による社
外技術の導入や共働開発を積極的に行ってまいります。当本部による研究開発費は4,594百万円であります。
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第3【設備の状況】
1【設備投資等の概要】
当社グループ(当社及び連結子会社)では、増産・合理化・省力化・更新入替・IT関連投資を中心に当連結会計
年度は全体で65,869百万円の設備投資を実施しました。
「ファスニング事業」におい ては、バングラデシュ社ダッカ工場・ベトナム 社ハナ ム工場・トルコ社チェルケス
キョイ工場の建設・増築等による生産能力増強・競争力強化、台湾社中