中国農業銀行股イ分有限公司 半期報告書
提出書類 | 半期報告書 |
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提出日 | |
提出者 | 中国農業銀行股イ分有限公司 |
カテゴリ | 半期報告書 |
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中国農業銀行股イ分有限公司(E24593)
半期報告書
【表紙】
【提出書類】 半期報告書
【提出先】 関東財務局長
【提出日】 令和元年9月30日
【中間会計期間】 自 平成31年1月1日 至 令和元年6月30日
【会社名】 中国農業銀行股 份 有限公司
(Agricultural Bank of China Limited)
【代表者の役職氏名】 周 万阜
取締役会秘書役
(Zhou Wanfu, Secretary to the Board of Directors)
【本店の所在の場所】 中華人民共和国 100005 北京市東城区建国門内大街69号
(No. 69, Jianguomen Nei Avenue
Dongcheng District, Beijing 100005, PRC)
【代理人の氏名又は名称】 弁護士 柴 田 弘 典
【代理人の住所又は所在地】 東京都千代田区大手町一丁目 1 番 1 号 大手町パークビルディング
アンダーソン・毛利・友常法律事務所
【電話番号】 (03)6775-1000
【事務連絡者氏名】 弁護士 山 橋 信 也
弁護士 八 坂 俊 輔
弁護士 崔 加 奈
【連絡場所】 東京都千代田区大手町一丁目 1 番 1 号 大手町パークビルディング
アンダーソン・毛利・友常法律事務所
【電話番号】 (03)6775-1529
【縦覧に供する場所】 該当なし
( 注) 1. 本書において記載されている「香港ドル」は、中華人民共和国の香港特別行政区の法定通貨であ
る香港ドルを意味する。本書において別途記載のない限り、本書において記載されている香港ド
ルから日本円への換算は、1香港ドル=13.57円の換算率(2019年8月30日の株式会社三菱UFJ銀行
により発表された対顧客電信売買相場の仲値)により行われている。
2. 本書において記載されている「人民元」は、中華人民共和国の法定通貨である人民元を意味す
る。本書において別途記載のない限り、本書において記載されている人民元から日本円への換算
は、100円=6.6845人民元(1人民元=約14.96円に相当(国家外貨管理局が公表した2019年8月30
日の中心値))の換算率により行われている。
3. 当行の事業年度は暦年である。
4. 表中における値とそれぞれの合計は、端数処理の結果として一致しない場合がある。
5. 本書中の将来の見通しに関する記述は、2019年6月30日現在における評価に基づいている。
6 . 本書において、別段の記載がある場合を除き、下記の用語は以下の意味を有する。
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「A株式」 国内で上場され、人民元で引受および取引される普通株式を
意味する。
「ABC」、「中国農業銀行」、 中国農業銀行股 份 有限公司 および中国農業銀行股 份 有限公司
「銀行」、「当行グループ」お の子会社を意味する。
よび「当行」
「CAS」、「中国 GAAP」 2006 年2月15日に中華人民共和国財政部より公布された企業会
計基準ならびにその後公表されたその他の関連規則および規
定を意味する。
「CBIRC」 中国銀行保険監督管理委員会(China Banking and Insurance
Regulatory Commission)またはその前任者(旧中国銀行業監
督管理委員会および/または旧中国保険監督管理委員会)を
意味し、文脈により旧中国銀行業監督管理委員会または旧中
国保険監督管理委員会を意味する。
「県域」 中華人民共和国の行政区分制度において県または県水準の都
市(県級市)に指定された地域を意味し、市区を除く。
「県域銀行業務」 当行は、中華人民共和国の県および県級市に所在する本支店
機構を通じて県域の顧客に対して様々な金融サービスを提供
している。「県域銀行業務」または「三農銀行業務」は、い
ずれもかかる銀行業務を指すものとする。
「県域銀行部門」 株式会社への再編に従って設立された、三農および県域に提
供される特別な金融サービスのための管理メカニズムを有す
る銀行内部の一部門を意味する。当該部門は県域銀行業務の
インセンティブおよび規制メカニズムのほか、独立したガバ
ナンスメカニズム、業務上の意思決定、財務監査運用に焦点
を当てている。
「CSRC」 中国証券監督管理委員会(China Securities Regulatory
Commission)を意味する。
「H株式」 香港証券取引所に 上場され、香港ドルで引受および取引さ
れ、その額面金額が人民元建てである株式を意味する。
「香港上場規則」 香港証券取引所の上場規則を意味する。
「香港証券取引所」 香港証券取引所を意味する。
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「匯金公司」 中央匯金投資有限責任公司( Central Huijin Investment
Ltd. )を意味する。
「MOF」 中華人民共和国財政部(Ministry of Finance)を意味する。
「PBOC」 中国人民銀行(People's Bank of China)を意味する。
「三農」 農業、農村地区および農業従事者を意味する。
「SSF」 中国の全国社会保障基金理事会(National Council for
Social Security Fund)を意味する。
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第一部【企業情報】
第1【本国における法制等の概要】
当該6ヶ月間において、中国における会社制度、定款および外国為替管理制度について、2019年6月26日に提出し
た有価証券報告書の記載事項に重要な変更はなかった。
2019 年度上半期、中国政府は、積極的な財政政策および慎重な金融政策を引き続き採用した。財政政策は、税金
および手数料の削減、弱点分野の強化、ならびに経済再建に重点を置いた。金融政策は、依然として緩やかであ
り、反循環的調整が適時かつ適切に行われた。PBOCは、金融政策ツール(預金準備率の引下げ、オープン・マー
ケット・オペレーションの柔軟な実施、ならびに革新的手段、すなわちターゲティッド・ミッドターム・レンディ
ング・ファシリティ(TMLF)およびセントラルバンク・ビルズ・スワップ(CBS)の開始を含む。)を使用して、
合理的かつ適切な流動性を維持した。市場におけるリスク・フリー金利は全体的に低下し、債券の債務不履行の減
少が促進されて、信用スプレッドが縮小した。金融部門におけるサプライサイド構造改革の深化により、経済の弱
点分野およびイノベーションを後押しする能力がさらに向上した。
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第2【企業の概況】
1【主要な経営指標等の推移】
2018 年度財務諸表および2019年度上半期財務諸表において、未払利息は、関連する項目(銀行およびその他の金
融機関への預け金および貸出金、顧客への貸出金、金融投資、銀行およびその他の金融機関からの預り金および預
入金、ならびに顧客預金等)の残額に含まれている。
(別段の記載がない限り、本書に記載されている財務資料および財務指標は、IFRSに従い人民元建てで作成され
ている。)
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主要な財務データ
(単位:別段の記載がない限り、百万人民元)
2017 年12月31日現在 2018 年12月31日現在 2019 年6月30日現在
当該報告期間末日現在
資産合計 21,053,382 22,609,471 23,975,153
(百万円) (314,958,595) (338,237,686) (358,668,289)
顧客への貸出金合計 10,720,611 11,940,685 12,991,663
(百万円) (160,380,341) (178,632,648) (194,355,278)
法人向け貸出金 6,147,584 6,514,383 7,058,678
(百万円) (91,967,857) (97,455,170) (105,597,823)
割引手形 187,502 343,961 379,266
(百万円) (2,805,030) (5,145,657) (5,673,819)
個人向け貸出金 4,000,273 4,665,871 5,089,649
(百万円) (59,844,084) (69,801,430) (76,141,149)
海外およびその他 385,252 389,410 434,709
(百万円) (5,763,370) (5,825,574) (6,503,247)
貸出金に係る減損損失引当金 404,300 479,143 515,873
(百万円) (6,048,328) (7,167,979) (7,717,460)
顧客への貸出金(純額) 10,316,311 11,461,542 12,475,790
(百万円) (154,332,013) (171,464,668) (186,637,818)
金融投資 6,152,743 6,885,075 7,287,814
(百万円) (92,045,035) (103,000,722) (109,025,697)
現金および中央銀行預け金 2,896,619 2,805,107 2,556,509
(百万円) (43,333,420) (41,964,401) (38,245,375)
銀行およびその他の金融機関への預け金およ
び貸出金 635,514 661,741 676,277
(百万円) (9,507,289) (9,899,645) (10,117,104)
売戻し条件付契約に基づき保有する金融資産 540,386 371,001 321,801
(百万円) (8,084,175) (5,550,175) (4,814,143)
負債合計 19,623,985 20,934,684 22,237,018
(百万円) (293,574,816) (313,182,873) (332,665,789)
顧客預金 16,194,279 17,346,290 18,529,174
(百万円) (242,266,414) (259,500,498) (277,196,443)
法人預金 6,379,447 6,559,082 6,926,330
(百万円) (95,436,527) (98,123,867) (103,617,897)
個人預金 9,246,510 9,791,974 10,446,864
(百万円) (138,327,790) (146,487,931) (156,285,085)
海外およびその他 568,322 794,590 941,667
(百万円) (8,502,097) (11,887,066) (14,087,338)
銀行およびその他の金融機関からの預り金お
よび借入金 1,254,791 1,449,863 1,622,533
(百万円) (18,771,673) (21,689,950) (24,273,094)
買戻し条件付契約に基づいて売却した金融資 319,789 157,101 51,257
産
(百万円) (4,784,043) (2,350,231) (766,805)
発行済債券 475,017 780,673 912,386
(百万円) (7,106,254) (11,678,868) (13,649,295)
当行の持分所有者に帰属する持分 1,426,415 1,670,294 1,732,667
(百万円) (21,339,168) (24,987,598) (25,920,698)
(1)
正味自己資本 1,731,946 2,073,343 2,286,949
(百万円) (25,909,912) (31,017,211) (34,212,757)
(1)
普通株式Tier1(CET1)資本(純額) 1,339,953 1,583,927 1,644,972
(百万円) (20,045,697) (23,695,548) (24,608,781)
(1)
その他Tier1資本(純額) 79,906 79,906 79,906
(百万円) (1,195,394) (1,195,394) (1,195,394)
(1)
Tier2資本(純額) 312,087 409,510 562,071
(百万円) (4,668,822) (6,126,270) (8,408,582)
(1)
リスク加重資産 12,605,577 13,712,894 14,774,429
(百万円) (188,579,432) (205,144,894) (221,025,458)
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(単位:別段の記載がない限り、百万人民元)
2017 年6月30日に 2018 年6月30日に 2019 年6月30日に
終了した6ヶ月間 終了した6ヶ月間 終了した6ヶ月間
半期経営成績
営業収益 279,319 307,950 324,467
(百万円) (4,178,612) (4,606,932) (4,854,026)
受取利息純額 211,323 233,833 237,632
(百万円) (3,161,392) (3,498,142) (3,554,975)
受取報酬および手数料純額 42,465 43,637 50,899
(百万円) (635,276) (652,810) (761,449)
営業費用 101,414 99,961 105,153
(百万円) (1,517,153) (1,495,417) (1,573,089)
(2)
信用減損損失 N/A 66,417 73,475
(百万円) (N/A) (993,598) (1,099,186)
資産に係る減損損失 44,697 N/A N/A
(百万円) (668,667) (N/A) (N/A)
税引前当期純利益合計 133,210 141,552 145,862
(百万円) (1,992,822) (2,117,618) (2,182,096)
純利益 108,670 115,976 122,372
(百万円) (1,625,703) (1,735,001) (1,830,685)
当行の持分所有者に帰属する純利益 108,593 115,789 121,445
(百万円) (1,624,551) (1,732,203) (1,816,817)
営業活動による正味キャッシュ 342,873 (221,452) (10,512)
(百万円) (5,129,380) ((3,312,922)) ((157,260))
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財務指標
2017 年6月30日に 2018 年6月30日に 2019 年6月30日に
終了した6ヶ月間 終了した6ヶ月間 終了した6ヶ月間
収益性(%)
(3) (*) (*) (*)
平均総資産利益率 1.08 1.08 1.05
(4) (*) (*) (*)
加重平均純資産利益率 16.74 16.72 14.57
(5) (*) (*) (*)
正味利息収益率 2.24 2.35 2.16
(6) (*) (*) (*)
正味利息スプレッド 2.11 2.24 2.02
(1)(7) (*) (*) (*)
リスク加重資産利益率 1.81 1.75 1.66
営業収益に対する受取報酬および手数料純額
率 15.20 14.17 15.69
(8)
経費率
28.31 26.67 25.75
1 株当たりデータ(人民元)
(4)
基本的1株当たり利益
0.33 0.35 0.34
(円) (4.94) (5.24) (5.09)
(4)
希薄化後1株当たり利益
0.33 0.35 0.34
(円) (4.94) (5.24) (5.09)
営業活動による1株当たり正味キャッシュ 1.06 (0.63) (0.03)
(円) (15.86) ((9.42)) ((0.45))
2017 年12月31日現在 2018 年12月31日現在 2019 年6月30日現在
資産の質(%)
(9)
不良債権比率 1.81 1.59 1.43
(10)
不良債権に対する引当率 208.37 252.18 278.38
(11)
貸出金総額に対する引当率 3.77 4.02 3.98
自己資本(%)
(1)
普通株式Tier1(CET1)自己資本比率 10.63 11.55 11.13
(1)
Tier1 自己資本比率 11.26 12.13 11.67
(1)
自己資本比率 13.74 15.12 15.48
(1)
資産合計に対するリスク加重資産の比率 59.87 60.65 61.62
資産合計に対する資本合計の比率 6.79 7.41 7.25
1 株当たりデータ(人民元)
(12)
普通株式1株当たり純資産 4.15 4.54 4.72
(円) (62.08) (67.92) (70.61)
(1) 数値は 商業銀行資本管理弁法(試行) およびその他の関連規制に従って計算されている。
(2) 2018年度の同期間に係る本項目の情報は、本報告期間の財務諸表における表示と一致させるため再分類されている。
(3) 純利益を当該期間の期首および期末における平均資産合計残高で除して算出される。
(4) CSRCが発行した 証券を公開発行する企業の情報開示の編集および提出に関する規則 第9号-純資産利益率および1株当た
り利益の計算ならびに開示(2010年改正) および 国際会計基準第33号-1株当たり利益 に従って計算される。
(5) 受取利息純額を利付資産の平均残高で除して計算される。
(6) 利付資産の平均収益率と有利子負債の平均費用率との差として計算される。
(7) 純利益を期末におけるリスク加重資産で除して算出される。リスク加重資産はCBIRCが定めた関連規 制 に従って計算され
る。
(8) CASに従い営業管理費用を営業収益で除して計算され、 CAS に従い作成された当行の財務報告書に記載の対応する数値と一
致してい る。
(9) 不良債権残高( 未払利息を除く。 )を顧客への貸出金合計残高( 未払利息を除く。 )で除して計算される。
(10) 貸出金に係る減損損失引当金残高( 未払利息を除く。 )を不良債権残高( 未払利息を除く。 )で除して計算される。この
うち、貸出金に係る減損損失引当金残高( 未払利息を除く。 )は、その他の包括利益を通じて公正価値で測定される 貸出
金 に係る減損損失引当金残高を含まない。
(11) 貸出金に係る減損損失引当金残高( 未払利息を除く。 )を顧客への貸出金合計残高( 未払利息を除く。 )で除して計算さ
れる。このうち、貸出金に係る減損損失引当金残高( 未払利息を除く。 )は、その他の包括利益を通じて公正価値で測定
される 貸出金 に係る減損損失引当金残高を含まない。
(12) 期間末日現在の当行の普通株主に帰属する持分(優先株式控除後)を期間末日現在の普通株式総数で除して計算される。
(*) 年換算の数値である。
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その他の財務指標
2017 年 2018 年 2019 年
規制上の基準 12月31日現在 12月31日現在 6月30日現在
(1)
流動性比率 (%) 50.95 55.17 54.23
人民元 25 以上
外貨 25 以上 106.74 101.77 133.23
最大単一顧客に対する
(2)
貸出金比率 (%)
10 以下 7.26 5.53 5.25
上位10位の顧客に対する
(3)
貸出金比率 (%)
18.27 15.25 14.75
(4)
貸出異動率 (%)
正常先 2.13 1.72 1.00
要注意先 18.70 16.93 11.91
破綻懸念先 71.48 61.48 38.25
実質破綻先 6.94 8.91 4.77
(1) CBIRCが定めた関連規制に従って流動資産を流動負債で除して計算される。
(2) 最大単一顧客に対する貸出金合計( 未払利息を除く。 )を正味自己資本で除して計算される。
(3) 上位10位の顧客に対する貸出金総額( 未払利息を除く。 )を正味自己資本で除して計算される。
(4) CBIRCが定めた関連規制に従って計算され、国内のデータのみを反映している。
2【事業の内容】
「第3-3(3) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」を参照のこと。
3【関係会社の状況】
「第6-1 中間財務書類」を参照のこと。
4【従業員の状況】
2019 年度6月末現在、当行の従業員数は合計464,454人(これに加えて、派遣社員数は7,472人)であり、前年度
末から9,237人減少した。当行の現任の従業員のうち、455,734人は国内支店の従業員であり、8,720人は当行の国
外支店およびその他の従業員である。
従業員の地域別分布
2019 年6月30日現在
従業員数 割合(%)
本店 10,080 2.2
長江デルタ 63,288 13.6
珠江デルタ 50,427 10.9
環渤海 66,936 14.4
中国中部 96,572 20.8
中国東北部 46,892 10.1
中国西部 121,539 26.2
海外支店、子会社および駐在員事務所 605 0.1
8,115 1.7
統合的に営業している子会社および地方銀行
合計 464,454 100.0
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第3【事業の状況】
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
(1)経営方針および経営戦略等
「3(3) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」を参照のこと。
(2)事業環境および対処すべき課題
環境および見通し
2019 年度上半期、世界経済は鈍化していた。主要先進国の経済成長の勢いは、引き続き緩やかだった。米国経済
は、第1四半期にGDP成長率が急上昇した後に低下し、物価上昇率が減速し、失業率が依然低く、緩やかな成長を経
験した。ユーロ圏の経済成長率は、緩やかなインフレレベルおよび失業率の低下にもかかわらず、引き続き鈍化し
た。英国経済は、ブレグジットにより不確実性が増大したため、引き続き低成長だった。日本経済は、インフレ率
および失業率が低く、わずかな回復成長を経験した。新興国の市場経済は、他とは異なるパフォーマンスを経験し
た。例えば、インドの経済成長率は緩やかであったが、ロシアおよび南アフリカの経済は着実に回復した。
2019 年度上半期、中国経済は、前年度同期と比較してGDP成長率が6.3%となり、依然として堅調であった。経済
成長を促す刺激となるものは加速度的に変化し、構造最適化の効果は具体的に現れた。製造業およびインフラ投資
の成長率の鈍化により、固定資産投資の成長率はわずかに鈍化した。家計のレバレッジの増加および自動車販売の
減少により、消費成長率は鈍化した。消費は、経済成長の60.1%を占めた。貿易摩擦により、輸出成長率はわずか
に低下した。消費者物価指数(CPI)は緩やかに上昇したが、生産者物価指数(PPI)は低下した。サプライサイド
構造改革は深化し、各産業の企業のレバレッジ比率は減少したが、弱小分野に対する投資は高い伸びを維持した。
2019 年度下半期には、世界経済は多くの不確実性に直面し、成長の勢いが弱まる傾向にある。国家通貨基金の7
月の予測によると、2019年における世界経済の成長率は、直近の予測から0.1%低下して3.2%である。中国経済に
ついては、合理的な範囲内で成長することが見込まれる。消費については、減税政策および家計消費刺激策の効果
が徐々に現れているため、安定的な成長を維持することが見込まれる。インフラ投資の成長率は、認可を受けた大
規模プロジェクトの資金調達手段として特別債券の利用を許可する政策に後押しされて、新規のインフラ投資が目
玉となるため、回復することが見込まれる。財政政策は、様々な減税措置の開始による効果の向上に重点が置かれ
る。金融政策は、市場に対するチャネル間の調整の強化およびそれらの効率向上を目指す。これらの政策は、適正
な流動性水準および安定した市場金利を維持するとともに、M2(マネーサプライ)および名目GDP成長率に比例し
た社会的融資合計額の増加も維持する。金利の自由化は継続し、人民元の為替相場は合理的かつバランスの取れた
範囲内で概ね依然安定しており、金融の規制上のメカニズムはさらに改良される。金融部門におけるサプライサイ
ド構造改革は、資金調達および信用構造の向上のために一層奨励され、これにより金融システムは実体経済の需給
により適合したものとなる。
2019 年度下半期、当行は、金融部門におけるサプライサイド改革を積極的に実施し、当行の最上位の経営戦略と
してデジタル変革に重点を置く。当行は、当行事業の弱点分野の強化および主要な事業分野に重点を置き、実体経
済へのサービス提供能力を向上させる。第一に、当行は、イノベーションにより「三農」および県域における競争
力を向上させる。当行は、デジタル変革を加速化し、新しい技術、方法および事業モデルにより「三農」および県
域の事業における競争力を向上させる。当行は、当行のみの特徴を有するインターネット金融商品として「恵農E
ローン」を組成するために、支払、ウェルス・マネジメント、e-コマースおよび貧困削減の機能をかかるローンに
付加する。第二に、当行は、デジタル変革の実施および従来事業の展開を同時に行うことにより、個人向け事業の
変革を促進する。当行は、4つの分野、すなわち顧客の獲得および維持のための手段、デジタル商品およびデジタ
ルサービス、オンラインおよびオフラインのチャネルの包括的連携、ならびに金融テクノロジーにより付与された
能力という分野において飛躍的前進を達成することにより、個人向け事業の競争力の向上に重点を置く。最後に、
当行は、デジタル変革における重大な障害を取り除くため、システムおよび業務手続におけるイノベーションを継
続的に促進する。当行は、オンライン金融事業に関連するシステムの修正を加速化し、オンラインおよびオフライ
ンの業務統合ならびにサービス手続を最適化し、オンライン事業に適したリスク管理モデルを構築する。
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EDINET提出書類
中国農業銀行股イ分有限公司(E24593)
半期報告書
2【事業等のリスク】
リスク管理
(1) 包括的リスク管理システム
2019 年度上半期において、当行は、包括的リスク管理システムを引き続き強化させ、リスク制限を維持した。
「 クリーンアップ計画」の整然とした進行とともに、当行は、不良債権残高および不良資産比率の一貫した減少を
記録した。その結果、不良債権の質は、安定した状態を保ち、上昇軌道に乗った。不良資産に対する引当率は引き
続き上昇し、リスク耐性はさらに強まった。生産能力過剰な産業に対する信用エクスポージャーの管理を厳格に適
用することで、当行の信用構造は引き続き最適化された。市場リスク管理方針システムが向上するにつれて、市場
リスク・エクスポージャー制限は対象範囲内に収まり、市場リスク・エクスポージャーは全体として制御されてい
た。さらに、当行は、資産負債管理を強化し、スムーズな市場金融チャネルをもつ高品質な流動資産の十分な準備
金を維持し、結果、流動性の安全性が保障された状態における流動性、安全性および収益性を効果的に調整した。
(2) 信用リスク
信用リスクとは、債権者(または相手方)の契約責任を履行するという義務の不履行から生じる経済損失のリス
クをいう。当行の信用リスクは、主に貸出金ポートフォリオ、投資ポートフォリオ、保証および多様なその他のオ
ンバランスおよびオフバランスの信用リスク・エクスポージャーから生じる。
信用リスク管理体制
2019 年度上半期において、当行は、信用構造を引き続き最適化し、信用事業および与信管理の革新的な手法を発
展させた。さらに、当行は、適時にフォワードルッキングなリスク管理方針を取り、リスク制限を決定し、リスク
プランを考案し、様々な潜在的リスクを軽減した。不良債権の証券化およびデット・エクイティ・スワップの処分
方法を導入したことで、当行は、不良債権の一括譲渡および償却に取り組んだ。
法人向け銀行業務におけるリスク管理
当行は、与信方針体制を改良した。当行は、特に産業特有の与信方針を引き続き最適化し、バイオマス発電、港
湾、物流、自動車製造および印刷出版といった産業に関連した与信方針の考案または改定を行った。