YKK株式会社 有価証券報告書 第84期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
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YKK株式会社(E02368)
有価証券報告書
【表紙】
【提出書類】 有価証券報告書
【根拠条文】 金融商品取引法第24条第1項
【提出先】 関東財務局長
【提出日】 2019年6月27日
【事業年度】 第84期(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)
【会社名】 YKK株式会社
【英訳名】 YKK Corporation
【代表者の役職氏名】 代表取締役社長 大谷 裕明
東京都千代田区神田和泉町1番地
【本店の所在の場所】
(同所は登記上の本店所在地であり、実際の業務は「最寄りの連絡場所」で
行っております。)
【電話番号】 該当事項はありません。
【事務連絡者氏名】 該当事項はありません。
【最寄りの連絡場所】 富山県黒部市吉田200
【電話番号】 0765(54)8075番
【事務連絡者氏名】 財務・経理部長 太刀川 博
【縦覧に供する場所】 該当事項はありません。
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第一部【企業情報】
第1【企業の概況】
1【主要な経営指標等の推移】
(1) 連結経営指標等
回次 第80期 第81期 第82期 第83期 第84期
決算年月 2015年3月 2016年3月 2017年3月 2018年3月 2019年3月
(百万円) 721,037 741,935 712,783 747,762 765,781
売上高
(百万円) 69,720 70,988 61,545 59,924 64,466
経常利益
親会社株主に帰属する
(百万円) 46,978 44,646 45,180 38,728 45,824
当期純利益
(百万円) 81,416 △ 20,695 51,998 30,123 38,420
包括利益
(百万円) 586,664 561,547 609,848 636,361 671,195
純資産額
(百万円) 946,283 954,060 963,231 978,563 1,011,934
総資産額
(円) 477,438 456,991 496,267 518,187 546,662
1株当たり純資産額
(円) 39,181 37,237 37,683 32,302 38,220
1株当たり当期純利益
潜在株式調整後
(円) - - - - -
1株当たり当期純利益
(%) 60.5 57.4 61.8 63.5 64.8
自己資本比率
(%) 8.8 8.0 7.9 6.4 7.2
自己資本利益率
(倍) - - - - -
株価収益率
営業活動による
(百万円) 91,254 101,727 81,619 57,525 68,607
キャッシュ・フロー
投資活動による
(百万円) △ 65,976 △ 95,252 △ 59,345 △ 67,661 △ 53,888
キャッシュ・フロー
財務活動による
(百万円) △ 4,379 △ 4,359 △ 14,569 △ 4,470 △ 3,255
キャッシュ・フロー
現金及び現金同等物の
(百万円) 173,558 167,229 171,259 155,076 166,241
期末残高
42,154 44,250 44,674 45,618 46,167
従業員数
(人)
〔外、平均臨時雇用者数〕 〔 5,738 〕 〔 5,390 〕 〔 4,801 〕 〔 4,538 〕 〔 4,430 〕
(注) 1. 売上高には、消費税等は含まれておりません。
2. 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。
3. 株価収益率については、非上場につき記載しておりません。
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(2) 提出会社の経営指標等
回次 第80期 第81期 第82期 第83期 第84期
決算年月 2015年3月 2016年3月 2017年3月 2018年3月 2019年3月
(百万円) 88,056 87,819 82,700 85,510 98,843
売上高
(百万円) 11,662 15,435 17,192 10,485 4,437
経常利益
(百万円) 11,779 15,254 17,529 9,333 9,874
当期純利益
(百万円) 11,992 11,992 11,992 11,992 11,992
資本金
(株) 1,199,240.05 1,199,240.05 1,199,240.05 1,199,240.05 1,199,240.05
発行済株式総数
(百万円) 338,328 349,407 364,938 371,467 378,277
純資産額
(百万円) 480,656 508,510 508,254 497,861 498,113
総資産額
(円) 282,178 291,422 304,380 309,830 315,514
1株当たり純資産額
(円) 2,200 2,400 2,400 2,400 2,400
1株当たり配当額
(うち1株当たり
(円) ( - ) ( - ) ( - ) ( - ) ( - )
中間配当額)
1株当たり当期純利益 (円) 9,824 12,723 14,620 7,784 8,235
潜在株式調整後
(円) - - - - -
1株当たり当期純利益
(%) 70.4 68.7 71.8 74.6 75.9
自己資本比率
(%) 3.5 4.4 4.9 2.5 2.6
自己資本利益率
(倍) - - - - -
株価収益率
(%) 22.4 18.9 16.4 30.8 29.1
配当性向
(人) 3,808 3,914 4,048 4,149 4,733
従業員数
(%) - - - - -
株主総利回り
(比較指標:-) (%) ( - ) ( - ) ( - ) ( - ) ( - )
(円) - - - - -
最高株価
(円) - - - - -
最低株価
(注) 1. 売上高には、消費税等は含まれておりません。
2. 潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。
3. 株価収益率、株主総利回り、比較指標、最高株価及び最低株価については、当社株式は非上場であります
ので記載しておりません。
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2【沿革】
年月 事項
1934年1月 吉田忠雄が東京日本橋に「サンエス商会」を創設、ファスナーの製造・販売を開始
1945年8月 「吉田工業株式会社」に社名変更
1946年4月 「YKK」の商標を制定
1954年10月 黒部工場(現黒部牧野工場)着工 (1955年5月稼動)
1957年7月 吉田商事㈱(現YKK AP㈱、現連結子会社)を設立し、当社製造のファスナー及び伸銅品の国
内・輸出販売を開始
10月 生地工場(現黒部工場)着工
1959年12月 ニュージーランドにスライド・ファースト社(現YKKオセアニア社、現連結子会社)を設立、以後
世界各地にファスナー製造・販売活動のための現地法人を設立
1961年11月 生地工場において建材の製造を開始すると同時に、吉田商事㈱より販売を開始
1963年6月 東京都千代田区に本社を移転
1971年6月 建材製造専用の四国工場(現YKK AP㈱四国事業所)着工
1973年6月 建材製造専用の東北工場(現YKK AP㈱東北事業所)着工
10月 建材製造専用の九州工場(現YKK AP㈱九州事業所)着工
1976年5月 YKKインダストリーズ・シンガポール社(現YKK APシンガポール社、現連結子会社)設立
1979年8月 オーストラリアにおけるアルミ製錬事業ボインスメルターズプロジェクト参画のため現地法人YKK
アルミニウム・オーストラリア社(現連結子会社)を設立
1987年9月 米国子会社の地域統括を目的としてアメリカにYKKコーポレーション社(現YKKコーポレーション・
オブ・アメリカ、現連結子会社)を設立
1988年12月 欧州子会社の地域統括を目的としてオランダにYKKヨーロッパ社(現YKKホールディング・ヨーロッ
パ社、現連結子会社)を設立
1991年12月 アジア子会社の地域統括を目的としてシンガポールにYKKホールディング・アジア社(現連結子会
社)を設立
1994年8月 「YKK株式会社」に社名変更
2001年10月 吉田不動産㈱(現YKK不動産㈱、現連結子会社)を完全子会社化
2002年10月 株式交換により、YKK AP㈱を完全子会社化
12月 東アジア子会社の地域統括を目的として中国にYKK中国投資社(現連結子会社)を設立
12月 蘇州YKK工機会社(現連結子会社)を設立
2003年2月 新設分割により、YKKファスニングプロダクツ販売㈱を設立
4月 新設分割により、YKKビジネスサポート㈱(現連結子会社)を設立
10月 建材事業をYKK AP㈱に吸収分割
2013年3月
YKK㈱とYKK AP㈱の新本社ビル「YKK80ビル」着工(2015年6月竣工)
2014年12月
工機工場(ファスナー専用機械部品工場)着工(2015年11月竣工)
2018年7月
YKKファスニングプロダクツ販売㈱を吸収合併
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3【事業の内容】
当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、子会社113社及び関連会社1社で構成され、ファスニング、建材の
製造・販売を主な事業内容とし、更に各事業に関連するアルミ地金販売及びその他のサービス等の事業活動を展開し
ております。なお、一部の関係会社では複数の事業活動を展開しております。
当社グループ内の各主要事業に係わる位置付け及びセグメントとの関連は次のとおりであり、各主要事業とセグメ
ントは同一であります。
ファスニング: ファスニング製品等を当社、YKK U.S.A.社ほか子会社65社が製造及び販売しており、一部は当
社グループ内で仕入れて再販売しております。
A P: 建材製品をYKK AP㈱ほか子会社22社が製造及び販売しております。
そ の 他 : ファスニング加工用機械、建材加工用機械、金型及び機械部品を当社ほか子会社2社が製造
し、主に、当社グループ内の各会社に販売しております。YKKアルミニウム・オーストラリア社
ほか子会社1社がアルミ地金の販売に携わっており、主に当社グループで輸入しております。
YKKコーポレーション・オブ・アメリカほか地域統括会社5社が在外子会社を統括しておりま
す。YKK不動産㈱ほか子会社18社及び関連会社1社でその他のサービス等の事業活動を行って
おります。
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事業系統図
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4【関係会社の状況】
(1) 連結子会社
議決権の所有又は
名称 住所 主要な事業の内容
資本金又は出資金 被所有割合(%) 関係内容
国/地域・都市
(注)3 (注)1
(注)2
当社グループの建材製品の
百万円
東京都
YKK AP㈱ ※ (注)4
AP 100.0 製造・販売
千代田区 10,000
役員の兼任・・・有
当社が不動産を賃借
百万円
東京都
YKK不動産㈱ その他 100.0 資金貸付 ・・・有
千代田区
180
役員の兼任・・・有
百万円
富山県 当社が業務サービスを委託
YKKビジネスサポート㈱ その他 100.0
黒部市 役員の兼任・・・有
100
YKKコーポレーション・ アメリカ 千米ドル 北中米地域の統括
その他 100.0
役員の兼任・・・有
オブ・アメリカ ※ アトランタ(G.A.) 66,000
欧州・中東・アフリカ地域
YKKホールディング・ オランダ 千ユーロ
その他 100.0 の統括
スネーク
ヨーロッパ社 ※ 47,832
役員の兼任・・・有
中国 千米ドル 中国地域の統括
YKK中国投資社 ※
その他 100.0
上海 401,200 役員の兼任・・・有
中国・日本以外のアジア地
YKKホールディング・ 千シンガポールドル
シンガポール その他 100.0 域の統括
アジア社 ※ 383,859
役員の兼任・・・有
当社が製造するファスナー
アメリカ 千米ドル 100.0
YKK U.S.A.社 ※ ファスニング 材料等を供給
アトランタ(G.A.) 15,000 (100.0)
役員の兼任・・・無
当社グループの建材製品の
アメリカ 千米ドル
100.0
YKK APアメリカ社 ※ AP 製造・販売
アトランタ(G.A.) 68,000
(100.0)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
トルコ 千トルコリラ 100.0
YKKトルコ社 ※
ファスニング 材料等を供給
イスタンブール
27,245 (100.0)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
千米ドル
中国 100.0
上海YKKジッパー社 ※
ファスニング 材料等を供給
上海 77,000 (100.0)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
中国 千米ドル 100.0
YKK深セン社 ※
ファスニング 材料等を供給
深セン
98,000 (100.0)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
中国 千香港ドル
YKK香港社 ファスニング 100.0 材料等を供給
香港 11,000
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
ベトナム 千米ドル 100.0
YKKベトナム社 ※
ファスニング 材料等を供給
ホーチミン
15,171 (100.0)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
インドネシア 千米ドル 69.7
YKKインドネシア社 ファスニング 材料等を供給
ジャカルタ 6,320 (69.7)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
YKKジプコ・ インドネシア 千米ドル 100.0
ファスニング 材料等を供給
インドネシア社 ※ ジャカルタ 127,300
(99.5)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
バングラデシュ 千米ドル 100.0
YKKバングラデシュ社 ※
ファスニング 材料等を供給
ダッカ 16,000 (100.0)
役員の兼任・・・無
当社が製造するファスナー
百万韓国ウォン
韓国
YKK韓国社 ファスニング 100.0 材料等を供給
ソウル 5,220
役員の兼任・・・有
当社が製造するファスナー
台湾 千台湾ドル
YKK台湾社 ※
ファスニング 材料等を供給
73.8
台北
450,000
役員の兼任・・・有
当社グループへアルミ地金
YKKアルミニウム・ 千豪ドル
オーストラリア
その他 100.0 の供給
オーストラリア社 ※ シドニー 36,925
役員の兼任・・・有
その他88社 ※
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(注) 1. 「主要な事業の内容」欄には、セグメントの名称を記載しております。
2. 「議決権の所有又は被所有割合」欄の( )内は、間接所有割合を内数で表示しております。
3. ※印は、特定子会社であります。なお、その他に含まれる会社のうち特定子会社に該当する会社は次のと
おりです。
テープ・クラフト社、LBKリアルエステートコーポレーション、YKKメキシコ社、YKKブラジル社、YKKフラン
ス社、YKKメディテラネオ社、大連YKKジッパー社、YKKスナップファスナー無錫社、YKK AP大連社、YKK AP
深セン社、YKK AP蘇州社、YKKディベロップメント・シンガポール社、YKKパキスタン社、YKKインド社、ボ
ルーカ社、ゴールデン・ヒル・タワー社、YKKスリランカ社、YKK APインドネシア社
4. YKK AP㈱については売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く)の連結売上高に占める割合が
10%を超えております。
主要な損益情報等 (1) 売上高 367,422百万円
(2) 経常利益 17,094百万円
(3) 当期純利益 12,195百万円
(4) 純資産額 168,542百万円
(5) 総資産額 315,017百万円
5. YKKファスニングプロダクツ販売㈱は、2018年7月1日付で当社に吸収合併されました。
(2) 持分法適用関連会社
該当はありません。
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5【従業員の状況】
(1) 連結会社の状況
2019年3月31日現在
セグメントの名称 従業員数(人)
ファスニング 26,956 〔3,094〕
AP 16,321 〔1,124〕
その他 1,891 〔182〕
全社(共通) 999 〔30〕
合計 46,167 〔4,430〕
(注) 1. 従業員数は就業人員数であり、臨時従業員数は〔 〕内に当連結会計年度の平均人員を外数で記載してお
ります。
2. 臨時従業員には、パートタイマー、契約社員等を含んでおります。
3. 全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門等に所属しているものであります。
(2) 提出会社の状況
2019年3月31日現在
従業員数(人) 平均年齢(歳) 平均勤続年数(年) 平均年間給与(円)
5,615,868
4,733 41.8 18.6
セグメントの名称
従業員数(人)
ファスニング 2,930
その他 804
全社(共通) 999
合計 4,733
(注) 1. 従業員数は就業人員数であります。
2. 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
3. 全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門等に所属しているものであります。
(3) 労働組合の状況
当社は、黒部事業所の従業員2,975人が加入してYKK労働組合を組織しており、会社との関係は極めて協調的
であります。なお、上部団体との関係はありません。
国内の連結子会社では、黒部エムテック㈱、黒部石油販売㈱、黒部警備㈱、黒部クリーンアンドグリーンサービ
ス㈱、㈱エッセン、㈱YKKツーリスト、YKKビジネスサポート㈱、YKK不動産㈱の従業員304人が、当社と
同じYKK労働組合に加入しております。
また、YKK AP㈱の従業員がYKK AP労働組合に、海外の連結子会社では、一部の会社の従業員が業種別
労働組合に加入しておりますが、会社との関係は良好であります。
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第2【事業の状況】
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ (当社及び当社の関係会社) が判断した
ものであります。
当社グループは、2017年度から2020年度までの4年間を対象とする第5次中期経営計画を策定していますが、当該
中期経営計画の3年目となる2019年度の事業を取り巻く外部環境として、ファスニング事業においては、米中貿易摩
擦や欧州の通商リスク等の不確実性の高まり、アジア地域の縫製市場拡大やアジア各国の内需小売市場の成長、情報
技術の進化やeコマース商流拡大、また、社会・経済におけるESG (環境 Environment、社会 Soc
ial、ガバナンス Governance)への意識 の更なる高まりを見込んでいます。AP事業では、日本国内
においては、消費増税についてはそれに向けた各種支援策により前回ほどの駆け込みとその反動は見られないもの
の、住宅取得者の人口減少等によって新設住宅着工戸数は減少するものと見込んでいます。また海外においては、米
国や台湾では市況が鈍化し、中国の高級市場は伸長、インドネシアの中級不動産市場が拡大するものと見込んでいま
す 。
このように激しく変化する事業環境の中においても、メーカーとしてのものづくりと市場や顧客が求める多様な価
値を追究し実現するための最重要ポイントを「商品力と提案力」とそれを支える「技術力と製造力」の4つの力、ま
たそれらを実現する社員の力を高めるための「人材育成」と位置づけており、当社とYKK AP㈱それぞれで掲げ
た中期事業方針に基づき、中期経営目標である「売上高営業利益率 8.0%以上」と「ROA 5.0%以上」の達成を引
き続き目指してまいります。
①ファスニング事業
ファスニング事業では、第5次中期事業方針として「更なる量的成長を目指して~Standard向けの商品&
ものづくりへの挑戦」を掲げ、衣料専門店等のカジュアル衣料顧客や欧米量販店向けといったボリュームゾーンであ
る「Standardでの競争力強化」を進め、「より良いものを、より安く、より速く」顧客に提供することを目
指しています。2019年度はその方針のもと、引き続き「更なる開発体制の強化」「バリエーションの拡充」「納期対
応」「コスト競争力強化」を重点テーマに据え、Standard向けの商品・ものづくりの強化に取り組んでまい
ります。
具体的には、「更なる開発体制の強化」では、各地域の開発力を高め、顧客要望に対してより迅速に対応できる体
制を整えるために、黒部を総本山とした開発機能を強化するとともに、新興成長国及び消費国にてファスナー事業、
S&B事業の開発力を強化します。開発拠点は、トルコにて欧州アパレルStandard市場に向けた対応力を高
めることを目的として、ファスニングR&Dセンター機能を強化し、ファスニング事業全体で拠点数及び人員を更に
増強します。「バリエーションの拡充」では、Standardにおける鞄分野向け新ファスナーのバリエーション
拡充や新興国内需市場対応を進めるとともに、表面処理技術を強化し、更なる需要の捕捉に取り組みます。一方、高
級ブランド顧客や高機能スポーツアパレル、自動車内装等の汎用資材など、高付加価値が求められるValue C
onsciousへは、「Excella®Fin」や「QuickFree®」、「click―TRAK®」など
の魅力ある付加価値商品を継続的に開発・展開します。投資計画については、量的成長と次期中期を見据えた積極投
資を継続してまいります。ファスニング事業の総投資額の約36%をアジア地域向けとし、ベトナム・インドネシア・
台湾を中心に製造基盤の強化を図ります。また、日本国内では次期中期を見据えた先行投資を行い、黒部 古御堂工
場のファクトリーオートメーション設備の導入を通じて生産効率の向上を図るとともに、黒部のものづくりを通して
日本のお客様へのサービス強化に取り組んでまいります。
組織体制については、ESGに関する社会・顧客の意識の高まりを受け、サステナブルな事業展開と商品開発体制
の構築を推進するために「ファスニング サステナビリティ推進室」を、更に事業環境の変化に迅速に対応できるグ
ローバルでの標準業務プロセスの立案・構築に向けて「業務改革プロジェクト」を、それぞれファスニング事業本部
の本部機能として新たに設置し、取り組みを強化してまいります。
②AP事業
AP事業では、第5次中期事業方針として掲げた「高付加価値化と需要創造によるAP事業の持続的成長」のも
と、各事業領域で重点施策に取り組みます。
住宅事業では、窓の高断熱化に向けて、アルミ樹脂複合窓「APW511」大開口スライディングの拡販等に取り
組むとともに、樹脂窓の生産能力を強化すべく東北製造所でのライン新設と北海道工場のライン再構築を行い、樹脂
窓・アルミ樹脂複合窓およびトリプルガラスにより更なる高断熱化の推進を行います。エクステリア事業では、これ
までの取り組みに加え、テラス・バルコニー向け屋根・囲い商品を中心とした後付リフォームによる付加価値提案
や、2018 年に東京都が提言した「子供のベランダからの転落防止のための手すりの安全対策」で推奨する仕様への
商品対応による安全・安心な住まいづくりへの提案を行います。リノベーション事業では、「かんたんマドリモ
シャッター」を中心とした「防災・防犯」や開口部を維持しながら断熱と耐震を両立する「フレームⅡ」「フレーム
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プラス/G2」による「大開口・高断熱・耐震」を軸とした需要創造とともに、引き続きより手軽にリフォームでき
る商品・工法などの研究・開発を継続し、リフォームにより生活を豊かにする提案を行います。
また、2019年3月に黒部 荻生製造所内に開設したプロユーザー向け技術提案施設「パートナーズサポートスタジ
オ」を活用し、商品・技術・施工などの提案を更に強化していきます。品質強化については、2019年度より品質本部
を新設し、サプライチェーン全プロセスによる品質確保を更に強化します。
海外においては、米国ではビル建材の西海岸エリアの営業強化と中西部での加工工場新設、また住宅建材では樹脂
窓の競争力強化に取り組み、中国では大手不動産開発市場での更なる深耕、台湾では高級市場での受注拡大と改装・
非居住分野の強化、インドネシアでは高級・中級市場でのセグメント別対応力強化、インドでは事業基盤安定化とA
P商品の販売開始を行います。
③両事業を支える技術力 -工機技術本部-
工機技術本部は、YKKグループの一貫生産を支える技術開発機能の中核として、2019年度は引き続き中期方針で
ある「基盤となる要素技術の強化と進化」を軸に「高機能」と「低価格」を通して「スタンダードへの挑戦」に取り
組みます。
重点取り組みテーマとして、ファスニング専用設備・ライン開発における連続稼動とラインの製造原価低減、AP
専用設備・ライン開発における樹脂窓・アルミ樹脂複合窓製造ラインの改善・改良・進化、機械製造におけるものづ
くり力と生産管理機能の強化、そして要素技術の深耕として、材料・プロセスまで踏み込んだコスト低減、またロ
ボット活用技術とデジタル化技術の推進に取り組んでまいります。
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2【事業等のリスク】
当社グループ(当社及び当社の関係会社)の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下の
ようなものがあります。なお、本項においては将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は当連結会計年度末
現在において当社グループが判断したものであります。
① 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク
当社グループは北中米、南米、欧州・中東・アフリカ、アジア、大洋州地域の世界72カ国・地域に進出し事業を
営んでいます。これらの国・地域においては、政治的不安、テロ・戦争その他の要因による社会的混乱などによる
影響を受けます。事業推進・展開において不利な事象が発生した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能
性があります。
② 経済状況
当社グループの事業は、競合他社が製造あるいは販売を行う様々な国・地域における市場の縮小あるいは価格競
争などの経済状況により影響を受ける可能性があります。また、市場の需給関係により価格が決定される原材料関
係の価格高騰により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 為替レートの変動
当社グループの現地通貨建の売上、費用、資産等の項目は、連結財務諸表作成のために円換算されており、現地
通貨における価値に変動がない場合でも、為替レートの変動によって、円換算後の財政状態及び損益状況に影響を
与える可能性があります。
④ 保有株式の株価下落
当社グループが保有している上場株式に関して、その株価が大幅に下落した場合には、保有株式の減損又は評価
損が発生し、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
⑤ 退職給付債務
当社グループの退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上の前提条件と実際の結果が異なった場合や前提条
件が変更された場合、認識される費用及び債務に影響を与えます。特に割引率の低下や運用利回りの悪化は、当社
グループの業績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 事業再編損失
当社グループは、その企業価値の増大を図るため不採算事業からの撤退や国際水平分業体制の推進、コスト削減
策の実行等、事業構造改革を実施することにより、収益力の向上に努めておりますが、その推進に伴い特別損失が
発生する可能性があります。
⑦ 製品の欠陥
当社グループは、世界中の工場で当社の品質管理基準に従って各種の製品を製造しておりますが、製品に欠陥が
発生し重大な製造物責任賠償が発生した場合、当社グループの業績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性がありま
す。
⑧ 公的規制
当社グループは、事業展開する国・地域において、事業・投資の許可を得ており、当該国・地域の政府規制を受
けております。また、通商、独占禁止、知的財産、消費者、租税、環境関連の法規制などの適用も受けておりま
す。これらの規制により当社グループの活動が制限される可能性があり、また、規制を遵守できなかった場合は、
当社グループの業績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 自然災害および感染症
当社グループは、地震等の自然災害によって、当社グループの製造拠点及び設備等が損害を被った場合や、新型
インフルエンザ等が流行した場合は、当社グループの操業が中断し、生産及び出荷が遅延することにより売上高が
低下し、さらに、製造拠点等の修復又は代替のために費用を要することとなる可能性があります。
⑩ ITリスク
当社グループは、数々の情報システムを開発し、運用しています。
ITリスクに関してリスク分析を行い、権限責任の適切な配分、チェック体制の確立、また外部からの侵入に対
する方策を講じていますが、不正アクセス、コンピューターウィルスの侵入による取引先情報の漏洩、データの消
失・改ざんの可能性があります。
重要な情報の流出・消失・改ざんが起こった場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑪ その他
当社及び複数の子会社は、米国において、AU New Haven, LLCとTrelleborg Coated Systems US, Inc.から、
ファスニング事業分野における特許侵害等を理由として、2015年5月1日付けで訴訟を提起されました。本件訴訟は
依然係属中であり、当社らは、米国の法律事務所を代理人に起用し、適切に対応しています。
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3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー
(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
(a) 財政状態に関する分析
当連結会計年度末(以下「当期末」という)の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」という)比33,370百万円
増加(+3.4%)して1,011,934百万円となりました。流動資産は同18,121百万円増加(+3.5%)の535,180百万円、固定資
産は同15,248百万円増加(+3.3%)の476,753百万円となりました。
流動資産増加の主な要因は、たな卸資産の増加等です。固定資産増加の主な要因は、有形固定資産の増加等です。
当期末の負債合計は、前期末比1,463百万円減少(△0.4%)して340,738百万円となりました。流動負債は同3,972百
万円減少(△2.0%)の193,774百万円、固定負債は同2,509百万円増加(+1.7%)の146,963百万円となりました。
流動負債減少の主な要因は、1年内償還予定の社債の減少等です。固定負債増加の主な要因は、社債の増加等で
す。
当期末の純資産は、前期末比34,834百万円増加(+5.5%)して671,195百万円となりました。純資産増加の主な要因
は、利益剰余金の増加等です。
これらの結果、自己資本比率は前期末の63.5%から64.8%となりました。また1株当たり純資産額は、前期末の
518千円から546千円となりました。
(b) 経営成績の分析
当連結会計年度(以下「当期」という)の連結業績は、売上高は前連結会計年度(以下「前期」という)を上回り、前
期に比べて18,018百万円増加(+2.4%)の765,781百万円となりました。営業利益は2,428百万円増加(+4.1%)の61,775
百万円となり、経常利益は4,542百万円増加(+7.6%)の64,466百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は
7,095百万円増加(+18.3%)の45,824百万円となりました。この結果、1株当たり当期純利益は38,220円となりまし
た。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ11,164百万円増加し、166,241百万円
となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得られたキャッシュ・フローは68,607百万円と、前期に比べ11,082百万円増加しました。これは
主に、売上債権の増減額が前期は12,760百万円の増加であったのに対し、当期は7,761百万円の増加となったこと、
税金等調整前当期純利益が63,876百万円と前期に比べ6,568百万円増加したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用されたキャッシュ・フローは53,888百万円と、前期に比べ13,773百万円減少しました。これは主
に、定期預金の預入による支出が前期と比べ11,488百万円減少し、5,865百万円となったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用されたキャッシュ・フローは3,255百万円と、前期に比べ1,214百万円減少しました。これは主に、
短期借入金の純増減額が前期と比べ1,234百万円増加し、768百万円となったこと等によるものです。
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③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度末における実績は、次のとおりであります。
(a)生産実績
セグメントの名称 生産高(百万円) 前年同期比(%)
ファスニング 279,605 102.7
AP 375,423 100.3
(注) 1. 上記の金額は、販売価格で表示しております。
2. その他については、そのほとんどがグループ内への販売のため記載を省略しております。
(b)受注実績
セグメントの名称 受注高(百万円) 前年同期比(%) 受注残高(百万円) 前年同期比(%)
ファスニング 323,019 102.2 15,400 101.7
AP 427,045 104.2 166,909 100.6
(注) 1. 上記の金額は、販売価格で表示しております。
2. その他については、そのほとんどがグループ内への販売のため記載を省略しております。
(c)販売実績
セグメントの名称 販売高(百万円) 前年同期比(%)
ファスニング 332,534 102.7
AP 427,734 102.5
その他 5,512 81.7
合計 765,781 102.4
(注) 1. 上記の金額は、消費税等抜きで表示しております。
2. セグメント間の取引については相殺消去しております。
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(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されておりま
す。この連結財務諸表作成にあたって採用している「重要な会計方針」については、「第5[経理の状況][注記事項]
(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているため省略しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは2017年度を初年度とする第5次中期経営計画を実行に移しています。この第5次中期経営計画で
は、当社グループの中期経営ビジョン「Technology Oriented Value Creation『技術に裏付けられた価値創造』」の
もと、当社では第5次中期事業方針である「『ものづくりの進化と革新』~Standard向けのYKKものづく
りへの挑戦~」の実現を目指し、AP事業を中核とするYKK AP㈱では、第5次中期事業方針である「高付加価
値化と需要創造によるAP事業の持続的成長」の実現を目指し、それぞれの事業を推進しています。2018年度は、経
済やマーケットの先行きの見通しが不透明な中にあっても、引き続きファスニング事業・AP事業それぞれの課題に
取り組み、当社グループの根幹にある技術に基づいた市場要望実現のための施策を実行してまいりました。
当期の連結業績については、売上高は前期比2.4%増の765,781百万円、営業利益は前期比4.1%増の61,775百万
円、経常利益は前期比7.6%増の64,466百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比18.3%増の45,824百万円
となりました。
当社グループは、事業の収益性と資産効率を高めるとともに得た利益を更なる事業成長に積極的に投資するため
に、第5次中期経営目標を「売上高営業利益率8.0%以上」と「ROA5.0%以上」と定めております。2年目である
当期は当社グループの営業利益が増益となった結果、売上高営業利益率は8.1%、ROAは4.6%となりましたが、引
き続き当該目標達成に向け事業収益ならびに資産効率の向上に取組んでまいります。
当期の事業別売上高及び営業利益は、次のとおりであります。
(a)ファスニング事業
当期のファスニング事業を取り巻く事業環境は、米国において個人消費が堅調に推移する等、安定的な経済成長が
継続しましたが、中国経済の伸びの鈍化や米国・中国間の通商問題、英国のEU離脱交渉等の不安定な要素が増加し
ております。このような事業環境のもと、ファスニング事業は中国・アジア(中国・日本を除く。以下、同じ。)地
域における供給体制の増強、米国や欧州では高付加価値品の増販に取り組みました。また、グローバルマーケティン
グ活動による欧米量販店への対応を強化するとともに、各国内需市場に対しても積極的にアプローチを行い、商品開
発拠点の増強や商品バリエーション強化にも継続的に取り組みました。
地域別では、北中米においては、安全・官需分野向けの需要を獲得し、EMEA(欧州・中東・アフリカ)におい
ては、トルコでは現地通貨安やインフレにより内需市場が減速したものの、フランス・イタリアでは高付加価値品や
高級鞄向け商品の販売が好調でした。中国においては、アジア地域への縫製移行に伴う販売減少の影響を受けたもの
の、内需顧客深耕の施策が奏功したことで増収となり、アジア地域においては、ベトナム・バングラデシュ等で顧客
の増産や縫製移行に伴う需要増を供給体制の強化により着実に捕捉することで販売を伸ばしました。
その結果、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は前期比2.7%増の 332,857百万円となりました。 営業利益
は、銅・亜鉛等の原材料価格上昇や、中国・アジア地域の増産に向けた投資に伴う償却費や労務費等の製造固定費の
増加、開発基盤強化のための費用増加等の減益要因があったものの、販売ボリュームの増加及び操業度の向上に加
え、継続的なコスト削減効果による増益要因が大きく、 前期比1.9%増の53,627百万円となりました。
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(b)AP事業
当期のAP事業を取り巻く事業環境は、日本国内において、貸家は減少しましたが持家と分譲住宅が増加し、新設
住宅着工戸数全体としては前年並みとなりました。また、海外においては、米国経済は底堅いものの住宅市場は利上
げの影響もあり後半鈍化し、中国においては地方都市で不動産取得税の規制緩和により改善があったものの、大都市
では不動産取引抑制策の影響が残りターゲット市場は減少しました。台湾では成長率は小幅に低下するも建築市場は
堅調に推移し、インドネシアでは急激な現地通貨安による連続利上げなどの影響により市場が鈍化しました。こうし
た事業環境の中、第5次中期事業方針である「高付加価値化と需要創造によるAP事業の持続的成長」に向け、事業
を推進してまいりました 。
日本国内では、高付加価値化への取り組みとして高断熱化を推進するため、住宅向け樹脂窓の拡販に加え、2018年
12月にホテル専用商品として開発した高断熱樹脂窓「HOTEL MADO」を発売しました。また、住宅防火エリ
アにおいて、「網」のない耐熱強化複層ガラスとクリアネット網戸を組み合わせて使用する「Wクリア」の提案で
は、窓辺の眺望性や通風性が大幅にアップすると好評をいただき、「2018年度グッドデザイン賞」を受賞しました。
需要創造への取り組みとしては、エクステリア商品では、窓・玄関ドアと外構のトータルコーディネート提案の継続
に加え、大雪や台風・地震など自然災害対策への需要対応により、カーポートおよびフェンスを中心に販売を伸ばし
ました。2018年9月に発売した住宅向けリフォーム商品「かんたんマドリモ シャッター」は、防犯・防音・遮光・
防災に有効なシャッターを、これまで後付けが難しかった納まりの窓にも取り付けることができ、より快適で安全な
暮らしを提供できる商品として販売が好調に推移しました。海外においては、米国では建築市場が堅調に推移する
中、西部地域での営業戦略を遂行し、中国では大手不動産開発市場での提案力強化による受注拡大、台湾・インドネ
シアでは差別化商品開発・アイテム拡充に取り組みました。また、インドネシアでは2018年8月に「YKK AP
R&Dセンター(インドネシア)」を開設し、蒸暑地域における窓の研究開発を開始しました 。
その結果、AP事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、前期比2.5%増の 428,019百万円となりまし
た。 営業利益は、国内では販売増や製造コストダウン、販売価格の改定等の増益要因があったものの、原材料・資材
価格の高騰等により減益、海外では米国と中国の好調な販売が牽引し増益となり、全体では 前期比6.4%増の23,533
百万円となりました。
(c)その他
その他の事業につきましては、ファスニング加工用機械・建材加工用機械・金型及び機械部品製造・販売、不動
産、アルミ製錬事業などを行っております。
その他の事業の売上高(セグメント間の内部売上を含む)は、前期比1.2%減の58,863百万円、営業利益について
は、前期比54.8%減の440百万円となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、主にファスニング、建材の製造・販売事業を行うために、短期的な運転資金は自己資金およびC
P発行や銀行借入により調達し、長期的に必要な資金は自己資金および社債発行や銀行借入により調達しておりま
す。一時的な余資は安全性の高い金融資産で運用し、投機的な取引は一切行わないという基本方針に従い取り組んで
おります。
なお、当社グループでは、増産・合理化・省力化・更新入替・IT関連投資を中心に当連結会計年度は全体で
67,108百万円の設備投資を実施しました。当連結会計年度末における有利子負債の残高は52,206百万円となっており
ます。また、当連結会計年度末における現金および現金同等物の残高は166,241百万円となっております。
4【経営上の重要な契約等】
該当事項はありません。
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5【研究開発活動】
当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発に対する取り組みは、事業展開と同様に日本を中心とした、北中
米、南米、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、中国、アジアの世界6極体制で行っております。当連結会計年度の
当社グループ全体の研究開発費は23,351百万円となっております。
当連結会計年度における主な研究開発成果は、次のとおりであります。
(1) ファスニング事業
ファスニング事業本部では、第5次中期事業方針を「更なる量的成長を目指して」と掲げ、最重要カテゴリと位置
づけるStandard市場での競争力強化を図ると共に、高付加価値市場やアジア内需市場での顧客要望実現に向
けた新商品開発および開発体制の更なる強化に取り組んでおります。
主な成果として、アジア内需市場向けパンツ専用ファスナー製品や、サステナビリティへの取組みの一環として植
物由来合成繊維を使用した樹脂ファスナー製品を開発、そして従来よりも薄く強い新構造織込み製法を活用した鞄向
けファスナー製品のバリエーションを拡充しました。スナップボタン分野では、環境に優しく品質・コスト面に優れ
た新表面処理技術を用いたジーンズボタンを開発しました。また共同開発したジーンズ用ファスナー縫製合理化装置
を通して縫製ベンダーの工程を合理化、作業が自動化され生産性が向上しました。
今後は引き続き海外開発拠点の増強や現地開発者の育成を行い、世界のファスニング開発体制の基盤を一層強化、
世界中であらゆる顧客要望をタイムリーに実現し、より多くの人に新たな価値を提供してまいります。当事業に係る
研究開発費は9,450百万円であります。
(2) AP事業
AP事業では、第5次中期事業方針を「高付加価値化と需要創造によるAP事業の持続的成長」と掲げ、フロント
ローディング開発プロセスへ改革を図り開発力を底上げし、商品・現場・使用・情報の4つの品質を高めた高付加価
値商品による需要創造に取り組んでおります。
主な成果として、住宅分野では高性能トリプルガラス樹脂窓「APW430」引違い窓や玄関ドア「ヴェナート
D30」、エクステリア分野ではテラス・バルコニー向け屋根・囲い商品「ソラリア」、ビル分野ではホテル専用高
断熱樹脂窓「HOTEL MADO」等を開発し商品力の徹底強化を図りました。
また、旧電装商品のメンテナンス商品投入や組立・施工・メンテナンス業者様向けメンテナンスマニュアル発刊
等、情報発信・サービス展開も同時に力を入れております。
今後、一層の競争激化・資材高騰という厳しい事業環境の中、収益性向上へ徹底した商品の構造・構成・体系の再
構築、リフォーム・メンテナンス等、全領域での対応力と品揃え、日本だけではなく海外や次世代を見据えた人材育
成により技術力・商品力・収益力を一層向上させ、顧客満足度No.1を目指してまいります。当事業に係る研究開
発費は9,474百万円であります。
(3) その他
工機技術本部では、YKKグループの一貫生産を支える技術開発機能の中核として、第5次中期執行方針である
「基盤となる要素技術の強化と進化」を軸に「高機能」と「低価格」を通して「スタンダードへの挑戦」に取り組ん
でおります。
2018年度の主な開発テーマは、ファスニング事業向け設備開発では、設備総合効率向上に向けた仕上機の開発、連
続稼動に向けたチェーンマシン、多品種に対応したスライダー組立機の開発に取り組みました。AP事業向け設備開
発では、樹脂窓、アルミ樹脂複合窓におけるロボットを活用した省人化ラインの開発に取り組みました。ロボットに
おいては、ファスナーや部品をハンドリングする要素技術開発を行いましたので、2019年度は試作機の開発に取り組
みます。
2019年度はこれらの展開とあわせて、「材料・プロセスまで踏み込んだコスト低減」、「ものづくりのデジタル化
推進とAI技術者育成」、「めっき専用液開発・内製化」に取り組み、事業競争力の更なる強化を目指してまいりま
す。
これらに向けての必要な要素技術については、自社内開発による深耕を図る一方で、企業・大学との連携による社
外技術の導入や共働開発を積極的に行ってまいります。当本部による研究開発費は4,426百万円であります。
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第3【設備の状況】
1【設備投資等の概要】
当社グループ(当社及び連結子会社)では、増産・合理化・省力化・更新入替・IT関連投資を中心に当連結会計
年度は全体で67,108百万円の設備投資を実施しました。
「ファスニング事業」においては、 ベトナム社ハナム工場・トルコ社チェルケスキョイ工場の建設・増築等による
アジアでの生産能力増強・競争力強化、台湾社中